A characterization of extreme norms on R2 新潟大学大学院・自然科学研究科 横山 駿平 (Shumpei Yokoyama) Department of Mathematical Science, Graduate School of Science and Technology, Niigata University 新潟大学・理学部 斎藤 吉助 (Kichi-Suke Saito) Department of Mathematics, Faculty of Science, Niigata University 新潟大学大学院・自然科学研究科 田中 亮太朗 (Ryotaro Tanaka) Department of Mathematical Science, Graduate School of Science and Technology, Niigata University 1 序論 R2 上のノルム ∥ · ∥ が absolute であるとは, 任意の (x, y) ∈ R2 に対して ∥(x, y)∥ = ∥(|x|, |y|)∥ が成り立つことである. また ∥ · ∥ が normalized であるとは, ∥(1, 0)∥ = ∥(0, 1)∥ = 1 が成り立つことである. AN2 を R2 上の absolute normalized norm 全体 の集合とする. ∥ · ∥, ∥ · ∥′ ∈ AN2 と任意の λ ∈ (0, 1) に対して λ∥ · ∥ + (1 − λ)∥ · ∥′ ∈ AN2 が成り立つ. この意味で AN2 は凸構造を持つ. 1988 年に R. Grza,´slewicz [4] は, AN2 の 2 ノルムが端点になることと, 単位球の端点が l∞ の単位球面に含まれることが同値である ことを示した. Bonsall-Duncan [2] は, R2 上の absolute normalized norm を凸関数によって次のよう に特徴づけた. つまり, Ψ2 を max{1 − t, t} ≤ ψ(t) ≤ 1 (t ∈ [0, 1]) を満たす [0, 1] 上の凸 関数の集合とする. このとき ψ(t) = ∥(1 − t, t)∥ で AN2 と Ψ2 は 1 対 1 に対応する. さ らに, 任意の ψ, ψ ′ ∈ Ψ2 , λ ∈ (0, 1) に対して ∥ · ∥(1−λ)ψ+λψ′ = (1 − λ)∥ · ∥ψ + λ∥ · ∥ψ′ が成り立つ. これは凸構造を保存する事を意味する. 最近, 小室-斎藤-三谷 [9] は Ψ2 の観点から AN2 の端点を調べ, 0 ≤ α ≤ 1/2 ≤ β ≤ 1 に対して, 1−t (t ∈ [0, α]), ψα,β (t) = α + β − 1 t + β − 2αβ (t ∈ [α, β]), β−α β−α t (t ∈ [β, 1]). 1 とし, 凸解析的手法を用いることで ext(Ψ2 ) = {ψα,β : 0 ≤ α ≤ 1/2 ≤ β ≤ 1} となる. つ まり, ψα,β の全体が AN2 の端点と同一視できることを示した. 2 上の 2 つの結果は, 背理法を基に示されている. つまり, l∞ の単位球面に含まれない単 ′ ′′ 位球の端点となる ∥ · ∥ ∈ AN2 に対して ∥ · ∥ = (∥ · ∥ + ∥ · ∥ )/2 を実際に構成している. 本論文では, まず斎藤-三谷-小室 [8] の結果を紹介する. その後, ミルマンの定理を用い ることで Grza,´slewicz と小室-斎藤-三谷の結果の直接的な証明が与えられることを示す. 2 AN2 の端点の特徴づけ この節では, 斎藤-三谷-小室 [8] の証明を紹介する. そのために, 次の補題を要する. Lemma 2.1. ψ ∈ Ψ2 とし, φ = 2ψ − ψ∞ とする. (i) ψR′ (1/2) ≥ ψL′ (1/2) + 1 のとき, φ ∈ Ψ2 で, φ + ψ∞ . 2 ψ= となる. (ii) ψR′ (1/2) < ψL′ (1/2) + 1 のとき, φ ̸∈ Ψ2 となる. しかし, s0 ∈ [0, 1/2], t0 ∈ (1/2, 1] に対して, φ0 ∈ Ψ2 で (t ∈ [0, s0 ] ∪ [t0 , 1]), φ(t) φ0 (t) = φ(t ) − φ(s0 ) φ(s0 )t0 − φ(t0 )s0 0 t+ (t ∈ [s0 , t0 ]), t0 − s 0 t0 − s0 を見つけることができる. さらに, φmax = 2ψ − φ0 とおくと, φmax ∈ Ψ2 で ψ= φ0 + φmax 2 となる. 