地学1

泥水から飲み水
茨城県立日立第一高等学校
発表者
和田
拓也(2年)
担当教員
松本
現
【はじめに】
世界では約 9 億人の人々が安全な水にアクセスできず,生活用水を得るために子供たちが,長
距離・長時間の重労働を強いられている原因にもなっている。そこで,持ち運びできることを前
提として,
[木炭・砂・レキ]を用いて作成した安価で手軽な簡易ろ過装置によって泥水をろ過・
浄水しようと考えた。
【実験方法】
〈実験①〉2L ペットボトルの中に木炭(2cm 前後),砂,レキ(2cm 前後)を異なる 6 通りの順番で
5cm ずつ重ねて入れ泥水 300mL を流しこみ,ろ過された水の透明度を目視によって比較した。ろ
過材の流出を防ぐために最下位に厚さ約 1cm のカット綿を取り付けた。(図1)
〈実験②〉木炭(粉状),砂,それぞれの層を必要最小限の量にするためにそれぞれの単一素材で,
層厚を変えたもの(層厚 200mm から 20mm ずつ薄くしていき,層厚 20mm まで調べた)を直径 2cm の
アクリルパイプに入れ,泥水 100mL を流し込んだ。素材の流出を防ぐために木炭の最下部にはカ
ット綿を,砂の最下部にはネット(穴幅約 2mm を 16 重にしたもの)を取り付けた。透明度は,別
に用意した直径 2cm のアクリルパイプにろ過後の水を 10mL ずつ入れ,何mL 入れた時点で底に取
り付けたビニールが見えなくなったかで比較した。(図2)
【結果】
〈実験①結果〉下位から,木炭,砂,レキの順で重ねたものが最も透明度が高くなった。
〈実験②結果〉素材の層厚と透明度の間には一定の関係が見られなかった。(図3)
木炭,砂ともに泥の堆積がろ過材上部に確認できた。
【今後の課題】
実験②で各素材の上に泥の堆積が確認できたことから,木炭でも砂でも必要なのは層の厚さで
はなく,ろ過材が密着していることであると考えられる。しかし現段階では,砂と木炭両方にお
いて層厚とろ過能力の関係が見られないため,繰り返し同様の実験を行い,この2つの関係を明
らかにしていきたい。
図 2.計測装置
120
100
80
木炭1
60
木炭2
40
砂1
20
砂2
0
20
40
60
80
100
120
140
160
180
200
図 1.実験①装置
底が見えなくなった時の水量(mL)
図3.実験②結果
素材の層厚(mm)
地学1-①
天気管の結晶生成と気象条件との関係
茨城県立日立第一高等学校 地学部
発表者
椎名香奈里(2) 吽野茉優(1) 村松ゆい(1) 佐藤麻子(1) 木名瀬暁理(1)
高星さゆり(1) 佐藤駿介(1) 山崎颯姫(1) 鷺美月(1) 担当教員 松本現
1.動機及び目的
天気管とは,管内に生成される結晶の形から6~12時間後の天気の予想が可能とされ
る器具である(図1)
。しかし,その仕組みは不明な点が多い。私たちが半年間天気管を観
察した結果,気温が低いとシダ状結晶の高さが高くなる傾向が見られた。そこで,天気管
の結晶生成と気象条件との関係をさらに明らかにするため,以下の3つの実験を行った。
・結晶が生成される時の水温と気温の関係(実験①)
【図1 天気管】
・シダ状と星状の結晶生成時の水温変化の違い(実験②)
・台風通過時の結晶生成の観察(実験③)
2.方法と結果
実験①
方法)管内の結晶を湯煎で全て溶かし,再び結晶が
生成されるときの水温と気温との関係を調べる。
結果)結果を図2に示す。室温が低いと,結晶生成時の
水温も低くなった。生成された結晶が全て星状結
晶より,シダ状を調べる実験②を行なった。
【図2 室温と結晶生成時の温度の関係】
実験②
