添付資料-Ⅰ TV 機器・TV 放送の動向と考察

添付資料-Ⅰ TV 機器・TV 放送の動向と考察
<以下の資料と共に構成されている>
表-1 TV 機器出荷台数とメーカの動向
表-2 各メーカのスマート TV 主力機種の特徴
表-3 ネット接続 TV 予測とスマート TV 調査
表-4 スマート TV 機能比較(パナソニックと LG)
表-5 NHK と地方局のデータ放送実態調査
表-6 民放のデータ放送実態調査
参考文献・サイトなど
1.TV 機器の動向(高精細化とスマート TV 化)
(1)TV 機器の販売状況(表-1:TV 機器出荷台数)
2012 年 7 月 24 日の地上波デジタル放送移行完了に合わせた需要が終わり、以降販売
は減少している。
国内出荷は 2008 年まで 1000 万台/年前後で推移したがデジタル放送移行需要で 2009
年 1300 万台、2010 年 2500 万台、2011 年 2000 万台弱と急増した。地デジ移行完了
の 2012 年 645 万台、2013 年は 538 万台、以降も 500 万台~600 万台/年で推移すると
思われる。これからの TV 機器需要は、2 年ごとのスポーツイベントであるワールドカ
ップサッカー(ブラジル:2014 年)
、オリンピック(ブラジル:2016 年)、冬季オリンピ
ック(大邱:2018 年)などに合わせて刺激されると思われる。しかし、次に大きく需要
が伸びるのは 2011 年 9 月のデジタル化に備えて販売された TV 機器(2009 年~2011
年 7 月頃までに販売された TV 機器:30 インチ前後と 45 インチ~55 インチの製品)
の買い替え時期と東京オリンピック開催が重なる 2020 年頃と予測されている。
(2)2014 年春段階での機能動向
((表-2)および量販店(ヤマダ電機、ビックカメラ、ノジマ電気など)の店頭ヒア
リング、2013 夏・2014 春モデルのカタログ、Web 調査などによる)
・高精細化(4K/8K 放送や VOD)と個人化が進み将来は IP で統合される。個人化は
ハイブリッドキャストが代表例でネット社会では常識的な SNS、レコメンデーショ
ン、見る人毎のターゲット広告などが含まれる。
(参考文献1)
・2014 年 3 月時点で国内で販売している全メーカ共に4K 対応をしてきている。中で
もソニーの4K 機器への積極的販売姿勢が目立つ。
(売れ行きはそこそこ、一部の高
所得層に売れている・・・・量販店店員)
・
「価格.com」のユーザ 5,856 人を対象にインターネット調査(2013 年 10 月 10 日~
10 月 16 日実施)
「4K テレビについてのアンケート!2013--次世代テレビは普及
1
するのか!?-」の結果、4K テレビの認知度は全体の 86.5%だったが、所有率はわ
ずか 0.7%にとどまった(参考文献12)
・ネット接続できる TV 機器の普及は(表-3)、
(表-4)に見るように 2014 年初頭
では半数前後(内ネット接続の比率は 15%程度)
、スマートTV機能を持ったTV機
器は 30%程度(内スマート TV の機能の利用は 5%程度)と普及はこれからである。
・TV 機器として東芝は全録機能、三菱はブルーレイを本体に内蔵と特徴がある。
2. TV 機器と放送改革の動き(参考文献1より編集)
(1)産官学の団体「次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)」の発足(2013 年 6 月)
2013 年 9 月に NHK が始めた『ハイブリッドキャスト:HTML5 技術を基にした放
送と通信の連携サービス』を手始めに、4K、8K 放送の早期実現を 2 年ごとの大き
なスポーツイベントにタイミングを合わせて進めるというものである。
(2)高精細化(4K 化/8K 化)の動き
・2014 年春~7 月;NexTV-F がスカパーJSAT の CS で4K 放送開始<衛星経由>
・ NTT ぷららが IPTV で4K 放送提供<通信回線利用>
・ケーブルテレビでの実施
・8K 放送は、2016 年半ばに CS 又は IPTV で計画
(3)個人化の動き
・ハイブリッドキャストによる個人化
-ハイブリッドキャストは、HTML5 を基にした視聴者個人の属性や好みに合わせた
きめ細かい情報サービスを実現するもので SNS、レコメンドサービス、ターゲッ
ト広告などができる。2001 年に始まったデータ放送とは情報量、多様性で異なる。
