新興国経済展望2015年3月号:景気の方向感は各国で

新興国経済展望
2015年3月5日
調査部 マクロ経済研究センター
http://www.jri.co.jp/report/medium/publication/emerging/
目 次
◆概観・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.1
(熊谷 章太郎/03-6833-6028/[email protected])
◆中国・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.2
(関 辰一/03-6833-6157/[email protected])
◆インド・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.5
(熊谷 章太郎/03-6833-6028/[email protected])
◆ブラジル・・・・・・・・・・・・・・・・・p.8
(芝
亮行/03-6833-0489/[email protected])
◆トピックス:景気低迷が続くロシア・・・・・p.11
(熊谷 章太郎/03-6833-6028/[email protected])
なお、本レポートは本号をもって発行を休止させて頂きます。
概観:景気の方向感は各国でバラつき
中国・インド・ブラジルの景気の方
向感にバラつき。実質GDP成長率
は、中国では緩やかな鈍化傾向が持続
する一方、インドでは2012年後半以降
持ち直し。ブラジルでは足元でマイナ
ス成長が持続。
製造業の新規受注は、インドでは好
不調の分かれ目となる50を上回る水準
での推移が続く一方、中国・ブラジル
は50前後で低迷。
PMI 製造業新規受注指数
実質GDP成長率(前年比)
(%)
中国
15
インド
(ポイント)
70
ブラジル
12
60
9
50
6
3
40
中国
0
政策金利の方向感も足元各国でばら
つき。中国では、企業の利払い負担の
軽減に向けて、昨年11月に続いて2015
年3月にも利下げを実施。インドで
も、インフレ鈍化を受けて1月に続き
3月に利下げ。一方、ブラジルでは、
中銀の目標を超える高インフレを受け
て利上げ。
OECD景気先行指数は、今後、各
国の景気は底打ち・持ち直しに向かう
ことを示唆。ただし、中国では住宅市
場の調整が、ブラジルでは資源価格の
低迷や引き締め気味の金融政策が景気
を下押しし続ける結果、力強い持ち直
しには至らない見込み。3ヵ国の景況
感は今後もバラつきが続く見込み。
インド
ブラジル
▲3
2008
09
10
11
12
13
14
(資料)各国統計
(年/期)
(注)ブラジルの2014年Q4値の公表時期は、基準改定の関係で
通常よりも約1ヵ月遅れ、3月末となる見込み。
30
2008
09
10
11
12
13
14
(資料)Markit
政策金利
15
(年/月)
OECD景気先行指数
(%)
18
(ポイント)
106
中国
インド
16
104
ブラジル
14
102
12
100
10
98
8
中国
96
6
インド
ブラジル
94
4
2
2008
09
10
11
12
13
14
15
(年/月)
(資料)各国統計
92
2008
09
(資料)OECD
10
11
12
13
14
15
(年/月)
(株)日本総合研究所 新興国経済展望 2015年3月5日
-1-
中国:景気は減速
GDP
実質成長率は緩やかに低下
堅調な消費が景気を下支え
最終消費(年初累計)
純輸出(年初累計)
GDP前年比(四半期)
(%)
14
12
10
8
6
4
2
0
▲2
▲4
▲6
2008
輸出
総資本形成(年初累計)
GDP前年比(年初累計)
(2012年=100)
130
110
100
90
80
10
11
12
13
14
(年/期)
賃金は年率10%程度の伸びを維持
小売売上は堅調
20
18
20
32
18
30
16
28
14
26
24
10
22
60
8
20
50
6
18
4
16
09
10
11
12
13
14
(年/月)
(資料)海関総署を基に日本総研作成
(注)米ドル建て輸出額の季調値。<>は2012年のシェア。
インフレ率は低下
昨年11月に続き、3月に追加利下げ
(%)
10
(%)
8.0
CPI(前年比、左目盛)
貸出基準金利(1年物、右目盛)
