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平成27年3月11日
生 活 文 化 局
目的を隠して若者を呼び出し
勧誘を行っていた連鎖販売業者に業務停止命令(6か月)
本日、東京都は、
「バイトを始めた。とても楽しいよ。話を聞きに来ないか。」など
と契約意図を隠して消費者を喫茶店等に誘い出し、
「利益は必ず出せる。」などと告げ
て化粧品等の連鎖販売取引契約をさせていた事業者に対し、特定商取引に関する法律
(以下「特定商取引法」という。)第39条第1項に基づき、業務の一部停止(6か
月)を命じました。
1
事業者の概要
事業者名 株式会社ウィル
代表者名 代表取締役 吉國 貴夫
所 在 地 大阪府大阪市北区天満二丁目2番3号
法人設立 平成12年6月1日
(平成22年2月1日連鎖販売業開始)
資 本 金 300万円
取引類型 連鎖販売取引
取扱商品 化粧品、健康食品等
売 上 高 約5億3千704万円
(平成25年4月~平成26年3月)
久しぶり!!
最近楽しい副業を始めたんだ。
今度それについて話そうよ!!
2 勧誘行為等の特徴
(1)当該事業者の連鎖販売組織の会員が友人に連絡して、「バイトを始めた。とても楽し
いよ。」
「エステに人を連れて行ったり、人とお酒を飲んでお金を儲ける仕事をしている。」
などと言って興味を持たせた後、「私よりも詳しい人がいるから、その人から説明を受け
たほうが良い。」などと言って喫茶店等に誘い出す。
(2)喫茶店等で、連絡をしてきた友人と、詳しい説明を担当するという先輩会員の二人が勧
誘する。「人を誘ってその人が加入すれば月に数万円は入るよ。」「ゆくゆくはウィルが
経営している飲食店のいずれかを任せてくれるかもしれない。」などと入会することの利
点のみを話して勧誘する。
(3)消費者と勧誘者の関係が親密になったところで、ウィルに入会するためには6万円から
30万円程度が必要であることを告げる。消費者は高額なお金を要求されて驚くが、勧誘
者から契約を急かさせる上に、「○○万円以上の利益は必ず出せる。」「絶対に損はさせな
い。」などと言われ、断り切れず契約を承諾する。
3
業務の一部停止命令の内容
平成27年3月12日(命令の日の翌日)から平成27年9月11日までの間(6か
月間)、特定商取引法第33条第1項に規定する連鎖販売取引に係る次の行為を停止する
こと。
(1)契約の締結について勧誘を行い、又は勧誘者に勧誘を行わせること。
(2)契約の申込みを受けること。
(3)契約の締結を行うこと。
【問合せ先】
生活文化局消費生活部取引指導課
電話 03-5388-3073
4
業務の一部停止命令の対象となる主な不適正な取引行為
不 適 正 な 取 引 行 為
特定商取引法の条項
当該事業者の勧誘者は、消費者に対し、「バイトを始めた。とても楽し
いよ。」
「エステに人を連れて行ったり、人とお酒を飲んでお金を儲ける仕
第33条の2
事をしている。」などと告げて、喫茶店等に呼び出して勧誘を行っており、
名称・勧誘目的等の
勧誘に先立って、統括者の名称、金銭上の負担(特定負担)を伴う取引に
不明示
ついての契約締結について勧誘をする目的である旨及び商品の種類を明
らかにしていなかった。
当該事業者の勧誘者は、連鎖販売契約の締結について勧誘をするに際
し、確実に収入が得られる保証がないにもかかわらず、「やる気があるな
ら、○○万円は2か月あれば取り戻せる。絶対に損はさせない。
」
「○○万
円以上の利益は必ず出せる。」などと特定利益に関して不実を告げていた。
また、当該事業者の勧誘者は、当該事業者が連鎖販売取引を行っている
にもかかわらず、
「ウィルはマルチではない。
」などと告げ、さらに、当該
第34条第1項
事業者が飲食店等の経営を行っていないにもかかわらず、「ゆくゆくはウ
不 実 告 知
ィルが経営している飲食店のいずれかを任せてくれるかもしれない。」
「マ
スタークラスエージェントというクラスになれば、店をウィルが提供して
くれて、自分の店を持つことができる。ウィルに入れば、いずれは店が持
てるよ。」などと告げ、判断に影響を及ぼすこととなる重要なものについ
て不実を告げて勧誘を行っていた。
当該事業者は、当該事業者と連鎖販売契約を締結した者に対して交付す
第37条第2項
る契約書面において、商品の種類及び特定利益に関する事項を記載してい
契約書面の不備・
