2015 年度の実質賃金は1.2%増

みずほインサイト
日本経済
2015 年 3 月 3 日
2015 年度の実質賃金は 1.2%増
みずほ総合研究所
調査本部
中小企業の間でも賃上げの動きが拡大へ
経済調査部
03-3591-1400
○ 2015年春季労使交渉の結果、昨年を上回るベースアップが実現する可能性が高い。民間主要企業の
賃上げ率は2.35%(ベア率0.6%)と予測
○ 中小企業では業績の低迷などが2014年の賃上げの障害となっていた模様だが、2015年は増税後の落
ち込みからの景気回復、原油安による収益改善が中小企業の賃上げを後押し
○ 名目賃金の増加、消費増税の影響一巡と原油安による物価上昇率の鈍化を受けて、実質賃金は2015
年4~6月期に増加に転じ、2015年度は前年比1.2%増と予測
1.実質賃金プラス転化の時期に加え、そのプラス幅や背景も焦点に
一人当たり実質賃金は大幅に減少している。2014 年 12 月の実質賃金は前年比▲1.7%と 18 カ月連続
のマイナスとなった(図表 1)。一人当たり名目賃金は、2014 年春季労使交渉の結果を受けた賃上げ
の実施や夏・冬ボーナスの増加などによりプラス傾向が続いているが(図表 2)、消費増税や円安に
伴う物価上昇率を上回るほどには伸びていない。実質賃金の減少は家計の購買力が低下していること
にも等しい。消費増税後の個人消費の立ち直りが鈍いのは、こうした実質賃金の減少が影響している
のだろう。
図表1 実質賃金は18カ月連続の減少
図表2 名目賃金はプラス傾向が続く
(前年比、%)
(前年比、%)
3
2.5
特別給与
2
2.0
所定外給与
1
1.5
0
1.0
▲1
0.5
名目賃金要因
所定内給与
▲2
総額
0.0
実質賃金
▲ 0.5
▲3
▲ 1.0
▲4
物価要因
▲ 1.5
▲5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
2013
2013
2014
(資料) 厚生労働省「毎月勤労統計」、総務省「消費者物価指数」より、みずほ総合研究所作成 (年/月)
(資料)厚生労働省「毎月勤労統計」よりみずほ総合研究所作成
1
2014
(年/月)
2015 年の日本経済を見通す上で重要なポイントの一つは、実質賃金の行方である。安倍政権が掲げ
る「経済の好循環」を実現するためには、個人消費の原動力となる実質賃金が増加していくことが不
可欠であるからだ。大方の予想では、実質賃金は今春以降改善に向かうとみられているが、そのプラ
ス幅やプラスをもたらす背景についても、今後の焦点となりそうだ。本稿では、①2015 年春季賃上げ
率の予測、②中小企業への波及度合い、③パート比率の上昇と賃金下押し効果、④物価の見通しにつ
いて整理をした上で、実質賃金の行方を提示したい。
2.2015 年春季賃上げ率は昨年を上回る見込み
2015年春季労使交渉が本格化している。2014年の民間主要企業の賃上げ率は2.19%と1999年以来の
水準となり、ベースアップが復活した(定期昇給分を1.8%と仮定すると、ベア率は0.39%)。今年は
昨年を上回るベア、賃上げ率が実現するかどうかが注目されている。
日本労働組合総連合会(連合)は、「2%以上のベア(定昇分を含めた賃上げ率は4%以上)」を要
求している1(図表3)。「2%以上」の根拠として、物価上昇率や企業収益の適正な分配、経済の好循
環実現のための社会的役割と責任、全ての労働組合が取り組みを推進できる賃上げ水準などを総合的
に判断した結果であると説明している。自動車や電機といった大手労働組合は前年実績比2~3倍の
6,000円のベア要求を掲げている。他方、日本経済団体連合会(経団連)は、ベアは「賃金を引き上げ
る場合の選択肢の一つ」として容認しながらも、全ての労働組合に一律に「2%以上のベア要求を求め
ることは納得性が高いとは言えない」と主張した2。加えて、業種別・企業規模別にみれば、業績にば
らつきがあり、賃金の支払い能力にも差があるという。将来にわたって人件費が増加するベアだけで
なく、定昇、賞与・一時金、諸手当なども含めた賃金引き上げを目指すべきとの旨を述べている。ベ
アを含む賃上げが必要との認識は労使で一致しているものの、その上げ幅をめぐっては温度差がある
ようだ。
図表3 労使とも賃上げが必要との認識は一致
2015年の要求内容
図表4 賃上げ率(主要企業)は昨年よりも高まると予測
(%)
3.5
