Page2015 FFGS セミナーレポート[2] Web 時代のビジネスが向かうところ 富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社 平成 27 年 3 月 10 日 2 月 4 日から 6 日にかけて開催された『page2015』において、富士フイルムグローバルグラフィッ クシステムズ(社長:渥美守弘、以下 FFGS)は、展示会場でのソリューション紹介に加え、「省資 源」「Web to Print」「ワークフロー」に関するソリューションをより深く掘り下げて解説する FFGS セミ ナーを実施した。本稿では、2 月 5 日開催の「Web 時代のビジネスが向かうところ」の概要を紹介す る。 ----富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社 シンプルプロダクツ事業部 事業部長 渡邊泉 ●Web 時代の年賀状 富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(以下 FFGS)の組版エンジンを搭載 したシステムが、さまざまな分野で活用されている。とくに、年賀状作成・印刷サービス では、2014 年(平成 26 年) 、34 億 1,500 万枚の年賀状が発行されたうちの 9%(3 億 1,200 万枚、520 万件)が FFGS シンプルプロダクツ事業部製組版エンジンを使って作成されて おり、年賀状作成・印刷サービスの総需(4 億 5,000 万枚、750 万件)の 69%を占めている。 これらは自動組版ソフトウェア製品『Form Magic4』をベースとしたセミオーダーの独自 システムとして構築されている。 2015 年の年賀状動向を見ると、Web の存在感、とくにモバイルの存在感が高まっている ことがわかる。 Web で年賀状を受注するサイトは、 前年比 103%~130%の増加であったが、 スマートフォンなどモバイル端末からのアクセスが、PC からのアクセスを上回った。 端末の 2014 年度国内出荷見込みは、スマートデバイス 910 万台(前年比 22%増)に対 して、クライアント PC が 304 万台(前年比 20%減)と予測されている。こうした状況か らも、モバイルの重要性が引き続き高まることは間違いない。 ●モバイルファースト モバイル端末の急速な普及を背景に、 「モバイルファースト」という情報の見せ方が定着 しつつある。モバイルファーストとは、2008 年ごろから Google などにより提唱され始め、 2012 年ごろから注目が高まっているもので、以下のような考え方である。 Web サイト立ち上げの際、まずモバイルサイトから作成する。 ビジネス戦略においても、モバイルから考えることが重要。 モバイルとデスクトップの境界を解消、あるいは役割を区別すること。 モバイルファーストの実践にあたり、モバイルデバイスの狭く制約の多い画面に加え、 通信環境、位置、地域性、相互アクセスなどの特徴を考慮しつつ、 「同一コンテンツを上手 く見せる」ことが必要となる。このため、「コンテンツ」と「見せ方」を分離することや、 モバイル端末の新機能を適切に取り込み、活用することが求められる。 「コンテンツ」と「見せ方」を分離するには、レスポンシブ Web デザインが有効である。 レスポンシブ Web デザインとは、2011 年に日本でも注目された Web ページのデザイン手 法で、PC 向け・スマホ向け・タブレット向けなど、さまざまな画面サイズのデバイスに対 応した Web デザインを柔軟に実現できるものである。 つまり、モバイルファーストへの取り組みを進めるには、以下の 3 つのポイントを押さ えることが必要である。 ワンソース・マルチデバイス管理を Web サイトにも適用する。 コンテンツを一元管理する:コンテンツ管理システム(CMS)の活用 モバイルの新機能を有効活用する:コンパス機能、ジャイロスコープ機能、オーディ オ機能、カメラ機能、Bluetooth での外部デバイスとの接続、プロキシミティ‐デバ イス間の距離を検知、光検知、NFC、など ●Web 時代のビジネスモデル ビジネスモデルという用語は、1991 年以降の「.com ビジネス」拡大とともに急速に普及 し、2002 年以降には「競争優位の持続」「イノベーションの源泉」として再認識されるよ うになった。ただ、ビジネスモデルはある程度出尽くしており、さまざまなモデルが形を 変えて再発見・再発明され適用されていると感じている。 Web 時代のビジネスを考えるにあたり、「収益モデル」 「売り方」 「作り方」 「ネットによ り可能になったもの」の観点で各種ビジネスモデルを理解することが重要である。このう ち、「売り方」は印刷会社の顧客(印刷物発注企業)のビジネス強化、「作り方」は印刷会 社のビジネス強化に大いに関係する。 