なかった。また、インターネットにより契約申込を行った消費者に対し、
不交付
契約書面を交付していなかった。
5
今後の対応
業務停止命令に違反した場合は、行為者に対して特定商取引法第70条の2の規定に基づき2年
以下の懲役又は300万円以下の罰金又はこれを併科する手続きを、法人に対しては特定商取引法
第74条の規定に基づき3億円以下の罰金を科する手続きを行う。
(参考) 東京都内における当該事業者に関する相談概要
(平成27年3月10日現在)
相 談 件 数
平均年齢
平均契約額
24年度
25年度
26年度
合計
22.6歳
18万円
36件
35件
18件
89件
消費者及び勧誘者へのアドバイス
◆
連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法)は簡単に利益が出るものではありません。契約する前に
一度冷静になって、契約内容をよく確認しましょう。
◆ 親しい友人からの勧誘であっても、契約したくない場合ははっきりと断り、その場を立ち去り
ましょう。
◆ 勧誘者は、法のルールを逸脱した方法で連鎖販売取引の勧誘を行えば、自分自身が加害者にな
る上に、大切な友人を失ってしまうことに注意しましょう。
◆ 連鎖販売取引は、クーリング・オフと中途解約が可能であり、いつでも組織から退会することが
できます。詳しくは、最寄りの消費生活センターへ相談してください。
参考 相談事例
(参考)東京都消費生活総合センター 03-3235-1155(相談専用番号)
◆ 同様の手口に心当たりのある方は、悪質事業者通報サイトにも情報をお寄せください。
(通報サイト)http://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/tsuho/honnin-form.html
参考資料
相談事例
〈事例1〉
平成25年4月、消費者甲に友人Aから電話が掛かってきて、「私は最近、もう一つバイトを始め
た。アロマ関係の仕事で、とても楽しいよ。話を聞きに来ないか。」と言われ、話を聞くことを承諾
した。するとAは、「バイト先で仲の良い女性の先輩がいて、その人が教えてくれる。その先輩とカ
フェで会って話を聞こう。話を聞いてみて、だめだったら辞めても良い。聞くだけ聞いてみたら。」
と言ったので、会う約束をした。
約1週間後、甲はAと待ち合わせ、喫茶店に入った。席には女性が座っていて、Bと名乗った。B
はタブレット端末を用いてウィルの説明を始めた。Bは、「仕事はアロマなどいろいろやっている。
居酒屋もやっている。いろいろな職場の人が加入していて、たくさんの人と交流できる。とても楽し
いよ。人を誘ってその人が加入すれば月に数万円は入るよ。」などと説明した。そして、「2回目で
詳しい話をするけど来るか。」と言った。甲は楽しそうなバイトだなと思い、また話を聞く約束をし
た。説明が終わると、ウィルが経営しているというバーに一緒に行った。このバーで、Bの下位にい
るCという男性を紹介された。
約1週間後、喫茶店でAとBに会い、Bがウィルの説明を始めた。「ネットの掲示板にウィルに対
する悪口が書かれているけど、それは嘘だよ。」などと言った。さらに、「ウィルは○万円以上の商
品セットを買って初めて本式に加入できる。」と言った。甲は初めて○万円が必要であることを知り、
驚いた。説明の最後に、Cもやってきて、「契約は今後、全てメールで行うことになった。」と言っ
た。そして、甲の携帯電話にSNSのメッセージで、申し込みのための入力項目が送られてきて、す
ぐに加入登録するよう勧められた。甲は、○万円を支払う余裕はないことをBに伝えて、
「無理です。」
と言った。ところが、Bは、「クレジットカードを作るとか、たくさん方法はあるから。」と言って、
しつこく勧誘を続けた。そして、Bから空いてる日を尋ねられ、甲は断りきれずに再び会う約束をし
た。
数日後に、甲は再び喫茶店でBと会った。甲はBに対して、「お金がないのでウィルに加入するこ
とはできない。」と言った。するとBは、「消費者金融で借りられるかもよ。だめもとでやってみる
か。」と言い、近くの無人契約機のある店まで甲を連れて行った。そこでBに、「収入を多く書いて
おけば、いっぱい借りられるよ。」と収入を偽るように言われ、甲は実際よりも収入を多く記入した。
その結果お金を借りることができ、甲はその日のうちに約○万円をウィルに振込み、携帯電話から加
入申込みをした。概要書面や契約書面は受け取らなかった。