将来、データ放送はハイブリッドキャストに吸収されるといわれている。
-2013 年 9 月に NHK が実験を始めたが、実験開始時に販売されている受像機は東
芝「レグザ」のみであった(2013 年夏時点)が、この後パナソニック「ビエラ」
、
シャープ「アクオス」の一部機種にも搭載されている。NHK に続き 2014 年には
民間放送局も 1 月の TV 東京を皮切りに 3 月のフジ TV まで実証実験を行った。本
放送は 4 月以降といわれているが未確定の状態である。
(参考文献13)
-ハイブリッドキャストは、まだ対応放送局の少なさ(NHK でさえ近未来技術であ
りスモールスタートするといっている)
、現状のコンテンツはデータ放送と大差が
無いなどの課題があり、普及にはかなりの時間がかかると思われる。日本独自技
術でガラパゴス化の懸念もある。
・番組連動サービス(ゲームとの連動など)の実現
-時差再生 (放送で見逃した部分を再生)
-マルチビュー(番組で利用している複数カメラを視聴者が選択して見られる)
-番組参加(番組中に視聴者の感想の共有、番組内での反映)」
2
-アーカイブス動画クリップ(視聴履歴を活用して放送番組の関連映像をリコメン
ドするなど)
・TV機器の個人化と個人向けサービス
-SNS連携、画面のレイアウトのカストマイズ、個人の視聴履歴に応じた動画の
リコメンド機能の提供など。
・TV の個人化とネットの違い
ネットで実現されている個人化(個人間のつながりや個人の好み)の単なる追随で
はなく、不特定多数の人(100 万人単位~数千万人)を対象にした放送と個人に向けた
情報サービスの共存は新しい分野を開くものと言われている。以下の例などもこれ
から可能性があると言われている。
-CMの個人化(ネットの個々人向けと異なる)
:100 万人単位のマスの魅力も残し
ながら視聴者の性別、収入、住所などの属性によって同じメーカの複数商品を流
し分ける
-NHKが「CEATECJAPAN2013」で展示した語学番組でアニメの登場人物
のセリフの吹き出し言語を視聴者が自分で選べるようにして視聴者が学びたい言
語の学習が出来る例など
(4)放送と通信の IP(インターネットプロトコル)での統合
当面は、放送用帯域を使った主画面と通信回線で得られる個人向けコンテンツをセカ
ンドスクリーンに表示する方向であるが、いずれTV放送主画面に個人向けコンテン
ツが表示され、これら個人向け映像も高精細化が求められ将来両者は融合していく。
TVは、ゆくゆくは映像コンテンツのハブになっていく。現状は未だ新しい技術(ハイ
ブリッドキャスト、ストリーミング(MPEG-RUSH、MMT、DivX、IP
DC・・・)
、自動コンテンツ認識ACRなど)が乱立している状態であり、実現方法は
流動的である。
3.TV 放送の動向
(1)TV 視聴の傾向の変化
・若者の「TV 離れ」
、TV を見ながらも意識はスマホやタブレットにある「ながら視聴」
など現在は様々な通信サービスの台頭で TV 放送の価値が相対的に下がってきてい
る(参考文献1)。
・
(参考文献17)によれば1ヶ月に 1 回以上 SNS を利用する人は LINE が 30.5%、
Twitter が 27.2%、facebook が 26.2%などとなっている。TV 視聴時の SNS 利用で
は、Twitter が最も利用されていて、「TV を見ながら Twitter を見る(開く)」人が
Twitter 利用者のうち 69.5%。Twitter 利用者で「見ている番組の関連情報を Twitter
で見る」人が 42.3%、
「見ている番組に関するつぶやきや書込みを Twitter でする」
人が 43.4%となっている。
3
「TV を見ながら各ソーシャルメディアを見る(開く)」では、他の 3 つの SNS
(Facebook、mixi、LINE)でもそれぞれ 5 割を超えているが、「見ている番組の関連
情報を見る」
「見ている番組に関連するつぶやきや書き込みをする」では、3 つの SNS
共に 3 割を切り、Twitter との利用状況の差が表れた。
・録画番組の視聴の増加(広告スキップ、早送り・・・1週間分全録機能付きの機器
も出てきている)
・TV 機器・TV 放送で提供されている多岐にわたる機能が使用されていない(ネット
接続の割合の低さ、スマート TV 機能の不使用)
(表-3)
・多様な機器との連携(スマホ連動、TV 接続 HDD に TV 録画以外のコンテンツ保存
