法令文書における「オープンコーディング」

ISSN 1346-9029
研究レポート
No.419 March 2015
立法爆発とオープンガバメントに関する研究
-法令文書における「オープンコーディング」の提案主席研究員
榎並
利博
要旨
社会における様々な問題を解決したり、IT などの新技術を社会で有効に活用したりする
ためには、従来の社会制度、特に法律を新しい制度や技術に合ったかたちへと迅速に改正
していく必要がある。換言すれば、社会構造の変化が人々の生活を悪化させないよう、ま
た IT などの新技術の国際的な競争力を高めるために、立法過程を迅速かつ効率的に進める
ための社会基盤が必要である。本研究は、今後の社会変動や技術革新に直面する将来の世
代のためにも、より効率的な立法という社会基盤の実現のため IT が大いに貢献できるとい
う仮説のもと、法律と IT のあるべき関係性について探求したものである。
我が国における立法環境を定量分析すると、近年法律の制定や改正が激増する「立法爆
発」1という現象が生じており、それによって立法ミスが多発するなどの社会的問題も起こ
っている。一方、法律と IT との関係から問題を捉えてみると、技術進歩に法改正が追いつ
いていない現状があると同時に、IT や法令工学によって立法爆発問題を解決しようという
努力が、法的制約による限界や工学的考え方の行き詰まりによって壁に突き当たっている。
そこで、電子政府の世界的な潮流であるオープンガバメントの考え方から立法爆発を捉
え直し、解決するための方法について検討を行った。その結論として、透明性・参加・協
働という基本理念の下で、多くの人や機械が法律の制定や改正に関わり、かつ促進させる
ことができるような社会基盤である「オープンコーディング」という考え方を提唱する。
下記がオープンコーディングの原則であり、オープンコーディング規約については実際
のマイナンバー法に適用し、その適用結果を検証することでオープンコーディングの可能
性の大きさを提示することができたと考える。
① 法令文書の原本は電子ファイルとし、インターネットを介して法令提供データベース
で提供する法律を原本とすること。
② 法令文書のバージョン管理を行い、現時点および過去のある時点での法律を即時に提
供できるようにすること。年の記述については和暦ではなく、西暦を使うこと。
③ 法令文書の書式は横書きとすること、漢文調の片仮名・文語体を平仮名・口語体に書
き直すこと、簡潔に記述すること。
④ 法令文書の書式は、オープンコーディング規約に則ること。
⑤ 法令文書の制定・改正について、国民が参加できる協働立法作業環境を提供すること。
キーワード:法律、立法、法令工学、オープンコーディング、オープンガバメント、ソー
シャルコーディング
1
宇野(2014)における用語。「立法のインフレーション」、「立法の洪水」という言葉を使う
立法学者もいる。
目次
1.研究の背景・目的と研究の枠組みについて
1.1 研究の背景・目的
・・・・・
1
1.2 研究の枠組み
・・・・・
2
2.1 立法学の見方-立法爆発
・・・・・
3
2.2 立法環境に関する問題の定量的な把握
・・・・・
6
2.2.1 法律の制定
・・・・・
6
2.2.2 法律の改正
・・・・・
8
2.2.3 整理法と整備法について
・・・・・ 10
2.法律の置かれている状況
2.3 立法のミス
・・・・・ 13
2.3.1 1990 年から 2003 年までの立法ミス
・・・・・ 13
2.3.2 2004 年以降の立法ミス
・・・・・ 14
2.3.3 官僚や法曹界による立法チェックの限界
・・・・・ 16
3.法律問題と IT
3.1 法律と IT との関係
・・・・・ 18
3.1.1 IT 関連の法律について
・・・・・ 18
3.1.2 法律に対する IT 支援について
・・・・・ 20
3.2 法律と IT に関する先行研究について
・・・・・ 25
3.2.1 法律と IT に関する学問体系
・・・・・ 26
3.2.2 法令文書の言語処理に関する現状と課題
・・・・・ 28
3.3 法律問題のまとめ
・・・・・ 30
4.電子政府とオープンガバメント
4.1 オープンガバメントの潮流
・・・・・ 32
4.2 オープンガバメントから捉えた立法問題
・・・・・ 35
4.3 ソーシャルコーディング
・・・・・ 36
5.オープンコーディングの提案
5.1 オープンコーディングの基本理念と原則
・・・・・ 38
5.2 法令文書のオープンコーディング規約
・・・・・ 39
5.3 オープンコーディングのメリットと適用結果
・・・・・ 43
6.まとめ
・・・・・ 47
付録 具体的な適用例:マイナンバー法
・・・・・ 48
参考文献
・・・・・ 85
1.研究の背景・目的と研究の枠組みについて
1.1 研究の背景・目的
経済状況や人口構造の変化など、さまざまな要因に伴って、この社会にはいろいろな問
題が持ち上がってくる。人々が安心して生活できるよう、社会的課題に取組み、問題を解
決していくためには、迅速な法律や制度の整備が必要になることは言うまでもない。これ
は新たな技術が登場する場面でも同じである。
技術が社会に利益をもたらし、不利益をもたらさないようにするためには、その技術を
正しく利用するための法律や制度の整備が必要である。筆者はこれまで、IT という技術の
社会的な利益を最大化するために、我々はどのように IT を活用していくべきかというテー
マで研究を行ってきた。しかし、そこで直面したのは技術ではなく、常に法律であった。
筆者は、榎並(2000)で電子政府・電子自治体の推進を訴えたが、それは IT 基本法(高度情
報通信ネットワーク社会形成基本法)として実行に移されることになった。また、自治体へ
庁内 LAN や一人一台パソコンの導入を訴えた時も、地方分権一括法(地方分権の推進を図
るための関係法律の整備等に関する法律)を根拠に、自治体における BPR は不可能だという
定説を覆すことで IT 導入を推進していくことができた。
その時主張した住民基本台帳法への外国人の記載については、後に外国人登録法の廃止
と住民基本台帳法の改正によって実現することになり、法改正やシステムの概要設計にお
いて大きな貢献ができたと考えている。その後、筆者はマイナンバー法(行政手続における
特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)の制定にも関わることになるが、
当時の外国人管理の設計が誤っていれば、マイナンバーの設計も難しいものになっていた
であろうと想像される。
もちろんすべてが実現できたわけではなく、著作権法や情報公開法の問題は先送りにさ
れたが、近年のオープンデータの潮流のなかで見直さざるを得なくなってくるものと考え
られる。また、文字コード問題については再三論文等でその問題を指摘しているが、まだ
法制化の目処も立っておらず、官民の間における電子情報流通の大きな妨げとなっている。
このように社会に新しい技術が登場した時、その技術が適切に活用され、社会的な利益
をもたらすためには、社会的なルールである法制度を新しい技術の観点から見直していか
なくてはならない。IT に限らず新たな技術が登場すれば、従来の法制度を解釈し直すだけ
でなく、法制度そのものを改正していく必要性に迫られる。革新的な技術が次々と登場す
る現在、技術立国を目指すならば、新技術に対応した法制度の迅速な改正作業が望まれる。
ところが近年、そのような法制度の整備について、法律そのものや法律の制定(立法)環境
の悪化が進んでいるように見受けられる。その理由として、下記のような理由が考えられ
る。
・ 法律の制定や改正が頻繁に起こると同時に、法律が相互に複雑に絡み合い、法律の関係
1
性が(技術者を含む)一般国民にとってわかりづらい。
・ 法律の条文が独特なルールで記述されているため、(技術者を含む)一般国民にとってわ
かりづらい。
そして冒頭で述べたようにこれは技術だけの問題ではなく、変化の激しい現代社会にお
いて、社会的問題を迅速に解決していくためにも必要とされるものである。特に、グロー
バル化や高齢化の波に晒される将来の世代にとって、より効率的な立法という社会基盤を
実現することは大きな意義があるだろう。
このような問題意識のもと、IT を前提とした「新たな立法環境」という社会基盤の実現
可能性を示すことが本研究の目的である。期待効果として、法律の条文や立法環境が改善
され、法制度の再解釈や改正作業が効率的に行われることで、多くの社会的問題が迅速に
解決されるとともに、新技術の迅速な適用によって社会に利益がもたらされ、我が国の人々
の生活を安定化し、技術開発やイノベーションを強力に推し進めることになるだろう。
1.2 研究の枠組み
本研究にあたっては、次のステップを踏んで進めていった。
第 1 ステップ
研究の背景となっている「法律そのものや立法環境の悪化」について、その状況を把握
する。立法学から見た捉え方、立法爆発の定量的把握、立法爆発がもたらす問題について
整理を行う。
第 2 ステップ
法律と IT との相互の関わり合い、および法律問題を IT で解決するという方法論の先行
研究について調査し、法律と IT とに関わる問題を整理する。
第 3 ステップ
立法の問題および法律と IT に関わる問題に対して、電子政府の潮流という新たな視点を
持ち込み、その新たな視点からの問題解決の方向性を提示する。
第 4 ステップ
新たな視点から解決案を提示するとともに、具体的な法律を対象に適用し、その結果に
ついて検証する。
本研究の用語の使い方であるが、法律という言葉は条文を指す場合と、立法(法律の制
定)を指す場合があることに留意いただきたい。
2
2.法律の置かれている状況
本章では、前章で指摘した「法律が相互に複雑に絡み合ってわかりづらい」、「法律の条
文がわかりづらい」という問題設定の正しさについて、立法学の見方、定量的な分析、発
生した問題の状況から実証していきたい。
2.1 立法学の見方-立法爆発
立法学の分野においては、近年日本学術会議法学委員会立法学分科会(2006 年~2014 年)
および科研費共同研究事業である「立法システム改革の立法理学的基盤構築」(2012 年度~
2014 年度)において総合的な研究が進められた。その成果は共同論集『立法学のフロンティ
ア』(全 3 巻、ナカニシヤ出版、2014 年 7 月)として出版されるとともに、学術フォーラム
「立法システム改革と立法学の再編」(日本学術会議講堂 2014 年 7 月 6 日)として発表され
た。これらを題材に、立法学の立場からこの問題をどのように捉えているのかを確認して
いく。
『立法学のフロンティア』の編者の一人である井上(2014)は、バブル経済崩壊が露呈した
日本型システムの構造危機やそれを背景にした政治改革の帰結としての 55 年体制の終焉が、
これまで「イモビリズム(不動性)」という言葉が使われるほど固定化した立法環境を大きく
変えつつあるという認識を示している。特に量的な面における環境変化について、急激な
増加を象徴する「立法の再活性化」や「立法のインフレーション」という言葉を使い、下
記のような具体例を示している。
・ 資本主義経済の法的インフラの根幹に属する会社法の大改正
・ ピラミッドのように不動とみなされた刑事分野での基本原理を転換する抜本的改正