補題 2.1 を用いることで, AN2 の端点の特徴づけを得る. Theorem 2.2. ψ ∈ Ψ2 とすると次は同値である. (i) ψ が Ψ2 の端点. (ii) ∥ · ∥ψ が AN2 の端点. (iii) ψ = ψα,β を満たす 0 ≤ α ≤ 1/2 ≤ β ≤ 1 が存在する. 2 Proof. (i) ⇔ (iii) を見ればよい. ψ を Ψ2 の端点とする. ψR′ (1/2) ≥ ψL′ (1/2) + 1 のとき, 補題 2.1 より φ + ψ∞ ψ= , ψ = φ = ψ∞ = ψ1/2,1/2 2 ψR′ (1/2) < ψL′ (1/2) + 1 のとき, 補題 2.1 より ψ= φ0 + φmax , ψ = φ0 = φmax 2 となり, ψ = ψs0 ,t0 を得る. 逆に, ψ = ψα,β となる 0 ≤ α ≤ 1/2 ≤ β ≤ 1 があるとする. 1 ψα,β = (ψ1 + ψ2 ), ψ1 , ψ2 ∈ Ψ2 2 のとき ψα,β = ψ1 = ψ2 ([0, α] ∪ [β, 1]) である. 実際に, 任意の t ∈ [0, α] に対して, ψα,β = 1 − t で max{1 − t, t} ≤ ψ1 (t) である. 1 − t > ψ1 (t) とすると 1 − t < ψ2 (t) となり矛盾を生じる. したがって ψ1 = ψ2 = ψα,β である. t ∈ [β, 1] の場合も同様に示せ る. また, 任意の t ∈ [α, β] に対して, 1 ψα,β (t) = (ψ1 (t) + ψ2 (t)) 2 となり, ψ1 , ψ2 は凸関数より ψ = ψ1 = ψ2 . よって, ψα,β は Ψ2 の端点である. 3 ミルマンの定理を用いた直接的な証明 A をバナッハ空間の部分集合としたとき, co(A) と co(A) をそれぞれ A の凸包と閉凸 包とする. 以下では, E = {ψα,β : 0 ≤ α ≤ 1/2 ≤ β ≤ 1} とする. 証明の本質的な部分は ext(Ψ2 ) ⊂ E を示すところである. また, これを示す上で次の定理が重要な役割を果たす. Theorem 3.1 (Milman の定理). X をバナッハ空間とし, K を co(K) がコンパクトとな るような X のコンパクトな部分集合とすると, ext(co(K)) ⊂ K を満たす. このことから次を示せば十分である. (i) Ψ2 が C[0, 1] でコンパクト, 3 (ii) E が Ψ2 の閉部分集合, (iii) Ψ2 = (co(E)). 上が成り立つとき, ミルマンの定理の結果から直接的に ext(Ψ2 ) ⊂ E を得る. Proof. (i) ψ ∈ Ψ2 をとる. ∥ψ∥∞ = 1 であり, ψ の凸性から, 任意の s, t ∈ [0, 1] に対して, −1 ≤ ψR′ (0) ≤ ψ(s) − ψ(t) ≤ ψL′ (1) ≤ 1 s−t が成り立つ. よって ψ は 1-リプシッツ連続である. したがって Ψ2 は一様有界かつ同程度 連続であり, アスコリ・アルツェラの定理から Ψ2 は C[0, 1] で相対コンパクトである. ここで, (ψn ) を ψ ∈ C[0, 1] に収束する Ψ2 の点列とすると, 任意の s, t ∈ [0, 1], λ ∈ (0, 1) に対して ψ(λs + (1 − λ)t) = lim ψn (λs + (1 − λ)t) n→∞ ≤ lim λψn (s) + (1 − λ)ψn (t) n→∞ = λψ(s) + (1 − λ)ψ(t) が成り立つ. したがって ψ は凸関数である. さらに, 任意の t ∈ [0, 1] に対して max{1 − t, t} ≤ ψ(t) ≤ 1 が成り立つので ψ ∈ Ψ2 となる. したがって Ψ2 はコンパクトである. (ii) 0 ≤ α1 , α2 ≤ 1/2 ≤ β1 , β2 ≤ 1 とすると ∥ψα1 ,β1 − ψα2 ,β2 ∥∞ = max{|(ψα1 ,β1 − ψα2 ,β2 )(α0 )|, |(ψα1 ,β1 − ψα2 ,β2 )(β0 )|} ≤ 2max{|α1 − α2 |, |β1 − β2 |} ここで, α0 = max{α1 , α2 }, β0 = max{β1 , β2 } とする. 実際に, α1 ≤ α2 のとき |(ψα1 ,β1 − ψα2 ,β2 )(α0 )| = |(ψα1 ,β1 − ψα2 ,β2 )(α2 )| ≤ |ψα1 ,β1 (α2 ) − ψα1 ,β1 (α1 )| + |ψα1 ,β1 (α1 ) − ψα2 ,β2 (α2 )| ≤ 2(α2 − α1 ) となる. 