14
2
2008
09
8
7.5
6
7.0
4
6.5
10
11
12
13
14
(年/月)
(年/月)
(資料)国家統計局
為替
16
14
(%)
34
12
物価
平均賃金(前年比)
実質小売売上(前年比)
(%)
工業生産(前年比、左目盛)
固定資産投資(年初累計、前年比、右目盛)
70
40
2008
09
工業生産は底ばいで推移
固定資産投資は一段と減速
企業
(%)
22
世界 <100>
米国 <17>
EU <16>
アジア <23>
120
(資料)CEIC、国家統計局
家計
EU向けで減少が続くなか、米国向けでも
増勢鈍化の兆し
人民元の対米ドルレートは横ばい
対円レートは上昇
(元)
8.5
元
高
8.0
7.5
7.0
12
6.5
10
2
6.0
0
5.5
8
6
4
2008
09
10
11
12
(資料)国家統計局を基に日本総研作成
13
14
(年/月)
▲2
2008
5.0
09
10
11
12
(資料)国家統計局、中国人民銀行
13
14
15
(年/月)
6.0
対米ドル
対百円
5.5
5.0
2008
09
10
(資料)国家外為管理局
11
12
13
14
15
(年/月)
(株)日本総合研究所 新興国経済展望 2015年3月5日
-2-
中国:経済成長率は低下トレンド
景気は減速。消費は堅調さを維持す
る一方、固定資産投資の増勢鈍化に歯
止めがかからず。内訳をみると、不動
産開発投資と製造業の固定資産投資が
スローダウン。
先行き、経済成長率は低下トレン
ド。固定資本形成比率(固定資本形成
/GDP)が46%と高水準なほか、家
計及び非金融企業債務の対GDP比は
180%と新興国としては異例の高さに達
するなか、過剰投資・過剰債務の解消
は不可避。
実質GDP成長率(前年比)
固定資産投資
(%)
28
(%)
13
今後、市場が政府に代わって有望な
事業を選別し、資金配分を決定するよ
うになることで、鉄鋼業などの製造業
の固定資産投資は中長期にわたり伸び
悩む見通し。
全体
不動産開発投資
製造業
26
12
24
11
見通し
22
20
10
18
9
16
14
8
12
7
10
6
従来、収益性の劣る企業に対しては
地方政府や地元の金融機関が資金面か
ら支援。しかし、昨年には李克強首相
が一定のデフォルトを容認すると発
言。その結果、過剰生産に陥っている
ソーラーパネル産業で、大手メーカー
の社債がデフォルトとなり同社は倒
産。資金の出し手に慎重化の動きがみ
られ、債券市場において収益性の高い
事業を持つ企業とそうでない企業を選
別するという市場の機能が働き始めた
ことを示唆。
(除く農村家計、年初累計、前年比)
2008 09
10
11
12
13
14
(資料)国家統計局を基に日本総研作成
15
16
(年/期)
家計及び非金融企業債務の対GDP比
13
180.1
150
127.1
100
60.7
40.7
0
インドネ
インド
タイ
中国
シア
(資料)債務額はBISのtotal credit統計、名目GDPはCEICの
データを基に日本総研作成
(注)BISが家計及び非金融企業債務を公表しているアジア諸国
のうち、1人当たりGDPが1万ドル以下の国。
14
(年/月)
社会融資総量の内訳(残高ベース、%)
(2013年末)
(%)
200
50
2012
(資料)国家統計局
銀行オンバランス融資
人民元融資
外貨融資
銀行オフバランス融資
委託融資
信託融資
銀行引受手形
直接金融
社債
株式市場
その他
合計
2005年
86.7
82.9
3.8
5.6
4.1
0.0
1.5
5.2
1.5
3.7
2.5
100.0
2014年
69.1
66.3
2.8
17.5
7.6
4.4
5.5
12.6
9.5
3.1
0.8
100.0
(資料)中国人民銀行「2014年社会融資規模存量統計数据
報告」を基に日本総研作成
(注)その他とは、金融機関の不動産投資、その他ノンバン
クローン。
(株)日本総合研究所 新興国経済展望 2015年3月5日
-3-
中国:成長率の低下ペースは緩やか
今後、経済成長率は低下するものの、
そのペースは当局の景気てこ入れ策を受
けて、緩やかなものになる見通し。6%
台の成長率では、急進的なデレバレッジ
が発生し、景気失速に繋がる恐れも。す
でに、企業収益が悪化し、赤字企業が急