犯罪新設、重罰化、可罰行為の早期化

裁判員制度、被害者訴訟参加制度、刑事訴訟手続への民事賠償手続の部分的併
合
・ 行政事件訴訟法における主要部分の大改正

当事者適格や訴えの利益拡大、差止め訴訟、義務付け訴訟
・ 民法について、債権法の大改正の議論
・ 宣言的規定からなる○○基本法や○○推進法が、議員立法により量産
また、井上は質的な面においては従来の立法システムの支柱をぐらつかせる変動が起き
ているとも指摘しており、下記のように質的な低下への懸念が表明されている。
・ 55 年体制下の従来の立法システムの基盤変動
・ 政治主導を推進する政党とそれを支持する世論
・ 官庁・法制審議会・内閣法制局などの影響力・権威の相対的低下
そして、川崎(2014)もまた立法の量的増大について指摘しており、次のように全般的に立
3
法のインフレーション傾向があると捉えている。
「現代国家では、毎年、数多くの立法がな
されているが、それによる法規範の過剰・緻密化・複雑化とその頻繁な改正は、不必要・
不適合・不整合な規範の増加など、法規範や法体系の質の低下を招き、法の地位にも影響
を与えかねないようになっているほか、国民の知らない法令や理解が困難な法令による国
民生活の詳細な規律は、国民生活への広汎かつ過度な介入を招くとともに、法制度の可視
性や予測可能性の面でも問題をもたらしている。このような量の問題が質にも影響を及ぼ
す状況は、
『立法のインフレーション』、
『立法の洪水』あるいは『法化』などの現象として、
特にヨーロッパ諸国で問題とされてきたものである」と量の増大が国民生活へも影響を与
えると指摘し、
「とりわけ、法律は、諸々の要求の実現や政策の推進のための最も有力な媒
体であるとともに、手っ取り早く安上がりなアピールやエクスキューズの手段ともなるだ
けに、政治の側にはそれを便利に用いようとする誘惑が働きやすく、法律を道具化する傾
向が強まっている」と法律の道具化傾向についても危惧している。
次に、刑法や民法における認識を確認しておく。井田(2014)は、「近年では『刑事立法の
活性化』と呼ぶべき現象を生じさせている」と指摘し、その背景として全体的に「刑罰積
極主義」の傾向が起きているという。具体的な内容として次の 5 点を挙げている。
① 犯罪化:危険運転致死傷罪の新設。
② 重罰化:法定刑としての有期自由刑の上限を 15 年から 20 年へ引き上げ。
③ 処罰の早期化1:支払い用カード電磁的記録の不正作出行為を重く処罰する規定の新設。
④ 法益概念の抽象化:ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律
⑤ 法のパッチワーク化:刑法典の処罰規定と道路交通法の処罰規定との不整合ないし矛盾
さらに、その社会的背景としては次のような傾向があるとしている。
・ 犯罪被害者の権利保護:メディアの報道
・ 市民的安全の保護:処罰の早期化については、技術進歩への不安
・ 国際化:国境を越える犯罪組織への対応
・ 応報思想:メディアの犯罪報道による不安のあおり
・ 法のパッチワーク化:グローバル化のほかに、社会の複雑化と価値の多元化
このように刑法では、社会的な風潮(民意)を反映するかたちで立法の量産化が行われてい
ると捉えているが、一方民法では逆に立法から社会への提案というかたちで法改正がされ
ようとしているという。山田(2014)は、「民法(債権法)改正の主要な目的の一つは、国民
の生活に関わりが深いにもかかわらず法曹ではない素人にはわかりづらい民法をわかりや
すくすることである、と説明がなされる」、「刑事立法における重罰化等の近時の立法動向
は、いわば『民意』から背中を押された形であった。他方、民法(債権法)改正において
は、いわば『民意』の先取りという形で、このような民法だとわかりづらくて国民にとっ
ては良くないでしょう、良い意味で啓蒙的な形で改正が提案されていったといえる」と指
摘している。
1
将来の危険防止のための刑罰適用。
4
このような立法環境の認識のもと、立法学ではどのように現状の問題を解決していくの
か。宇野(2014)は、
「現代において、いわば『立法の爆発』とでも呼ぶべき現象が見られる。
それは単に量としての立法活動が増大することを意味するのではない。このことは同時に、
これまで専門家の影響が大きかった立法実務の基盤の変化を意味するのであり、結果とし
て、大量の立法を日々生み出していく立法システムのあり方そのものがあらためて問い直
されることになる。端的にいえば、日本の場合、現在の議員内閣制がはたして、そのよう
な立法活動を実現していくにふさわしい能力をもっているのか。単なる政党間の利害対立
や政争を越えて、あるべき法を生み出していけるのか。このことが、かなりの疑念ととも
に検討されることになるのである」と語るように、議院内閣制という立法システムを再検
討すべきだという問題意識に発展している。
また、横濱(2014)は、立法の爆発という環境のなかで、ウォルドロンの立法が充足すべき
基本原理(公開性、慎重な立法、意見対立を平等に反映する代表、対立する意見に対する
誠実な応答、意見の改善や修正に開かれた討議、立法手続の形式性、政治的平等)をいか
に充足させるかという問題意識を持っている。さらに、川崎(2014)は「このような歪んだ道
具主義ともいうべき状況が、法的なものや価値、あるいは専門性の軽視ということと同時
に進行しているのが昨今の特徴といえる。」「立法の質については、様々な観点から論じる
ことが可能であるが、その中心となってきたのが立法の内容の法的な正当性の問題である
といえよう。」
「法的適格性として再構成をし、それが確保されるための要素を改めてここ
で列挙するならば、法律事項該当性、一般性、非遡及性、明晰性、実効性、整合性、一貫
性、手続保障・救済可能性などがその主要なものとなるといえるだろう。」と語っており、
量の増大という問題に対してその内容の法的な正当性(フラーを参照し、法律事項該当性
など 8 項目に整理)をいかに確保するかという問題意識を表明している。
ここまでを整理すると、
「法律が相互に複雑に絡み合ってわかりづらい」という事象につ
いては、立法の爆発という現象に裏付けられる。立法が量産化されると関連する法律も改
正を余儀なくされ、法律の公布と施行が必ずしも一致しないことから、相互の関係性もよ
り複雑になっていると言える。このような事象に対して、立法学者がいかに立法の内容の
正当性を確保するかという問題意識を持つことは正しいといえるが、量の増大に対して正
当性を確保するための技術的実務的な方法論については関心を持っていない。
次の「法律の内容がわかりづらい」という事象については、民法の大改正において「民
法を素人にもわかりやすくする」という部分で触れられているが、ニュアンスが若干異な
っている。山田(2014)は「民意を先取り」するような表現をしているが、そもそも民法の改
正は「国際的にも透明性の高い契約ルールの整備を図るため、経済のグローバル化等を踏
まえて民法改正の中間試案をまとめる」
(日本再生の基本戦略、2011 年 12 月 24 日閣議決
定)という経済のグローバル化という圧力によって動き出したものである。その改正内容
は「現代化」と「明確化」と言われる。
「現代化」とは、明治以来見直されてこなかった契
約・債権分野を、現代の社会経済に合致するよう改めることであり、第三者の個人保障を
5
禁じるなど新たなルール案が示されるなどしている。また、
「明確化」とは判例によるルー
ルや明記されていなかった原則を規定することであり、暴利行為や意思能力に関する規定
などが明文化されることになる。1896 年の成立以来約 120 年ぶりの民法大改正ということ
で話題になっているが、今後ますます社会のグローバル化によって法律の透明化が求めら
れ、その都度「現代化」と「明確化」の改正が必要になっていくだろう。
「法律の内容がわ
かりづらい」とは、内容そのものが問題なのか、条文の書き方が問題なのかが曖昧である
が、立法学者の立場からは条文の書き方に対する問題意識は無いように見える。
2.2 立法環境に関する問題の定量的な把握
前項では、近年立法の爆発なる現象が起きていることが指摘されたが、その事実につい
て定量的な分析を行い、従来とは異なる立法の急激な量的増加が見られることを示したい。
2.2.1 法律の制定
まず、現在施行されている法律の数は 1,950 本(2014.7.8 現在)2であり、明治時代から現
在(2014 年 7 月)まで、その年に公布され現在施行されている法律をグラフにすると図表 1
のようになる。1945 年以前の法律が現在も 86 本施行されている事実があるものの、ほと
んどは戦後公布された法律であり、終戦直後と 2000 年前後に法律の公布が増加していると
いう事実がわかる。
次の図表 2 は、図表 1 の終戦後以降のみを切り取ったグラフである。終戦後 10 年くらい
は法律の制定が多かったものの、それ以降高度経済成長時代には年間 10~20 件で落ち着い
ており、2000 年になって急激に制定数が増えてきたことがわかる。
2
総務省行政管理局が運営する法令データ提供システムを使用して調査。
6
46
48
50
52
54
56
58
60
62
64
66
68
70
72
74
76
78
80
82
84
86
88
90
92
94
96
98
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
2014
1884
1888
1892
1896
1900
1904
1908
1912
1916
1920
1924
1928
1932
1936
1940
1944
1948
1952
1956
1960
1964
1968
1972
1976
1980
1984
1988
1992
1996
2000
2004
2008
2012
図表 1 法律(その年に公布され、現在施行されている法律)の数(全体)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
(出所:筆者作成)
図表 2 法律(その年に公布され、現在施行されている法律)の数(終戦後以降)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
(出所:筆者作成)
7
図表 3 法律(その年に公布され、現在施行されている法律)の累積数
2500
2000
1500
1000
500
46
48
50
52
54
56
58
60
62
64
66
68
70
72
74
76
78
80
82
84
86
88
90
92
94
96
98
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
2014
0
(出所:筆者作成)
図表 3 は、図表 2 を累積グラフで表現したものである。このグラフが示すことは、現代
の社会は高度経済成長時代に比べて約 2 倍もの数の法律によって制約を受けているという
ことであり、立法プロセスの生産性が向上していなければ法律の実務面で問題が生じる可
能性がある。
2.2.2 法律の改正
立法過程においては、新たな法律を制定するとともに、従来の法律を改正するという作
業も行われる。図表 4 は、法律の改正を含んだ法律の成立件数をグラフにしたものである。
全体としては終戦後の 10 年くらいが最も多く、近年では 2000 年前後を中心に法律の成立
が多くなっていることがわかる。
次の図表 5 は、法改正の状況を把握するため、法改正の成立件数を示したものである。
法律成立件数から法律数[その年に公布され、現在施行されている法律の数]を引いて求めた
ものであるため、改正された法律の数そのものとは異なる。名称が「〇〇法等の一部を改
正する法律」となっている場合は、複数の法改正が含まれているからである。例えば、「政
府 CIO 法」
(正式名称は「内閣法等の一部を改正する法律」
)では、内閣法と IT 基本法の 2
本が改正されている。
改正された法律の正確な数とは若干異なるものの、図表 5 では法律改正の大まかな姿を
把握することができる。終戦後約 10 年の間に法改正が多かったことが指摘できるが、その
8
後はほぼ安定した状況で法改正が行われているように見受けられる。
図表 4 国会における法律(閣法、衆法、参法)の成立件数(法改正を含む)
400
350
300
250
200
150
100
50
47
49
51
53
55
57
59
61
63
65
67
69
71
73
75
77
79
81
83
85
87
89
91
93
95
97
99
2001
2003
2005
2007
2009
2011
2013
0
(出所:内閣法制局 http://www.clb.go.jp/contents/all.html および古賀ほか(2010)より筆
者作成)
図表 5 国会における改正法の成立件数
350
300
250
200
150
100
50
47
49
51
53
55
57
59
61
63
65
67
69
71
73
75
77
79
81
83
85
87
89
91
93
95
97
99
2001
2003
2005
2007
2009
2011
2013
0
(出所:図表 4 と図表 2 のデータにより筆者作成)
9
2.2.3 整理法と整備法について
前項では、戦後の一時期を除いて法改正の件数は安定した状況にあることが見て取れた
が、整備法や整理法の存在を確認しておかなくてはならない。整備法・整理法とは、新た
な法律の施行に伴って関係法律の改正が行われる時、一つの法律で何本もの法改正を行う
ための法律であり、このような法律は「…(法の施行に伴う)関係法律の整備に関する法
律」や「…(法の施行に伴う)関係法律の整理に関する法律」という名称が付けられてい
る。参議院法制局の説明によれば、整備法は「実質的な政策判断に基づいた改正も併せて
行われる」場合に使われ、整理法は「法律の制定改廃に伴って関係法律中の不要となった
規定を削ったり、字句を改める等」の場合に使われるという。つまり、整備法や整理法で
実際にどれくらいの法改正が行われているかを確認しておかなくては、法改正の正しい量
的把握ができないことになる。
そこで、衆議院ホームページのライブラリより、第 1 回国会~第 185 回国会の成立法律
名称を調査することで、整備法と整理法の成立状況を確認することにした。具体的には、
「~
関係法律の整備(等)に関する法律」および「~関係法律の整理(等)に関する法律」と
いう法律名称を検索し、その件数を把握して次の図表 6 に整理した。
図表 6 整備法と整理法の成立状況
14
12
10
8
6
4
2
整備法数
2013
2010
2007
2004
2001
1998
1995
1992
1989
1986
1983
1980
1977
1974
1971
1968
1965
1962
1959
1956
1953
1950
1947
0
整理法数
(出所:衆議院ホームページのライブラリより筆者作成)
この図表で明らかなようにこの 40 年くらいは整備法がほとんどであり、2000 年を前後
して成立件数が多く、
「実質的な政策判断に基づいた改正も併せて行われる」ため法改正の
10
質としても重いものとなっていることが伺える。それに対し、戦後の法改正が頻繁な時代
は整理法がほとんどであり、
「関係法律中の不要となった規定を削ったり、字句を改める等」
の改正のため、法改正の質的負担としては整備法中心の現代ほどでもないと想定される。
また、整備法・整理法においては 1 本の法律で 100 を超える法律を改正している場合も
あるため、整備法・整理法における法改正数を調査しなければ、全体としての法改正の量
を把握することができない。そのため、衆議院ホームページの立法情報の制定法律データ
を使い、
「の一部改正)
」で検索し法律の改正数をカウントした。なお、1959 年以前の法律
の条文は正規化されていないためカウントできず、調査対象からはずしている。また、法
図表 7 100 本以上の法改正を含む整備法・整理法
年
国会回次
法律名称
法改正数
2011
177
非訟事件手続法及び家事事件手続法の施行に伴う関係法律の
130
整備等に関する法律
2011
177
地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るた
221
めの関係法律の整備に関する法律
2006
164
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法
262
人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係
法律の整備等に関する法律
2005
163
郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
144
2005
162
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
293
2004
159
破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
137
2001
153
商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に
117
関する法律
2000
147
商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に
150
関する法律
1999
146
民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に
112
関する法律
1999
145
地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律
549
1999
145
中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律の整備等に関
191
する法律
1994
128
行政手続法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律
363
1983
100
国家行政組織法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律
181
の整理等に関する法律
1962
41
行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律
267
1961
40
行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律
125
(出所:衆議院ホームページ立法情報の制定法律データから筆者作成)
11
律の附則における法改正については、本則とダブルカウントしているため、ここで言う法
改正数は実際の法改正数よりも若干多いことに留意いただきたい。例えば、地方分権の推
進を図るための関係法律の整備等に関する法律の法改正数を 549 本としているが、実際の
法改正は 475 本である。ちなみに、100 本以上の法改正を含む整備法・整理法を図表 7 に
示した。
次に、整備法・整理法における法改正数を含む実質的な法改正数について、整理を行っ
た。これは前出の成立した法改正の数と整備法・整理法による法改正の数を加算したもの
で、
「成立した法改正の数は実際よりも少なめ」、
「整備法・整理法による法改正の数は実際
よりも多め」という誤差はあるが、全体の傾向を把握するには支障が無いと判断した。
その結果が図表 8 である。このグラフを見ると、法改正については 1960 年以降安定もし
くは減少という傾向が、整備法・整理法を含めて考えるとまったく異なることに気づく。
年間 200 本を超えるような大量の法改正が、1980 年代から整備法によってたびたび見られ
るようになり、2000 年前後にはそのような状態が定常化しており、1999 年には地方分権一
括法の影響もあって 1,000 本以上の法改正が行われていることがわかる。
図表 8 実質的な法改正の数
1200
1000
800
600
400
200
1960
1962
1964
1966
1968
1970
1972
1974
1976
1978
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
0
法改正全体数
整備法による法改正数
(出所:衆議院ホームページ立法情報の制定法律データから筆者作成)
なお、法改正の文書の量については、適切なデータや分析時間がなかったため、過去と
12
現在のデータを比較して現状がかなり増加傾向にあることを実証することができなかった。
そのため事例を例示するに留めておく。2005 年に成立した会社法の施行に伴う関係法律の
整備等に関する法律は改正法律数が 293 本であるが、その文書量は膨大なものとなってい
る。文字数で 160 万字以上、原稿用紙で 4,000 枚以上であり、約 230 ページの文庫本 10
冊分の分量である。また、現在議論されている民法の大改正では、一説に約 400 カ条に及
ぶ改正が行われると言われている。法改正の数が激増するだけでなく、改正の文書量につ
いても激増していると推測される。
2.3 立法のミス
立法の爆発というような状況が生まれているとすれば、立法の正当性云々の前に、技術
的実務的に立法過程が耐えられず、立法におけるミスが発生していると推測できる。そこ
で、1990 年以降の全国紙を対象に「法改正ミス」
「条文ミス」
「法改正不備」
「条文不備」等
のキーワードで該当する新聞記事を洗い出し、立法過程における不備がどのような状況に
なっているのかを確認した。その結果として、2004 年を境に状況が大きく変化しているた
め、2004 年以前と 2004 年以降についてその状況を確認してみる。なお、ここで取上げた
条文ミスは、新聞記事を情報源としているため話題になったものだけであり、正誤表を官
報に掲載して訂正するだけで済まされる条文ミスについては取上げていない。
2.3.1 1990 年から 2003 年までの立法ミス
新聞記事として報道されたものだけで、図表 9 のように 6 件発生している。このうち、
1998 年の「法律の成立前に大蔵省令を官報に掲載」した件については大蔵省事務次官が処
分を受けている。新聞記事では「役所の気の緩み」を指摘しつつも、条文のミスを追及す
るというよりは、野党が与党を攻撃するための材料として使っている面もあることを客観
的に報道している。
13
図表 9 立法過程におけるミス(1990 年から 2003 年)
項番
年月日
法律名称
発覚時期
管轄官庁
不備の内容
1
1990.5.14
老人福祉法等改正
成立前
厚生省
老 人 福 祉 法 改正 案 の表
案
2
1992.4.22
証券取引法の改正
記ミス。
成立前
大蔵省
訂正箇所が 2 法案で 21
案と金融制度改革
箇所と重大。条文が 1 条
法案
抜け落ち、次の条文の番
号まで変わる。
3
1998.4.8
土地再評価法の大
成立前
大蔵省
蔵省令
4
1998.4.9
特定非営利活動促
令を官報に掲載。
成立後
厚生省
進法(NPO 法)
5
1999.5.14
臓器移植法
法律の成立前に、大蔵省
参 院 で の 修 正箇 所 を官
報に掲載せず。
成立後
厚生省
条 文 に 不 備 があ っ たた
め、角膜提供実現せず。
6
2001.11.9
麻薬及び向精神薬
公布後、
取締法施行令及び
施行前
厚労省
麻 薬 で は な い物 質 を麻
薬として指定。γ-ヒドロ
麻薬、向精神薬及
キシ酪酸を三-ヒドロキ
び麻薬向精神薬原
シ酪酸と誤記。
料を指定する政令
の一部を改正する
政令
日付は新聞記事として掲載された日付。
(出所:筆者作成)
2.3.2 2004 年以降の立法ミス
ところが、2004 年の年金制度改革関連法における条文ミスを契機に、ミスの数や内容の
深刻さが度を増してくることになる。年金制度改革関連法の項番 1 では、
「43 条に新たに
43 条の 2~5 を付け加えて年金の給付額を抑制するマクロ経済スライドの内容を盛り込ん
だが、44 条は手直ししなかったために 44 条の条文における『前条・同条』は 43 条の 5 を
示すことになり、上乗せ支給の法律上の根拠がなくなってしまった」というもので、対象
者 320 万人に影響が及ぶことになった。さらにその後、項番 2 で新たに同法で 40 箇所のミ
スが見つかり、条文の参照先を誤る同様のミスのほか、引用する法律の名称を誤るなどの
ミスも見つかった。
14
図表 10 立法過程におけるミス(2004 年以降)
項番
年月日
法律名称
発覚時期
管轄官庁
不備の内容
1
2004.6.23
年金制度改革関
成立後
厚労省
条文の改正漏れで加給年金
連法
2
の支給に影響。
2004.7.15
さらに同様のミス発覚。官
報で 40 箇所訂正。
3
2004.10.13
公正取引
4 法案で 6 箇所の条文ミス。
案、労働組合法
委員会、
条番号や条項の引用先をミ
改正案、信託業
厚労省、
ス。定義した言葉のミス
法案、住宅品質
金融庁、
(「製造をする者」を「製造
確保促進法改正
国交省
者」と誤記)。
成立前
総務省
3 箇所に条文ミス。
成立前
総務省
条文漏れ指摘される。
成立後
法務省
2 箇所の条文ミス。
成立後
金融庁
592 箇所の条文ミス。最終
独占禁止法改正
成立前
案
4
2004.10.26
日本郵政公社法
改正案など
5
2005.5.19
郵政民営化関連
法案
6
2005.7.22
会社法および関
連法
7
2006.4.4
改正銀行法施行
規則
8
2013.5.31
改正所得税法
校正前のデータを提出。
施行後
財務省
条文ミスで税収 1 億円減
少。
9
2014.6.19
労働者派遣法改
成立前
正案
厚労省
「1 年以下の懲役」を「1 年
以上の懲役」と誤記。
日付は新聞記事として掲載された日付。
(出所:筆者作成)
これらの一連のミスの責任を取るかたちで、内閣法制局長官や厚労省事務次官が処分を
受けることになり、内閣法制局としては次の 2 つの対策を実施することとなった。
 「条文直し漏れ」などのミスを防止するための「手引書」を各省庁に配布。
 「条項ずれ」など法改正のミスを防ぐソフトを開発(2005 年度に予算化)
。
2004 年の内閣法制局の対策により条文ミスは沈静化するかと思われたが、事態はそう簡
単には収まらず、報道のしかたも「内閣法制局と各省庁の法案作成・点検作業の杜撰さ」
を指摘する論調になっていく。
2004 年以前においては、条文の内容についてはチェックされていたものの、条文の番号
15
等条文の形式についてミスが多いという認識であった。しかし、2004 年以降になるとそれ
だけでなく、定義した言葉を誤って使ったり、最終校正前のデータを提出するという版数
管理を誤ったり、条文漏れで 1 億円の減収を招いたり、罰則が重くなる条文の誤記をした
りと条文の内容にまでミスが及んできている。
内閣法制局による法改正ミスを防ぐソフトもその効果が出ているとは思われず、2006 年
の改正銀行法施行規則の条文ミスは「592 箇所にも及び過去最大級(金融庁)」
、2013 年の改
正所得税法のミスは「法律施行後に条文の記載漏れが見つかるのは過去に例がないミス(財
務省)」
、2014 年の労働者派遣法改正案のミスは重大ミスとして厚労省事務次官が処分され
るなど事態は深刻化している。
その原因としては、内閣法制局のソフトが有効に機能していない、あるいはそれ以上に
法令が複雑化している、または法令の条文そのものに問題が内在していると考えるべきで
あろう。
2.3.3 官僚や法曹界による立法チェックの限界
内閣法制局などの官僚によるチェックおよび議員などによる立法過程におけるチェック
だけでは限界があることが、近年問題になってきている。
岡田(2007a,2007b)の報告によれば、2006 年に起きた PSE 問題において、経産省がミス
を認めて謝罪することになったという。PSE 法は 2001 年に施行された法律で、PSE マー
クなしの電気機器の販売を禁止(種類により猶予期間あり)するというものであった。立
法当時は中古品が対象になることが想定されておらず、施行後に中古品も対象となるとい
う解釈で社会に混乱を招くことになった。中古品について例外を設けるなど対応が後手に
回っただけでなく、
「旧法と PSE 法で安全基準に差がない」ことも発覚し、経産省として
は大失態を演じることになった。
また、2013 年 6 月には JR 東日本の Suica 問題が起きた。報道によれば、利用者に対す
る説明不足などが問題だとされているが、それだけでは個人情報保護法違反とはならない。
違法と判断されたのは、事業者が匿名化したと認識して提供した情報が、匿名化されてい
ない個人情報であったことによる。提供情報は、SuicaID や氏名などの個人情報を除外した
乗降駅名や乗降時刻(時分秒)などであった。しかし、乗降駅名と乗降時刻(時分秒)で
照合すれば個人を特定できるからこれは個人情報であるとされた。その理由は、個人情報
保護法では、個人情報の定義として「他の情報と容易に照合することができ、それにより
特定の個人を識別することができることとなるものを含む」という記述があるからである。
事業者側からは、照合とは提供元と提供先のどちらが対象となるのか、どこまで匿名化す
れば個人情報とみなされないのかなど、適法の線引きがあやふやなままではビッグデータ
の解析などできないという問題が提起され、個人情報保護法改正の議論へと進んでいる。
さらに、2013 年 11 月には父子の遺族年金で問題が起きた。これまで母子家庭にしか認
16
められなかった遺族年金について、2012 年にようやく父子にも認める法改正が成立した。
しかし、厚労省が政令案で「3 号被保険者は一律対象外」としたことに、社労士が「不公平
になる」と反発することとなった。
「3 号被保険者=専業主婦」とは限らず、夫の病気のた
めに妻が生計維持者となり、夫が 3 号被保険者となって死亡する場合もあるためである。
このように、ますます複雑化する社会、技術の進歩、家族関係の変容など、社会変化の
スピードに法制度が追いつかず、官僚や法曹界など法律の専門家だけでは内容のチェック
にも限界がきていると考えられる。法制度の問題を法律の専門家まかせにせず、一般国民
が実生活やビジネスの実務のなかで、法制度について考え、意見を提言していく社会にな
っていく必要がある。
17
3.法律問題と IT
前章では、法律がこれまでにないほど量的に増大しており、それはまた質的な問題も提
起し、内閣法制局によるソフト開発など IT にその支援を要請するような時代になってきた
ことを見てきた。そして、これらの立法過程における問題は、法案を作成する各省庁やそ
れをチェックする内閣法制局など、法律の専門家の問題として主に捉えてきた。
本章では、法律の専門家ではなく一般国民という立場、特に筆者が属する IT 産業の民間
人としての立場から、法律と技術(特に IT)について考察し、IT の観点から法律の問題を整
理してみたい。
3.1 法律と IT との関係
3.1.1 IT 関連の法律について
コンピュータは電子計算機として戦後登場し、初期は高速な計算や印字など現行の事務
処理を合理化するための機械として利用されるに過ぎなかった。そのためコンピュータが
関わる法的な問題においても、現行法で解釈するだけで十分であったといえる。しかし、
1995 年頃を境にして Windows95 やインターネットが普及し始め、コンピュータが個人の
ものとなり、通信技術と融合するようになっていく。いわゆる IT 革命が起こり始めた時代
であり、この頃からコンピュータではなく、通信も含めた IT(情報技術)3という言葉が使わ
れるようになっていく。
IT という言葉が使われるようになった背景には、BPR(Business Process Reengineering)
やインターネットビジネスなどが盛んになっていくに従い、これまでの仕事のプロセスを
高速化するのではなく、仕事のプロセスを抜本的に変えるという概念の転換があったため
である。情報が紙から電子データへと変化するに伴い、紙を前提としていた従来の法律は
当然変化に晒されることになる。次の図表 11 は、2000 年前後に成立した電子政府関連の
主な法律を整理したものであり、電子データや電子署名の法的有効性、公文書管理と情報
公開、個人情報保護などについて法整備がなされてきた。すなわち、IT という技術を社会
で活用していくにはこれだけの法整備が必要とされたのであり、社会に影響を与える技術
は法整備いかんによってその普及が左右される。
しかし、これだけの法整備がなされたにも関わらず、これらの法律は「対象は行政機
関であっても電子データに限らず紙媒体をも対象とするものであったりする」(上村ほ
か(2012) pp.125)と批判され、現行の法制度においてITを利用可能にしただけであり、
政府における紙を廃止して電子データへと転換を図るという意思がなかったと指摘さ
れている。つまり、日本の電子政府がこれだけ後塵を拝しているのは、ITで紙を廃止す
後に ICT という言葉も使われるようになるが、当初は「IT」が使われており、IT 革命や
IT 企業など一般にも馴染んでいるため、ここでは IT という言葉を使う。
3
18
るという意思表示をしない中途半端な法律が原因だという。
図表11 電子政府関連の主な法律
区分
成立年
法律名
基本理念
2000
高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)
文書性付
2000
書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の
与
整備に関する法律
2002
行政手続き等における情報通信の技術の利用に関する法律
認証等関
1999
住民基本台帳法の一部を改正する法律
係
2000
商業登記法等の一部を改正する法律
2000
電子署名及び認証業務に関する法律
2000
電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律
文書管理
1999
行政機関の保有する情報の公開に関する法律
情報公開
2001
独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律
2009
公文書等の管理に関する法律
個人情報
2003
行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律
保護関係
2003
独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律
(出所:上村ほか(2012) pp.124-125「e-ガバメントに係る主な法律」より筆者作成)
また、住民基本台帳法の改正は、住民基本台帳ネットワークで番号制度を構築するもの
であったが、法定受託事務としての位置づけを与えなかった。そのため自治体に裁量があ
るかのような誤解を与え、東京都国立市や福島県矢祭町のように住民の不安に応えるため
に住基ネットに接続しないという宣言をする自治体が出現し、社会的な混乱を招くことに
なった。そのため、電子政府の要となる番号制度の構築に失敗し、実効性のある番号制度
は 2013 年のマイナンバー法成立まで待たされることになった。
さらに、桑原(2013)によれば、旧公職選挙法はインターネットを文書図画と解釈していた
ため、選挙期間中のホームページの更新などが違法とされた。公職選挙法の改正によって
解禁されたのは 2013 年であり、実に先進国のインターネット選挙運動から 10 年以上も遅
れたことになる。この事例も IT を積極活用して社会を変えるという意思を法制度に反映し
ようとせず、現行法のなかで IT を解釈しようとして遅れに遅れてしまった事例である。
これらの例を考えていくと、新しい技術を社会のなかで活用していくためには法整備が
必要であるが、その法整備について法律の専門家だけに任せてしまっては不都合が生じる
ことがよくわかる。なお、政府としては、法律案などをパブリックコメントに付して国民
に意見を求め、立法への国民参加という制度を作ってはいるが、法律の条文などが国民に
とってわかりづらいものであれば実質的に参加できず、制度は形骸化してしまう。
19
3.1.2 法律に対する IT 支援について
次に、法律を取扱ううえで、IT を使って支援する取組みも行われており、その現状を把
握しておきたい。
(1) 総務省行政管理局の法令データ提供システム
これはインターネットで法令を検索・閲覧できる無料のサービスであり、国民にとって
はもっとも身近に法令にアクセスできるサービスである。さらに、法令の条文のなかで他
法令の規定内容を参照している場合、その法令の該当部分を表示できるようにリンク情報
を設定しているため、リンク先の情報が画面に表示され使い勝手も良い。下記は住民基本
台帳法の第四条であり、下線部分がリンク情報を設定している部分である。
(住民の住所に関する法令の規定の解釈)
第四条
住民の住所に関する法令の規定は、地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)
第十条第一項 に規定する住民の住所と異なる意義の住所を定めるものと解釈してはなら
ない。
上記に対応するソースコードは下記のようになっている。
<P>
<DIV class="arttitle"><A
NAME="1000000000000000000000000000000000000000000000000400000000000000000000000000000">(住民の
住所に関する法令の規定の解釈)</A>
</DIV><DIV class="item"><B>第四条</B>
<A NAME="1000000000000000000000000000000000000000000000000400000000001000000000000000000"></A>
住民の住所に関する法令の規定は、<A
HREF="/cgi-bin/idxrefer.cgi?H_FILE=%8f%ba%93%f1%93%f1%96%40%98%5a%8e%b5&REF_NAME=%92%6e%9
5%fb%8e%a9%8e%a1%96%40&ANCHOR_F=&ANCHOR_T=" TARGET="inyo">地方自治法</A>
(昭和二十二年法律第六十七号)<A
HREF="/cgi-bin/idxrefer.cgi?H_FILE=%8f%ba%93%f1%93%f1%96%40%98%5a%8e%b5&REF_NAME=%91%e6%8f
%5c%8f%f0%91%e6%88%ea%8d%80&ANCHOR_F=1000000000000000000000000000000000000000000000001000
000000001000000000000000000&ANCHOR_T=1000000000000000000000000000000000000000000000001000000
000001000000000000000000#1000000000000000000000000000000000000000000000001000000000001000000000
000000000" TARGET="inyo">第十条第一項</A>
に規定する住民の住所と異なる意義の住所を定めるものと解釈してはならない。
</DIV>
しかし、問題もある。下記のようにデータ内容の正確性については官報が優先するとし
ているが、国民は官報に容易にアクセスできない。
20
■法令データ提供システムの利用にあたっての注意事項
本システムで提供する法令データは、総務省行政管理局が官報を基に、施行期日を迎えた
一部改正法令等を被改正法令へ溶け込ます等により整備を行い、データ内容の正確性につ
いては、万全を期しておりますが、官報で掲載された内容と異なる場合は、官報が優先し
ます。総務省は、本システムの利用に伴って発生した不利益や問題について、何ら責任を
負いません。
独立行政法人国立印刷局がインターネット版「官報」を提供しているものの、直近 30 日
間分が PDF で閲覧できるだけで、日付検索のみで記事検索ができない。また、同局の官報
情報検索サービスは、インターネットで記事検索もできるが、このサービス利用は有料で
あり、しかも官報(紙)の定期購読者でない場合は月額 2,160 円を支払わなければならな
い。さらに、
「内容の正確性を問う場合は、印刷物である官報で再度確認してください」と
の但し書きまであり、紙文化からまったく脱していないことがわかる。
そして、法令データ提供システムには次のような限界があり、あくまでも紙の「官報」
が大前提となっている。