方法)シダ状の結晶を観察し,生成し始めた気温と生成中の水温変化率を星状結晶と比較する。
結果)結果を図3に示す。水温変化率が大きいと星状,小さい
とシダ状の結晶が生成される傾向が見られた。そこで,
実際の台風時はどうなのか探るため,実験③を行った。
【図3 各結晶の表およびグラフ】
生成し始めた水温【℃】
水温変化率【℃/分】
星状
22.3~25.7
0.209
シダ状
19.4~27.1
0.00291
実験③台風通過時の結晶生成の様子と,水温変化率を調べる。(H26.10/12~14)
方法)台風通過前後の天気管を動画で記録撮影する。
結果)結果を図3および図4に示す。
台風
生成し始めた水温【℃】
シダ状
19.4
水温変化率【℃/分】
0.0079
【図4 台風時の天気管の様子】
3.まとめ
・結晶生成時の水温は気温により変動する。
・水温変化率【℃/分】が大きい(約 0.2)と星状,小さい(約 0.003)とシダ状結晶が生成される。
・台風通過前の時は水温変化率が小さく,高いシダ状結晶が生成された。
以上3点の事がわかった。しかし,数時間後の天気との関係は不明のため,今後も観察を継続する。
地学1-②
オーロラ発生の研究
水戸第二高等学校
水沼侑希(2年)谷田部はやか(2年)鈴木秀
1.はじめに
実験機でオーロラを発生させるという先輩方の研究に興味を持ち,さらにきれいなオーロラを
形成したいと思い,この研究を始めた。
2.実験
2.1
実験器具
排気盤,真空ポンプ,誘導コイル,導線,剣山,フィラメント,ネオジウム磁石,針金
2.2実験方法
実験①
実験機の底にアルミホイルをはさみ電極とし,プラズマを
放出する媒体として剣山,フィラメントを用いて放電を行う。
実験②
実験①の結果により,アルミホイルを外す。他は①と同じに
行う。
実験③
実際の条件に近づけるため,半球から全球に変える。
実験④
磁石に均等にプラズマが届いていないのではないかと思い,フィラメントを円状にして
実験を行う。
実験⑤
これまでよりフィラメントの円の直径を大きくする。
実験⑥
オーロラは周辺の気体によって変化するため,実験機の中に O2 や N2 を入れプラズマの
光の色の変化を調べる。
3.結果
結果①
どちらも一か所から雷のような放電になった。
結果②
剣山は多方向に飛び散るような放電になり,フィラメントは
少し帯のように広がった放電になった。これからの実験では媒体
にフィラメントを使用することとした。
結果③
今までの放電に比べ,全体に降り注ぐ放電になった。磁石の
まわりにオーロラの形成は見られなかった。
結果④
全体に広がる放電が見られた。両極にオーロラの形成が見られた。
磁石の周りに円状が観察できたため,この結果を成功とした。(写真)
結果⑤
これまでより強い放電が全体に広がり,両極にオーロラの形成が見られた。これまで放
電が赤っぽくなり,放電が波のように見えた。
結果⑥
中の気体を変化させても,プラズマの色は変化しなかった。
4.今後の課題
私たちの実験ではアルミホイルを外したため回路が成立していないのにもかかわらず,放電が
起こっている。なぜそのようなことが起こるのか疑問に思ったので今後調べていきたい。また,
今回の実験以外の方法でオーロラの色を変える方法を探っていきたい。また、窒素や酸素を原子
で実験機内に入れる方法も探っていきたい。
地学1-③
ダイヤモンドダスト
茨城県立水戸第二高等学校
盛舛萌音(2),大山美歩(2)鈴木秀
1.ダイヤモンドダストとは
主に寒冷地で晴天の日に-15℃以下で湿度が高く無風に近い状態の時に,水分の昇華凝結
により空中で氷晶が生じたものである。大きさ 0.1 ミリ程度の非常に小さな角板や角注の結晶で,