増。企業の資金繰りはリーマン・ショッ
ク時より厳しい状況に陥っており、企業
間信用などではデフォルトが多数発生。
実質GDP成長率(前年比)
(%)
14
15
12
12.7
13
12
見通し
11.3
11
9.6
10
6
9.3
9.2
10
8
10.4
9
7.7
4
7.7
7.4
7.2
14
15 16
(年)
7.0
7
2
0
6
2005 06
07
08
09
10
11
12
13
(資料)国家統計局を基に日本総研作成
2013
(%)
社会融資総量(右目盛)
銀行融資残高(前年比)
17
14
(年/月)
(資料)国家統計局
企業の業況判断DI(前年比)
銀行融資残高と社会融資総量
住宅の販売価格、販売床面積
(兆元)
3.0
(%)
2.5
16
2.0
主要70都市の新築住宅価格(右目盛)
分譲住宅販売床面積(前年比)
60
1.5
1.0
0.5
112
110
30
108
106
10
104
▲ 10
102
▲ 20
100
▲ 30
98
15
(年/月)
(資料)住宅の販売床面積は国家統計局の年初来累計値を基に
日本総研が月次値作成、新築住宅価格はロイター社の算
出値(出所は国家統計局)を基に日本総研作成
2012
13
2012
13
14
(資料)中国人民銀行
0.0
15
(年/月)
114
40
0
14
(2010年
12月=100)
50
20
15
これらの結果、銀行融資に底入れの動
きがみられ、株式市場も持ち直しの動
き。住宅販売は昨夏をボトムに前年対比
の減少幅が縮小し、住宅価格の下落ペー
スも鈍化。先行き、景気対策効果が一段
と顕在化し、景気失速は回避の公算。
(年初累計、前年比)
14.2
14
8
こうしたなか、2014年春頃から、中央
政府は地方政府の住宅購入規制の緩和を
黙認するなど、不動産市場の底割れ回避
に着手。加えて、インフラ投資を加速
し、景気をてこ入れ。さらに、企業の資
金繰り難の緩和に向け、資金供給を拡
大。昨年9~10月に主要銀行と農業商業
銀行などに対して総額7,695億元の資金供
給を行ったうえで、政策金利と預金準備
率を引き下げ。3月1日、昨年11月に続
く追加利下げを実施。
鉱工業企業の赤字企業数
(%)
13
14
(株)日本総合研究所 新興国経済展望 2015年3月5日
-4-
インド:景気は緩やかに持ち直し
GDP
2014年10~12 月期の成長率は建設業・製
造業の減速を主因に+7.5%と小幅鈍化
第1次産業
第3次産業
GDP前年比(旧基準)
(%)
12
輸出
米国向けは堅調ながら、アジア・欧州・中東
向けの低迷を受けて輸出は低迷
(2007年=100)
450
第2次産業
GDP前年比
400
10
350
8
300
6
250
4
200
2
150
(名目GDP比、%)
6
世界
EU<16.5>
北米<13.7>
ASEAN・日中韓<23.6>
中東・北アフリカ<20.5>
50
2008
▲2
2008
09
10
11
12
13
14
(年/期)
(資料)Ministry of Statistics and Programme Implementation
(注)旧基準はGDP要素費用ベース、新基準はGVA基本価格。
家計
乗用車は足元増勢が持ち直す一方、二輪車
は増勢が鈍化
(%)
70
乗用車販売台数(前年比)
60
二輪車販売台数(前年比)
50
0
▲2
▲4
▲6
▲8
▲10
09
10
11
12
13
14
15
国際資源価格の下落やルピー高を背景に
卸売・消費者物価ともに大幅鈍化
消費者物価(前年比)
(%)
14
▲12
2008
09
10
11
12
13
(資料)Reserve Bank of India
14
(年/期)
対ドルでは足元緩やかなルピー安
対ユーロ・対円はルピー高傾向が持続
為替
(ルピー)
90
卸売物価(前年比)
対米ドル
対ユーロ
対百円
12
80
10
40
70
8
30
20
6
10
4
0
60
50
ル
ピ
ー
2
▲10
40
0
▲20
▲30
2008
所得収支
経常収支
2
(年/月)
(資料)Reserve Bank of India
(注)季調値の後方3カ月平均。<>は2013年のシェア。
物価
財・サービス収支
経常移転収支
4
100
0
景気の持ち直しに伴う輸入増加を背景
に経常赤字幅は足元拡大
BOP
09
10
11
12
13