と TV 以外からの視聴など)がサポートされているが利用は限定されている
・TV 機器を利用した放送以外の利用(VOD、Youtube、Skype、カラオケ、ショッピ
ングなど)の可能性も未知である。
・最新のスマート TV でも操作は簡便とは言えない。抜本的な操作性の向上への努力が
望まれる。
(2)有料放送の増加
地デジ放送済みのものを後から有料視聴するものや BS/CS の有料チャンネルなどが増
加している。
(3)グローバル対応の普及不十分
NHK ワールド TV、NHK ワールドオンライン(国内のテレビ放送のインターネットに
よる同時配信は東日本大震災時などを除いては行っていない。NHK ワールド TV は同
時配信を行っている)
、多言語対応は英語のみで、他に一部字幕の試行が行われている
程度)
、Ustream など外部のツールを使ったリアルタイム配信も未だである。約 200
万人の在住外国人 1000 万人超の観光客には NHK ワールド TV がインターネットで視
聴でき、また視聴アプリをダウンロードすればスマホで視聴できるが周知不足は否め
ない。
(参考文献-22)
(4)新しいスマホ向け TV 放送 NOTTV(参考文献23)
2012 年 4 月開局のスマホ向けの新しい放送局でリアルタイム視聴のほかにタイムシフ
ト視聴や SNS 連動機能がある。2014 年 3 月末現在の契約者数が 160 万件超程度。
(5)SNS 連動番組の増加
・TV 放送と SNS が連携した番組が増えているが、現状はまだ手探り状態である。
「ソー
シャルテレビ・アワード 20XX」は、疎遠だったソーシャルメディアと TV が急接近す
る動きの中で、その連携や複合的活用に先進的な取り組みをしたテレビ番組を表彰す
るという趣旨で 2012 年度から始まったもので以下が表彰された。(参考文献16)
★第1回:
「ソーシャルテレビ・アワード 2012」<全 29 番組応募>
-大賞:ドラマ「SPEC~翔~」(TBS)
;オンエア中に、Twitter での投稿を呼びか
け、寄せられたツイートをデータ放送画面で配信する取り組みで放送時間中の
4
Twitter 投稿数は 1 分当たり平均 231 件
-日経デジタルマーケティング賞:「ワールドビジネスサテライト」(TV 東);番組
公式 Facebook ページのファン数が 15 万人超と、1 位、国内 Facebook ページと
しても有数の規模
-日経エンタテインメント!賞:
「ZIP!」
(日テレ)
;番組の看板犬が全国を旅する様子
を Twitter に投稿する「ZIP! カメラアプリ」を既に 20 万人以上が利用。撮影し
た写真は、SNS 上に投稿、番組内で紹介するなど、ソーシャルメディアへの
多面的な取組みを評価
-特別賞:
「NEWS WEB 24」
(NHK)
;NHK のニュースサイトでアクセス数の多い
話題を番組内で取り上げ、Twitter で寄せられた投稿を、放送画面内に表示して紹
介したり、キャスターが読み上げたりするなど、積極的な取り組み
★第2回:
「ソーシャルテレビ・アワード 2013」<全 28 番組応募>
-【大賞】
:
『TV60 NHK×日テレ(日テレ×NHK) 60 番勝負』(NHK/日テレ)
;
2013 年 2 月
2 夜にわたって「面白い」と思った瞬間に、データ放送またはスマ
ホから「イィ」ボタンが押されたのをリアルタイム表示、お茶の間の盛り上がり
を可視化
-【日経デジタルマーケティング賞】
:『めざましテレビ(フジ);月~金曜朝放送中
番組専用アプリ「めざましアプリ」を導入、「めざましじゃんけん」の開始など、
新たな視聴者参加型企画を次々と展開する積極性を評価
-【日経エンタテインメント!賞】
:
『孤独のグルメ Season2』
(テレ東)
;2012 年 10
~12 月、水曜深夜放送 Twitter などへの番組関連の投稿数が圧倒的に多いのが
特徴
-【特別賞】
:
『リアル脱出ゲーム TV』
(TBS)
;2013 年 1 月 1 日、4 月 5 日放送 番
組放送開始と同時に立ち上がる特設サイトにスマホや PC でアクセス。ドラマと同
時進行で表示される謎解きに挑む連動性の高さがドラマへの没入感
・NHK 放送技術研究所の試み
過去の番組を観れる VOD サービスに口コミなどのコミュニティ機能などで評価する
SNS 機能連携の試みがある(参考文献18)
4.データ放送の現状と東日本大震災時の対応