2014年の要求・妥結ベースアップ率
妥結割合
規模別
要求
妥結
全体
1.23%
0.38%
30.9%
1,000人以上
1.14%
0.41%
36.0%
300~999人
1.45%
0.33%
22.8%
3.0
連合
○2%以上のベースアップ
(定昇分を含めた賃上げ率は4%以上)
300人未満
1.47%
0.31%
予測
春季賃上げ率
(主要企業)
2.5
2.35
2.19
21.1%
2.18
2.0
2015年の方針
経団連
2014年の方針
○賃上げへの積極的対応
を求める
○業績向上した企業に賃上げを
検討するよう要請
○ベースアップも選択肢の
一つとして容認
○ベースアップを容認する見解
○一律2%のベアは受容できない
2.07
1.5
事前アンケートの値
1.0
1995
○賃上げ方法は労使交渉や各社
支払能力に委ねる
1997
1999
2001
2003
2005
2007
2009
2011
2013
2015
(年)
(注)1.2015年の値はみずほ総合研究所による予測値。
2.事前アンケートは、労務行政研究所実施のもの。
(資料)厚生労働省「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況について」、労務行政研究所「2015年
賃上げの見通し―労使および専門家504人アンケート 」よりみずほ総合研究所作成
(資料)日本労働組合総連合会、経済団体連合会、各種報道よりみずほ総合研究所作成
2
労務行政研究所が行ったアンケート調査(「2015年賃上げの見通し」(2015年1月))によると、労
働側・経営側・専門家が見込む賃上げ率の平均は2.18%となった。定昇分が1.8%程度であるため、2
年連続でのベアが見込まれている。2.18%という水準は2014年実績(2.19%)にほぼ等しいが、事前
アンケートの結果が実績を下回る傾向にあることなどを踏まえると、最終的な賃上げ率はこれよりも
上振れる可能性が高い。
みずほ総合研究所の予測では、ベア率は0.6%程度、賃上げ率は2.35%(民間主要企業)と昨年の水
準を上回るとみている(前頁図表4)。2014年度の企業収益は、駆け込み需要で盛り上がった2013年度
よりも増勢が鈍化するものの、収益の水準自体は高い。非製造業を中心に人手不足感の高まりも続い
ている。昨年に続いて行われた政府の賃上げ要請も、賃上げ率の押し上げにつながるだろう。
3.賃上げの動きは中小企業にも徐々に波及
大企業で昨年を上回る賃上げ率が実現しても、その動きが労働者の多くが働く中小企業にまで浸透
しなければ、賃金全体の底上げにはつながらない。賃金の大部分を占める所定内給与をみると、最近
までの賃金上昇の動きは事業所規模 30 人以上の企業が中心で、事業所規模 5~29 人の企業にまで広が
っているわけではないと分かる(図表 5)。
改めて 2014 年の賃上げ状況を振り返ると、企業規模でのばらつきがみられた。経済産業省の調査に
よると3、2014 年にベアを実施した企業の割合は、大企業では全体の 42.5%であったが、中小企業で
は 23.4%にとどまった(図表 6)。大企業の場合は数年ぶりにベアを復活させた企業が多かったのに対
し、中小企業では 2013 年に続いて実施した企業が多く、2014 年に限って賃上げの動きが強まったわ
けではなさそうだ。規模別の賃上げ率をみても、2008 年以降、中小企業の賃上げ率は大企業を下回る
状況が続いているが、2014 年は両者の差が大きく拡大した(次頁図表 7)。「業績の低迷」や「原油・
原材料価格の高騰」などが賃上げの障害となっていたようだ(次頁図表 8)。
図表5
中小企業の所定内給与の伸びは鈍い
図表6 昨年ベアを実施した中小企業は全体の2割程度
(前年比、%)
ベースアップを実施
30人以上
1.4
実施していない/無回答
1.2
中小企業の
ベースアップ
実施割合
1.0
0.8
0.6
76.6
23.4
5~29人
3.3 2.1
0.4
前回ベース
アップを実施
した時期
0.2
0.0
8.1
70.7
2.1 5.6 4.6
▲ 0.2
0%
▲ 0.4
▲ 0.6
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
2013
(資料)厚生労働省「毎月勤労統計」よりみずほ総合研究所作成
2013年
20%
40%
2012年
60%
2011年