(資料)Society of Indian Automobile Manufacturers
14
15
(年/月)
▲2
2008
09
10
11
(資料)Ministry of Commerce
12
13
14
15
(年/月)
30
2008
高
09
(資料)CEIC
10
11
12
13
14
15
(年/月)
(株)日本総合研究所 新興国経済展望 2015年3月5日
-5-
インド:2015年度予算を公表
(%)
財政赤字
18
14
12
10
8
6
4
2
0
2000 02
04
06
(資料)Ministry of Finance
(注)2014年度は見込み値。
(%)
(計画) 3
2
14
16
(年度)
14
15
(年度)
(資料)Ministry of FInance 通信
13
科学技術
12
一般経済サービス
11
一般サービス
10
産業・
鉱業
0
09
12
2015年度(計画)
社会サービス
0
08
10
2014年度(見込み)
電力
1
(千億ルピー)
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
交通
1
07
08
分野別歳出
2
2006
歳出
(計画)
補助金支出
その他
肥料
食料
石油
合計(対名目GDP比率、右目盛)
(兆ルピー)
3
歳入
16
輸送・電力インフラ整備に向けた支出を7千
インフラ整備 億ルピー増加(総延長10万キロの道路を新
設、5つの巨大発電所を建設)
今後5年で国内鉄道向けに8兆5千億ルピー
の投資を実施
2017年度までに中央政府の財政赤字対名目
財政健全化
GDPを3%まで抑制
軍備の近代化に向けて国防費を前年度比
その他
11%増加
(資料)Ministry of Finance "Key Features of Budget 20152016" を基に日本総研作成
一方、歳入は、インフレ率の鈍化
が名目の税収の減少に作用するもの
の、景気の持ち直しを受けて、前年
比+4.6%増となる見込み。
政府は、今後、対内投資の拡大に
向けて法人税の段階的引き下げやイ
ンフラ支出の拡大を計画している一
方、2017年度にかけて財政赤字の対
名目GDP比を3.0%まで縮小する方
針を示しており、経済成長ペース対
比抑制気味の財政政策が当面続く見
込み。
法人税の基本税率を4年間で30%から25%
に引き下げ
税制の簡素化に向けたGST(Goods and
Services Tax)を2016年4月に導入
課税強化に向けたGAAR(General Anti
Aboidance Rule)を2年間先送り
外国人投資家向けの債券投資に関わる源泉
税率の引き下げ措置(20%⇒5%)の延長
税制
歳出は、輸送・エネルギーインフ
ラ向け支出を増額。もっとも、原油
国際価格の下落を受けた補助金支出
の縮小などもあり、全体では前年度
比+5.7%にとどまり、対名目GDP
比率は低下する見込み。
この結果、2015年度の財政赤字対
名目GDP比率は3.9%と前年度(同
4.1%)から小幅縮小する見込み。
中央政府歳出入(対名目GDP比率)
2015年度予算案のポイント
インド財務省は、2月末に2015年
度(2015年4月~2016年3月)の中
央政府暫定予算案を公表。
(資料)Ministry of Finance (Union Budget: Central Plan Outlay)
(株)日本総合研究所 新興国経済展望 2015年3月5日
-6-
インド:景気持ち直しが徐々に本格化
インドでは、①インフラ整備、各種規
制の緩和、行政手続きの簡素化などを含
む経済改革の進展に伴う対内直接投資の
拡大、②インフレ率の鈍化を受けた金融
緩和の再開などを背景に、景気の持ち直
し傾向が徐々に鮮明になる見込み。2015
年度の実質GDP成長率は、8%台と新
興国の中でもとりわけ高い成長を達成す
る公算。ただし、基準改定により足元の
成長率が約2%ポイント押し上げられた
ことが大きく影響しており、前年度から
の増勢の加速幅は1%ポイント程度にと
どまる見込み。
(%)
12
新基準
見通し
旧基準
実質GDP前年比
10
見通し
実績
2013年度 2014年度 2015年度
4.7
5.4
6.4
第1次産業
4.7
2.1
3.0
8
第2次産業
0.4
3.1
5.0
6.8
7.0
7.5
6