契約後に、Bから勧誘方法を説明された。「最初は、普通の会話をしてから、カフェに呼び出す。
良い仕事がある、アロマとかサロンとかいろいろあると言う。
相手に興味を持たせ、質問してきたら、
具体的なことは優しい先輩が説明してくれると言って、詳しいことはあえて言わず、会う約束を取り
付ける。○万円分の商品購入についても言わない。」などと説明された。
〈事例2〉
消費者乙はプライベートで作った料理の写真をSNSに時々載せていた。平成26年2月頃に、高
校の頃からの知人DからSNSで、「料理をやりたいのか。」とメッセージが来た。何回かやり取り
をした後、「おいしいバーを見つけた。一緒に行こう。」とメッセージが来て、乙は一緒に食事に行
くことを承諾した。
平成26年4月、乙はDとバーで一緒に食事をした。しばらく高校の頃の話などをした後、Dが、
「この店で料理長としてやってみる気はあるか。」と言ったので、乙は興味を持った。するとDは、
「別のテーブルに座ってる人にすごい人がいるから紹介するね。」と言った。そして、Dは30代く
らいの男をテーブルに招いた。その男はEと名乗った。Eは、「うちで料理長としてやってみる気は
あるか。」と言った。乙は、「ぜひやりたい。」と答えた。その日は、後日また詳しい話を聞くこと
を約束して、別れた。
約1週間後、ファミリーレストランでDと会った。Dは、前回行ったバーを経営しているウィルと
いう会社について説明を始めた。「ウィルはバーベキュー、クルージング、パーティーなど様々なレ
クリエーションをやっている。ウィルに入ると人脈を作れるし、偉い人の話も聞ける。料理屋の開業
資金の援助などもある。ウィルに入れば、店が持てる。」などと言った。30分ほどすると、Eがや
ってきた。Eはタブレット端末を用いてウィルについて説明を始めた。Eは、「マスタークラスエー
ジェントというクラスになれば、店をウィルが提供してくれて、自分の店を持つことができる。ウィ
ルに入れば、いずれは店が持てるよ。」と言った。そしてEはいきなり、「ウィルに加入するには、
○○万円ほど必要だよ。」と言った。乙は、自分の店が持てるという話に興味があったので、加入す
ることを承諾した。すると、Eは、「人の情熱は冷めやすいから、話は早く決めた方がいい。明日空
いてるか。」と言ったので、翌日再び会うことになった。
翌日、喫茶店へDと共に行った。しばらくするとEが喫茶店に入ってきた。Eは乙に契約書面や概
要書面、商品カタログなどが入った封筒を渡し、Eは「分割払いだよね、今日カードは持っているか。
カードが無いなら、作りに行かないと。○○カードを作れば、即日発行できるよ。」と言った。乙は
Dと共に近くの店に行き、クレジットカードを作った後、再びEが待つ喫茶店に戻った。Eはウィル
について、「ネットにウィルに関する悪口が書いてあるが、それは風評。ウィルはマルチではない。」
などと説明した。乙は、契約書にサインすることを承諾した。Eは、「家族に話すと、家族にその会
社は大丈夫なのかと怪しまれることになるだろうから、話さないでくれ。」と言った。そして、Eか
ら他の人を勧誘する方法の説明を受けた。Eは、「友人に連絡して、普通の会話から始めて、今何を
やっているか、仕事の現状や今の仕事を変えたいと思っているかなどの仕事の不満を聞きだした後に、
ピクニックやスキー、バーベキューなど様々なレクリエーションを行い、人脈が増える仕事をしてい
ると言って興味付けをする。」と説明した。
〈事例3〉
平成25年7月、消費者丙はインターネット上のコミュニティーサイトに飲み会があるという掲示
がされているのを見つけ、その掲示を出したFという女性に飲み会に参加したい旨を連絡した。
数日後、丙はその飲み会に参加し、飲食店に勤めているGという男性と知り会い、連絡先を交換し
た。丙は飲食店に勤めていたので、Gは、「よかったらまた落ち着いたところで話そうよ。飲食店に
ついての情報交換をしよう。」と言った。丙はそれを承諾した。
約1週間後、カフェでGと会った。Gは、「今勤めている飲食店はどうか。」と言った。丙は、「今
の飲食店はスタッフが少なく、大変だ。ゆくゆくは自分の店を持ちたい。」などと言い、仕事の不満
を漏らした。するとGは、「今度、ある会社の支援を受けて、自分の店を立ち上げる。その会社はお
店を持ちたいと望んでいる人への支援を行っている。」と言った。その後、Gはタブレット端末を取
り出して、ウィルについての説明を始めた。「ウィルに加入して、ウィルと提携している商品を仲介