また、ネットにより可能となった、オープン・イノベーションやクラウドシステム、ク ラウドソーシング、フリーミアム、ロングテールなどに対する理解を深めることも求めら れる。なお、フリーミアムとは、インターネットの普及で実用化された「無料」の収益モ デルで、内部補助型・第三者補助型・一部利用者負担型・ボランティア型という4つのパ ターンがある。 ●我々にできることは?――参考例・ヒント 我々印刷業界および周辺産業は、コンテンツとしての情報をいかにうまく見せ、届ける かに注力してきた専門家である。しかし、媒体が紙から画面に変わる時代には、根本的な 見せ方の設計、従来の「割付への情報流し込みによる制作工程」などを見直す必要がある だろう。 では、印刷会社がモバイル活用のノウハウを蓄積するには、どうすれば良いのか。モバ イルを「自ら使う」 「 (利便性を上げるためにお客さまに)使っていただく」 「使う人(=自 社に仕事を流してくださる方)を支援する」という 3 つの取り組みが求められる。 あわせて、 「インフォグラフィック」のスキルを高めることも有効である。インフォグラ フィックとは、情報を整理してグラフィックで伝えることである。そのためには高いスキ ルが必要とされることから、デザインに力を入れている印刷会社が差別化するのに有利で ある。また、インフォグラフィックのスキルがあれば、Web の仕事を獲得できるようにな ることも期待できる。 顧客の「オムニチャネル化」に対応することも重要である。オムニチャネルとは、店舗 とネットショップ、DM などを連携させることで、 「顧客の顧客」が「いつでもどこでも好 きなときに注文」することができ、また「好きなときに好きなところで好きなものを受け 取る」ことができる、という体験を提供するものである。 オムニチャネルなど新しい取り組みを成功させるためには、社外との協業が不可欠であ る。その際、自社は何を行ない、他社に何を任せるのかを明確にする必要がある。また、 顧客開発を商品・サービス開発とセットで行なうことも求められる。実際に商品・サービ スを使う人を巻き込まないと、使われないものができてしまうというリスクを低減するこ とはできない。 ●Web 時代の FFGS 製システム・ソフトウェア Web 時代のビジネスでは、リスクを抑えるため実績のある製品・サービスを活用してス モールスタートを切ることが必要となる。FFGS では、データベース組版によるワンソー ス-マルチユースの実績を元にした Web to Print のシステム構築の取り組みなどを通して、 システム販売にとどまらない「課題解決の支援」を提供している。 小ロット多品種・可変印刷対応の B to B 向け Web to Print システム『iAutolay Magic』 は、2013 年に市場導入され、現時点において 40 社で稼働している(パッケージ 25 社、機 能提供・カスタマイズ 15 社) 。iAutolay Magic は、名刺やダイレクトメール、クーポンチ ラシ、不動産チラシ、店舗ポスターなど、さまざまな顧客が Web を使うアプリケーション で活用されている。 『添文 x-Magic』は、医薬品・医療機器・対外診断薬メーカーに対し、添付文書を作成す る際の「スピード」 「正確性」 「平準化」 「将来への備え」といったメリットを提供できるシ ステムで、現在およそ 30 社で使われている。ワンソース・マルチアウトのシステムで、 「コ ンテンツ」と「見せ方」の分離を最も具現化している。 高品質・高速自動組版バリアブル印刷ソフト『Form Magic4』は、バーコード出力・イ メージバリアブル機能・バリアブルグラフ機能・多様な面付けといった特徴を持つ。また、 デジタル印刷機と組み合わせることで、カスタムメイドプリンティングで新たな価値を提 案できる。このソフトは、DM、名刺、成績表、ナンバリングチケット、診断表、POP、賞 状、個人帳票、カタログなどの多くのアプリケーション向けに活用されている。 Web ポータルシステム『XMF Remote』は、Web 環境さえあれば、誰でもどこでもいつ でも簡単に「入稿」 「校正」 「検版」 「承認」の仕事が可能になるシステムである。ある国内 印刷会社では、XMF Remote とノート PC、iPad の活用により、顧客先での仕事の進行を 可能にしている。その結果、 「営業の校正紙持ち帰り時間の削減」や「承認後のタイムリー な下版」などを実現している。 FFGS では、既存のプリプレス領域に限定せず、個々のユーザーに最適なシステム構成 の提案、運用サポートを含めたシステム相談に応じている。印刷工程・後工程のサポート のほか、IT やデータ処理を駆使した「印刷物の活用効果や課題の検証」など、クライアン ト企業の課題解決のためのソリューションをトータルに提供していく。
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