附則の条、項、号単位での施行期日管理ができないため、未施行の情報が当該附則に
溶け込んでいる場合がある。

表示が困難な法令中の外字、ルビ、数式等で、官報の表記とは異なる表記としている
ものがある。

未施行の改正内容の表記方法は、データ整備の都合上、条の後に「第一項」を表示す
るなど官報で公布されたものとは異なる。
(2)法令審査支援システム
内閣法制局が利用しているものであり、法令審査支援システム調達仕様書(2005 年 4 月)
から、その内容についての特徴を把握してみる。
①法令データベース
本則、附則の双方にわたる各条文がどの時点でどのような内容として施行され、また
は施行されることになっているかという情報を保有する。法令(案)を施行日ごとに管
理することができる機能を持つ。
②条文点検補助ソフトウェア

改め文解析ソフトウェア:施行日ごとに区分して改め文が改正対象法令に溶け込
める状態となるようにするほか、修正部分を見え消しで見分けるようにする。

改め文溶け込みソフトウェア:改め文を改正対象法令に溶け込ませるとともに、
法令名称・法令番号、条項号などの表記ミス等のチェックを行う。
ここからわかることは、法令の条文自体、条文の書き方にはまったく手を入れず、これ
までの条文の書き方を前提にソフトウェアを駆使して誤りをチェックしようという考え方
である。
21
(3)法務省の日本法令外国語データベースシステム
このシステムは、我が国のグローバル化に鑑み「我が国の法令の外国語訳を推進するた
めの基盤整備を早急に進める必要がある」
(内閣の司法制度改革推進本部 2004 年 11 月)と
の方針を受け、2009 年 4 月から、法務省が各府省翻訳の法令を公開するとともに、標準対
訳辞書について必要な改訂作業を行っているものである。
日本語・英語だけでなく、日英交互・日英対照表形式で表示でき、次のように
XML(eXtensible Markup Language)で表記され、章・節・条・項などが構造化されている。
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<!DOCTYPE Law SYSTEM "jstatute.dtd" PUBLIC "-//JaLII//DTD J-STATUTE 1.0//EN">
-<Law Num="1" Era="Heisei" Year="1" Lang="ja" LawType="Act" OriginalPromulgateDate="平成十一年八月十三日
">
<LawNum>平成十一年八月十三日法律第百二十八号</LawNum><LawBody>
<LawTitle>不正アクセス行為の禁止等に関する法律</LawTitle>
-<MainProvision><Article Num="1">
<ArticleCaption>(目的)</ArticleCaption>
<ArticleTitle>第一条</ArticleTitle>
-<Paragraph Num="1">
<ParagraphNum/>
<ParagraphSentence>
<Sentence>この法律は、不正アクセス行為を禁止するとともに、これについての罰則及びその再発防止のため
の都道府県公安委員会による援助措置等を定めることにより、電気通信回線を通じて行われる電子計算機に係る犯罪の
防止及びアクセス制御機能により実現される電気通信に関する秩序の維持を図り、もって高度情報通信社会の健全な発
展に寄与することを目的とする。</Sentence>
</ParagraphSentence>
</Paragraph>
</Article><Article Num="2">
<ArticleCaption>(定義)</ArticleCaption>
<ArticleTitle>第二条</ArticleTitle>
-<Paragraph Num="1">
<ParagraphNum/><ParagraphSentence>
<Sentence>この法律において「アクセス管理者」とは、電気通信回線に接続している電子計算機(以下「特定電
子計算機」という。)の利用(当該電気通信回線を通じて行うものに限る。以下「特定利用」という。)につき当該特定
22
電子計算機の動作を管理する者をいう。</Sentence>
</ParagraphSentence>
</Paragraph>(以下、省略)
下記がそれに対応する法令 DTD(一部)である。
<!-- Law ===================================================================-->
<!ELEMENT Law (PromulgateStatement?,LawNum,LawBody,Signature*)>
<!ATTLIST Law Era (Meiji|Taisho|Showa|Heisei) #REQUIRED
Year CDATA #REQUIRED
Num CDATA #REQUIRED
LawType (Constitution|Act|CabinetOrder|ImperialOrder|
MinisterialOrdinance|Rule|Misc) #REQUIRED
Lang (ja|en) #REQUIRED
OriginalPromulgateDate CDATA #REQUIRED
DataInfo CDATA #IMPLIED
>
<!ELEMENT LawNum (#PCDATA)>
<!ATTLIST LawNum %text.attrib;>
(省略)
<!-- LawBody ===============================================================-->
<!ELEMENT LawBody (((LawTitle,EnactStatement?,TOC?)|
(EnactStatement,TOC?)|
(TOC,LawTitle?)),
Preamble?,MainProvision,
(AppdxTable|SupplProvision)*,
(AppdxNote|AppdxStyle|Appdx|AppdxFig|AppdxFormat)*)
>
<!ATTLIST LawBody Subject CDATA #IMPLIED>
<!ELEMENT LawTitle (#PCDATA)>
<!ATTLIST LawTitle %text.attrib;
Kana CDATA #IMPLIED
Abbrev CDATA #IMPLIED
AbbrevKana CDATA #IMPLIED
>
<!ELEMENT EnactStatement (#PCDATA)>
<!ATTLIST EnactStatement %text.attrib;>
23
(省略)
<!-- Article ===============================================================-->
<!ELEMENT Article (((ArticleCaption,ArticleTitle)|
(ArticleTitle,ArticleCaption?)),
Paragraph+,SupplNote?)
>
<!ATTLIST Article Num CDATA #REQUIRED>
<!ELEMENT ArticleTitle (#PCDATA)>
<!ATTLIST ArticleTitle %text.attrib;>
<!ELEMENT ArticleCaption (#PCDATA)>
<!ATTLIST ArticleCaption %text.attrib; CommonCaption (Yes|No) #IMPLIED>
<!-- Paragraph =============================================================-->
<!ELEMENT Paragraph (ParagraphCaption?,ParagraphNum,ParagraphSentence,
(AmendProvision*|Class*|(Item*,(TableStruct*|FigStruct*))))
>
<!ATTLIST Paragraph Num CDATA #REQUIRED>
<!ELEMENT ParagraphCaption (#PCDATA)>
<!ATTLIST ParagraphCaption %text.attrib; CommonCaption (Yes|No) #IMPLIED>
<!ELEMENT ParagraphNum (#PCDATA)>
<!ATTLIST ParagraphNum %text.attrib;>
<!ELEMENT ParagraphSentence (Sentence+)>
(以下、省略)
(4)その他の法令関係システム
上記にあげた以外にも、法令を扱う出版社などでは XML を利用した法令自動更新システ
ムを開発している。図表 12 に示すように、新日本法規出版株式会社では、溶け込まし作業
を自動化する「法令自動更新システム」を開発し、
「改正法令データを作成して施行日順に
改正前の法令に溶け込まし、改正後の法令を作成する」ことを行っている。
また、共同印刷株式会社4でも XML を用いたデータベースを構築しており、法令の改訂
作業や検索作業だけでなく、書籍やインターネット・CD-ROM などの電子媒体制作のため
の原本として管理している。
4
http://www.kyodoprinting.co.jp/products/it-communication/media/xml.html
24
図表 12 新日本法規出版株式会社の法令自動更新システム
(出所:https://www.sn-hoki.co.jp/automatic.html)
3.2 法律と IT に関する先行研究について
法律と IT や技術に関する学問について調べると、法情報学、法情報科学、法令工学、法
工学などの分野があり、本研究の問題意識はどの分野で研究され、どこまで研究されてい
るのかを確認してみる。
なお、IT の進展により、公職選挙法のように従来の法律を再解釈したり、個人情報保護
法のように新たに法律の制定が必要になったりするが、このような新たな技術の登場によ
る法的な問題についてはここでは取扱わない。また、「法政策学と同様、法制度設計の理論
および技法を意識的かつ体系的に構築し、伝達することを目的とするが、その関心が、も
っぱら、技術による損失を最小にするという観点から技術者に対する行為規範を定立する
ことにある」法工学(近藤(2000))という考え方が日本機械学会から提唱されているが、こ
のような立場とも異なる。
あくまでも法律を扱う上で、IT という技術が貢献できるという立場で、学術的な分野を
確認していく。
25
3.2.1 法律と IT に関する学問体系
このような立場に立つと、法律と IT との関係を扱った学問体系として、法学系と工学系
の 2 つの領域がある。
法学系は、指宿(2010)に代表される法情報学という学問領域が設定され、法解釈論的な思
考を切り離し、情報系諸科学と整合性を保つ、法学と情報諸科学を架橋する領域とされて
いる。具体的には、法情報アクセス論(利用者のアクセス)、法情報管理論(データベース構
築)、法情報検索論(リーガルサーチ)、法情報教育論、法情報処理論(法情報のプロセス)、法
情報環境論(プラットフォーム)が設定されており、IT で法的なプロセスを支援するという問
題意識である。
指宿の整理によれば、法と IT に関する研究の草創期(1960~70 年代)においては計量法学
(電子的データの記録と検索、裁判の行動科学的分析、記号論理の応用)が中心であり、興隆
期(1980~90 年代)においては「法へのコンピュータ利用」と「コンピュータをめぐる法律
問題」がテーマとなったという。そして、1999 年に法情報学(法情報の検索、法情報の分
析、法情報の収集、法的推論、法律実務のコンピュータ支援、法学教育のコンピュータ支
援、法律文書作成のコンピュータ支援)という枠組みが提案され、2000 年以降「法に関す
る情報の収集・活用方法を検討し法情報を分析し、その結果に基づいて一定の提言を行い、
法情報活用のシステム構築を行う学問」として法情報学の定義が確立したという。
一方、工学系では、草創期の頃から記号論理の応用に関心を持ち、当時の人工知能(AI)
研究への関心の高まりとともに法情報科学という分野が登場した。その代表が吉野(1986、
2000)であり、
吉野(1986)では
「第 1 回法律エキスパートシステム研究会シンポジウム」(1985
年)の成果が報告されており、法および法的推論の構造解明、システム実装のための工学的
手法について、下記のような課題が明らかにされた。しかし、工学的な関心だけでなく、
法の民主化への貢献という関心も持っており、「法を一般の人々にも理解可能に、そして批
判可能に」すべきという問題意識を持っている。

