3 Roux-en-Y 胃バイパス術とスリーブ状胃切除術後の 2 型糖尿病の

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Roux-en-Y 胃バイパス術とスリーブ状胃切除術後の
2 型糖尿病の改善と血糖プロファイルとの関係性
Remission of Type 2 Diabetes After Roux-en-Y Gastric Bypass or
Sleeve Gastrectomy Is Associated With a Distinct Glycemic Profile
Jimenez A, et al: Annals of Surgery 261, 316-322, 2015
【背景】肥満症手術に対しアメリカで最も施行されているのは Roux-en-Y 胃バイパス術であるが、術後時間が経
つと 14~43%で糖尿病再燃が見られる。また幽門輪を温存し、食物通過経路が生理的であるスリーブ状胃切除
術(SG)が行われる症例も増加してきた。両者は共に 2 型糖尿病の高い改善率と関連があるとされている。しかし
その改善が食後血糖プロファイルの正常化、あるいは潜在的に正常化していない血糖プロファイルがβ細胞機
能異常や術後時間が経過した後の 2 型糖尿病再燃に関連しているかどうかについては未だ分かっていない。
【方法】以下の 3 点を比較する横断研究を行った。
1. 標準化液体食(SLMM)の摂取に対する血糖とプロインスリン/インスリンの反応(31 人)
2. 普通の生活の中での血糖の反応を持続糖測定器(CGM)を 72h 使用して評価する(16 人)
3. 両者の術後結果として 2 型糖尿病が改善した患者のうち、その後増悪した患者の割合
【結果】
Roux-en-Y 群では SG 群と比較して SLMM による血糖上昇はより素早くシャープであり、それぞれ 88.2%、
42.9%の患者が 180mg/dl を超えていた。
CGM では、高血糖持続平均時間、低血糖持続平均時間は SG 群(それぞれ全体の 0.4%、3.2%)と比較して
Roux-en-Y 群の方で長かった(それぞれ全体の 4.6%、12.7%)。
しかしながら、(1)空腹時あるいは刺激時のプロインスリン/インスリン比に両群での差はなく、(2)2 型糖尿病の再
燃は SG 群で高かった(HR:2.339)。
【結論】Roux-en-Y と SG 術後の 2 型糖尿病の改善は、血糖プロファイルに関連していた。しかしながら、予想と
反して SG 群の方が 2 型糖尿病の再燃率が高いという結果になった。以上より SG 後と比較し、Roux-en-Y 術後
で高血糖/低血糖状態(血糖変動が大きい状態)にさらされた時間が長いことは、β細胞機能異常を引き起こし
たり、あるいは術後時間経過後の 2 型糖尿病の高い再燃率にはあまり関係がないと考えられた。
【感想】肥満症に対する手術の症例を経験したことがなく、基礎知識不足により論文の理解が困難でした。この
論文はスペインのものですが、日本ではなかなか集めにくい症例だと思います。
(研修医 東 里奈)