第1章 基本的な考え方 基本的人権の尊重は、日本国憲法の最も重要な理念の一つであり、第11条では「基本的人権は 侵すことのできない永久の権利」と明記されています。 しかし近年、社会のめまぐるしい情勢変化や、社会構造の複雑化、価値観の多様化などの中で、 さまざまな人権課題が生じており、人権が尊重・擁護され、差別のない社会を実現するためには、 市民一人ひとりの人権意識を高め、人権問題を正しく認識・理解するとともに、自らの課題として 取り組み、人権教育・啓発の重要性を認識し、積極的に取り組んでいく必要があります。 かほく市では人権教育・啓発を総合的かつ計画的に推進するために、この実施計画を策定し、そ の趣旨を踏まえながら、人権教育・啓発の現状と課題を前提に人権の視点に配慮しながら今後の市 政に取り組むものです。 1 計画策定の趣旨 人権に関する問題は、高齢者、女性、子ども、障がい者、同和問題、外国人など多岐の分野にわ たり、その背景や経緯が多様なため、本市においてもそれぞれの分野で個々に取り組んでいます。 しかし、このように多様な人権問題を解決・解消していくためには、あらゆる人権が尊重され、 差別や偏見のない地域社会づくりを総合的に進めていくことが必要です。 こうした地域社会の実現に向けて、行政と市民が一体となって、家庭、地域社会、学校、職場な どさまざまな場における人権教育・啓発を推進するため、本市の基本的考え方、各分野での現状と 課題、それに対する具体的な取り組みなどを明らかにし、連携しながら人権教育・啓発に関する施 策を推進していくための指針として策定するものです。 2 計画の目標 かほく市民憲章にも掲げているとおり、 子どもが健やかに生まれ育ち、夢とやすらぎのあるまち、 さらに、世界の人々と手をつなぎ、心の通うあたたかいまちづくりが求められています。市民一人 ひとりの人権が尊重され、差別や偏見をなくし、差別を受けた人の痛みや、見えない差別に苦しむ 人のつらさをお互いに共感できるような思いやりの心をはぐくみ、その実現をめざして、人権教育・ 啓発を推進するとともに、人権に関する課題に市をあげて取り組み、市民が人権の意義やその重要 性について、十分認識し、人権尊重の大切さが自然に社会に築かれるよう、人権教育・啓発を推進 し、市民生活の中に定着させていくことを目標とします。 3 計画の期間 この計画は、平成27年度から平成31年度までの5年の実施計画とします。ただし、施策の実 施状況を検証しながら、事業遂行上の必要に応じて見直しを行います。 1 第2章 策定の背景 1 世界の動き 私たちは、二度にわたる世界大戦を経験し、平和と人権が、いかにかけがえのないものであるか を学びました。昭和 23(1948)年の第 3 回国連総会(パリ)において世界人権宣言が採択されて以 来、この宣言を具体化するため、多くの人権に関する規約や条約が採択され、人権の尊重に向けた 国際的な努力が続けられてきました。 しかしながら、東西冷戦の終了後においても、各国間・国内での民族対立や民族紛争により、人 権や民主主義を脅かすさまざまな問題が多発し、多くの犠牲者が出ているのが現状です。 こうしたことを受け、人権尊重の潮流が世界的に急速に高まり、平成 6(1994)年の第 49 回国連 総会において、平成 7(1995)年から平成 16(2004)年までの 10 年間を「人権教育のための国連 10 年」とする決議が採択され、人権という普遍的文化を世界中に構築するための取り組みが開始さ れました。 2 日本の動き 我が国では、昭和 21(1946)年に、 「国民主権」 「平和主義」とともに「基本的人権の尊重」を理 念とする日本国憲法が公布されました。そして、国際社会の一員として、国際人権規約を始めとす る人権に関する諸条約を批准、締結し、人権尊重の取り組みが進められてきました。 一方、我が国固有の人権問題である「同和問題」については、度々の立法措置が講じられたこと により、生活環境は一定の改善がなされてきましたが、現在においても結婚や就業に際して差別事 象が見られるなど、依然として問題が存在しています。 平成 9(1997)年 7 月には「人権教育のための国連 10 年」に関する国内行動計画がまとめられ、 この計画に掲げられた諸施策の着実な実施等を通じて人権教育の積極的な推進を図ることとされま した。 さらに、平成 12(2000)年 12 月には、 「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が施行され るとともに、同法に基づき平成 14(2002)年 3 月に、「人権教育・啓発に関する基本計画」が策定 されたところです。 