経常収支(名目GDP比)
▲ 1.7
▲ 1.6
▲ 1.8
4
中央政府財政収支
(名目GDP比)
▲ 4.6
▲ 4.1
▲ 3.8
60.1
62.5
-
第3次産業
対ドル為替レート(期末)
2
0
2006
成長率の加速ペースが緩やかなものに
とどまる要因としては、①土地収用の困
難さを主因にインフラ整備は緩慢な状況
が続くこと、②財政健全化の観点からG
DP対比では抑制気味の財政政策が続く
こと、③米国での利上げ観測に伴うイン
ドを含む新興国からの資金流出懸念など
を背景に、金融緩和は慎重なペースにな
ると見込まれること、などを指摘可能。
一段の成長加速には、GSTの導入を含
む税制簡素化、補助金の削減、インフラ
整備の進展などの経済改革を着実に進め
る必要。
景気指標の市場コンセンサス(予測中央値)
実質GDP成長率(前年度比)
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(資料)Ministry of Statistics and Programme Implementation (年度)
レポ金利(期末)
8.00
7.75
7.25
10年物国債金利(期末)
8.80
7.90
7.50
(資料)Reserve Bank of India
(注1)会計年度は4月~翌年3月。2014年10-12月期調査。
(注2実質GDPは旧基準の要素費用ベース。
政策金利
(%)
BRICSの実質GDP成長率
(%)
10
預金準備率
10
レポ・レート
8
リバース・レポ・レート
9
6
8
4
7
2015年(予測)
2
6
0
5
▲2
4
▲4
3
2008
2014年
09
10
11
12
(資料)Reserve Bank of India
13
14
15
(年/月)
インド
中国
南アフリカ ブラジル
ロシア
(資料)IMF、Ministry of Statistics and Programme
Implementation
(注)インド以外は2015年1月時点のIMFの予測値。インドは日
本総研予測値(年度)。
(株)日本総合研究所 新興国経済展望 2015年3月5日
-7-
ブラジル:14年10~12月期はマイナス成長に転じる見込み
GDP
10~12月期はマイナス成長に転じ、14年通年
もマイナス成長となる見込み
(%)
15
海外景気の減速、資源価格の下落により2014
年は15年ぶりに通年で貿易赤字に
(年率・億USドル)
GDP(前期比年率)
企業
鉱工業生産は弱い動きが持続
稼働率の改善は足踏み
(2012年=100)
貿易収支
3,000
経済活動指数(前期比年率)
10
輸出
110
5
2,000
0
1,500
輸入
85
設備稼働率(右目盛)
輸出
2,500
(%)
鉱工業生産(左目盛)
84
105
83
100
82
95
81
1,000
▲5
90
500
▲ 10
85
0
▲ 15
2008
09
10
11
12
13
▲500
2008
10
11
12
13
14
物価
小売売上数量(前年比)
(%)
実質所得(前年比)
16
14
10
12
8
10
6
8
4
6
2
4
0
2
80
2008
15
(年/月)
(資料)MDIC、BCB (注)後方3ヵ月平均。
12
インフレ率が中銀目標を超過するなか、中銀
は4会合連続となる利上げを実施
78
09
10
11
12
13
14
(年/月)
(資料)IBGE、CNI
為替
15
軟調な国内景気や原油安の進行により、
対ドル、対円でレアル安が進行
政策金利
(レアル)
3.0
対米ドル
消費者物価(IPCA、前年比)
2.8
対百円
2.6
2.4
09
10
11
12
(資料)IBGE (注)後方3ヵ月平均。
13
0
2008
14
(年/月)
2.2
2.0
レアル高
▲2
2008
09
レアル安
実質所得は伸び悩み
小売売上高はなお力強さを欠いた状況
(%)
14
79
14
(年/期)
(資料)IBGE
(注)2014年10-12月期のGDPは基準改定により3月27日に発
表されるため、GDPの先行指標である経済活動指数を使用。
家計
80
1.8
目標レンジ
1.6
1.4
1.2
09
10
11
12
(資料)IBGE、BCBを基に日本総研作成
13
14
15
(年/月)
2008
09
10
(資料)Bloomberg L.P.