太陽光があたるとまるでダイヤモンドのようにきらきら輝いて見える。
2.実験目的
ダイヤモンドダストを人工的に身近なもので再現するための冷却方法を調べることを目的に研
究を行った。
3.実験方法
3・1実験装置の作成と方法
(1)小さいカンの内側全体にラシャ紙を貼る。(2)大きなカンの周りにエアキャップを巻きつける。
(3)小さなカンと大きなカンの間にスポンジを入れて中のカンを固定する。
(4)大きいカンと小さいカンの間にシロップをいっぱいまで注ぐ。
(5)発砲スチロールの箱にカンをセットする。(6)ストローで息を吹き込む。
(7)エアキャップを缶の中でつぶす。 (8)LED 懐中電灯で容器の中を照らす。
3・2冷却方法
①氷 500g 塩化カルシウム 100g②氷 500g 塩化ナトリウム 100g
③氷 900g 塩化ナトリウム 300g
④氷 900g 塩化ナトリウム 300g 缶を-21℃設定の冷凍庫で 1 日冷やした。
⑤細かくした氷 900gと塩化ナトリウム 300gを混ぜ、缶を-21℃設定の冷蔵庫で1日冷やした。
⑥細かくした氷 900gと塩化ナトリウム 300gを混ぜ、缶と一緒に-21℃設定の冷蔵庫で冷やした。
4.結果・考察
①②・塩化ナトリウムの方が塩化カルシウムより温度が下がった。
・ダイヤモンドダストは観察出来なかった。
③④・④はダイヤモンドダストが観察出来た。
(冷凍庫のおかげで温度が十分下がったためと思われる。)
④⑤・⑤の方がよりきれいに長い時間ダイヤモンドダストが観察出来た。
(氷を砕いたことで缶と触れる表面積が広くなり,効率的に温度が下がったと思われる。)
⑤⑥・⑥の方がよりきれいに長い時間ダイヤモンドダストが観察出来た。
(缶だけでなく,砕いた氷と塩化ナトリウムを混ぜたものも一緒に冷凍庫に入れた方がダ
イヤモンドダストをよりきれいに観察できた。また,このときのダイヤモンドダストは
虹色に輝いていた。)
5.今後の展望
⑥の実験ではなぜ赤や青の色を観察できたのか,またダイヤモンドダストの結晶がどのよう
であるかをレプリカ作成を通して調べる。
地学1-④
太陽観測用分光器の作成
茨城県立緑岡高等学校
國廣風奏(2),塩野翔一(2),海老澤なつみ
1
はじめに
太陽を観測する手段として,分光観測がある。分光観測では,プリズムや回折格子を
使用して光を波長ごとに分布させた太陽スペクトルを得ることができる。そこからは太陽の
温度や密度,組成,運動速度などを求めることができる。
2
目的
安価で軽量ながら精度の高い分光器を作成し,手軽に本格的な太陽観測ができるようにする。
3
太陽観測用分光器の作成
(1)方法
市販の天体望遠鏡の部品を主体とするが,構造が大きく異なるスリット部,ミラー部,
回折格子部などを自分たちで改良する(図 1)。
図1
(2)使用した部品
レンズ.….口径 60 ㎜,焦点距離 350 ㎜(集光用)
口径 45 ㎜,焦点距離 325 ㎜(屈折用)
スリット部.…両刃剃刀,アルミ板,アクリル板
ミラー部….フリップミラー
回折格子部….回折格子,回転ステージ
等
(3)製作状況
・スリット部
幅 7.5 ㎛のスリットを作成した(図 2)。
図 2:表(上),裏(下)
図 3:ミラー部
現在はスリットを分光器本体と結合させるためのホルダーを作成中。
・ミラー部
光路を確保するために,ミラーを上にずらし,角度を45度で固定した(図 3)。
4
今後の課題
・回折格子を回転ステージに取り付け,その後本体と結合させる。
・MJIIT でアイディアをいただいた可動式のスリットを完成させる。
・完成した分光器を使用して実際に太陽を観測する。
地学1-⑤
天体のスペクトルを見る!