3 石川県の動き 石川県では、国内行動計画に示された人権教育の基本的な考え方に沿って、 「県民が人権の意識や その重要性について、十分認識し、人権尊重が当たりまえとなる社会が築かれるよう、人権教育を 推進していくため」 、平成 12(2000)年 3 月に、人権教育のための国連 10 年「石川県人権教育・啓 発行動計画」を策定し、人権教育・啓発の一層の推進が図られてきました。 平成 15(2003)年に実施した「人権問題に関する県民意識調査」の結果を踏まえ、平成 17(2005) 年に見直しされた「石川県人権教育・啓発行動計画」が策定されるとともに、平成 27 年 3 月にはこ の 10 年間の社会的環境の変化を踏まえ、 本計画が改定され、人権が尊重される社会の実現に向けて、 人権教育・啓発に関する施策を総合的かつ計画的に推進することとされました。 2 第3章 基本的な視点 かほく市において、この計画の策定及び推進にあたっては、次のことを基本的な視点とします。 1 市民が主体となる人権教育・啓発 人権が尊重される社会は、市民一人ひとりの努力によって築き上げられるものです。そのために は、市民が自ら人権尊重社会確立の担い手であることを認識し、人権教育・啓発に主体的に取り組 むことが重要です。 このような観点から、多様な学習機会や啓発、情報の提供など市民が人権教育・啓発に取り組み やすい環境づくりを推進します。 2 あらゆる場を通じた人権教育・啓発 人権問題は、市民すべてにかかわる問題です。こうしたことから、人権教育・啓発は、市内のあ らゆる場を通じて、また、市民一人ひとりの生涯の中で、さまざまな機会で実施されることにより、 その効果を上げるものです。そのため、市民が生涯を通じて学習できるような取り組みを推進しま す。 3 実践できる人権感覚が身に付く人権教育・啓発 人権教育・啓発は単に知識の伝授にとどまるのではなく、その成果として人権感覚が市民の身に 付くよう、創意工夫を凝らした人権教育・啓発を推進します。 4 思いやりの心が通う人権教育・啓発 市民が異なった文化や習慣、また人の考え方を理解し、人権が共存し、相互に尊重し合う心をは ぐくみ、「思いやりの 心が通う あたたかいまち」かほく市が実現するよう十分配慮した人権教 育・啓発を推進します。 第4章 配慮すべき人権問題 1 男女の人権(男女共同参画の推進) 男女が社会の対等な構成員として、あらゆる分野で共に参画する機会が確保され、共に責任を分 かち合うことのできる環境をつくるため、男女平等や人権尊重の視点に立った意識改革と学校、家 庭、地域での男女平等教育の実現を目指し施策を推進します。 ①男女共同参画のための環境・意識づくり ②配偶者及びパートナー等からの暴力の防止や被害者保護対策の充実 ③職場・家庭・地域における男女共同参画の実現 ④国際社会を視野に入れた男女共同参画の推進 3 2 子どもの人権 未来のかほく市を担う子どもたちの、すこやかな成長と、夢の実現に向け、いじめや不登校、ま た、児童虐待などの子どもの人権侵害行為を早期に発見し、子どもとその保護者に対し適切な支援 を行ないます。それにより権利を享受し、行使する一人の人間として尊重される社会の実現をめざ し施策を推進します。 ① 「かほく市いじめ防止基本方針」の推進 ② 学校教育等を通じた、人権を大切にする心を育てる教育・啓発 ③ 地域協力による子どもの健全育成 ④ 子どもの人権の尊重 3 高齢者の人権 高齢者の人権について、認識と理解を深めるため、地域社会の良好な人間関係に根ざした互助環 境の醸成を支援し、社会教育として多様な学習機会の場で人権尊重の意識を高める教育に取り組み ます。また、相談体制の整備、充実を図り、成年後見制度等の権利擁護の活用を推進します。 ① 高齢者虐待防止の推進 ② 高齢者に対する尊敬や感謝の心を育て高齢社会に関する理解を深める教育・啓発 ③ 高齢者の社会参加の促進 ④ 介護サービス等の基盤整備 4 障がいのある人の人権 障がいのある人に対する偏見や差別意識を解消し、障がいのある人が生涯の各段階において、就 業、学習、趣味、文化活動などで、自己の意思と能力に応じて社会参加できるよう、機会の均等化 と平等の実現に取り組み、学校教育、地域教育等を通じて、障がいと障がいのある人に対する理解、 社会的支援や介助、福祉の問題などの課題に関する理解を深める教育を推進します。 ① 障がい者虐待防止の推進 ② 障がいと障がいのある人についての理解を深める教育・啓発 ③ 障がいのある人の社会参加の促進 ④ 障がいのある人の地域支援施策の充実 5 同和問題 日本の歴史的過程において、身分的差別によって一部の人々が経済的、社会的、文化的に差別を 強いられてきた問題について、その差別意識の解消に向け、市民の正しい認識と理解が深まるよう 人権教育等の施策を推進します。 ① 差別意識解消に向けた人権教育・啓発の充実 ② 公正な採用選考システム確立への支援 ③ えせ同和行為の排除 4 6 外国人の人権 さまざまな分野における国際化の進展に伴い、日本に滞在する外国人の数も年々増加しており、 今後、さらに在住外国人の増加が予想される中、私たち市民一人ひとりがお互いの歴史、宗教、文 化、生活習慣などの違いを理解し、認め合い、差別や偏見を解消し、国際的視野に立って、それぞ れの人権を尊重することを推進します。 ① 異文化尊重の教育・啓発 ② 多文化共生社会の推進 ③ 多様な国際交流の促進 7 HIV感染者・ハンセン病患者・元患者等の人権 私たち一人ひとりが正しい知識と理解を深めると同時に、病気や患者、元患者、その家族に対す る偏見や差別を解消し、安心して医療を受け、暮らすことのできる社会づくりや理解を深めるため の広報、啓発活動を推進します。 8 アイヌの人々の人権問題 アイヌの人々の文化や伝統について正しい認識と理解を深め、アイヌの人々の民族としての誇り が尊重される社会の実現を目指す人権教育・啓発活動を推進します。 9 インターネットによる人権侵害と個人情報の保護 インターネットの利用者は、利用にあたり守るべき事項、人権の尊重や個人情報保護の重要性等 を十分に認識し、そのモラルを身に付けて利用する必要があります。 個人のプライバシーや人権に対する正しい理解を深めるため、関係機関と連携した人権尊重の教 育・啓発を推進し、情報化が社会にもたらす影響や、情報モラルについて利用者の理解が図られる よう教育を推進します。 10 刑を終えて出所した人、犯罪被害者その他の人権問題 刑を終えて出所した人に対する偏見や差別、犯罪被害者に対する人権の擁護、同性愛者や性同一 性障害者に対する差別意識、ホームレス対策など、さまざまな人権問題があります。これらは、偏 見や差別、中傷やうわさなどに起因しており、それを日常生活の中で安易に受け入れる意識や態度 が、差別を助長する一因と考えられます。固定的な先入観を排除し、市民の一人ひとりがさまざま な状況で人権が脅かされていることを認識し、人権問題について正しい知識と理解を深め、偏見を なくし共に生きる立場から、一人ひとりの人権が尊重される社会の実現に向けた人権教育・啓発を 推進します。 5 第5章 人権への取り組み 1 教職員・社会教育関係者 ・教職員の人権に対する意識を高め、教育実践のために学校内外での研修体制を確立し、より 系統的な研修を推進します。 ・人権教育において、 児童生徒一人ひとりの学力や生きる力を育むことが重要であることから、 個々に応じた指導と評価が行える指導力の向上を図ります。 ・いじめ、不登校等の傾向を踏まえ、効果的な研修のあり方について検討し、生徒指導との関 連を強化していきます。 ・社会教育関係者には、人権を尊重し、人権問題の理解と認識を深めるよう、人権教育の充実 に努めます。 2 医療・保健医療関係者 ・医療・保健関係の業務に従事する者には、患者のプライバシーを守り、人権に対する意識を 深めるよう働きかけ、資質の向上を図ります。 3 福祉関係者 ・福祉関係者には、個人の人格の尊重、プライバシーの保護及び公正公平な対応など、職場の あらゆる場を通じて人権啓発を実施するよう、関係団体、関係者等に働きかけ、関係従事者 の資質の向上を図ります。 4 市職員 ・市職員には、日本国憲法に定める基本的人権の尊重と公務員としての使命を遵守し、職員一 人ひとりが、人権についての意識の高揚を図ります。 ・人権に対する理解と認識を深め、豊かな人権感覚を身に付けた職員を育成するため、効果的 な研修に努め、人権尊重の視点に立った職務の遂行と市民サービスの向上を図ります。 5 マスメディア関係者 ・新聞、テレビ等のマスメディア関係者においては、人権問題に関する掲載など、大きな影響 力を持つことから、人権尊重のための自主的な取り組みが行なわれるよう働きかけます。 ・市広報誌、ケーブルテレビにあっては、市民への人権擁護啓発媒体として有効であることか ら、さまざまな情報の発信を行ないます。 