判例上作られた概念の取込み、新たな状況による概念の発展・変化の取込みの課題

論理(三段論法)だけでなく衡平性(先例と比較して妥当か)の判断という課題

論理と衡平を試行錯誤する法的な意欲(legal mind)の技術的表現という課題

事実から法律要件への橋渡しを行う辞書的ルールの整備という課題
次の吉野(2000)では、文科省重点領域研究「法律エキスパート」(1993~1997 年度)の結果
が報告され、先の研究をさらに進めつつ、下記のような成果や課題を明らかにした。

裁判官の判断における「スジ」
「スワリ」という概念の解明と課題。

国連売買条約(実務で活用)の知識構造解明、暗黙知(推論過程の省略)の実装という課
題。

エキスパートシステムの限界として、演繹的正当化の推論を行うことはできるが、
法の解釈などにおける法創造の推論は行うことができない。
26

法実務では、矛盾したルール、ルールの不在、不完全性・曖昧性を内在して推論し
ており、これをどのように実現するか。

法律人工知能の基礎研究として、法律エキスパートシステム(国連売買条約)のプロ
トタイプ構築ができた。

国連売買条約の法律知識ベースの拡充、国内法の体系を搭載。多言語処理、法創造
のメカニズム解明とそのシステム化が今後の課題。
このように吉野らが目指す法情報科学とは、一貫して法律を題材として人工知能の実現
を目指すアプローチであると理解することができる。このような研究態度のなかにも、一
般人として法律に接した経験から問題意識を持ち、「民法(財産編)は文語カタカナ書きのま
ま放置、かつ判例と条文の明らかな矛盾を放置、早期に民法改正を」という提言を行って
いる。なお、民法の文語カタカナ書きの問題は 2004 年に全面的に平仮名・口語体表記に改
訂され、判例と条文の矛盾については現在「民法の大改正」として議論が進められている。
このように工学系では、人工知能の分野からアプローチが始まったが、その後、法と IT
をもう少し幅広く捉えて研究していこうという研究分野が登場する。それが法令工学であ
り、21 世紀 COE プログラム「検証進化可能電子社会」の成果をまとめた片山(2007)によっ
て、その考え方が報告されている。そこでは「社会というシステムを考えた時、法令がこ
のシステムの仕様の役割を果たしている。正しい仕様、正しい運用が、質の高い社会生活
の基本要件である。
」という認識および問題意識が表明され、人工知能的研究が主であった
法情報科学に対して、法令工学とは「法令文書に求められる無矛盾性や完全性などの計算
機による支援、例えば、法令で定められるべきことが明確に規定されているか、場合の漏
れはないかなどを検査し、法令文書の作成や保守を科学的に行い、また、法令を実働化し
ている情報システムを設計する技術を研究、開発するためのものである」と定義している。
そして、法令工学の目的として次の 2 つが掲げられている。
① 法令がその制定目的にそって適切に作られ、論理的矛盾や文書的問題がなく、関連法令
との整合性がとれていることを検査・検証し、法令の改訂に対しては、矛盾なく変更や
追加削除が行われることを情報科学的手法によって支援すること。
② 法令によって定められた内容を、情報処理システム―法令実働化システム―として実現
する際のシステム設計を、法令の構造にもとづいて系統的に行う方法論を展開すること。
第1の目的は、法令文書の作成、解析、保守などを系統的に行う方法論を研究するもの
であり、
「法令は社会を動かすソフトウェアである」という立場を取っている。これは法令
文書を対象とした研究領域とされ、次の分野から構成されており、法情報科学がテーマと
した研究分野は「法令文書の論理推論」の分野に組み込まれている。

法令文書の言語処理(作成管理環境、言語解析)

法令文書の論理推論

法令対象ドメインの形式記述と検証
第 2 の目的は、法令を実働化する情報システムの開発を系統的に行う方法論を研究する
27
ものであり、情報システムを対象とした研究領域とされる。具体的には、法令実働化情報
システムの構築を研究することになる。
3.2.2 法令文書の言語処理に関する現状と課題
このように整理すると、本研究の問題意識は法令工学における第1の目的の法令文書を
対象とした研究領域に該当し、そのなかでも法令文書の言語処理の分野に該当することが
わかる。ここではこの法令文書の言語処理研究について、その現状と課題について整理す
るが、この研究分野は法令工学を提唱している片山(2007)のほかに、より実務的な面からア
プローチしている研究もある。
(1) 基礎研究的なアプローチ
このアプローチは、片山(2007)や島津(2014)らによって代表される。基礎研究的なアプロ
ーチとは、現状の法令文書を論理的形式的に扱うことを主要な目的に据えており、論理的
な表現が可能となった暁には、推論への適用、わかりやすい表現や要約への変換、英訳、
より高度な検索へと応用範囲が広がっていくことを想定している。
法情報科学における論理推論と異なる点は、自動的な論理式への変換にこだわることな
く、
「近似として、自然言語処理による擬似的な推論で調べる」ことも許容していることで
ある。そして、法令文書の言語処理として次の 5 つの利用形態を想定している。

法令文書の論理的矛盾のチェック

論理式から自然言語への変換(論理矛盾について、理解しやすい自然言語で説明)

言語的な推論による文書的問題の検査への適用(論理式を介在せずに、文書の整合性を
検査。用語の定義、条文の参照関係、関連条文との整合性、語の意味や構文における
あいまいさの排除など)

法令理解の支援(法令を効率よく探すシステム)

法令作成の支援(法令などを効率よく的確に作成できる支援システム)
これらの全体像を示したものが次の図表 13 であり、言語解析によって「中間的な法令構
造」を抽出し、これを中心に様々な分野へ応用していこうというものである。
しかし、自然言語処理以前の問題として、法令文書の表現は「人間にとっても、煩雑で
読みにくい表現」(片山(2007))であり、法令文書を機械的に構造化することの限界が指摘さ
れている。たとえば、条項の言語表現(複数の項、括弧による挿入文、号による条件列挙
など)
、号参照表現、条項と論理構造の関係(おおよそ 7 種類、細分化すると 20 種類程度)、
複数文条項と論理構造関係、共参照関係、括弧の入れ子構造の処理などきわめて煩雑であ
る。そのため、島津(2014)は、国民年金法を材料として、可読性を高めるために法律の構造
的な書き換えを試行している。
28
図表 13 法令工学の言語処理
(出所 島津(2014)より転載)
このように、論理的な可読性を高めるために法律の原文を読みやすく書き換えるならば、
そして法律の原文自体が人間にとってもわかりづらいものであるなら、法律の原文自体を
変えるという発想があっても良いのではないかと思われる。
(2) 実務研究的なアプローチ
このアプローチは、実務的な問題意識を背景として、IT を活用して問題解決を図ってい
こうというものである。古くは、岡本・佐藤(1979)による「法令の一部改正の試み」がある。
これは、コンピュータを使って一部改正法令を言語的に解析し、対象となる法令を自動的
に改正しようという試みであった。一部改正法令とは、対象となる法令に変更を加える命
令文のような形式で記述されており、それをコンピュータで解析して自動改正することは
違和感のない処理のように考えられた。しかし、実験結果からは、さらなる構文規則の追
加や例外処理、図表の処理、一部改正情報の蓄積・検索などが課題として提示された。
近年では、和田(2001)や外山(2007)の研究がある。和田は岡本と同様な問題意識を持ち、
一部改正法律のデータに基づいて法律条文の保守を可能な限り自動化する研究を行ってい
る。汎用コンピュータ時代の岡本と異なる点は、法律データの記述に XML を用い、XML
をベースに法律の条文をコントロールしようというところにある。また、外山はもう少し
範囲の広い法制執務を研究対象としており、狭義の法制執務を「法令文・法令文書に関わ
る実務作業(法令の起草(立案)
・審査、管理・公開)」と定義し、これを電子化すること
(e-legislation)を目的としている。
和田(2001)においては、法令の公布媒体である官報掲載の形式を前提として、法律文書の
29
構造解析を行っている。たとえば、公布部における日付を法律の前後関係を明らかにする
メタ情報として扱うこと、条以下の構造や章節構造の日本語表記、改正履歴の保持と一部
改正法律の構成要素、字下げ表現による法律要素の区分などを XML でいかに表現するかを
論じている。法律文書を使った実証では、不完全ながらも改正処理を自動化することは可
能という結論になっているが、一部改正法律を解析する文法はまだ十分ではないという課
題を残している。
外山(2007)においては、法令改正時の法令自動統合システムの開発と法令英訳支援につい
て論じているが、法令英訳支援についてはここでは省略する。前者の法令改正時の法令自
動統合システムについて、外山の問題意識は岡本や和田と同様であり、一部改正法による
自動改正だけでなく、旧バージョン参照の仕組みを構築することも目的としている。自動
改正については、改め文の文型分析、論理構造の階層性分析、「同条」などの照応解析を行
い、現行の法律を使った実験を行っている。その結果約 0.5%で改正操作の失敗が確認され、
改め文の改め文や多段改正などより複雑な場合への対応が課題となっており、自動処理だ
けでなくユーザ支援、つまり人間による手作業が必要ではないかと指摘している。
(3) 先行研究のまとめ
本研究は、法令工学の第 1 の目的である法令文書を対象とした研究領域に該当するもの
であり、その具体的な先行研究として基礎研究的なアプローチと実務研究的なアプローチ
があることを見てきた。基礎研究的なアプローチにおいては、法令文書自体が人間にとっ
てわかりにくいものであると同時に機械にとってもわかりにくいことが指摘され、構造的
な書き換えを試行している。また、実務研究的アプローチにおいては、自動改正などで成
果を上げているものの、完璧な自動改正には至っていない。
つまり、法令文書を対象とした研究領域においては、コンピュータによる自動処理の限
界をかなり明瞭にするとともに、それを打開するための方向性を模索しているという状況
にある。
3.3 法律問題のまとめ
これまでの法律問題に関するポイントを、ここで再度整理しておく。

近年、立法爆発とも言うべき法律の激増という現象が起きており、図表 14 に示すよう
に法律が 2,000 近くに達し、法令は 8,000 を超えるまでになっている。