2009年
2008年
2003~2007
80%
100%
2010年
2003年以前
(注)調査対象となった企業の9割以上は資本金3億円以下、もしくは従業員300人以下。
(資料)経済産業省「中小企業の雇用状況に関する調査 集計結果の概要」より
みすほ総合研究所作成
2014
(年/月)
3
3.5
では、2015 年は中小企業の間でも賃上げの動きが広がるのだろうか。中小企業は大企業以上に人手
不足感が強いため、人材の確保・定着に向けた賃上げが増える可能性がある。他方、円安に伴う原材
料コストの上昇が続く一方で、販売価格への転嫁が進まず、収益環境が依然悪化しているとの声も多
い4。“賃上げを行いたいのはやまやまだが、無い袖は振れない”というのが、現時点での経営者の総
意ではなかろうか。また、帝国データバンクの調査(「2015 年度の賃金動向に関する企業の意識調査
(2015 年 2 月)」)によると、2015 年に賃金改善(ベアも含む)が「ある(見込み)」と回答した中小
企業は全体の 49.2%と、昨年を 1.6 ポイント上回っている。対して、日本商工会議所の調査(2014 年
12 月)では、2015 年に所定内賃金を「引き上げる」と回答した中小企業は全体の 33.5%と前回調査
(2013 年 12 月:39.9%)に比べて 6.4 ポイント低下しており、賃上げの動きがどこまで広がるかど
うかは不透明感が大きい。
もっとも、中小企業の賃金改定は大企業よりもやや遅い時期(4~6 月期)に本格化するのが通例で
ある。今後は景気回復の実感が中小企業にも徐々に波及し始めるとともに、原油安に伴うコストの減
少が収益を押し上げ、それが賃上げ余力につながると期待される。加えて、大手自動車メーカーは、
政府が要請する賃上げをサプライチェーン全体で進めるべく、主要取引先に部品価格の値下げを求め
ない方針を固めた。こうした「トリクルダウン効果」に向けた動きが広がれば、中小企業の賃上げを
後押しすることになるだろう。2015 年は昨年よりも賃上げの動きが広がると考えられる。
4.パート比率上昇による賃金押し下げ効果は緩和
先行きの賃金動向を見通すためには、全労働者に対するパートタイム労働者の比率(以下、パート
比率)にも注目すべきである。日本では長年、相対的に賃金水準の低いパート労働者が増加してきた
ことが、平均賃金の押し下げにつながってきたためである。
2014 年のパート比率は 29.8%と過去最高水準を更新した。ただし、その上昇ペースをみると、最近
図表7 2014年は大企業と中小企業で賃上げ率の差が拡大
図表8 中小企業では業績低迷等が賃上げの重石に
(%)
3.0
71.7%
業績の低迷
2.5
大企業
2.0
賃金より従業員の雇用維持を優先
33.1%
原油・原材料価格の高騰
33.0%
23.9%
消費税率引き上げ
17.8%
他社との競争激化
1.5
12.6%
取引先からの値下げ要求
1.0
中小企業
0.5
同業他社の賃金動向
7.7%
設備投資の増強
6.6%
2.1%
開発・新事業展開
0.0
1995
1997
1999
2001
2003
2005
2007
2009
2011
2013
(注)大企業:従業員数1000人以上、中小企業:100~299人。
(資料)厚生労働省「賃金引上げ等の実態に関する調査」よりみずほ総合研究所作成
0%
20%
40%
60%
80%
(注)調査対象となった企業の9割以上は資本金3億円以下、もしくは従業員300人以下。
(資料)経済産業省「中小企業の雇用状況に関する調査 集計結果の概要」よりみずほ総合研究所作成
(年)
4
はやや鈍化傾向にある(図表 9)。業種別では、卸売・小売業、情報通信業、サービス業など、このと
ころパート比率が低下している業種もある。パート比率上昇による所定内給与への影響をみると、2012
年~2013 年はパート比率の上昇が 0.5~0.6%程度平均賃金を押し下げていたが、2014 年は 0.3%程度
の押し下げ分に縮小している(図表 10)。
このような背景には、労働者の雇用形態に変化の兆しが出始めていることが挙げられる。労働需要
が増加する中でも企業の人件費抑制姿勢は根強く、パートなど非正規雇用の活用は増えている。追加
的な労働需要をまずは非正規労働者で満たしたい企業側のニーズに合致したのが、女性の非正規労働
者であり、女性側としても労働時間などを重視して、自ら非正規の形態を選択している面もある5。他
