9.3Dデータ活用 ―‌3Dデータを起点としたプロセスの動向,‌ ‌ 導入や運用

特集 オピニオン!機械設計の課題と展望
9.3D データ活用
―‌3 Dデータを起点としたプロセスの動向,
‌
導入や運用に関する諸々の課題とその解決
ニコラデザイン・アンド・テクノロジー 水野 操*
*みずの みさお:代表取締役。1990 年代初頭から,CAD⊘PLM の業界に携わり,大手 PLM ベンダーや外資系コンサルティ
ング会社で製造業の支援に従事。2004 年にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを設立後は,独自製品の開発のほか,
3D データを活用したビジネスの立ち上げ支援や 3 次元 CAD や 3D プリンターの導入支援を積極的に行う。
3D プリンターの登場により,
3D データ活用にも目が向けられる
設計業務関連の 3D データ活用で言えば,一つ
は 3 次元 CAD でアセンブリを組んで干渉チェッ
クに活用したり,また機械としての動きそのもの
の妥当性をバーチャルに検証するという活用も一
依然として日本では,2 次元 CAD が設計の現場
般化しつつあり,もはやモデリングの一環と捉え
で多数使われているほか,設計から製造現場への
ている企業も少なくない。また,そこから一歩進
情報の伝達についても図面ベースで行われている
んだ活用法が,まさに前述の 3D プリンターによ
ため,そもそも 3D データの活用以前の話として
る検証だ。造形に使われる材料と,実際の製品に
3D による設計が,特に中小製造業では,中々進
用いられる材料の違いなどから,完全なる検証と
展してこなかった。
は言わないまでも,機械の性能を物理的に迅速に
こうした状況が,3 年ほど前からはじまった,
検証することも可能になってきている。
いわゆる 3D プリンターブームの到来をきっかけ
なく一般の個人ユーザーを中心にはじまったブー
(2)CAD+CAE で手軽になったシミュレー
ション
ムだったが,3D プリンター活用のメリットがモ
さらに,検証という観点からすると,次に活用
ノづくりの産業全体にも知られるようになったの
の視野に入ってくるのが CAE だ。機械の性能を
である。
見る上で,比較的簡単な構造解析はもちろん,熱
として,大きく変わりつつある。元々,企業では
(1)3D プリンターを使うために 3 次元 CAD
を導入
応力連成解析,あるいはモーションシミュレーシ
ョンにチャレンジする企業も増えてきている。
モデリングツールとしての 3 次元 CAD の機能は,
3D プリンターの活用に欠かすことのできない
この数年でほぼ頭打ちになっていると考えても良
3D データを得るために,3 次元 CAD を導入して
い。もちろん,主要な CAD ベンダー各社は毎年
設計の流れそのものを変革した企業も見受けられ
新しいバージョンを出してはいるが,CAD の基
るようになってきた。奇しくも,使いたい道具が
本的な機能としては,現在ミッドレンジと呼ばれ
あったから 3 次元 CAD の導入が進んだという流
ている 3 次元 CAD でもほぼ出尽くし,完成の域
れである。
に達している。最近のバージョンアップではどの
一方,これとは別に最初からデータの活用あり
ベンダーも「なぜ,今までこんなことができなか
きですでに 3 次元 CAD の導入を進めていた企業や, ったのか」と問われるような,これまで見過ごし
せっかく作ったデータをもっと積極的に活用しよ
ていたような細かな機能の追加などが中心になっ
うという企業も増えてきている。
ている。
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