法律の数もさることながら、整備法を含む法改正の数も激増しており、法改正の文書
量も膨大なものとなっている。

このような環境から帰結されるものとして、立法や法改正のミスの増大が想定される
が、実際にこの 10 年間で実務に影響する重大なミスが多発している。
30

これらの問題解決に IT が有効であると想定されるが、IT を効果的に利用するための法
整備が未熟であり、IT 本来の能力を発揮できないでいる。

法令工学の分野においても、法令文書をコンピュータで自動処理することの限界に突
き当たり、その出口を模索している。
図表 14 現状の法令の数
法 令 数
憲法
1
法律
1,931
政令
2,072
勅令
75
府令・省令
3,641
閣令
11
規則
335
計
備 考
国の最高法規
法律とは、一般に、日本国憲法の定める方式に従い、国会の議
決を経て、
「法律」として制定される法をいう。
政令とは、内閣の制定する命令をいう。
勅令とは、旧憲法時代、天皇によって制定された法形式の1つ。
府令とは、内閣総理大臣が内閣府の長として発する命令をい
い、省令とは、各省大臣が発する命令をいう。
閣令とは、旧憲法時代に内閣総理大臣が発した命令をいう。
規則とは、内閣府及び各省の長以外の他の行政機関が発する命
令をいう。
8,066
(出所 法令データ提供システム 2014.12.1 現在)
31
4.電子政府とオープンガバメント
法律問題の整理においては、法律と IT が卵と鶏の関係、つまり「IT が能力を発揮できな
いために立法爆発の状況を改善できない」
・
「立法爆発の状況になっているため IT が能力を
発揮できるよう法律の整備ができない」という関係になっていることがわかる。ここで強
引に「IT が能力を発揮できるよう法令文書について法整備を行う」ことも一つの解決方法
であるが、それだけでは単なるソリューションにしかならない。
そこで、この問題をもう少し広い視点で捉えなおし、世界の電子政府の潮流という視点
から、本質的な問題を探り、問題解決の提案をしていきたい。
4.1 オープンガバメントの潮流
1993 年のクリントン政権による National Performance Review において電子政府という
コンセプトが初めて世に出てから、すでに 20 年を経過した。当時はインターネットすら市
民権を得ていない時代であったが、その後のインターネットの普及により、電子政府の考
え方は全世界を席巻した。
電子政府の発展段階として設定された、ウェブによる情報公開、政府と国民のコミュニ
ケーション、トランザクション処理という 3 段階は瞬く間に達成され、現在は第 4 段階の
変革(transformation)に達してその方向性を模索していることは、すでに榎並(2013)で解説
したとおりである。
そのような環境のなかで、現在世界の電子政府の大きな潮流となっているのはオープン
ガバメントという考え方である。これは米国オバマ大統領が、2009 年の大統領就任式の翌
日に署名した覚書” Transparency and Open Government :Memorandum for the Heads of
Executive Departments and Agencies”で世間に注目されることとなった。
そこで示された 3 原則とは Transparency(透明性)、
Participation(参加)、
Collaboration(協
働)の 3 つであり、情報は国民の資産であり説明責任を果たすこと、国民の間に散在する知
識を活用して政府の質を向上すること、国民が積極的に政府の活動へと関わることをうた
っている。近年オープンデータに注目が集まっているが、オープンデータ政策もオープン
ガバメントの流れのなかの一つであり、単にデータをオープンにしてイノベーションを起
こそうというだけでなく、透明性の確保・国民の参加・官民の協働を目的に各国ではオー
プンデータに取組んでいる。
我が国の IT 戦略ではじめてオープンガバメントという言葉が採用されたのは、「新たな
情報通信技術戦略」(2010 年 5 月 11 日 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)であ
り、民主党への政権交代後に初めて策定された IT 戦略で採用された。民主党政権は「コン
クリートから人へ」というスローガンに代表されるように、経済政策よりも国民の生活に
32
焦点を当てた政策を重視しており、IT 政策についても「今回の情報通信技術戦略(IT 戦略)
は、
過去の IT 戦略の延長線上にあるのではなく、
新たな国民主権の社会を確立するための、
非連続な飛躍を支える重点戦略(3 本柱)に絞り込んだ戦略である」(「新たな情報通信技術戦
略」の基本認識から引用)という考え方を示している。
その 3 本柱とは、国民本位の電子行政の実現、地域の絆の再生、新市場の創出と国際展
開の 3 つであり、最初の国民本位の電子行政の実現において、次のように「国民がオープ
ンガバメントを実感できる」ことを目標とした。
1.国民本位の電子行政の実現
○ 2020 年までに国民が、自宅やオフィス等の行政窓口以外の場所において、国民生活に
密接に関係する主要な申請手続や証明書入手を、必要に応じ、週 7 日 24 時間、ワンストッ
プで行えるようにする。この一環として、2013 年までに、コンビニエンスストア、行政機
関、郵便局等に設置された行政キオスク端末を通して、国民の 50%以上が、サービスを利
用することを可能とする。
○ 2013 年までに政府において、また、2020 年までに 50%以上の地方自治体において、国
民が行政を監視し、自己に関する情報をコントロールできる公平で利便性が高い電子行政
を、無駄を省き効率的に実現することにより、国民が、行政の見える化や行政刷新を実感
できるようにする。
○ 2013 年までに、個人情報の保護に配慮した上で、2次利用可能な形で行政情報を公開
し、原則としてすべてインターネットで容易に入手することを可能にし、国民がオープン
ガバメントを実感できるようにする。
そして、具体的な取組みとしては、次のように記載されている。
オープンガバメント等の確立
【重点施策】
○ 行政が保有する情報を2次利用可能な形で公開して、原則としてすべてインターネット
で容易に入手できるようにするなど、行政が保有する情報の公開を積極的に推進する。
○ 行政が保有する統計・調査などの情報について、回答者の個人情報を保護する観点から、
個人が特定できない形に情報の集約化・匿名化を行い、それらを原則としてすべて2次利
用可能な形でインターネットで容易に入手し、活用できるようにすることにより、新事業
の創出を促進する。
【具体的取組】
企画委員会の下にタスクフォースを設置した上で、政府が率先して以下の施策に取組むこ
ととし、地方自治体の同様の取組みも必要に応じ促進する。
ⅰ)行政情報の公開、提供と国民の政策決定への参加等の推進
徹底した業務改革を行った上での文書管理の電子化、公文書等のデジタルアーカイブ化を
進めつつ、国民のニーズの高い情報について電子政府の総合窓口(e-Gov)をはじめとする
ウェブサイトにおいて積極的に公開するとともに、国民の政策決定への参加等を進める。
33
【内閣官房、内閣府、総務省、経済産業省等】
ⅱ)行政機関が保有する情報の活用
行政機関が保有する地理空間情報、統計調査等に係る情報について、個人が特定できない
形に情報の集約化・匿名化を行うなど、個人情報・プライバシー保護の対策を講じつつ、
その一層の活用を推進する。
【内閣官房、総務省、国土交通省、経済産業省等】
このようにオープンガバメントという言葉を我が国で初めて使った意義は大きいが、本
来のオープンガバメントとはかなり乖離し、具体的取組のなかで「国民の政策決定への参
加等の推進」という言葉は見られるものの、全体としての内容はオープンデータの考え方
に偏っている。実際に「アイデアボックス(経済産業省)」や「熟議カケアイ(文部科学省)」
といった取組みが見られたものの、現在では停止している。また、透明性という言葉を探
してみると、
「情報公開による透明性の向上」や「国会による議論をより充実させ、透明性
の高いものにするための(中略)情報発信の充実」という文章に見られるように、「透明性
=情報公開」という狭い概念で捉えている。つまり、国民の行政への参加や協働を促進す
るために、いかに行政の情報をわかりやすく伝えるかという視点が抜け落ちたままなので
ある。
その後、現在の自民党政権に交代してからの新たな IT 戦略が、
「世界最先端 IT 国家創造
宣言」(2013 年 6 月 14 日閣議決定)として発表された。ここではオープンガバメントという
言葉が消え、
「公共データの民間開放(オープンデータ)及び公共データを自由に組み合わ
せて利活用可能な環境の整備を早急に推進する必要がある」という認識を示し、下記に示
すようにオープンデータの推進が中心となっている。
①
公共データの民間開放(オープンデータ)の推進
公共データについては、オープン化を原則とする発想の転換を行い、ビジネスや官民協働
のサービスでの利用がしやすいように、政府、独立行政法人、地方公共団体等が保有する
多様で膨大なデータを、機械判読に適したデータ形式で、営利目的も含め自由な編集・加
工等を認める利用ルールの下、インターネットを通じて公開する。
このため、速やかに電子行政オープンデータ戦略に基づくロードマップを策定・公表する
ほか、2013 年度から、公共データの自由な二次利用を認める利用ルールの見直しを行うと
ともに、機械判読に適した国際標準データ形式での公開の拡大に取り組む。また、各府省
庁が公開する公共データの案内・横断的検索を可能とするデータカタログサイトについて、
2013 年度中に試行版を立ち上げ、広く国民の意見募集を行うとともに、2014 年度から本
格運用を実施する。あわせて、データの組み合わせや横断的利用を容易とする共通の語彙
(ボキャブラリ)の基盤構築にも取り組む。
(以下、省略)
さらに、透明性という言葉は、政府の情報システム調達に関連して使われているに過ぎ
ない。この「世界最先端 IT 国家創造宣言」は 2014 年6月 24 日に改定されたが、状況は
34
まったく変わっていない。経済政策を優先する自民党政権としては、オープンガバメント
=オープンデータという捉え方をせざるを得ないという面はあるものの、我が国の状況は
Transparency, Participation, Collaboration を進め、より民主的な国家を実現していこうと
いうオープンガバメントの潮流からは大きく離れていっていると言わざるを得ない。
4.2 オープンガバメントから捉えた立法問題
我が国のオープンガバメントはオープンデータにかなり偏向しているが、
Transparency(透明性)、Participation(参加)、Collaboration(協働)の 3 原則から、立法問題
を捉えなおしてみると新たな視点が開ける。
① 透明性

法律は、適用される人々すべてにアクセス可能でなければならない。しかし、イン
ターネットでアクセスできる法令提供データベースシステムの法令文書は原本と
は異なり、法的な根拠とみなされていない5。法的な根拠となる原本としての法令
文書は官報で提供されており、有料のため誰でもアクセスできるわけではない。

法律は、その内容が改正および施行期日などによって常に変化しており、現時点お
よびある時点における法律の姿がすべての人々に明らかになっていなくてはなら
ない。しかし、現状では過去に遡及して、ある時点における法律の条文を確認する
ことがかなり困難になっている。
② 参加

法律は、適用される人々すべてが理解しやすいものでなければならない。しかし、
いまだに漢文調の片仮名・文語体が残存しているばかりか、法律特有の書式や用語
を使用しているため、一般国民でも理解しにくい。さらに、縦書き文書のため、表
や数式などが読むに耐えない。そして 1 文が 500 文字を超えるような文章もあり、
国民にとって理解しやすい文章になっていない。

法律は他の法律と関係性を持っており、その関係については条文のなかで他の法律
を参照することによって成立している。しかし、その参照方法が条文のなかに組み
込まれているため、条文を非常に分かりづらいものにしている。
③ 協働

法律の執行においては官民連携、審判においては裁判員制度など協働が進んでいる。
立法過程においては国民の代表である議員が関わるほか、最近では要綱・大綱・法
律の案などを提示してパブリックコメントを求め、その寄せられたコメントに回答
する方法で一般国民との協働も行われている。しかし、条文の修正提案について議
論することなどは行われておらず、制度として形骸化6しているという批判も起き
5
6
第 3 章で述べたように、法令提供データベースと官報ではその記述が異なっている。
最近では 2015 年 1 月、自民党議員が再生エネルギーの制度運用見直しに関連して、パブ
35
ている。
4.3 ソーシャルコーディング
筆者はこれまで電子政府や IT に関する法律問題に関わってきただけでなく、プログラマ
として自治体の業務処理プログラムのコーディングをしてきた経験がある。このような経
験から、法律の条文とプログラムのコードの類似性については体感しており、「法令は社会
を動かすソフトウェアである」という法令工学の考え方には深く共感する。しかし、現行
の法令文書の書式を絶対的なものとして、現行の書式を技術的に解析し、いかに自動化す
るかという問題意識については違和感を持っている。
むしろプログラミングにおける考え方を法令文書へと適用し、法令文書の書式自体を進
化させるべきではないかという立場を取る。さらに IT の使い方として、法令工学などでは
機械的に自動化することに力点を置いているが、オープンソースやクラウドソーシングな
どに見られるように、人間の知識や能力を集約するという IT の使い方に注目することで、
法令の問題についても新しい視野が開かれるのではないかと思われる。
そこで、ここではプログラミングの世界で出現してきている「ソーシャルコーディング」
という考え方について概観する。ソーシャルコーディングという概念は、もともと GitHub
というサービスがオープンソースの世界で作り上げてきたものだという。GitHub の初期の
ロゴには、social coding というサブタイトルが入っており、ソーシャルコーディングをス
ローガンとして掲げていた。
ソフトウェアの開発においてはコードの修正が宿命とも言え、バグの修正だけでなく、
機能追加によるコードの修正やソフト環境の変更によるコードの修正などもたびたび発生
する。複数のプログラマが同一モジュールを修正しなければならないこともあり、少人数
のプロジェクトであれば相互のコミュニケーションで調整できるが、大規模な開発になる
とライブラリアンを配置して、ライブラリの管理やモジュールの払出しの管理などを行わ
なければならない。
オープンソースの世界では、世界中の誰もがソースコードを開発して公開するだけでな
く、誰もが自由に変更することができる。しかし、誰もが自由に変更できるとなると、変
更の競合が起き、整合性が取れなくなってしまう。そのため初期では改変できる権利を持
つ人だけが改変できたというが、それではオープンソースの進化のスピードが鈍化してし
まう。そこで、相互の変更の整合性を自動的にコントロールする GitHub というサービスが
登場した。これによってソフトウェア開発者は平等にソースコードを改変する権利を与え
られたため、GitHub によってソフトウェア開発が「民主化」されたという言い方も出現し
た。
GitHub の詳細については省略するが、ソーシャルコーディングの考え方を次に整理する。
リックコメントが形骸化しており行政手続法違反だと批判している。
36
・ ソースコードのバージョン管理ができる。
・ 誰もが自由にソースコードを改変できる。
・ Fork と pull request でオリジナル開発者と改変するプログラマがコミュニケーション
できる。
Mergel(2014)によれば、GitHub は米国連邦政府などの公共部門に広がりつつあり、もと
もとはオープンソースのソフトウェアコードの管理が目的であったが、近年ではそれだけ
でなく、オープンデータ、研究用データ、アルゴリズム、技術的解決策、RFI(Request for
Information)などの様々な分野に適用されつつある。さらに、Fretwell(2014)の報告では、
ソーシャルコーディングは RFP(Request for Proposal)、法律、請願などへも広がりを見せ
ているという。
ソフトウェアコードに限らず、文書やデータなどデジタルな資源をオープンに、互恵の
精神で使うというソーシャルコーディングの仕組みは、公的部門の活動とその性格がかな
り類似しているといえる。法律について考えるなら、法律は適用される人々すべてにとっ
てオープンでなければならず、さらに民主的国家であるならすべての人々がその内容につ
いて理解・議論できなくてはならない。オープンガバメントの 3 原則を基本に法律という
コードを扱おうとする場合、まさにこのソーシャルコーディングの考え方やツールが大き
な役割を果たすのではないかと考えられる。
37
5.オープンコーディングの提案
これまで整理した法律問題について、オープンガバメントやソーシャルコーディングと
いう考え方を取入れてその解決方法を考察すると、新たなコンセプトを打ち出すことがで
きる。それをここでは「オープンコーディング」という言葉で表現する。このオープンコ
ーディングという言葉は造語であり、オープンガバメントとソーシャルコーディングに依
拠した法令文書の取扱いに関するコンセプトを表わす。なお、グラウンテッド・セオリー
という質的な社会調査の一つの手法として「オープン・コーディング」という言葉がある
が、それとは異なる。
5.1 オープンコーディングの基本理念と原則
オープンコーディングの基本理念と原則を次に示す。なお、ここで言う「機械」とは、
人間の能力を補助する機械という意味であり、人としてふるまうような人工知能を意味す
るものではない。
(1)オープンコーディングの基本理念
①透明性
法律は適用されるすべての人々にとって遵守すべき社会規律であり、誰もがその原本に
対して容易かつ無料でアクセスできなくてはならない。さらに、現時点の法律および過去
におけるある時点の法律が、すべての人々および機械に即時に明らかになっていなくては
ならない。
(人に Open であると同時に、機械に対しても Open に)
②参加
法律は適用されるすべての人々にとって利害関係をもたらし、法律の制定や改正におい
てすべての人々および機械が参加できるよう、法令文書は理解しやすい言語、および理解
しやすい文章で表現されなくてはならない。特に、法律の参照関係は、内容の理解を妨げ
るような表現をしてはならない。(法令文書が human readable であると同時に machine
readable に)
③協働
法律の立法過程における協働について、すべての人々や機械が協働できるよう、パブリ
ックコメントとその回答だけでなく、条文の修正提案について議論できるよう、環境を整
備しなければならない。
(注)法律が適用されるすべての人々とは、日本語が堪能な日本国籍の者だけが対象では
ないことは明白であり、外国籍の者にとってもわかりやすい日本語でなくてはならない。
また、複雑化した法律を人々が理解するために支援する機械にとっても、法律がアクセス
38
しやすいものであると同時に、わかりやすい日本語でなければならない。
(2)オープンコーディングの原則
① 法令文書の原本を電子データとし、インターネットを介して法令提供データベースで
提供する法律を原本とすること。
② 法令文書のバージョン管理を行い、現時点および過去のある時点での法律を即時に提
供できるようにすること。年の記述については和暦ではなく、西暦を使うこと。
③ 法令文書の書式は横書きとすること、漢文調の片仮名・文語体を平仮名・口語体に書
き直すこと、簡潔に記述すること。
④ 法令文書の書式は、オープンコーディング規約に則ること。
⑤ 法令文書の制定・改正について、国民が参加できる協働立法作業環境を提供すること。
なお、法令提供データベースで提供する電子データを法律の原本とするためには、次に
あげるいくつかの条件が必要となる。

法律の公布媒体である官報を全面的に電子化してインターネットで無料公開し、紙
の配布を停止する。検索しやすいよう HTML、XML で提供し、PDF による提供は
原則として認めない。

官報で公布する法律の原本は電子データとし、法令提供データベースの法令文書と
同一の内容にする。ルビや数式等については、法令提供データベースで提供しやす
い表現方法とする。
法令文書で使用される文字セットは JISX0208 とする。現在、原則として常用漢字

と平仮名を用いることになっているが、常用漢字と JISX0208 の整合性が取れてお
らず、JISX0208 以外の文字を使っている場合はこの範囲内に縮退することとする。
5.2 法令文書のオープンコーディング規約
以下にオープンコーディング規約を説明する。具体的な例示は、「付録
具体的な適用
例:マイナンバー法」の一部を使っており、適用事例の全体像についてはこちらを参照し
ていただきたい。
①
条文の区域の明確化
次のように、条文において定義を行う区域を明確化する。COBOL 言語における区域の名
称をそのまま使っている。なお、第 1 条は法律の目的を記載した部分であるため、
Environment Division に記述し、第 2 条は用語の定義を記載した部分であるため、Data
Division に記述した。第 3 条以降は、Procedure Division に記述している。

