WorkWaku-Junior - WorkWaku‐Junior/カース・キャリアセンター

就活解禁時期変更にともなう
就職活動の変化について
(考察)
2013年6⽉
(株)カース・キャリアセンター
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【1】現在までの経緯
<1952年>~就職協定締結
戦後の好景気と人手不足により、卒業予定者の早期確保のために、企業の採用競争が
激化。
大学側が、早い時期からの就職活動は学業専念の疎外と主張し、採用開始時期を4年生
の10月1日以降とする就職協定が結ばれた。
<1962年>~就職協定の廃止
罰則がないため、就職協定を破って早期に採用活動する「青田買い」が続出し、就職協
定は有名無実の状態が続いたため、日経連が就職協定廃止を宣言し、就職協定が廃止。
<1972年>~就職協定の復活
文部大臣・労働大臣、経済四団体による中央雇用対策協議会により、4年生 5 月 1 日求人
活動、7 月 1 日採用選考開始の就職協定を決議し、就職協定が復活。
<1986年>~就職協定の遵守と見直し
主要企業 52 社首脳による就職協定遵守懇談会が発足。
4年生の 8 月 20 日会社訪問開始、11 月 1 日内定解禁として協定合意。
<1996年>~就職協定再び廃止
企業側と学校側が独自の基準を策定して行動することになり、企業と大学・短大の間の
就職協定は廃止された。
この時期から、再び、年々就職活動は早まっており、今では 3 年次の冬から始まるのが通
例となった。
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その後、大学側から、学業に影響が出るという理由で、就職時期を遅らせるよう再三申
し入れが行われた。
<1997年>~「倫理憲章」と「申合せ」
バブル崩壊後、不景気による採用削減などで就職環境が悪化、企業側は「倫理憲章」を、
大学側は「申合せ」を相互に尊重して、自己責任の下に実施する方式に移行し、3年生の
10月就職解禁が定着した。
<2011年3月>~就活解禁が10月から12月へ
経団連は、学業に配慮して、企業の採用選考の紳士協定「倫理憲章」を、13年春卒業の
学生から就職活動の開始時期を3年生の10月から12月に2か月遅らせた。
<2013年5月>~就職解禁が12月から翌年3月に
大学生の就職活動の実質的な解禁時期をめぐり、活動期間を短くすることで学業への
悪影響を回避するため、政府が現在より3カ月遅い3年生の3月以降とするよう経済界
に要請し決定した。
エントリー申請は、3年生の12月から3月スタートに変更。
選考開始は、現在の4月1日から8月1日に変更。
2016年卒の学生から実施される予定。
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【2】企業・大学・大学生等の意見
1)企業側の意見
◆経済同友会~長谷川代表幹事
就活の解禁時期を4月にすべきだと提言しているうえ、自身が社長を務める武田薬
品工業でもすでに実施しており、「とくに支障はない」と強調。
◆日本商工会議所~岡村会頭
個人的には解禁は4月からがいいと思うが、一昨年に10月から12月からに変えたばか
りで学生にも企業にも混乱が生じるので懸念している。
◆その他、中小企業等
中小企業の活動は、大手が終了してからになるので、採用期間の短縮につながり、人
気が低い業種や中小企業にしわ寄せがいく。
理系学生を多く採用する大手メーカーは、理系は 4 年の夏に実験と就活が重なるの
でスケジュール調整が必要。
2)大学側の意見
◆4年生の講義の出席率が低下する可能性もある。
◆時期を操作しても、就職が決まらなければ不安が続くのは同じ事。
◆立場の弱い学生(特に長期で活動する4年生)が追い詰められる。
◆かなり暑い時期の選考になり、クールビズへの対応も必要では。
◆理系学生は4年生の夏に実験と就活が重なり、タイトなスケジュールになる。
◆3年生までに卒業に必要な単位は取りやすくなる。
◆卒業研究(卒論)のようなものが、就職活動のために犠牲となる。
