最 新 情 報 事務局だより このコーナーでは国際的でホットな話題を,海外雑誌・関連ウェブサイトなどから紹介していきます。世界 規模で日々更新される情報量に比べれば,一人の理学療法士は葦(あし)のような小さな存在かもしれま せん。しかし理学療法士は,みずから考え学んでいく専門職「A Thinking Reed(考える葦)」です! ! 国連「障害者の権利に関する条約」の批准 学会・研修会等 外務省ホームページ http://goo.gl/iVuTj0(障害者の権利に関する条約) 1 月 20 日,国際連合の「障害者の権利に関する条約」を日本が批准しました。この条約は,障害者の人権や基本的自由の ための措置等を規定しており,この条約の締結によって日本での障害者の権利の実現に向けた取り組みが一層強化され,人権 投 稿 尊重についての国際協力が一層推進されることになります。この「障害者の権利に関する条約」は 2006 年の国連総会で採択 されたものですが,日本は国内の法律などの整備を経て,この度の批准に至り,世界では 140 番目(EU を含めると 141 番目) の批准国となりました。この条約の原文を日本語と英語で外務省のホームページで見ることができます。 オリンピック・パラリンピック 理学療法士の役割 役員メッセージ ロンドンオリンピック・パラリンピックで活躍した イギリス理学療法士協会ホームページ http://goo.gl/5dvC2g 72 名の声 本誌が会員の皆様のお手元に届く頃には,ソチオリンピック・ パラリンピック共に閉会を迎えているかと思います。6 年後に は 2020 年東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。 日本中の理学療法士一人ひとりができることを意識し,盛り上 げていきたいと思います。 前回 2012 年ロンドンオリンピック・パラリンピックでは 470 人の理学療法士のボランティアが活躍したそうです。イギ リスの理学療法士協会では,多数の応募者からオリンピック・ パラリンピックの公式ボランティアとして選ばれた中から 72 人 の理学療法士の声を紹介しています。それぞれの役割や応募動機, オリンピック・パラリンピックでの理学療法士の役割について 社会に与えるメッセージなどが掲載されています。 アメリカのオリンピックチームでの役割 PT in motion Vol.6, No.1, 2014 Feb アメリカ理学療法士協会発行の雑誌 PT in motion 最新号では,今回 2014 年ソチオリンピックに関わった理学療法士の話 が紹介されています。右膝靱帯断裂を負ってソチ出場を断念したバンクーバー五輪アルペンスキー女子滑降金メダリストのリ ンゼイ・ボン選手の話も紹介され,トレーニングを担当した理学療法士は,スキー選手に必要なトレーニングとして,股関節 の屈筋群のストレッチや殿筋・大腿四頭筋の活性化などについて触れています。また,フィギアスケートチームでは,足関節 の捻挫・腱炎,腰痛,股関節屈曲の損傷,鼠径部痛,膝の問題などが多くみられます。ボブスレーチームでは過剰トレーニン グによるハムストリングスや腰部の損傷が見られます。理学療法士には,怪我の急性期の素早い判断や,日々のトレーニング, 健康管理などが求められます。またアスレチックトレーナーなどと協力することも重要です。 34 ● April 2014 最 新 情 報 Disability and Rehabilitation Vol.35, No.24, 2013 “The role of initial physical activity experiences in promoting posttraumatic growth in Paralympic 事 務 局athletes だより with an acquired disability” 本誌では,パラリンピックを目指す 7 名のアスリートの経験談の分析研究から,身体活動の経験により受傷後の人間的成長 (ポスト・トラウマティック・グロース ;PTG)が促進されることが示唆されています。衝撃的な出来事に起因する心身の症状に より,日常生活に支障をきたす「外傷後ストレス症候群(PTSD) 」という言葉に対し,衝撃的な出来事の後,人間として成 長することが最近 PTG と呼ばれます。本研究では,この PTG に着目し,初期の身体活動の役割として心理学的に良い面だ けでなく否定的な面もあるが,障害を認めることで可能性に気付くこと,自分の選択や結果に責任を持つこと,意味づけを再 構築し促進することの 3 点が PTG に影響しているとしています。早期退院に重点が置かれがちな昨今ですが,理学療法士が 学会・研修会等 適切に身体活動や障害者スポーツを紹介することで,患者・対象者の将来が大きく広がる可能性があるのかもしれません。 Physical Therapy Vol.93, No12, Dec 2013(アメリカ) 投 稿 “Shorter Length of Stay Is Associated With Worse Function Outcomes for Medicare Beneficiaries With Stroke” メディケア(アメリカの障害者・高齢者対象の公的保険制度)の変更に伴い在院期間(Length of Stay: LOS)が短くなっていることを背景として,入院リハビリテーション施設における LOS と入院時・退院時の FIM スコアと社会復帰率の傾向と関係性が,65 歳以上のメディケア利用の脳卒中患者 371,211 人のデータ約 役員メッセージ 5 年間を用いて分析されました。コントロール群を置いていないことなどが本研究の限界としてあげられるも のの,結果として在院期間が短い群は退院時機能,入院時機能の平均が低く,在宅復帰率も低い傾向にあるこ とが示されました。メディケア利用者は障害を残したまま退院している可能性があり,退院後の更なるリハビ リテーションの必要性に加え,在宅復帰率を向上させるために(障害の重い患者に在宅で対応可能な)介護者 のトレーニングの必要性が提示されています。 PT in Motion Vol.5, No.11, Dec 2013/Jan 2014(アメリカ) アメリカで行われた閉経後の女性を対象とした研究により,ウォーキングまたはエクササイズが乳がん発症の リスク軽減に寄与することが示唆されました。50 歳から 74 歳の女性 73,615 人を対象とした研究の結果による と,毎日活発な身体活動(ジョギング,水泳,テニスなど)を行う女性において 25%,週少なくとも 7 時間の 歩行を行う女性において 14%の乳がんリスク軽減が認められました。現在のアメリカにおけるガイドラインでは, 中等度以上の強度の運動が推奨されていますが,実際にその強度の運動を行っている女性は半数に満たないこと が報告されています。一方,60%以上の女性が日常的にある程度の歩行を行っていると報告しており,余暇活動 としての歩行を推奨することは閉経後の女性における身体活動量の向上において効果的な戦略である可能性が示 されました。 香港物理療法資訊 Vol.17, No.5, Aug 13/ Sep 2013(香港) 近年のリハビリテーション医療への注目の高まりと,政府による投資の増加に伴 っ て,中 国 に お け る 理 学 療 法 士 養 成 の 卒 前 教 育 が 大 き く 発 展 を 遂 げ て お り, WCPT のガイドラインにある程度は基づいたコースが,現在 9 つに達しています。 現在の中国では,理学療法は中央政府によって認識された専門職ではないものの, Chinese Association of Rehabilitation Medicine(CARM)と WCPT,お よ び非政府団体が協働し,理学療法士を独立した専門職として発展させようと試みて います。WCPT のアジア西太平洋地区の国々が,中国の大学とパートナーシップ を組むことに興味を示しており,すでに国政的な結びつきが確立され始めています。 紙面では様々な取り組みの例が紹介されています。 (西山花生里・大津陽子) JPTA NEWS ● 35
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