Identification Division:法律の名称や法律 ID などを定義

Environment Division:法律が適用される環境を定義
39
②

Data Division:用語の定義

Procedure Division:ルールの定義
条文の文章をわかりやすく短くすること
1 文章は、200 文字以下にする。マイナンバー法の第 1 条第 1 項は1つの文章(518 文字)
で記述されているが、下記のように箇条書きに修正し、わかりやすくする。
第 1 条第 1 項

この法律は、下記の事項を目的とする。
行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が、個人番号及び法人番号の
有する特定の個人及び法人その他の団体を識別する機能を活用する。

行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が、効率的な情報の管理及び
利用並びに他の行政事務を処理する者との間における迅速な情報の授受を行うことが
できるようにする。その手段として、識別機能によって異なる分野に属する情報を照
合してこれらが同一の者に係るものであることを確認するために整備された情報シス
テムを運用する。

行政運営の効率化と行政分野におけるより公正な給付と負担の確保を図る。

行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者に対して申請・届出等の手続
を行い、便益の提供を受ける国民が、手続の簡素化による負担の軽減、本人確認の簡
易な手段その他の利便性の向上を得られるように必要な事項を定める。

個人番号その他の特定個人情報の取扱いが安全かつ適正に行われるよう下記の法律の
特例を定める。
③


行政機関個人情報保護法

独立行政法人等個人情報保護法

個人情報保護法
条文番号の導入
条・項・号を基準として、条文には必ず条文番号を付ける。書式は、第○条、第○条第
○項、第○条第○項第○号のどれかを使うこととし、それ以下は 1、1.1、1.1.1、1.1.1.1
…のようにレベルを明確化する数字の使い方とする。

番号はアラビア数字とし、それ以外の文字は認めない。

第○条第 1 項の「第 1 項」を省略することは認めない。

「第○条の一」という追加の書式は、条が追加された表現としては誤解を招きやすいた
め、
「第○.1 条」という表記に改める。第○.1 条と第○.2 条の間に追加する場合は、第
○.1.○条とする。

次条・前条や前項などの表現は廃止し、条文番号を直接指定する。

整備法のように入れ子構造になっているものについては、第○条[第○条第○項第○号]
のように入れ子構造を明確に示す書式とする。
第 8 条第 2 項 「機構」は、第 8 条第 1 項の規定により市町村長から「個人番号」とすべ
き番号の生成を求められたときは、政令で定めるところにより、第 8 条第 3 項の規定によ
40
り設置される電子情報処理組織を使用して、次に掲げる要件に該当する番号を生成し、速
やかに、当該市町村長に対し、通知するものとする。
第 8 条第 2 項第 1 号 他のいずれの「個人番号」
(第 7 条第 2 項の従前の「個人番号」を含
む。
)とも異なること。
第 8 条第 2 項第 2 号 第 8 条第 1 項の住民票コードを変換して得られるものであること。
第 8 条第 2 項第 3 号
第 8 条第 2 項第 2 号の住民票コードを復元することのできる規則性
を備えるものでないこと。
Identification Division の記述方法
④
法律名、法律名の略称、公布日、法律 ID(従来の用語では「法令番号」)を記載する。
Identification Division.
法律名:行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律
法律名の略称:番号法 or マイナンバー法
公布日:2013 年 5 月 31 日
法律 ID:2013 年法律第 27 号
Environment Division の記述方法
⑤
法律の改正履歴、最終改正日、最終改正の法律 ID を記載する。
Environment Division.
改正履歴:
2012 年 8 月 22 日法律第 67 号
(中略)
2014 年 5 月 30 日法律第 50 号
2014 年 6 月 25 日法律第 83 号
最終改正:2014 年 6 月 25 日(法律 ID:2014 年法律第 83 号)
法令の体系について、本法律と関係のある法律、本法律に基づく政省令・規則・告示等
を提示し、全体像を明らかにする。
法令の体系:
法令の体系(法律)
:

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に
伴う関係法律の整備等に関する法律(マイナンバー整備法)
2013.5.31 交付、
2013.10.7 改正、2014.2.20 改正、2014.7.17 改正

内閣法等の一部を改正する法律(政府 CIO 法)2013.5.31

地方公共団体情報システム機構法 2013.5.31
法令の体系(政省令・規則・告示等):

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行令
(マイナンバー法施行令)
(2014 年政令第 155 号)2014.3.31

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行規則
41
(マイナンバー法施行規則)
(2014 年内閣府・総務省令第 3 号)2014.7.14
(以下、省略)
本法律の構成およびこの法律の目的を明らかにする。なお、編、章、節などは法律の構
成を明らかにするタイトルとしての位置付けと考える。
法律の構成:
第 1 章 総則(第 1 条~第 6 条)
第 2 章 個人番号(第 7 条~第 16 条)
第 3 章 個人番号カード(第 17 条~第 18 条)
第 4 章 特定個人情報の提供
第 1 節 特定個人情報の提供の制限等(第 19 条~第 20 条)
第 2 節 情報提供ネットワークシステムによる特定個人情報の提供(第 21 条~第 25 条)
第 5 章 特定個人情報の保護
(中略)
第 1 章 総則
第 1 条 目的
第 1 条第 1 項
この法律は、下記の事項を目的とする。
(以下、省略)
⑥
Data Division の記述方法

用語の定義をする部分であり、この部分で定義された用語は普通名詞と異なる意味を
持つため、以降 Procedure Division で使う場合には「○○○」という括弧書きにして
普通名詞と明確に区別する。「○○○」と表現された場合には、その法律特有の定義さ
れた用語として理解し、○○○と表現された場合には普通名詞として理解するという
ルールにする。
例えば、第 45 条第 4 項の「本人」は普通名詞であるが、それ以外の「本人」は定義
された用語として使われている。また、
「行政機関の長等」は(第 27 条と附則第 2 条)
および(第 59 条~第 61 条)では、異なった意味で使われている。

他の法律によって定義されている場合には、defined by によって明確にその法律を指
し示す。なお、法律名は略称を使うこととし、正式名称とその法律を特定する法律 ID
については Data Division の「他の法律の参照 2」で定義する。

他の法律の参照 1
「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「独立行政法人等個
人情報保護法」という。
)
」というように、条文の中で「正式名称(略称)
」と書き込ん
でいる。条文中は略称を使うこととし、正式名称と略称の対応付けは Data Division で
行う。

他の法律の参照 2
条文のなかで他の法律を参照する場合、「○○に関する法律(元号○○年法律第○号)」
42
という表記がされるが、条文中は法律名称を表記するだけにする。法律 ID である「元号
○○年法律第○号」は、
「西暦○○年法律第○号」と表記し、法律名称と法律 ID の対応
付けは Data Division で行う。
⑦
Procedure Division の記述方法

「及び、並びに、又は、若しくは」などの法律用語は、現代的な用語法と論理的な表
現方法(and or (
)など)を使った表記に改める。
「A 及び B、並びに C 及び D」
→
(A and B) and (C and D)
(A と B)および(C と D)
(A と B)そして(C と D)
「A 若しくは B、又は C 若しくは D」
→

(A or B) or (C or D) (A または B)または(C または D)
用語法の現代化とアラビア数字の使用
「六月以下の懲役」など古い文体は、「6 ヶ月以下の懲役」と現代用語法に修正する。

注釈や補足説明
注釈や補足説明については条文のなかに直接書き込まず、(*)の形式で注釈を入れ、条
文の外に書く。

区切りに空白は使わず、
「:」を使うこと。下記の例では「:」を使って、区切りを明
確にしている。
市町村の機関 地域住民の利便性の向上に資するものとして条例で定める事務
特定の個人を識別して行う事務を処理する行政機関、地方公共団体、民間事業者その
他の者であって政令で定めるもの 当該事務
市町村の機関:地域住民の利便性の向上に資するものとして条例で定める事務
特定の個人を識別して行う事務を処理する行政機関、地方公共団体、民間事業者その
他の者であって政令で定めるもの:当該事務

特殊な字句を一つのまとまりとして表現にする場合、(定義された用語である)「〇〇」
は使えないため、<〇〇>を使う。例えば、<読み替えられる字句>欄。
5.3 オープンコーディングのメリットと適用結果
オープンコーディングのメリットは次のようなものであると考えられる。
①読みやすい日本語であること
現代的な用語法で理解できるとともに、and/or などの論理的条件が( )付きで明確に
なる。特に、普通名詞と定義された用語の使い分けが法律を難しくしており、定義された
用語については「
」で明確にできる。さらに、元号は西暦に書き直すことで年数の経過
がわかる。
②条文の表現が IT によって自由になると同時に、表現方法の自動化も可能となる。
条文のなかに(
)付きで組み込まれている定義、他法律の参照、条件などを省略して
43
読むことができる。また、必要に応じてそれらの内容をリアルタイムで表示させることが
できるため、理解がしやすくなる。定義用語、法律 ID、条文番号、論理条件などを使用し
ているため、参照や取込み、論理的判断が自動化しやすい。
次に、具体的な法律にオープンコーディングを適用し、その適用結果について検証を行
った。適用対象はマイナンバー法であるが、近年制定された法律であり、整備法の制定な
ど多くの法律とも関連することから適していると判断した。
「付録」にマイナンバー法にオープンコーディングを適用した例を示したが、マイナン
バー法の原本7の記述と、その記述方法の相違や読みやすさ、理解しやすさなどを比較して
いただきたい。
実際に適用した結果を整理したものが次であり、コンピュータを使った実証は今後の課
題であるものの、オープンコーディングの可能性は大きいと考えられる。

Environment Division においては、マイナンバー法が他の法律の影響を受けて、かな
り頻繁に法改正が行われていることがわかる。さらに、関連する政省令・規則・告示
等が多くの省庁に影響しており、今後の政省令の追加についてもここで把握できる。

Data Division における第 2 条では用語の定義を行っているが、元の法律では 15 項目
しかない定義が、条文中の定義を移動することにより 58 項目8にまで増加した。これに
よって条文が読み易くなるとともに、同じ用語でも条文によって異なる意味を持つ場
合があることも明らかとなる。

Data Division における第 2.1 条では法律の定義を記述し、条文中から移動した。28 項
目を移動することによって、条文が読みやすくなっている。さらに、ここで定義した
法律 ID を使って、他の法律を呼び出す(call)ことも可能となる。

Procedure Division においては条文番号を導入し、前条・同条・次条などの用語を廃
止することにより、的確に条文を指し示すことが可能となった。改正法による法律の
改正が自動化できるとともに、読み替え規定などを読む場合は、対象となる法律の条
文を呼び出して読み替え後の条文を確認することが可能となる。

全体を通して、用語、法律、条文、論理条件などを明確に指し示す表現となっている
ため、コンピュータによる自動解析に耐えられるものとなっている。自動的にタグを
付けることにより、次のようなことが可能となる。

理解しやすい、それぞれの嗜好にあった表現ができる。例えば、
「条・項・号を数
字だけで表現する」
、
「項は一段下げ、号は二段下げにする」、
「第 1 項を省略し、
漢数字を使う従来の表現にする」など。

条文中の定義用語について、定義内容を表示する。その用語が他の法律で定義さ
れている場合は、法律 ID を使って他の法律を呼び出し、定義を表示する。
7
8
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/pdf/260717bangouhou.pdf
別表などにおける記述は省略したため、これらを含めると定義はかなり増える。
44

条文中で指し示している条文について、その内容を表示する。例えば、
「第 9 条第
1 項から第 4 項に定める〇〇」という場合、その条文を自動的に表示することがで
きる。

他の法律の読み替え規定については、自動的に読み替えられた条文を確認するこ
とができる。
次に、マイナンバー法第 14 条を現行の書式とオープンコーディングの書式で比較してみ
た。破線の四角は注釈であるが、実践の四角は必要に応じて表示させることができる。
(提供の要求)
第十四条
個人番号利用事務等実施者は、個人番号利用事務等を処理するために必要があ
るときは、本人又は他の個人番号利用事務等実施者に対し個人番号の提供を求めることが
できる。
2
個人番号利用事務実施者(政令で定めるものに限る。第十九条第四号において同じ。)
は、個人番号利用事務を処理するために必要があるときは、住民基本台帳法第三十条の九
から第三十条の十二までの規定により、機構に対し機構保存本人確認情報(同法第三十条
の九に規定する機構保存本人確認情報をいう。第十九条第四号及び第六十七条において同
じ。
)の提供を求めることができる。
45
図表 15 オープンコーディングの適用例
定義された用語は「 」で記述
条項番号
第 14 条 提供の要求
第 14 条第 1 項 「個人番号利用事務等実施者」は、
「個人番号利用事務等」を処理するた
めに必要があるときは、
「本人」または他の「個人番号利用事務等実施者」に対し「個人番
号」の提供を求めることができる。
第 14 条第 2 項 「個人番号利用事務実施者」(*)は、
「個人番号利用事務」を処理するため
に必要があるときは、
「住民基本台帳法」第 30.9 条から第 30.12 条までの規定により、
「機
構」に対し「機構保存本人確認情報」の提供を求めることができる。
(*)政令で定めるものに限る。
補足・注釈は条
第 2 条第 24 項 機構保存本人確認情報:
項外に記述
Defined by 住民基本台帳法第 30.9 条
第 2.1 条第 4 項 住民基本台帳法:
住民基本台帳法(1967 年法律第 81 号)
第 30.9 条
都道府県の審議会の設置
第 30.9 条第 1 項
(省略)
第 30.9 条第 2 項
……当該都道府県における第 30.5 第 1 項の
規定による通知に係る本人確認情報の保護に関する事項を調
(出所:筆者作成)
査審議し、
46
6.まとめ
多くの社会的問題を迅速に解決し、新技術の迅速な適用によって社会に利益をもたらす
ためには、IT を前提とした「新たな立法環境」が必要であるという仮説のもとに本研究を
行ってきた。
実際に立法環境を定量分析してみると、「立法爆発」という現象が起きているという事実
が明らかとなり、そのような環境が立法ミスの多発という社会的な問題を生じさせている
こともわかってきた。
これらに対して、IT を活用して問題を解決していこうという発想は新しいものではなく、
すでに取組みが行われている。しかし、その実態を調査してみると、紙に書かれたものが
あくまで原本であるという考え方や古い書式に則った法令文書の文化に支配され、IT が有
効に活用できていない。これは実務だけでなく、学問領域でも壁に突き当たっている原因
となっていることがわかった。
そこで、従来の「現行の法令文書を IT のパワーでねじ伏せる」ような考え方から、オー
プンガバメントやソーシャルコーディングの発想を参考に、
「法令文書を人や人を支援する
機械に優しい文書へと変革する」かつ「IT で人々の知識やパワーを協働させる」ような考
え方へ転換することが、新たな立法環境への道を開くのではないかと考えるに至った。
具体的には、透明性、参加、協働というオープンガバメントの 3 原則を基礎として、オ
ープンコーディングの基本理念と原則を提示できたことは、我が国における当該分野での
IT 活用の考え方において大きな転機をもたらすのではないかと考えている。また、透明性
と参加への道を開くオープンコーディング規約についても、マイナンバー法に適用した具
体的な事例を示し、検証することができたことは大きな意義があると考えている。
ただし、オープンコーディングの協働の原則における「国民参加による協働立法作業環
境の提供」については、ソーシャルコーディングの考え方が適用できることを提示しただ
けに留まっている。その具体化や検証については今後の課題としたい。
また、今回の研究においては、海外の状況、特に英米法や大陸法における立法爆発の事
実や IT 活用の現状などについて確認するまでに至らなかった。これについても今後の課題
として取組んでいきたい。
筆者の研究領域の関係から、今回の研究は技術活用のための効率的な立法環境という視
点になりがちになっていることは認めるが、それだけでなくグローバル化や人口構造の変
化によってさまざまな社会問題が降り注いでくる将来の世代にとって、社会的課題に取組
み、問題を迅速に解決するための効率的な立法環境が求められることは必至だろう。本研
究がそのようなかたちで将来に貢献できれば幸甚である。
47
【付録】具体的な適用例:マイナンバー法
Identification Division.
法律名:行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律
法律名の略称:番号法 or マイナンバー法
公布日:2013 年 5 月 31 日
法律 ID:2013 年法律第 27 号
Environment Division.
改正履歴:
2012 年 8 月 22 日法律第 67 号
2012 年 11 月 26 日法律第 102 号
2013 年 6 月 21 日法律第 54 号
2013 年 6 月 26 日法律第 63 号
2013 年 12 月 4 日法律第 90 号
2013 年 12 月 13 日法律第 104 号
2013 年 12 月 13 日法律第 106 号
2014 年 3 月 31 日法律第 10 号
2014 年 4 月 23 日法律第 28 号
2014 年 5 月 30 日法律第 42 号
2014 年 5 月 30 日法律第 47 号
2014 年 5 月 30 日法律第 50 号
2014 年 6 月 25 日法律第 83 号
最終改正:2014 年 6 月 25 日(法律 ID:2014 年法律第 83 号)
法令の体系:
法令の体系(法律)
:

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に
伴う関係法律の整備等に関する法律(マイナンバー整備法 )
2013.5.31 交付、
2013.10.7 改正、2014.2.20 改正、2014.7.17 改正