6 第6章 人権教育・啓発事業の推進 「かほく市総合計画」や「かほく市住生活基本計画」等を遵守し、あらゆる場(就学前、学校、 家庭、地域、企業など)を通じ、また、年代やさまざまな対象者に応じ、さらに、人権擁護委員や 各種関係する団体などと連携し、効果的な人権教育・啓発事業の推進を図るため、次のとおり実施 します。 1 就学前における人権教育 就学前は子どもたちにとって、生涯にわたる基礎的な人間形成がなされる大切な時期であること から、乳幼児のすこやかな成長と豊かな心を育み、子ども一人ひとりの人権を尊重した教育を行な うため、かほく市次世代育成支援行動計画「後期行動計画」を遵守し推進します。 地域における子育て支援サービスを充実させ、子どもの遊び場等の提供や子どもが安全に暮らせ る環境を整備し、また、電話や面接等でも、育児相談ができるサービスなど、育児の不安を軽減し、 子育てに関する正しい情報を提供し、保護者が安心して子育てできるよう努めます。 ・子育て支援のネットワークづくり ・子育てカウンセリング、育児相談 ・子育てお役立ちブックの配布 2 学校における人権教育 学校においては、行政とも連携して人権教育の体制を構築するとともに、児童・生徒が人権尊重 の精神を正しく身につけ、差別や偏見のない人権問題への正しい知識と認識を持ち、発達段階に応 じた人間関係を築いていけるよう、また、 「かほく市いじめ防止基本方針」等により教育を推進しま す。 ・人権擁護委員による小学校での人権教室(学校教育課、小学校連携) ・人権擁護委員による人権の花運動(学校教育課、小学校連携) ・人権擁護委員による中学校での啓発(学校教育課、中学校連携) ・小中学校における人権教育研究推進事業等の実施 3 家庭・地域社会における人権教育・啓発 家庭においては、幼児期からの基本的な生活習慣を身につける重要な役割があります。親や祖父 母などが差別意識や偏見を持たず、暴力や虐待などの人権侵害のない環境の中で子どもに接するこ とが大切です。 また、地域社会においては、子どもを「地域の子」として認識し、すこやかな成長を願って、子 ども一人ひとりの人権を尊重し、あたたかく受け入れ、見守っていくことが重要です。 地域社会に存在する人権問題に対し、地域の実情に応じた情報提供や学習の機会を提供し、人権 教育や人権啓発が充分に発揮されるよう、さらに、「かほく市教育振興基本計画」や「かほく市男 女共同参画行動計画」に基づき、各年代を考慮した教育・啓発を推進します。 7 ・人権週間の周知(ちらし全戸配布) ・人権啓発キャンペーン(年2回人権擁護委員活動) ・心配ごと相談(社会福祉協議会、民生児童委員、人権擁護委員、行政相談委員連携) ・人権に関する映画上映会(男女共同参画連携) ・懸垂幕、のぼり旗の掲示(人権擁護委員及びかほく市司法行政委員連絡協議会連携) ・人権擁護委員の啓発活動への支援 ・姉妹都市交流事業、国際理解教室、多文化共生社会推進事業の実施 ・男女共同参画啓発講演会の実施 ・パープルリボンキャンペーン※の実施 ※配偶者等からの暴力(DV)は犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害であることを広く周知し、暴力を許さな いという意識を社会全体で醸成するため、内閣府が定めた「女性に対する暴力をなくす運動」 4 企業・職場等における人権教育・啓発 企業や職場における行動や活動は、市民の生涯生活にも深く関わっており、大きな影響力があり ます。企業の雇用や労働条件などの均等が図られる人権擁護活動を推進し、男女共同参画社会の実 現や、さまざまな人権問題等を排除し、一人ひとりの人権が尊重され、働きやすい企業づくりを推 進します。 ・人権啓発・教育への支援 第7章 資料編 1 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律 2 第2次かほく市総合計画(2016~2025) 3 かほく市消費者教育に関する啓発実施計画 4 かほく市子ども・子育て支援事業計画 5 かほく市教育振興基本計画 6 かほく市いじめ防止基本方針 7 かほく市男女共同参画行動計画 8 かほく市住生活基本計画 9 かほく市営住宅長寿命化計画 8 発 行:かほく市 市民部 市民生活課 発行年月:平成27年3月 〒929-1195 石川県かほく市宇野気ニ81番地 TEL:076-283-1116 FAX:076-283-1115 9
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