国際理解と平和

第 3 節 中学3年生
国際理解と平和
気付く、創る、繋げる
石 川 久 美・隅 田 久 文
高 橋 芽衣子・浅 井 希 和
本 間 洋 亮 □
【抄録】 広島研究旅行とリンクした総合人間科の学習において、平和についての理解を深めるとともに、人間関係
の深化も目標とした。研究集録作成やポスターセッションの形での発表に、協力しあって取り組み、互いに学び合
う姿勢を身に付けた。国際理解についての学習が十分だったとは言い難いが、事前学習やフィールドワークを通じ
て、平和に向けて自分達に何ができるか考えることができた。
【キーワード】 グループ学習、フィールドワーク、ポスターセッション
合い、アポ取り、依頼状・質問状作成、平和のリボン作
1.学習のねらい
成、事前学習発表会準備と、順調に進めていた。
中学校3年生の総合人間科は、男女4名ずつ、計8名
広島研究旅行から戻り、礼状送付後は、年度末の総ま
で構成されるグループ学習である。秋に実施される広島
とめである研究発表会に向けて取り組んだ。研究発表
研究旅行との関連から、学年全体の大テーマとして、
「国
は、1回5分程度のポスターセッション形式で行われ
際理解と平和」を掲げており、フィールドワーク(以下
た。同時に、研究集録原稿の作成も進めた。
FW)先も、原爆の被害や影響に関連する機関が多い。
FW を広島で実施することにより、生徒の興味も原爆に
【一年間の授業日程】
向けられる。今後の平和を担う世代として、戦争につい
回
ての知識を広く得るとともに、国際的な平和についての
1
4月 17 日 年間計画提示
考えを、同じ世代の仲間たちと共に深めていくことも目
2
4月 18 日
ダイヤモンドランキング
戦争をなくすための9つの方法
3
5月2日
事前学習 戦争と原爆について
4
5月 16 日 戦争証言者講話(ピースあいち)
5
5月 30 日 個人研究発表準備
6
6月6日
日
標に、「気づく、創る、繋げる」というサブテーマを設
定した。
①気づく
現在の平和の尊さに気付く。
平和維持のために必要な努力に気付く。
夏休み課題
②創る
7月
次世代の若者として、日本だけでなく、国際的な
7
平和を創る。
平和維持のために何ができるか、学習した事柄か
ら、自分の意見を創る。
個人研究発表会、グループ編成
個人レポート作成、FW 候補地調べ
杉原千畝記念館、リトルワールド
グループテーマ決定、FW 候補地の研究、
9月 19 日
アポ取り準備
8 10 月 10 日 アポ取り、事前学習、平和のリボン作成
9 10 月 24 日
③繋げる
授業内容
アポ取り完了、依頼状作成、質問事項の確
認、事前学習発表会準備
10 10 月 31 日 事前学習発表会、平和のリボン披露
国際的な平和を維持し、未来へと繋げる。
グループ活動を通して、人間関係を繋げる。
11
2.授業の取り組み
研究旅行
11 月 14 日
FW、被爆証言者講話、広島平和記念資料
∼ 16 日
館見学、毒ガス資料館(大久野島)
お礼状送付、集録原稿執筆、FW 研究発表
準備
当年度は校舎改修工事が行われ、夏休み前に、戦争に
12 11 月 21 日
ついて十分な学習時間を確保することができなかった。
13
そのような中でも、個人で興味を抱いたテーマについて
14 12 月 12 日 FW 研究発表会準備
調べ、FW 先候補地を挙げるという課題に取り組み、夏
15
1月 30 日 FW 研究発表会
休み明けにはグループで意欲的に話し合いを進める様子
16
2月 13 日 ダイヤモンドランキング再び、まとめ
が見られた。テーマ及び FW 先決定後は、班員で分担し
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12 月5日 集録原稿下書き完成、FW 研究発表会準備
名古屋大学教育学部付属中・高等学校紀要 第 59 集(2014)
当年度はグループ分けをくじで行った。普段は親しく言
反映されているものと思われる。
葉を交わさないクラスメイトとも、テーマの擦り合わせや
このように、平和についての理解を深めることにも意
役割分担等、話し合う機会を持ち、人間関係を広げるこ
義深かった総合人間科だが、FW に向けたグループ活動
とを学んでほしいというねらいがあってのことである。
を通じて、クラスメイトの新たな側面に気付き、従来と
是非お話を伺いたいという強い希望のもと、FW 先か
は異なる人間関係を築くという点においても成果があっ
ら決定し、それに合わせてテーマを設定する班もあれば、
たように感じる。
班員で話し合い、練り上げたテーマに適当な FW 先がな
かなか見つからず、苦労する班や、時間の制約がある
中、意欲的に二か所での FW を希望する班もあった。
【各班のテーマとフィールドワーク先】
回
1
テーマ
フィールドワーク先
Damage of the
広島県原爆被害者団体協議会 Atomic Bomb
2 原爆と中学生
広島県動員学徒等犠牲者の会
3 被爆者とその子供
広島県平和記念資料館
志賀賢治さん
広島県原爆被害者協議会
原田浩さん
広島 SOUL!!!
4 ∼ヒロシマが世界に 広島市役所平和推進課
伝えたいこと∼
5
原爆投下直後に被爆 広島赤十字社
者支援をした人々
広島赤十字原爆病院
6 広島の復興
広島大学大学院総合科学研究科
布川弘さん
平和
広島市立大学 広島平和研究所
7 ∼アメリカから見た
高橋博子さん
原爆投下∼
8 幸せを奪った原爆
広島大学平和科学研究センター
川野徳幸さん
9 戦後の日本の様子
広島市立大学 平和研究所
桐谷多恵子さん
10
人々の第二次世界大
広島市留学生会館
戦に対する認識
3.成果と課題
大テーマ「国際理解と平和」を掲げた中学校3年生の
総合人間科における学習で、「平和」についての理解を
深めることができた。やはり、広島研究旅行での体験は
非常に貴重なものとなっているようである。一方、「国
際理解」については、事前学習の時間を確保することが
難しかったため、学びの機会を十分に提供できたとは言
い難い。この点、今後の課題である。
しかしながら、第2回及び最終回に実施したダイヤモ
ンドランキングに対する生徒の反応は、こちらの想像を
超えるものだった。戦争をなくすための方法として、第
2回に実施した際はそれほど高順位をつけなかった「平
和についての身近な人との会話」や「平和教育」に注目
する生徒が、最終回実施時においては明らかに増加して
いた。一年間の学習活動が、平和な世の中を創り繋げる
ことに効果的であるという、自身の体験に基づく考えが
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(文責:高橋芽衣子)