内閣法等の一部を改正する法律(政府 CIO 法)2013.5.31

地方公共団体情報システム機構法 2013.5.31
法令の体系(政省令・規則・告示等):
【制度全般】

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行令
(マイナンバー法施行令)
(2014 年政令第 155 号)2014.3.31

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行規則
48
(マイナンバー法施行規則) (2014 年内閣府・総務省令第 3 号)2014.7.14

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律別表第一
の主務省令で定める事務を定める命令(2014 年内閣府・総務省令第 5 号)2014.9.10

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律別表第 2
の主務省令で定める事務および情報を定める命令
(2014 年内閣府・総務省令第 7 号)
2014.12.12
【総務省】

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の規定に
よる(通知カードおよび個人番号カード)および情報提供ネットワークシステムによ
る特定個人情報の提供等に関する省令(2014 年総務省令第 85 号)2014.11.20

地方税法施行規則の一部を改正する省令(2014 年総務省令第 96 号)2014.12.22
【厚生労働省】

健康保険法施行規則の一部を改正する省令(案)
【財務省】

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律および行
政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴
う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う財務省関係政令の整備に関する政令
(2014 年政令第 179 号)2014.5.14

所得税法施行規則の一部を改正する省令 2014.7.9

法人番号の指定等に関する省令(2014 年財務省令第 70 号)2014.8.12
【特定個人情報保護委員会】

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部の
施行期日を定める政令(2013 年政令第 299 号)2013.10.17

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部の
施行に伴う関係政令の整備に関する政令(2013 年政令第 300 号)2013.10.17

特定個人情報保護委員会事務局組織令(2013 年政令第 301 号)2013.10.17

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部の
施行期日を定める政令(2014 年政令第 163 号)2014.4.16

特定個人情報保護評価に関する規則(2014 年特定個人情報保護委員会規則第1号)
2014.4.18

特定個人情報保護評価に関する規則(2014 年特定個人情報保護委員会規則第1号)
2014.4.18
法律の構成:
第 1 章 総則(第 1 条~第 6 条)
第 2 章 個人番号(第 7 条~第 16 条)
49
第 3 章 個人番号カード(第 17 条~第 18 条)
第 4 章 特定個人情報の提供
第 1 節 特定個人情報の提供の制限等(第 19 条~第 20 条)
第 2 節 情報提供ネットワークシステムによる特定個人情報の提供(第 21 条~第 25 条)
第 5 章 特定個人情報の保護
第 1 節 特定個人情報保護評価(第 26 条~第 28 条)
第 2 節 行政機関個人情報保護法等の特例等(第 29 条~第 35 条)
第 6 章 特定個人情報保護委員会
第 1 節 組織(第 36 条~第 49 条)
第 2 節 業務(第 50 条~第 56 条)
第 3 節 雑則(第 57 条)
第 7 章 法人番号(第 58 条~第 61 条)
第 8 章 雑則(第 62 条~第 66 条)
第 9 章 罰則(第 67 条~第 77 条)
附則
第 1 章 総則
第 1 条 目的
第 1 条第 1 項

この法律は、下記の事項を目的とする。
行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が、個人番号および法人番号
の有する特定の個人および法人その他の団体を識別する機能を活用する。

行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が、効率的な情報の管理と利
用および他の行政事務を処理する者との間における迅速な情報の授受を行うことがで
きるようにする。その手段として、識別機能によって異なる分野に属する情報を照合
してこれらが同一の者に係るものであることを確認するために整備された情報システ
ムを運用する。

行政運営の効率化と行政分野におけるより公正な給付と負担の確保を図る。

行政機関、地方公共団体その他の行政事務を処理する者に対して申請・届出等の手続
を行い、便益の提供を受ける国民が、手続の簡素化による負担の軽減、本人確認の簡
易な手段その他の利便性の向上を得られるように必要な事項を定める。

個人番号その他の特定個人情報の取扱いが安全かつ適正に行われるよう下記の法律の
特例を定める

行政機関個人情報保護法

独立行政法人等個人情報保護法

個人情報保護法
50
Data Division
第 2 条 データの定義
第 2 条第 1 項 行政機関:
Defined by 行政機関個人情報保護法第 2 条第 1 項
第 2 条第 2 項 独立行政法人等:
Defined by 独立行政法人等個人情報保護法第 2 条第 1 項
第 2 条第 3 項 個人情報:
下記のいずれかに該当するもの。

「行政機関が保有する個人情報」defined by 行政機関個人情報保護法第 2 条第 2 項

「独立行政法人等が保有する個人情報」defined by 独立行政法人等個人情報保護法
第 2 条第 2 項

「(行政機関 or 独立行政法人等)以外の者が保有する個人情報」defined by 個人情
報保護法第 2 条第 1 項
第 2 条第 4 項 個人情報ファイル:
以下のいずれかに該当するもの。

行政機関が保有する個人情報ファイル defined by 行政機関個人情報保護法第 2 条
第4項

独立行政法人等が保有する個人情報ファイル defined by 独立行政法人等個人情報保
護法第 2 条第 4 項

(行政機関 or 独立行政法人等)以外の者が保有する個人情報ファイル defined by 個
人情報保護法第 2 条第 2 項
第 2 条第 5 項 個人番号:
((住民票コードを変換して得られる番号) and (住民票コードが記載された住民票に係る
者を識別するために指定される)) operated under マイナンバー法第 7 条(第 1 項 or 第 2
項)
第 2 条第 5.1 項 住民票コード:
defined by 住民基本台帳法第 7 条第 13 号
第 2 条第 6 項 本人:
個人番号によって識別される特定の個人。ただし、
第 45 条第 4 項はこの定義を除外する。
第 2 条第 7 項 個人番号カード:
下記の条件がすべて満たされたもの。

氏名、住所、生年月日、性別、個人番号その他政令で定める事項が記載され、本人の
写真が表示されていること。

カード記録事項が電磁的方法により記録されたカード。
51

この法律とこの法律に基づく命令で定めるところによりカード記録事項を閲覧・改変
する権限を有する者以外の者による閲覧・改変を防止するために総務省令で定める措
置が講じられたもの。
第 2 条第 7.1 項 カード記録事項:
氏名、住所、生年月日、性別、個人番号、その他政令で定める事項、本人の写真、その
他総務省令で定める事項
第 2 条第 7.2 項 電磁的方法:
電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法。第 18
条において同じ。
第 2 条第 8 項 特定個人情報:
個人番号をその内容に含む個人情報。
第 2 条第 8.1 項 個人番号:
個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であっ
て、住民票コード以外のものを含む。第 7 条第 1 項と第 2 項、第 8 条、第 67 条、および附
則第 3 条(第 1 項から第 3 項までと第 5 項)を除き、以下同じ。
第 2 条第 9 項 特定個人情報ファイル:
個人番号をその内容に含む個人情報ファイル。
第 2 条第 10 項 個人番号利用事務:
行政機関、地方公共団体、独立行政法人等その他の行政事務を処理する者が第 9 条第 1
項と第 2 項の規定によりその保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に
検索し、および管理するために必要な限度で個人番号を利用して処理する事務。
第 2 条第 11 項 個人番号関係事務:
第 9 条第 3 項の規定により個人番号利用事務に関して行われる他人の個人番号を必要な
限度で利用して行う事務。
第 2 条第 12 項 個人番号利用事務実施者:
(個人番号利用事務を処理する者)と(個人番号利用事務の全部または一部の委託を受けた
者)。
第 2 条第 13 項 個人番号関係事務実施者:
(個人番号関係事務を処理する者)と(個人番号関係事務の全部または一部の委託を受けた
者)。
第 2 条第 14 項 情報提供ネットワークシステム:
行政機関の長等の使用に係る電子計算機を相互に電気通信回線で接続した電子情報処理
組織であって、暗号その他その内容を容易に復元することができない通信の方法を用いて
行われる第 19 条第 7 号の規定による特定個人情報の提供を管理するために、第 21 条第 1
項の規定に基づき総務大臣が設置し、および管理するものをいう。
第 2 条第 14.1 項 行政機関の長等:
52
第 2 条第 14.1 項第 1 号 第 27 条と附則第 2 条では次の意味で使用される。

行政機関の長

地方公共団体の機関

独立行政法人等

地方独立行政法人 defined by 地方独立行政法人法第 2 条第 1 項

地方公共団体情報システム機構

第 19 条第 7 号に規定する情報照会者と情報提供者
第 2 条第 14.1 項第 1 号 第 59 条から第 61 条では次の意味で使用される。

行政機関の長

地方公共団体の機関

独立行政法人等
第 2 条第 14.2 項 機構:
地方公共団体情報システム機構
第 2 条第 15 項 法人番号:
第 58 条第 1 項と第 2 項の規定により、特定の法人その他の団体を識別するための番号と
して指定されるもの。
**** 以下の用語の定義は、条文中から第 2 条へ移動 ******
第 2 条第 16 項 基本理念:
第 3 条で定めるもの
第 2 条第 17 項 市町村長:
市町村長と特別区の区長を含む
第 2 条第 18 項 市町村:
市町村と特別区を含む
第 2 条第 19 項 通知カード:
氏名、住所、生年月日、性別、個人番号その他総務省令で定める事項が記載されたカー
ド。
第 2 条第 20 項 住所地市町村長:
住民基本台帳を備える市町村の長
第 2 条第 21 項 地方税:
Defined by 地方税法第 1 条第 1 項第 4 号
第 2 条第 22 項 個人番号利用事務等:
個人番号利用事務または個人番号関係事務
第 2 条第 23 項 個人番号利用事務等実施者:
個人番号利用事務実施者と個人番号関係事務実施者
第 2 条第 24 項 機構保存本人確認情報:
Defined by 住民基本台帳法第 30.9 条
53
第 2 条第 25 項 他人:
自己と同一の世帯に属する者以外の者。
第 2 条第 26 項 情報照会者:
別表第 2 の第 1 欄に掲げる者。法令の規定により別表第 2 の第 2 欄に掲げる事務の全部
または一部を行うこととされている者がある場合にあっては、その者を含む。
第 2 条第 27 項 情報提供者:
別表第 2 の第 3 欄に掲げる者。法令の規定により別表第 2 の第 4 欄に掲げる特定個人情
報の(利用または提供)に関する事務の(全部または一部)を行うこととされている者がある場
合にあっては、その者を含む。
第 2 条第 28 項 国税:
Defined by 国税通則法第 2 条第 1 項第 1 号
第 2 条第 29 項 振替機関等:
Defined by 社債、株式等の振替に関する法律第 2 条第 5 項
第 2 条第 29 項 社債等:
Defined by 社債、株式等の振替に関する法律第 2 条第 1 項
第 2 条第 30 項 情報提供等事務:
第 19 条第 7 号の規定による特定個人情報の提供の求めまたは提供に関する事務
第 2 条第 31 項 特定個人情報保護評価:
特定個人情報の漏えいその他の事態の発生の危険性および影響に関する評価
第 2 条第 32 項 特定個人情報取扱指針:
特定個人情報の漏えいその他の事態の発生を抑止し、その他特定個人情報を適切に管理
するために講ずべき措置を定めた指針
第 2 条第 33 項 評価書:
第 27 条第 1 項の各号に掲げる事項を評価した結果を記載した書面
第 2 条第 34 項 電子計算機処理:
電子計算機を使用して行われる情報の入力、蓄積、編集、加工、修正、更新、検索、消
去、出力またはこれらに類する処理
第 2 条第 35 項 電子計算機処理等:
電子計算機処理その他これに伴う政令で定める措置
第 2 条第 36 項 代理人:
本人の委任による代理人
第 2 条第 37 項 個人番号取扱事業者:

特定個人情報ファイルを事業の用に供している個人番号利用事務等実施者であって、
国の機関、地方公共団体の機関、独立行政法人等および地方独立行政法人以外のも
の。

個人情報取扱事業者を除く。
54
第 2 条第 37.1 項 個人情報取扱事業者
defined by 個人情報保護法第 2 条第 3 項
第 2 条第 38 項 報道機関:
報道を業として行う個人を含む。
第 2 条第 39 項 報道:
不特定かつ多数の者に対し客観的事実を事実として知らせることをいい、これに基づい
て意見または見解を述べることを含む。
第 2 条第 40 項 委員会:
特定個人情報保護委員会を指す。
第 2 条第 41 項 連合組織:
地方自治法第 263.3 条第 1 項の連合組織で地方自治法第 263.3 条第 1 項の規定による届
出をしたものをいう。
第 2 条第 42 項 法人等:
下記の 2 つの条件を満たすもの。


下記の団体

国の機関

地方公共団体

会社法その他の法令の規定により設立の登記をした法人

上記の法人以外の法人

人格のない社団等
所得税法第 230 条、法人税法第 148 条・第 149 条・第 150 条、消費税法第 57 条の規
定により届出書を提出することとされているもの。
第 2 条第 43 項 人格のない社団等:
(法人でない(社団 or 財団)) and ((代表者 or 管理人)の定めがある)もの。
第 2 条第 44 項 法人番号保有者:
第 58 条第 1 項または第 2 項の規定により法人番号の指定を受けた者。
第 2 条第 45 項 行政機関の長等:
行政機関の長、地方公共団体の機関または独立行政法人等。
第 2 条第 46 項 特定法人情報:
法人番号保有者に関する情報であって法人番号により検索することができるものをいう。
第 2 条第 47 項 指定都市:
地方自治法第 252.19 条第 1 項に規定する指定都市。
第 2 条第 48 項 不正アクセス行為:
Defined by 不正アクセス行為の禁止等に関する法律第 2 条第 4 項
第 2 条第 49 項 電磁的記録:
電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作ら
55
れる記録をいう。
第 2 条第 50 項 医療保険者:
医療保険各法により医療に関する給付の支給を行う全国健康保険協会、健康保険組合、
日本私立学校振興・共済事業団、共済組合、市町村長または国民健康保険組合をいう。
第 2 条第 51 項 医療保険各法:
健康保険法、船員保険法、私立学校教職員共済法、国家公務員共済組合法、国民健康保
険法または地方公務員等共済組合法をいう。
第 2 条第 52 項 医療保険給付関係情報
(医療保険各法または高齢者の医療の確保に関する法律)による医療に関する給付の支給
または保険料の徴収に関する情報
第 2 条第 53 項 地方税関係情報:
(地方税法その他の地方税に関する法律に基づく条例の規定により算定した税額)または
(その算定の基礎となる事項)に関する情報
第 2 条第 54 項 住民票関係情報:
住民基本台帳法第 7 条第 4 号に規定する事項
第 2 条第 55 項 介護保険給付等関係情報:
介護保険法による(保険給付の支給、地域支援事業の実施、または保険料の徴収)に関する
情報
第 2 条第 56 項 年金給付関係情報:
国民年金法、私立学校教職員共済法、厚生年金保険法、国家公務員共済組合法または地
方公務員等共済組合法による年金である給付の支給または保険料の徴収に関する情報
第 2 条第 57 項 各議院審査等:
下記の事項を意味する。