同様に β の場合も確かめることができる. これより E の閉性は容易に示される. (iii) すべての区分的線形関数が co(E) に含まれることを示す. n ≤ 3 に対して n 本から なるすべての区分的線形関数が co(E) に含まれることは容易にわかる. n ≥ 3 に対して n 本からなるすべての Ψ2 の元が co(E) に含まれるとする. このとき n+1 本からなる任意の 関数 ψ がまた co(E) に含まれることを示す. ψ の成分である 4 本の連続した線分をとる. その線分を左から m1 , m2 , m3 , m4 とする. li を mi を含む直線全体とする. Pi = (ti , ψ(ti )) を直線 li と li+1 の交点とする. ここで l1 , l4 の交点 (t0 , l1 (t0 )) は t0 ∈ (t1 , t3 ) であることに 注意する. ψ (1) を [t1 , t3 ] の外側で ψ と一致し, [t1 , t3 ] で, 線分 [P1 , P3 ] で与えられるものと する. さらに ψ (2) を t2 < t0 のとき [t1 , t3 ] の外側で ψ と一致し, [t1 , t3 ] で, [P1 , (t2 , l1 (t2 ))] と [(t2 , l1 (t2 )), P3 ] の 2 つの線分で与えられるものとする. また, t2 ≥ t0 のとき, [t1 , t3 ] の 外側で ψ と一致し, [t1 , t3 ] で, [P1 , (t2 , l4 (t2 ))] と [(t2 , l4 (t2 )), P3 ] の 2 つの線分で与えられ るものとする. 4 t1 t2 t0 t3 そのとき ψ (1) と ψ (2) は n 本からなる線分であり, ψ はそれぞれの凸結合で表すことが できる. したがって ψ ∈ co(E) が示せた. 最後に Dini の定理により区分的線形関数が Ψ2 で稠密であることがわかる. したがっ て, Ψ2 = co(E) を得る. 参考文献 [1] J. Alonse, Any two-dimensional normed space is a generalized Day-James space, J. Inequal. Appl., 2011, 2011:2, 3 pp. [2] F. F. Bonsall and J. Duncan, Numerical ranges II, Cambridge University Press, Cambridge, 1973. [3] R. Grza,´slewicz, Extreme symmetric norms on R2 , Colloq. Math. 56 (1988), 147–151. [4] R. Grza,´slewicz, Extreme norms on Rn , Monatsh. Math. 110 (1990), 257–259. [5] N. Komuro, K.-S. Saito and K.-I. Mitani, Extremal structure of the set of absolute norms on R2 and the von Neumann-Jordan constant, J. Math. Anal. Appl. 370 (2010), 101–106. [6] R. E. Megginson, An introduction to Banach space theory, Graduate Texts in Mathematics, 183, Springer-Verlag, New York, 1998. [7] W. Nilsrakoo and S. Saejung, The James constant of normalized norms on R2 , J. Inequal. Appl., 2006, Art. ID 26265, 12 pp. [8] K.-S. Saito, K.-I. Mitani and N. Komuro, A note on extreme norms on R2 , Hokkaido Math. J. 42 (2013), 1–9. [9] K.-S. Saito, M. Kato and Y. Takahashi, von Neumann-Jordan constant of absolute normalized norms on C2 , J. Math. Anal. Appl., 244 (2000), 515–532. R. Tanaka and K.-S. Saito, Characterization of regular norms on R2 , Nihonkai Math. J., 24 (2013), 103–120 5
© Copyright 2024 ExpyDoc