都立科学技術高校学校名
土屋響平(2年),西尾裕太(2年)
担当教員
金子雅彦
1,動機
月の観測をしていた際、天体が放つ光にはどのような成分が含まれているのか疑問に思い、
天体のスペクトルを測定し、それぞれの天体について調べたいと思った。
2,目的
さまざまな天体のスペクトルを測定することで、天体が放つ光にどのような波長成分が含まれ
てるいのかを測定し、各々の天体の特性を調べる。
また、月について、夜や昼間さらに月食等によってスペクトルを測定し、その波長成分の違い
を比較し、比較することにより、なぜそうなるのかを調べる。
3,研究方法
天体のスペクトルの測定
① 望遠鏡にスペクトルアナライザーを取り付け、各々の天体のスペクトルを測定する。
② 測定したスペクトルデータから、天体が放つ光の成分を調べる。
4,これまでの研究結果
・月の写真の撮影を行い、同時に月のスペクトルの測定を行った。
・皆既月食時に月食の始まりから終わりまでのスペクトルの測定を行った。
左図からわかるように、太陽のスペク
トルとの比較を行ったところ、同じ波形
が見られた。月の光は太陽光の反射であ
ると考えられる。また、地球大気による
と考えられる吸収線の確認もできた。し
かし、スペクトルアナライザーの露出時
間が長くかったため、ノイズが多かった。
図
月のスペクトル
5,今後の予定
・月の現象は他にもさまざまあるので、各々を測定する。
・皆既月食のスペクトルのデータ分析が不十分なので分析を続ける。
・月のスペクトルだけではなく太陽や他の天体のスペクトル測定を行う。
・4月の皆既月食において、その変化を測定し、前回のものとの比較を行う。
これらのことを行い、なぜそのようになるのか分析を行っていきたい。
地学1-⑥
月食の RGB の色別光度測定
【國學院大學栃木高等学校 天文部】
濱野 紫帆(高校2年) 担当教員 西沢 敏
要旨
私たちは、2011 年 12 月と 2014 年 10 月の皆既月食をカラーの冷却 CCD カメラを用い
て RGB の色別光度測定を行い、両者の結果を比較し共通の傾向をとらえた。
1. はじめに
私たちは日常の天体観測で、冷却 CCD カメラを用い星雲星団の撮像を試みている。しか
し今回は、CCD カメラを計器として用い月食の色別の光度測定を行った。
2. 方法
冷却 CCD カメラビットラン BJ41C 140 画素を 70mm屈折望遠鏡(F=6)に接続し、
皆既月食(2011/12/10 及び 2014/10/8)を撮像した後、画像を出力し、ステライメージを用
いて月全体の光度を RGB の三色に分け、明るさの変化(露出 1 秒換算)をグラフにし、過
去の皆既月食と今回の皆既月食を比べた。
3. 結果
皆既中は両月食とも、小刻みに変化しながら赤い光は弱まっていく。皆既中の明るさは、
欠け始めや欠け終わりに比べると、100 分の 1 以下である。緑や青の光は赤に比べると、減
光の仕方が激しい事が分かった。
地学1-⑦
星のまたたきの原因を探る
國學院大學栃木高等学校
尾花拓海(2年),担当教員名
西沢敏
私たちは一年を通じ位置や明るさがほとんど変化しない北極星を用い、輝度の変化を調べ瞬き
の指標とし、季節変化(日没 約 1 時間後)、時刻による変化、及び気象要素との関係を考察した。
冷却 CCD カメラ(ビットラン BJ41L
140 万画素)を 15cm 屈折望遠鏡(F=12.5)に直焦点
で接続し、付属のソフトを立ち上げ、星のピントを合わせるために用いるフォーカスモード時(露
出 0.001 秒)のピクセル数の変化をビデオカメラで撮影し、その輝度の1分間のばらつきを標準
偏差に直した。そして季節変化を調べるとともに地域的な気象が瞬きに影響を及ぼすのではない
かと考え、15 ㎝屈折望遠鏡から 899mの距離にある地上の電球の明かりもフォーカスモードを用
いてピクセル数の変化をビデオカメラで撮影し、その数値の変化を瞬きとしてとらえた。
4 月から 11 月にかけては星の瞬きの変動は小さい。11 月以降は激しい。星の瞬きは一般的に、
夏に小さく冬に大きい日が多いと言われているが、確かにその傾向がある。
は風向を示す
北極星と電球の瞬きには相関が見られた。相関係数は 0.64(8 月は 0.8)また風向きの変化に伴
い両者とも変動が見られた。つまり、星の瞬きを決める要因は、近隣の気象要素(主に、風向や
風速)ではないかと推測される。
地学1-⑧