方、企業の人手不足への危機意識が強まる中で、人材確保の目的から非正規社員を正社員に転換する
動きも徐々に増えている。実際、パートや契約社員の正社員への登用に加え、労働時間・勤務地など
を限定した正社員制度(限定正社員)を導入する動きなどが、小売業やサービス業を中心に出始めて
いる模様である。同様の状況は 2000 年代半ばにも確認されており、今後も景気回復と労働需給の引き
締まりを背景に、正規雇用に対する企業の需要は増加していくと見込まれる。
また、正社員化を進める理由としては、人手不足だけでなく、改正労働契約法への対応もあるよう
だ。改正労働契約法には「無期労働契約への転換」(2013 年 4 月施行)ルールがあり、通算 5 年以上
働く「有期契約」の労働者が希望をすれば、「無期契約」に転換できるよう、企業に義務付けている。
労働政策研究・研修機構「人材マネジメントのあり方に関する調査(2014 年 7 月)」によれば、3 割弱
の企業が、向こう 5 年間で従業員全体に占める「無期契約の社員」の割合が増加すると回答している。
法改正への対応が、各々企業が雇用形態を見直すきっかけとなっている面も少なくないだろう。
以上を踏まえると、パート比率は上昇傾向が続くとみられるが、上昇テンポは鈍化傾向が続く見通
しである。パート比率上昇による賃金押し下げ圧力も緩和方向に向かうだろう。
図表9 パート比率の上昇ペースはやや鈍化
図表10 パート比率上昇による賃金押し下げ効果は緩和
(前年比%、前年比寄与度%Pt)
(前年差、%Pt)
2.0
パート比率(右目盛)
1.5
0.6
1.0
0.4
0.5
0.0
▲ 0.5
▲ 0.2
▲ 1.0
▲ 0.4
一般労働者
2.0
パートタイム
▲ 0.8
▲ 1.0
0.0
▲ 1.2
▲ 1.4
2005
06
07
08
09
10
パート比率
上昇による
押し下げ
0.3%Pt程度
▲ 0.6
1.0
▲ 1.0
所定内給与の伸び
0.2
0.0
(前年比、%)
4.0
常用雇用者数
3.0
パート比率要因
0.8
11
(注)直近値は2014年10~12月期。
(資料)厚生労働省「毎月勤労統計」よりみずほ総合研究所作成
12
13
14
(年/四半期)
2005
06
07
08
09
10
11
12
13
(注)1.パート比率の変化が所定内給与の伸びに与える影響(寄与度)を試算。
2.直近値は2014年10~12月期。
(資料)厚生労働省「毎月勤労統計」よりみずほ総合研究所作成
5
14
(年/四半期)
5.消費増税の影響一巡、原油安で物価は一旦マイナス圏に
最後に物価動向である6 。先行きの実質賃金がプラスに転じるかどうかは、物価の動きにも大きく
依存する。
まず最近までの物価動向を振り返ると、消費増税が実施された 2014 年 4 月の生鮮食品を除く総合指
数(以下、コアCPI)は前年比+3.2%と、増税前の 3 月(同+1.3%)から上昇幅が大きく拡大し
た(図表 11)
。その後、2014 年 5 月(同+3.4%)をピークに伸びが鈍化しており、2015 年 1 月は同
+2.2%とピーク時から上昇幅が 1 ポイント以上縮小した。昨年秋以降の原油価格下落を背景に、ガソ
リン代や灯油代が値下がりしていることに加え、円安や増税前の駆け込み需要で 2013 年度に価格が上
昇した耐久消費財の伸び率が低下していることなども、全体の押し下げにつながっている。
先行きの消費者物価は当面上昇幅が縮小し、2015 年度以降、一旦前年比マイナスに転じるとみてい
る(図表 12)
。第一の理由として、前年比でみた消費増税による押し上げ効果は 4 月にほぼ一巡する
こととなる。経過措置の対象で 2014 年 5 月に消費税率が引き上げられた一部の品目についても、5 月
以降効果がはく落すると見込まれる。第二に、円安に伴う輸入コストの上昇は消費者物価の押し上げ
要因となるものの、原油安による物価押し下げの圧力が、円安の影響を上回るとみられる。電気代や
ガス代は「原燃料費調整制度」を通じ、原油価格の下落が時間的なラグを伴って料金に反映されるた
め、2015 年度入り後は値下げ方向に転じることとなる。エネルギー価格全体では 2015 年夏頃にかけ
て前年比マイナス幅が拡大し、消費者物価の押し下げに寄与する見通しである。景気回復による需給
ギャップ縮小が見込める中で、エネルギー価格などの影響を除く基調的なインフレ上昇率は底堅い動