11
12
13
14
15
(年/月)
(株)日本総合研究所 新興国経済展望 2015年3月5日
-8-
ブラジル:一段の金融引き締めが進む公算大
原油安を背景としたディスインフレ
懸念や欧州中央銀行による量的緩和導
入に伴う自国通貨高への対応として、
新興国各国が軒並み金融緩和を行うな
か、ブラジル中銀は3月4日に4会合
連続となる利上げを実施し、政策金利
は12.75%まで上昇。
背景としてインフレ率(IPCA)
の高止まりが指摘可能。昨年半ば以
降、インフレ率の高止まりが続き、15
年に入ると、上昇ペースが更に加速。
バスなどの公共交通機関の運賃値上
げ、大規模な干ばつによる食料品価格
の上昇、水不足による水力発電から火
力発電へのシフトに伴う電気代の高騰
などにより1月のインフレ率は、政府
目標上限を大きく超え、前年比+
7.14%に。ガソリン価格をはじめ、ブ
ラジル政府の価格規制策により、原油
安の物価押し下げ効果が限られている
こともインフレ率高止まりに作用。
先行き、失業率が上昇傾向にあるな
ど労働需給が緩和し始めており、賃金
面からの物価押し上げ圧力は限定的と
なる見込み。もっとも、緊縮財政によ
る補助金の削減や増税、公共料金・燃
料価格といった政府統制価格の引き上
げが物価上昇圧力となり、インフレ率
の高止まりが続くとみられ、一段の金
融引き締めが続く公算大。
フラジャイル5の政策金利の変化幅
消費者物価指数と政策金利
(%)
▲
▲
▲
▲
(%)
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
-0.2
-0.4
-0.6
-0.8
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
ブラジル
インド
インド
ネシア
トルコ
南アフリカ
(資料)Banco Central do Brasil、Reserve Bank of India、Bank
Indonesia、Central Bank of the Republic of Turkey、South
AfricanReserve Bankを基に日本総研作成
(注1)期間は2014年12月から足許まで。
(注2)南アフリカは変化なし。
14
政策金利
12
10
消費者物価指数
(IPCA、前年比)
8
6
4
2
0
2010
その他
運輸
1.2
電気・ガス
家賃
1.0
食料品
IPCA
12
13
14
15
(年/月)
(資料)IBGE
(注)点線は中銀インフレ目標、 塗りつぶし部分は目標の範囲。
消費者物価指数(IPCA、前月比)
(%)
1.4
11
ガソリン価格と原油価格の推移(前年比)
(%)
100
ガソリン価格
80
60
0.8
40
0.6
20
0.4
0
0.2
▲ 20
0.0
▲ 40
▲0.2
▲ 60
2010
▲0.4
WTI原油価格
11
12
13
14
15
(年/月)
▲0.6
2013
14
15
(年/月)
(資料)IBGE
(資料)Thomson Reuters、
Agência Nacional do Petróleo, Gás Natural e Biocombustíveis
(注)WTI原油価格は月中平均値。
(株)日本総合研究所 新興国経済展望 2015年3月5日
-9-
ブラジル:15年も低成長が続く見込み
15年入り以降も、大幅な成長加速は
期待薄。ブラジルでは14年にプライマ
リー・バランスが赤字に転じ、格付け
の投資不適格への引き下げが懸念され
るなか、ルセフ政権は緊縮財政を推進
すると発表。これまでのばらまき政策
から一転、増税や補助金の削減などが
打ち出されるなか、消費者マインドは
一段と悪化しており、個人消費は減速
感が強まる見込み。
一方、企業部門では、先行き、米国
の景気回復による輸出持ち直しが期待
されるものの、中国の景気減速懸念の
高まり、原油・鉄鉱石をはじめとした
資源価格の下落等が下押しに作用し、
外需は伸び悩みが続く可能性。また、
内需でも輸出伸び悩みや緊縮財政によ
る公共投資削減などにより生産活動が
停滞する恐れがあり、企業部門は盛り
上がりに欠ける状況が続く見込み。
インフレ率の高止まりも、実質金利
の高止まりを通じて、引き続き家計・
企業部門の抑制に作用する可能性。
以上から、内需・外需ともに景気を