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3)政府・行政の考え
◆就職活動期間が短縮されることになるので、学生に不安と混乱が生じないよう、きめ
細かく丁寧な対応を行ってもらいたい(下村文部科学大臣)。
◆就職活動の解禁が後ろ倒しになることで生じる時間を有効に使ってほしい(下村文部
科学大臣)。
具体的には、海外留学の促進とそのための体制の整備や大学 1 年から職業体験など
のキャリア教育。
※海外留学の促進のため、文部科学省で給付型の奨学金制度を検討中。
4)学生の声
現行よりの「不利になる」と考える大学生が51%で、「有利になる」は8%(人材情報サ
ービスのマイナビ)。
<不利と考える理由>
・スケジュールが過密(文系女子)。
・大企業に落ちた後、中小企業を受ける時間が少ない(文系男子)。
・内定を得てから考える時間も必要(理系女子)。
・卒業までの時間的余裕がなくなる。
・就活を短期間で行うことに不安を感じる。
<有利と考える理由>
・就活前に、自己分析する時間が増える(文系男子)。
・学業に専念できる。
・時間をかけて自身のキャリアの方向性を考えることができる。
・資格試験・留学などの時間がとれ都合が良い。
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【3】想定される環境変化
1)新卒一括採用システムの崩壊
グローバル化の進展で外資系や通年採用する企業が増加し、かつてのような横並び意
識は希薄化している。
また、解禁ルールは紳士協定であり、実効性の確保は困難。
したがって、日本企業の新卒一括採用そのものが、時代に合わなくなってきているのは
事実で、新卒にこだわる今の採用システムを見直す時期に差し掛かっているのは間違
いない。
2)ますます厳しくなる中小企業の採用
採用期間の短縮につながり、人気が低い業種や中小企業にしわ寄せがいき、就活ナビ、
ハローワーク、求人情報誌などの従来の手法では人材が確保できなくなる。
3)通年採用企業の増加
経団連の倫理憲章は法的拘束力がない紳士協定でルールを破っても罰則はない。
グローバル化が進んだ今日、日本の制度に縛られない外資系や、横並び意識を嫌う国
内の新興企業も増え、通年採用は珍しくなくなってくる。
4)青田買いの復活
通年採用が珍しくなくなってくると、伝統的な経済界のルールに付き合う必要はなく、
優秀な学生を早く囲い込むことも可能になる。
経団連系企業には、「ルールは形骸化し、公正な競争にならない」と、"青田買い"への懸
念を強めている企業が多い。
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5)学生の競争激化
海外留学した日本人学生の帰国時期は春以降になることが多く、今回の変更で有利に
なる。
今までは、就活の途中参加であったが、初めから参加できるので、希望職種から内定を
得る可能性が高くなってきた。
また、企業側はグローバル人材を求めており、海外留学生は有利になることは間違い
ない。
したがって、従来の就活生にとって強力な競争相手になり、学生の競争は激化する。
6)卒業ぎりぎりの内定が増加
10月1日までに内定を獲得できなかった学生は、卒業までの6ケ月間で第二の就活をし
ていたが、内定式がずれ込むと活動期間が3ケ月間と半減し、短い期間に中小企業の選
考が集中することになる。
したがって、最終的には、卒業ぎりぎりで内定を取る学生が増加することと、卒業までに
決まらなかった学生が増え、ニート・フリーターが増加することになる。
7)採用手法の変化
短い期間に採用選考しなければならないことから、①書類選考がより厳しくなる、②学
生との関係が希薄化するのでリクルーター制度がさらに復活する、③ターゲット校を設
定する企業が増加する、などの変化が予想される。
8)予想される具体的な動き(その他)
①企業合同説明会は4年生向けに
現在3年生を中心に実際されている就活ナビ企業が開催する「企業合同説明会」は、
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4年生対象に変更される。
②4年生のアルバイト&旅行が減少