きを続けるとみられるが、ヘッドラインの物価は一時的に下落する状況となるだろう。2015 年冬以降
はエネルギー価格が再び上昇に転じると予想されるものの、年度ベースのコアCPIはゼロ%近傍に
とどまるとみられる。
図表11 コアCPIは2014年5月をピークに伸びが縮小傾向
(前年比、%)
3.5
図表12 今後のコアCPIも伸び率低下が避けられない見通し
(前年比%)
コアCPI
2.0
食料(酒類・生鮮食品除く)
3.0
2.5
消
費
増
税
の
影
響
米国基準コアCPI
2.0
(消費増税の影響を除く)
エネルギー
1.5
1.0
0.5
コアCPI
1.5
1.0
0.5
0.0
0.0
▲ 0.5
▲ 0.5
▲ 1.0
13/1
13/4
13/7 13/10 14/1
14/4
14/7 14/10 15/1
(年/月)
予測
▲ 1.0
2013
(注)消費増税の影響は、全ての課税対象品目が増税分だけ上昇した場合に想定
される物価上昇幅(+2.0%Pt)。ただし、2014年4月は経過措置の対象となった一部の
品目について旧税率が適用されたため、+1.7%Pt押し上げられる計算。
(資料)総務省「消費者物価指数」よりみずほ総合研究所作成
14
15
(注)2015年1~3月期以降はみずほ総合研究所による予測値(2015年2月時点)。
(資料)総務省「消費者物価指数」などよりみずほ総合研究所作成
6
16
(年/四半期)
6.実質賃金は 2015 年春頃にプラス転化し、夏~冬にかけてプラス幅が拡大
みずほ総合研究所では、2015 年度の実質賃金は前年比+1.2%(2014 年度同▲2.5%※みずほ総合研
究所予測値)と 5 年ぶりの増加に転じると予想している。
2015 年度の名目賃金は前年比+1.1%と、2014 年度(同+0.9%※みずほ総合研究所予測値)よりも
小幅に伸びが高まると見込まれる(図表 13)。春季賃上げ率の高まり、中小企業への波及、パート比
率上昇に伴う賃金押し下げ効果の緩和を勘案すると、2015 年度の所定内給与は前年比+0.5%と 2014
年度(同+0.2%※みずほ総合研究所予測値)に比べ上昇幅が拡大する見通しである7。所定外給与は
生産活動の回復に連動する形で増加が続くだろう。他方、企業収益の増勢鈍化に伴い特別給与の伸び
率が縮小するため、2014 年度対比での名目賃金の伸びは小幅な拡大にとどまるとみられる。ただし、
消費増税の影響一巡や原油安などを背景に、物価要因での実質賃金下押し圧力がほぼゼロとなるため、
2015 年度の実質賃金は増加する可能性が高い。
実質賃金プラス転化の時期は 2015 年 4~6 月期を見込んでいる(図表 14)。名目賃金のプラス基調
が続き、物価による押し下げ効果がはく落することから、2015 年 4~6 月期の実質賃金は前年比+1.1%
程度となる見通しである。ボーナスが支給される夏~冬場にかけて、伸びは徐々に拡大することにな
るだろう。
もっとも、実質賃金の上昇を持続させるためには、労働生産性の向上が欠かせない。実質賃金の動
きは、①労働生産性、②労働分配率、③交易条件の 3 つに分解することができる。今後は原油価格下
落による交易条件の改善が実質賃金のプラスに寄与するとみられるものの、他の先進各国に比べて低
いと指摘されることも多い労働生産性を引き上げていくための取り組みも重要と考える。労働生産性
の向上には、低成長分野から高成長分野への資源(ヒト、モノ、カネ)の移動が円滑に行われること
が必要であり、これはまさに成長戦略が目指す姿であろう。
図表13 2015年度の実質賃金は1%を超える伸びを予想
(前年比、%)
図表14 実質賃金は2015年4~6月期にプラス転化
(前年比、%)
予測
2
2
1
1
0
0
▲1
▲1
▲2
▲3
▲4
予測
▲2
物価要因
物価要因
所定外給与+特別給与
▲3
所定内給与
総額
名目賃金
総額
▲4
▲5
▲5
2012
2010
2011
2012
2013
2014
2015
(年度)
(注)2014~2015年度の値はみずほ総合研究所による予測値。
(資料)厚生労働省「毎月勤労統計」、総務省「消費者物価指数」よりみずほ総合研究所作成
2013
2014
2015
2016
(年/四半期)
(注)2014年1~3月期以降はみずほ総合研究所による予測。
(資料)厚生労働省「毎月勤労統計」、総務省「消費者物価指数」よりみずほ総合研究所作成