けん引する力を欠き、ブラジル経済は
15年も低成長が続く見込み。
実質GDP成長率の見通し(前期比年率)
(%)
総固定資本形成
政府支出
GDP前期比年率
12
10
消費者マインドと小売売上高
実質小売売上高(左目盛、3ヵ月移動平均)
純輸出
個人消費
(%)
予測
8
12
6
10
4
2
0
▲2
13
14
15
(年/期)
(資料)IBGE
120
110
4
105
0
12
125
115
▲6
11
130
6
2
▲8
100
95
90
▲2
2010
11
13
85
15
(年/月)
14
フラジャイル5の実質金利
世界
EU諸国<18.7>
ラテンアメリカ統合連合<18.3>
中国<18.0>
アジア(除く中国)<14.6>
米国<12.1>
(2012年=100)
140
120
政策金利
(%)
12
10
8
6
4
2
0
▲2
100
80
40
10
11
12
13
14
(資料)MDIC
(注)季調値の後方3カ月平均。<>は2014年のシェア。
15
(年/月)
インフレ率
実質金利
ブ
ラ
ジ
ル
60
09
12
(資料)IBGE 、FGV
地域別実質輸出
20
2008
135
消費者信頼感(右目盛)
8
▲4
2010
(2005年9月=100)
14
イ
ン
ド
イ
ン
ド
ネ
シ
ア
12
10
8
6
4
2
0
-2
ト
ル
コ
南
ア
フ
リ
カ
(資料)各国中央銀行、各国統計局・労働局を基に日本総研作成
(注)2015年1月時点。実質金利は、「政策金利-消費者物価上昇
率」で算出。
(株)日本総合研究所 新興国経済展望 2015年3月5日
- 10 -
景気低迷が続くロシア
景気低迷が長期化しているロシア経済
は、2014年半ば以降、各国からの経済制裁
や原油価格の下落、それらをきっかけとし
た株安・通貨安などを受けて景気下押し圧
力が一段と強まり。
今後についても、ルーブル安を受けたイ
ンフレ圧力の高まりを背景に、引き締め気
味の金融政策が続くことから、耐久財消費
や投資は低迷が続く見込み。1998年のロシ
ア金融危機時と比べると、対外債務の支払
い能力は高まっており、当時のような深刻
な経済危機に陥るリスクは低いものの、先
行き楽観できない状況。
(%)
15
10
IMF予測
0
0
30
40
1500
50
▲5
▲ 30
▲ 10
▲ 60
1000
60
株安・ルーブル安
500
▲ 90
▲ 15
14
15
(年/期)
70
2010
▲ 10
12
▲ 15
10
▲ 20
8
▲ 25
12
13
14
(資料)Moscow Exchange、Central Bank of Russia
15
(年/月)
(倍)
25
対短期債務残高
14
▲5
11
外貨準備の対短期債務/月次輸入倍率
政策金利(1週間物レポレート)
1日物レポレート
CPI
16
0
20
為替(右逆目盛)
2000
30
(%)
18
製造業企業信頼感指数
(1ドル=ルーブル)
株価(左目盛)
2500
政策金利とCPI前年比
消費者信頼感指数
20
対月次輸入額
15
10
6
▲ 30
5
4
▲ 35
2
▲ 40
2005 06 07 08 09 10 11 12 13
(資料)Federal State Statistics Service
(注)企業信頼感の2015年Q1値は1〜2月の平均値。
(ポイント)
60
5
消費者/製造業企業信頼感指数
5
(%)
90
実質GDP(左目盛)
原油価格(右目盛)
2005 06 07 08 09 10 11 12 13
(資料)Federal State Statistics Service、IMF
(DI)
10
株価と為替
原油価格と実質GDP(前年比)
14
15
(年/期)
2008
09
10
11
12
13
14
15
(年/月)
(資料)Federal State Statistics Service、Central Bank of Russia
(注)2013年9月以前は1日物レポレートが事実上の政策金利。
0
1993 95
97
99
01
03
05
07
09
11
(資料)Central Bank of Russia, IMFなどを基に日本総研作成
13
(年)
(株)日本総合研究所 新興国経済展望 2015年3月5日
- 11 -