春休みに就活解禁、夏休みに選考解禁になり、就活が卒業まで続くので、休み期間の
4年生のアルバイトや旅行は減少する可能性がある。
したがって、単位取得やアルバイト・旅行は3年生のうちに済ませることが必要にな
る。
③インターンシップ実習企業の減少
8月は、3年生のインターンシップ実習と4年生の選考活動が重なるため、インターンシ
ップ実習を取りやめる大手企業が増える。
一方、中小企業はインターンシップ受入で知名度を上げることが可能になる。
④冬休みのインターンシップも可能に
現在、冬休みに就活解禁となり、企業にとって広報活動に追われている。
新しい制度では、冬休みは、大手企業の採用活動が一段落するので、インターンシッ
プ開催時期として考慮する企業も出てくる可能性がある。
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【4】想定されるビジネスチャンス
1)大学向け
①低学年に向けたキャリア教育の充実
就活が大学4年生からになるので、大学1年生から3年生までの3年間を通して一貫した
キャリア教育が可能になる。
文部科学省も、余った時間の有効活用として、海外留学の促進と体制整備、大学 1 年から
の職業体験によるキャリア教育を薦めている。
したがって、大学3年間のキャリアスケジュールの提案や冬休みのインターンシップ提案、
さらには、低学年向け社会塾などは、さらに拡大するものと考えられる。
②インターンシップ前後プログラムの提案
現在は、8月のインターンシップに関して、事前プログラムは4か月間、事後プログラムは
9月からの3か月間とされてきたが、新しい制度になると、事前プログラムは4か月間、
事後プログラムは6か月間となり、3月まで6か月間モチベーションを維持するための新
たな取り組みが必要になる。
したがって、前後含めたインターンシップの年間計画が必要で、特に後半のメニューは
いろいろと提案できる可能性がある。
2)企業向け
①中小企業の採用コンサル
現在進めている「4年生を対象にした第二就活コンサルティング事業」は、中小企業の採
用活動期間がさらに短縮されることで、今後ますますニーズが高まると考えられる。
3)大学生向け
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①大学生向けサポート企業へのアプローチ
今回の変更について、現在、大学2年生と保護者の不安が増大している。
大原学園などの資格取得サポート企業と連動して、「2016年問題」と題して、大学2年生
と保護者向けに講演などを提案することが出来る。
②大学生へのアプローチ
就活解禁前の3年生の冬休みは、色々なことに活用できる期間となる。
したがって、この期間を活用しての「就活直前塾(仮称)」などの大学生向けセミナーや
大学生と社会人の交流会なども企画実施できると考えられる。
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大学
大手
企業
中小
企業
大学
大手
企業
中小
企業
5月
⼤学3年⽣
4月
6月
6月
・3年前期スタート
5月
⼤学3年⽣
4月
・3年前期スタート
7月
7月
8月
9月 10月 11月 12月 1月
・冬休み
・3年後期スタート ・企業合同説明会
・夏休み
・就活解禁
・冬休み
9月 10月 11月 12月 1月
・インターンシップ
8月
・3年後期スタート
・夏休み
・インターンシップ
2月
2月
3月
5月
⼤学4年⽣
4月
5月
6月
6月
・4年前期スタート
4月
⼤学4年⽣
・選考解禁
・春休み、留学⽣帰国
3月
7月
8月
9月 10月 11月 12月 1月
.冬休み
2月
3月
・卒業
4月
入社
4月
入社
3月
・内定式
2月
入社
9月 10月 11月 12月 1月
・卒業
・採用活動、内定辞退対策
・4年後期スタート
・夏休み
8月
・冬休み
7月
・夏休み
・内定式(予測)
・4年後期スタート
・春休み、留学⽣帰国
・選考開始
・合説 ・4年前期スタート
・就活解禁
・採用活動、内定辞退対策
入社
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