(1)データ放送の現状(2014 年 4 月時点再調査:(表-5及び表-6)
)
ニュース、スポーツニュース、芸能関連、番組宣伝、天気予報、災害情報、交通機関
運行情報など各局に温度差はあるが、内容は一年前に比べ充実度を増してきている。
殆んどすべての TV 機器がデータ放送の仕組みは備えており、ハイブリッドキャストは
昨年からの開始のため対応機器の普及がすぐには期待できない。これから数年の災害
時対応はデータ放送の活用が現実的である。
5
(2)データ放送による東日本大震災時の対応(参考文献14)
・全国紙 5 社共同の防災意識や行動について、また東日本大震災から半年時点での企業
の被災地支援についての意識などの調査結果によると
-東日本大震災/原発事故以降、重要度が増したメディア/情報源(半年後の調査結果)
1. 新聞(83.4%)
2. テレビ放送(NHK)(82.1%)
3. テレビ放送(民放)(69.9%)
で、新聞と NHK が突出している (2011 年の東日本大震災直後の調査との変化が少
なかった)。
-東日本大震災時の TV と SNS の連携例について(添付資料-Ⅲに詳細)
連携が行われた結果多様な発信主体による新たな情報空間が生まれた。キー局と地
方局という構造での情報の流れから地域やコミュニティを軸とした情報の流れへと
変化した。これは域外避難者への情報保障という点からも顕在化している
(参考文献21 報告 3 ページ 268)
5.TV 機器・TV 放送・データ放送の動向と大災害時対応への考察
次の TV 機器需要のピークは 2020 年の東京オリンピック前と予測されている。この頃に
は、4K(/8K)による高精細化/個人化/ハイブリッドキャスト放送などが本格的
になっており、TV のスマート化が当たり前になっていると思われ、大災害時の対応には
新しい機能・新しいサービスが期待できる。
しかし、それまでの数年間の大災害時の現実的な対応は、普及の進んでいる機器で普及
の進んでいる機能はデータ放送であり、これの充実化が重要である。
(1) 大災害時にデータ放送に必要な要件
・基本的には、日常からデータ放送を視聴する習慣ができており、日常の操作の延長に
災害時の対応が出来ることが望ましい。このためにデータ放送は以下が必要である。
-情報が常に最新に更新されていることが日常もデータ放送を視聴する動機となる
(現状はニュースなども含めて情報が古く更新頻度も少なすぎる。2014 年 2 月の大
雪時には鉄道の運行状況などが欲しい内容であったが NHK には用意されておらず、
民放には用意されている局もあったが昼前に未だ 8 時 05 分の状況が掲載されている
だけであった。リアルタイムでの情報が必要であり、少なくとも 30 分間隔ごとに更
新されるようでなければ意味が薄れ参照する気にもならない)
-視聴者が大災害時に戸惑わないようにどのチャンネルを視聴していても基本的な情
報が存在しており、操作も簡単で共通化されていることだ大切である
-定期的な訓練の場が設けられていること(毎年 3 月 11 日と 9 月の防災の日、毎月 11
日は訓練のための手順が用意されているなど)
-災害弱者対応のサービスが行われること
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★音声読み上げ(視覚障害者対応)
★多言語化(外国人対応:まだ行っているところは無い)
-主要ニュースなどが消え去らないようにアーカイブとして残すことも必要
(2)TV の個人化は SNS で実現されている個人間のつながりや個人の好みの単なる追随
ではなく、不特定多数の人(100 万人単位~数千万人)を対象にした放送と個人に向けた
情報サービスの共存はどのような新しい分野が開かれるか期待したい。大災害時対策
には以下のようなことが実現可能と思われる。
-自治体から個々人宛の避難指示メッセージの TV 画面への表示
-自治体から各自治会宛(小さな集団宛)のメッセージの TV 画面への表示
-最寄り駅単位の交通情報の TV 画面への表示
-町単位の安否情報の TV 画面への表示
など個々人宛や小さな集団宛の指示や連絡事項などが可能になると思われる。
・緊急時(竜巻、台風、集中豪雨などのライブ番組(ニュース番組、取材・・)
)と SNS
を連動することで新しいライブの形態が作れるか、関係者の対応に期待したい。
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