7
1
日本労働組合総連合会「2015 春季生活闘争方針」による。
日本経済団体連合会「2015 年版 経営労働政策委員会報告」による。
3
大企業は「平成 26 年 企業の賃上げ動向に関するフォローアップ調査(2014 年 8 月)
」、中小企業は「中小企業の雇用状況に関
する調査(2014 年 8 月)
」による。
4
日本銀行「地域経済報告-さくらレポート-」(2015 年 1 月)による。
5
総務省「労働力調査(詳細集計)」(2014 年 10~12 月期平均)では、男女別に現在の雇用形態についた理由を調査しており、男
女とも「自分の都合のよい時間に働きたいから」との回答が最多であるが、女性は男性に比べて「自分の都合のよい時間に働き
たいから」家計の補助・学費等を得たいから」「家事・育児・介護等と両立しやすいから」「通勤時間が短いから」と回答する割
合が高い。
6
実質賃金を計算する場合の物価指数は「持ち家の帰属家賃を除く総合指数」であるが、ここでは消費者物価の動向を把握する上
で用いられることが多い「生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)」ベースで解説する。
7
2015 年度の所定内給与の予測は、注図表 1 のように積み上げ方式で行った。まず、当社の春季賃上げ率(民間主要企業)の予測
(2.35%、ベア率 0.6%)を前提にすると、一般労働者の所定内給与は前年比 0.9%増加するとみられる(注図表 2)
。規模別で
は、大企業が前年比+1.0~1.5%、中小企業が同+0.2~0.5%のレンジとなる見込みである。また、パート比率上昇による所定
内給与の押し下げ効果は昨年(0.3%程度)よりもやや縮小し、0.2%程度になると想定している。最後に、一般労働者とパート
労働者を合わせた全体の所定内給与は前年比+0.3~0.6%(平均+0.5%)と試算される。
2
注図表1 所定内給与の予測方法(積み上げ)
注図表2 ベア率と所定内給与は正の相関関係
(前年比、%)
2015年度
(予測)
2014年度
(4~12月実績)
0.6
0.4
民間主要企業ベースアップ率
(所定内給与前年比、%)
2.5
2.0
民間主要企業のベースアップ率0.6%の場合
1.5
所定内給与
(一般労働者)
①
②
0.7~1.1
0.5
1.0
30人以上
1.0~1.5
0.9
0.5
5~29人
0.2~0.5
▲0.1
0.2
0.3
0 .3 ~0.6
0.1
所定内給与前年比+0.9%
0.0
▲ 0.5
パート比率上昇による
所定内給与の押し下げ寄与
①×70% 所定内給与
( パートを含む総労働者)
-②
▲ 1.0
▲ 1.5
0
(注)1.2014年度所定内給与の伸び率は、2014年4月~12月平均の2013年4~12月平均比。
2.2015年度所定内給与の伸び率は、民間主要企業のベースアップ率と所定内給与の相関をもとに
試算した値。所定内給与(一般労働者)の30人以上は、ベースアップ率から推計される所定内給与
の伸び率の過去の上振れ幅平均を、 5~29人は下振れ幅平均を用いてレンジを作成。
3.パートを含む総労働者の所定内給与は、総労働者に占める一般労働者割合70%を用いて算出。
(資料)厚生労働省「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況について」、「毎月勤労統計」、厚生労働省
・中央労働委員会「賃金事情等総合調査」、各種報道よりみずほ総合研究所作成
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
(ベースアップ率、%)
(注)1.2015年のベースアップ率は要求率2%に過去の妥結率3割と仮定し、0.6%とした。
2.2015年の所定内給与前年比は、1993年以降のベースアップ率との回帰式である
y=-0.1591+1.662x, Adjusted-R2=0.769 に基づいて算出した。
(資料)厚生労働省「毎月勤労統計」、厚生労働省・中央労働委員会「賃金事情等総合調査」
よりみずほ総合研究所作成
[共同執筆者]
経済調査部主任エコノミスト
風間春香
[email protected]
経済調査部エコノミスト
齋藤
[email protected]
周
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