して販売すると、収入になる。ウィルの傘下にたくさんの会社があり、経験も積める。ゆくゆくはウ
ィルが経営している飲食店のいずれかを任せてくれるかもしれない。」などと言った。カフェに入っ
て1時間ほど経ったときに、Fがやってきた。Fは、ウィルの傘下の店だというバーに丙を連れて行
った。
丙はFとGからバーでウィルについて説明された。主にGがウィルの仕組みや魅力などを説明して、
Fが賛同意見を時々挟んだ。Gは、「ウィルはマルチではない。ネット上にウィルの悪口が書いてあ
るが、ウィルの前身の会社の悪口がウィルに変わった後も続いているだけだ。」などと言った。ウィ
ルに入会するためにお金が掛かることは説明されなかった。
数日後、Gから、「この前話した会員の話だけど、詳しい資料を持っていくから、また会おうよ。」
と連絡がきた。丙はいろいろな飲食店を経営しているというウィルに興味があったので、会うことに
した。
数日後、F、Gと喫茶店で会った。Gは、契約書面等が入った封筒を取り出し、「ウィルに入会す
るには商品セットを購入する必要がある。値段は約○○万円だ。」と言った。丙は初めてウィルに入
会するために○○万円もかかることを知り、驚いた。しかし、Gは、「○○万円以上の利益は必ず出
せる。加入が遅れると、本来あなたの下に付くはずだった人があなたの上に付くことになってしまう。
だから損だよ。」と言った。Gらから契約することが当然であるかのように話をされ、断れる雰囲気
ではなかった。丙は、断ればいつまでも勧誘されると思い、仕事に行く時間も迫っていたので、契約
することを承諾した。Gは、「家族には、セミナーを受けるなどして経験を積んで、ウィルについて
しっかり説明できるようになるまで言わないほうがいいよ。」と言った。
〈事例4〉
平成25年12月、消費者丁は、SNSでHと知り合い、時々連絡を取り合うようになった。SN
SでHは、「エステに人を連れて行ったり、人とお酒を飲んでお金を儲ける仕事をしている。私がや
っている副業は、空いてる時間でもできる。興味あるなら話だけでも聞いておくか。」と伝えてきた。
丁は興味を持ったので話を聞きたいと伝えると、Hが、「私よりも詳しい人がいるから、その人から
説明を受けたほうが良い。いつ会えるか。」と聞いてきた。丁は空いてる日を教え、話を聞くことに
した。
約1か月後、丁はHと飲食店で会い、仕事の話を聞いた。Hは、「私がやっている仕事の関連のイ
ベントは、海外旅行やドーム球場を貸し切ってのイベント、遊園地を貸し切ってのパーティーなどが
ある。とても楽しいし、いろいろな人と出会える。」などと言った。そして30分ほどすると、Iが
入ってきた。Iはタブレット端末を取り出してウィルの説明を始めた。「友達をウィルの組織に勧誘
してあなたの下に2人付ければ、収入が入る。その2人がさらに下に人を付ければ、収入が上がって
いく。」などと言った。そして不意にIが、「ウィルに加入するには○○万円が必要。」と言った。
丁は、いきなり○○万円が必要だと言われ、驚いた。Iは、「やる気があるなら、○○万円は2か月
あれば取り戻せる。私達も全力でサポートする。絶対に損はさせない。」と言った。2人から長時間
勧誘され、話がどんどん進み、契約するのが当然であるかのような雰囲気だった。丁が契約を承諾す
ると、Iは、
「契約には、身分証の写しと印鑑が必要。契約は早いほうが良い。明日は空いているか。」
と言い、翌日会うことになった。
翌日、丁はHとIとファーストフード店に行った。Iは丁に商品セットの一覧表を示しながら、
「あ
なたには○○セットが良いと思う。このセットは一通りの商品が入っているから、みんな最初はこれ
を選ぶよ。」と言った。断れる雰囲気ではなかったため、丁は契約を承諾し、書面に記入した。その
後Iは、ウィルへの勧誘方法について説明した。「まずは友達に連絡し、普通に世間話をして、仕事
への不満や愚痴を聞く。その不満や愚痴に応じて、興味を持たせることを言う。例えば、収入が少な
いと言えば、良い副業があると言い、仕事が忙しいと言えば、空いてる時間でできる楽な仕事がある
と言い、最近刺激がないと言えば、多くの人脈が作れて刺激がある仕事と言う。ウィルについての詳
しい話はしないでいい。」と言った。また、Iは、「最初のうちは、ウィルとの契約について親や他
人に言わないほうがいいよ。ある程度収入が得られるようになってから言うと、親も納得してくれ
る。」と言った。