"花のソコが知りたい!"カラー編

品質カイゼン室の
カラー
花のソコが知りたい!
編
基本データ
サトイモ科 オランダカイウ属(ザンテデスキア属)
和名:カイウ(海芋) 海外からきた里芋の意味。
ザ・アエティオピカ種は“オランダカイウ”と呼ばれる。江戸時代末期に国交のあった
オランダから渡来したのが和名の由来といわれている。
俳句では「海芋」が夏の季語。水芭蕉やアンスリウムも仲間。
原産地:南アフリカ地方
現在園芸用に利用されているのは以下の4種から育種されたもの。好適な生育条件により以下
の 2 種に分けられる。
湿地性カラー
・・・常に水分の豊富な場所を好んで生育する
◯「ザ・アエティオピカ」:仏炎苞は白
現在流通しているのは、ウェディングマーチ、グリーンゴッデス、ドリーミィピンクなど
畑地性カラー
・・・乾いた畑を好んで生育する。
○「ザ・エリオッティアナ」:仏炎苞は黄色
○「ザ・アルボマクラタ」:仏炎苞は白で葉に白斑が入る
○「ザ・レーマニー」:仏炎苞は淡桃色(ミニカラーといわれる小型品種はこの仲間)
現在流通しているのは、HB 系のマジェスティックレッド、ホットチョコレート、ミニカラーといわれる
レーマニー系のクリスタルブラッシュ、ガーネットグローなど
世界には人の背丈ほどもある 巨大カラー
仏炎苞(ぶつえんほう)
もあるそうです。(Zantedeschia Hercules で
葉が変形したものでガクの一種。
検索してみてください!!)
花びらのような役割をもつ。
雄花
雌花
肉穂花序(にくすいかじょ)
本当の花で小花が集まっている。
上部が雄花で下部に雌花が存在する。
栽培管理
湿地性カラー・・・田んぼのような水をはった圃場で栽培しています!
花芽の発達のために夏季に比較的涼しい条件が好ましく、
地下水の低温条件が花芽の発達のために好適!
冬の低温は花芽の発達や開花を抑え、春温暖になってからの一
斉開花につながりやすい。しかし、外気温より暖かい地下水が流
れ、ビニルハウス等での被覆による保温効果で冬季でも開花!
地下茎で増殖し、株分けするもの意外は基本的に堀り上げない。
地下水 温度は年間通し
水分を非常に好むため、地下水が豊富に出る場所であること
て一定(15℃前後)
が必須。
畑地性カラー・・・畑で栽培しています!
冬季の強い低温には弱く、0℃かそれ以下の温度に塊茎が遭
遇すると枯死してしまう。そのため球根を掘りあげる。
早春 の根付前に再度球根を消毒、
のちにジベレリン処理。ジベレリン処
理により花芽が分化し切花率が上が
る。
輸入品の入荷は一年中
※↑6月開花の場合。産地により前後する。
地下に塊茎を形成し、冬は休眠して春に芽を出し、初夏に開花する。
乾燥した畑の状態で生育し、特に夏冷涼な場所でよく発育する。
堀り上げられた球根は乾燥さ
せたのち、消毒。次年度の定植
にむけて冷蔵保存される。
病気
~カラーの大敵!軟腐病とは?~
この病気特有
畑地性カラーで多く発生!
の異臭!
病原菌:Erwinia (エルウィニア)
生育温度 : 平均2~41℃
【 20~35℃で発病、32~3
5℃前後で気温の上昇とともに
組織が分解し、腐敗!
激しく増加 】
茎がドロドロに!!!
※市場内で発見された軟腐病に侵されたカラー
Erwinia は土壌中に生息し、繁殖力が非常に強い。地表近くの葉上で増殖し、病原菌がある程度
増殖すると、茎や葉の気孔や、水孔、管理作業中に生じた小さな傷口から組織中に侵入し、そこ
でさらに増殖する。
症状として、地際の葉柄がおかされ、酷くなると球根まで軟化腐敗する。
このため、生産現場では球根の掘り上げ、植え付け時の消毒を徹底し、輪作や球根の貯蔵法、土
壌水分、地温、薬剤散布など、球根と栽培全般にわたって防除措置が講じられています。
日持ち
湿地性カラー
・・・適切に前処理されると、常温で一週間程度の日持ち
畑地性カラー
・・・品質保持剤を使用しなくても一週間以上の日持ち
※ 適切な前処理とは?⇒産地での前処剤(ベンジルアミノプリン)の浸着処理、あるいは散布処
理のこと。
前処理剤の効果はどれくらい?? 湿地性カラーの日持ち試験を実施しました!
日持ち試験 結果
湿地性カラー
品種:ウェデイングマーチ(前処理なし)
環境条件
試験室 A:平均温度 25 度、湿度 60%前後
水・切り花栄養剤・フィニッシングタッチ・ミラ
クルミストの4区分
(今回は前処理をしていないカラーにフィニッ
初日の様子
シングタッチ・ミラクルミストを使用し水で試験
しました。)
試験室 B:平均温度 19.3 度
前処理なし、水の1区分
結果
区分
水
切り花栄養剤
フィニッシングタッチ
日持ち日数平均
5日
区分では仏炎苞の
4.6 日
外側から茶色く変色
7日
ミラクルミスト
6.2 日
試験室 B
6.4 日
------------------------------試験
水
水と切り花栄養剤の
しています。
触るとカサカサ!
5 日目---------------------------切花栄養剤
フィニッシングタッチ
ミラクルミスト
試験室 B
今回の実験では、フィニッシングタッチ、ミラクルミストの区分は水に比べて 1~2 日間長く、約一週
間花を楽しむことができました。切り花栄養剤の有無で日持ち期間に差は見られませんでした。ま
た、試験室 B では6日間花を楽しむことができました。
日持ち終了は仏炎苞の外側の茶変色によるものでした。
前処理をしていない湿地性カラーは、お花屋さんでフィニッシングタッチやミラクルミストでお花をコ
ーティングすることで日持ち延長効果があるようです。また、室温も低い方が長く花を楽しめるよう
ですね。
前処理は湿地性カラーに特に有効です。前処理を行うことで仏炎苞からの蒸散が抑えられより長
くお花を楽しんでいただけます!
3月14日はホワイトデーですね。「愛情」「情熱」などが花ことばのカラー。
バレンタインのお返しに真っ白なカラーはいかがでしょうか?
参考文献
坂本尚(1995) 『農業技術大系 花卉編 第 10 巻 シ
クラメン/球根類』 農文協
農研機構 花き研究所『日持ち保証に対応した切り花
の品質管理マニュアル』
(株)大田花き 品質カイゼン室