各議院、各議院の委員会、参議院の調査会が下記に基づいて行う審査または調査

国会法第 104 条第 1 項(*)
(*)「国会法」第 54.4 条第 1 項において準用する場合を含む。

議院における証人の宣誓および証言等に関する法律第 1 条の規定

訴訟手続その他の裁判所における手続

裁判の執行

刑事事件の捜査

租税に関する法律の規定に基づく犯則事件の調査

会計検査院の検査
第 2 条第 58 項 会社法人等番号:
Defined by 商業登記法第 7 条
**** 第 2.1 条を追加、法律の定義について条文中から移動 ****
56
第 2.1 条 法律名称の定義(略称:正式名称(法律 ID))
第 2.1 条第 1 項 行政機関個人情報保護法:
行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(2003 年法律第 59 号)
第 2.1 条第 2 項 独立行政法人等個人情報保護法:
独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(2003 年法律第 57 号)
第 2.1 条第 3 項 個人情報保護法:
個人情報の保護に関する法律(2003 年法律第 58 号)
第 2.1 条第 4 項 住民基本台帳法:
住民基本台帳法(1967 年法律第 81 号)
第 2.1 条第 5 項 地方独立行政法人法:
地方独立行政法人法(2003 年法律第 118 号)
第 2.1 条第 6 項 地方税法:
地方税法(1950 年法律第 226 号)
第 2.1 条第 7 項 国税通則法:
国税通則法(1962 年法律第 66 号)
第 2.1 条第 8 項 株式等の振替に関する法律:
株式等の振替に関する法律(2001 年法律第 75 号)
第 2.1 条第 9 項 地方自治法:
地方自治法(1947 年法律第 67 号)
第 2.1 条第 10 項 会社法:
会社法(2005 年法律第 86 号)
第 2.1 条第 11 項 法人税法:
法人税法(1965 年法律第 34 号)
第 2.1 条第 12 項 消費税法:
消費税法(1988 年法律第 108 号)
第 2.1 条第 13 項 不正アクセス行為の禁止等に関する法律:
不正アクセス行為の禁止等に関する法律(1999 年法律第 128 号)
第 2.1 条第 14 項 介護保険法:
介護保険法(1997 年法律第 123 号)
第 2.1 条第 15 項 健康保険法:
健康保険法(1922 年法律第 70 号)
第 2.1 条第 16 項 相続税法:
相続税法(1950 年法律第 73 号)
第 2.1 条第 17 項 厚生年金保険法:
厚生年金保険法(1954 年法律第 115 号)
第 2.1 条第 18 項 租税特別措置法:
57
租税特別措置法(1957 年法律第 26 号)
第 2.1 条第 19 項 所得税法:
所得税法(1965 年法律第 33 号)
第 2.1 条第 20 項 雇用保険法:
雇用保険法(1974 年法律第 116 号)
第 2.1 条第 21 項 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等
に関する法律:
内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律
(1997 年法律第 110 号)
第 2.1 条第 22 項 激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律:
激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(1962 年法律第 150 号)
第 2.1 条第 23 項 国会法:
国会法(1948 年法律第 79 号)
第 2.1 条第 24 項 議院における証人の宣誓および証言等に関する法律:
議院における証人の宣誓および証言等に関する法律(1947 年法律第 225 号)
第 2.1 条第 25 項 内閣府設置法:
内閣府設置法(1999 年法律第 89 号)
第 2.1 条第 26 項 商業登記法:
商業登記法(1963 年法律第 125 号)
第 2.1 条第 27 項 刑法:
刑法(1907 年法律第 45 号)
第 2.1 条第 28 項 船員保険法:
船員保険法(1939 年法律第 73 号)
Procedure Division
第 3 条 「基本理念」
第 3 条第 1 項
「個人番号」と「法人番号」の利用は、この法律の定めるところにより、
次に掲げる事項を旨として、行われなければならない。
第 3 条第 1 項第 1 号
行政事務の処理において、個人または法人その他の団体に関する情
報の管理を一層効率化するとともに、当該事務の対象となる者を特定する簡易な手続を設
けることによって、国民の利便性の向上および行政運営の効率化に資すること。
第 3 条第 1 項第 2 号
「情報提供ネットワークシステム」その他これに準ずる情報システ
ムを利用して迅速かつ安全に情報の授受を行い、情報を共有することによって、社会保障
制度、税制その他の行政分野における給付と負担の適切な関係の維持に資すること。
第 3 条第 1 項第 3 号 個人または法人その他の団体から提出された情報については、これ
58
と同一の内容の情報の提出を求めることを避け、国民の負担の軽減を図ること。
第 3 条第 1 項第 4 号 「個人番号」を用いて収集され、または整理された「個人情報」が
法令に定められた範囲を超えて利用され、または漏えいすることがないよう、その管理の
適正を確保すること。
第 3 条第 2 項 「個人番号」と「法人番号」の利用に関する施策の推進は、
「個人情報」の
保護に十分配慮しつつ、行政運営の効率化を通じた国民の利便性の向上に資することを旨
として、社会保障制度、税制および災害対策に関する分野における利用の促進を図るとと
もに、他の行政分野および行政分野以外の国民の利便性の向上に資する分野における利用
の可能性を考慮して行われなければならない。
第 3 条第 3 項 「個人番号」の利用に関する施策の推進は、
「個人番号カード」が第 3 条第
1 項第 1 号に掲げる事項を実現するために必要であることに鑑み、行政事務の処理における
本人確認の簡易な手段としての「個人番号カード」の利用の促進を図るとともに、「カード
記録事項」が不正な手段により収集されることがないよう配慮しつつ、行政事務以外の事
務の処理において「個人番号カード」の活用が図られるように行われなければならない。
第 3 条第 4 項 「個人番号」の利用に関する施策の推進は、
「情報提供ネットワークシステ
ム」が第 3 条第 1 項第 2 号および第 3 条第 1 項第 3 号に掲げる事項を実現するために必要
であることに鑑み、
「個人情報」の保護に十分配慮しつつ、社会保障制度、税制、災害対策
その他の行政分野において、「行政機関」、地方公共団体その他の行政事務を処理する者が
迅速に「特定個人情報」の授受を行うための手段としての「情報提供ネットワークシステ
ム」の利用の促進を図るとともに、これらの者が行う「特定個人情報」以外の情報の授受
に「情報提供ネットワークシステム」の用途を拡大する可能性を考慮して行われなければ
ならない。
第 4 条 国の責務
第 4 条第 1 項 国は、
「基本理念」にのっとり、
「個人番号」その他の「特定個人情報」の
取扱いの適正を確保するために必要な措置を講ずるとともに、「個人番号」および「法人番
号」の利用を促進するための施策を実施するものとする。
第 4 条第 2 項 国は、教育活動、広報活動その他の活動を通じて、
「個人番号」および「法
人番号」の利用に関する国民の理解を深めるよう努めるものとする。
第 5 条 地方公共団体の責務
第 5 条第 1 項 地方公共団体は、
「基本理念」にのっとり、「個人番号」その他の「特定個
人情報」の取扱いの適正を確保するために必要な措置を講ずるとともに、
「個人番号」およ
び「法人番号」の利用に関し、国との連携を図りながら、自主的かつ主体的に、その地域
の特性に応じた施策を実施するものとする。
59
第 6 条 事業者の努力
第 6 条第 1 項 「個人番号」および「法人番号」を利用する事業者は、
「基本理念」にのっ
とり、国および地方公共団体が「個人番号」および「法人番号」の利用に関し実施する施
策に協力するよう努めるものとする。
第 2 章 「個人番号」
第 7 条 指定および通知
第 7 条第 1 項 市町村長は、
「住民基本台帳法」第 30.3 条第 2 項の規定により住民票に住
民票コードを記載したときは、政令で定めるところにより、速やかに、第 8 条第 2 項の規
定により「機構」から通知された「個人番号」とすべき番号をその者の「個人番号」とし
て指定し、その者に対し、当該「個人番号」を「通知カード」により通知しなければなら
ない。
第 7 条第 2 項 市町村長は、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者の「個
人番号」が漏えいして不正に用いられるおそれがあると認められるときは、政令で定める
ところにより、その者の請求または職権により、その者の従前の「個人番号」に代えて、
第 8 条第 2 項の規定により「機構」から通知された「個人番号」とすべき番号をその者の
「個人番号」として指定し、速やかに、その者に対し、当該「個人番号」を「通知カード」
により通知しなければならない。
第 7 条第 3 項 市町村長は、
第 7 条第 1 項と第 7 条第 2 項の規定による通知をするときは、
当該通知を受ける者が「個人番号カード」の交付を円滑に受けることができるよう、当該
交付の手続に関する情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。
第 7 条第 4 項 「通知カード」の交付を受けている者は、「住民基本台帳法」第 22 条第 1
項の規定による届出をする場合には、当該届出と同時に、当該「通知カード」を市町村長
に提出しなければならない。この場合において、市町村長は、総務省令で定めるところに
より、当該「通知カード」に係る記載事項の変更その他の総務省令で定める措置を講じな
ければならない。
第 7 条第 5 項 第 7 条第 4 項の場合を除くほか、
「通知カード」の交付を受けている者は、
当該「通知カード」に係る記載事項に変更があったときは、その変更があった日から 14 日
以内に、その旨をその者が記録されている「住所地市町村長」に届け出るとともに、当該
「通知カード」を提出しなければならない。この場合においては、第 7 条第 4 項後段の規
定を準用する。
第 7 条第 6 項 「通知カード」の交付を受けている者は、当該「通知カード」を紛失した
ときは、直ちに、その旨を「住所地市町村長」に届け出なければならない。
第 7 条第 7 項 「通知カード」の交付を受けている者は、第 17 条第 1 項の規定による「個
人番号カード」の交付を受けようとする場合その他政令で定める場合には、政令で定める
60
ところにより、当該「通知カード」を「住所地市町村長」に返納しなければならない。
第 7 条第 8 項 第 7 条第 1 項から第 7 項に定めるもののほか、
「通知カード」の様式その他
「通知カード」に関し必要な事項は、総務省令で定める。
第 8 条 「個人番号」とすべき番号の生成
第 8 条第 1 項 市町村長は、第 7 条第 1 項または第 7 条第 2 項の規定により「個人番号」
を指定するときは、あらかじめ「機構」に対し、当該指定しようとする者に係る住民票に
記載された住民票コードを通知するとともに、「個人番号」とすべき番号の生成を求めるも
のとする。
第 8 条第 2 項 「機構」は、第 8 条第 1 項の規定により市町村長から「個人番号」とすべ
き番号の生成を求められたときは、政令で定めるところにより、第 8 条第 3 項の規定によ
り設置される電子情報処理組織を使用して、次に掲げる要件に該当する番号を生成し、速
やかに、当該市町村長に対し、通知するものとする。
第 8 条第 2 項第 1 号 他のいずれの「個人番号」
(第 7 条第 2 項の従前の「個人番号」を含
む。
)とも異なること。
第 8 条第 2 項第 2 号 第 8 条第 1 項の住民票コードを変換して得られるものであること。
第 8 条第 2 項第 3 号 第 8 条第 2 項第 2 号の住民票コードを復元することのできる規則性
を備えるものでないこと。
第 8 条第 3 項 「機構」は、第 8 条第 2 項の規定により「個人番号」とすべき番号を生成
し、そして当該番号の生成と市町村長に対する通知について管理するための電子情報処理
組織を設置するものとする。
第 9 条 利用範囲
第 9 条第 1 項 別表第 1 の対象機関の欄に掲げる「行政機関」、地方公共団体、「独立行政
法人等」その他の行政事務を処理する者(*)は、同表の下欄に掲げる事務の処理に関して保
有する「特定個人情報ファイル」において「個人情報」を効率的に検索し、および管理す
るために必要な限度で「個人番号」を利用することができる。当該事務の全部または一部
の委託を受けた者も、同様とする。
(*)法令の規定により別表第 1 の対象事務欄に掲げる事務の全部または一部を行うこととさ
れている者がある場合にあっては、その者を含む。第 9 条第 3 項でも同じ意味で使う。
第 9 条第 2 項 地方公共団体の長その他の執行機関は、(福祉、保健、または医療その他の
社会保障)、
「地方税」または防災に関する事務その他これらに類する事務であって条例で定
めるものの処理に関して保有する「特定個人情報ファイル」において「個人情報」を効率
61
的に検索し、および管理するために必要な限度で「個人番号」を利用することができる。
当該事務の全部または一部の委託を受けた者も、同様とする。
第 9 条第 3 項 別表第 1 の左欄に掲げる「行政機関」、地方公共団体、
「独立行政法人等」
その他の行政事務を処理する者、または地方公共団体の長その他の執行機関による第 9 条
第 1 項または第 9 条第 2 項に規定する事務の処理に関して必要とされる「他人」の「個人
番号」を記載した書面の提出その他の「他人」の「個人番号」を利用した事務を行うもの
とされた者は、当該事務を行うために必要な限度で「個人番号」を利用することができる。
当該事務の全部または一部の委託を受けた者も、同様とする。その根拠は下記の法令等に
基づく。

「健康保険法」第 48 条または第 197 条第 1 項

「相続税法」第 59 条第 1 項から第 3 項まで

「厚生年金保険法」第 27 条、第 29 条第 3 項、第 98 条第 1 項

「租税特別措置法」第 9.4.2 条第 2 項、第 29.2 条第 5 項、第 29.2 条第 6 項、第 29.3
条第 4 項、第 29.3 条第 5 項、第 37.11.3 条第 7 項、第 37.14 第 9 項、第 37.14 第 13
項、第 37.14 第 25 項

「所得税法」第 57 条第 2 項、第 225 条から第 228.3.2 条まで

「雇用保険法」第 7 条

「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法
律」第 4 条第 1 項、第 4.3 条第 1 項

その他の法令または条例の規定
第 9 条第 4 項 第 9 条第 3 項の規定により「個人番号」を利用することができることとさ
れている者のうち「所得税法」第 225 条第 1 項第 1 号、第 2 号、第 4 号から第 6 号までに
掲げる者は、
「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」第 2 条第 1 項に
規定する激甚災害が発生したときその他これに準ずる場合として政令で定めるときは、内
閣府令で定めるところにより、あらかじめ締結した契約に基づく金銭の支払を行うために
必要な限度で「個人番号」を利用することができる。
第 9 条第 5 項 第 9 条第 1 項から第 4 項に定めるもののほか、第 19 条第 11 号から第 14
号までのいずれかに該当して「特定個人情報」の提供を受けた者は、その提供を受けた目
的を達成するために必要な限度で「個人番号」を利用することができる。
第 10 条 再委託
第 10 条第 1 項 「個人番号利用事務等」の全部または一部の委託を受けた者は、当該「個
人番号利用事務等」の委託をした者の許諾を得た場合に限り、その全部または一部の再委
62
託をすることができる。
第 10 条第 2 項 第 10 条第 1 項の規定により「個人番号利用事務等」の全部または一部の
再委託を受けた者は、
「個人番号利用事務等」の全部または一部の委託を受けた者とみなし
て、第 2 条第 12 項と第 13 項、第 9 条第 1 項から第 3 項まで、そして第 10 条第 1 項の規
定を適用する。
第 11 条 委託先の監督
第 11 条第 1 項 「個人番号利用事務等」の全部または一部の委託をする者は、当該委託に
係る「個人番号利用事務等」において取り扱う「特定個人情報」の安全管理が図られるよ
う、当該委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。
第 12 条 「個人番号利用事務実施者」等の責務
第 12 条第 1 項 「個人番号利用事務等実施者」は、「個人番号」の漏えい、滅失または毀
損の防止その他の「個人番号」の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。
第 13 条
第 13 条第 1 項 「個人番号利用事務実施者」は、(「本人」またはその「代理人」)と「個
人番号関係事務実施者」の負担の軽減および行政運営の効率化を図るため、同一の内容の
情報が記載された書面の提出を複数の「個人番号関係事務」において重ねて求めることの
ないよう、相互に連携して情報の共有およびその適切な活用を図るように努めなければな
らない。
第 14 条 提供の要求
第 14 条第 1 項 「個人番号利用事務等実施者」は、「個人番号利用事務等」を処理するた
めに必要があるときは、
「本人」または他の「個人番号利用事務等実施者」に対し「個人番
号」の提供を求めることができる。
第 14 条第 2 項 「個人番号利用事務実施者」(*)は、「個人番号利用事務」を処理するため
に必要があるときは、
「住民基本台帳法」第 30.9 条から第 30.12 条までの規定により、
「機
構」に対し「機構保存本人確認情報」の提供を求めることができる。
(*)政令で定めるものに限る。
第 15 条 提供の求めの制限
第 15 条第 1 項 何人も、第 19 条各号のいずれかに該当して「特定個人情報」の提供を受
けることができる場合を除き、
「他人」に対し、「個人番号」の提供を求めてはならない。
63
第 16 条 本人確認の措置
第 16 条第 1 項 「個人番号利用事務等実施者」は、第 14 条第 1 項の規定により「本人」
から「個人番号」の提供を受けるときは、当該提供をする者から下記のいずれかの措置を
とらなければならない。

下記の提示を受けること
「個人番号カード」または(「通知カード」と当該「通知カード」に記載された事項が
その者に係るものであることを証するものとして主務省令で定める書類)

これらに代わるべきその者が「本人」であることを確認するための措置として政令で
定めるもの
第 3 章 「個人番号カード」
第 17 条 「個人番号カード」の交付等
第 17 条第 1 項 市町村長は、政令で定めるところにより、当該市町村が備える住民基本台
帳に記録されている者に対し、その者の申請により、その者に係る「個人番号カード」を
交付するものとする。この場合において、当該市町村長は、その者から「通知カード」の
返納および第 16 条の主務省令で定める書類の提示を受け、または第 16 条の政令で定める
措置をとらなければならない。
第 17 条第 2 項 「個人番号カード」の交付を受けている者は、
「住民基本台帳法」第 24.2
条第 1 項に規定する最初の転入届をする場合には、当該最初の転入届と同時に、当該「個
人番号カード」を市町村長に提出しなければならない。
第 17 条第 3 項 第 17 条第 2 項の規定により「個人番号カード」の提出を受けた市町村長
は、当該「個人番号カード」について、
「カード記録事項」の変更その他当該「個人番号カ
ード」の適切な利用を確保するために必要な措置を講じ、これを返還しなければならない。
第 17 条第 4 項 第 17 条第 2 項の場合を除くほか、
「個人番号カード」の交付を受けている
者は、
「カード記録事項」に変更があったときは、その変更があった日から 14 日以内に、
その旨を「住所地市町村長」に届け出るとともに、当該「個人番号カード」を提出しなけ
ればならない。この場合においては、第 17 条第 3 項の規定を準用する。
第 17 条第 5 項 「個人番号カード」の交付を受けている者は、当該「個人番号カード」を
紛失したときは、直ちに、その旨を「住所地市町村長」に届け出なければならない。
第 17 条第 6 項 「個人番号カード」は、その有効期間が満了した場合その他政令で定める
場合には、その効力を失う。
第 17 条第 7 項 「個人番号カード」の交付を受けている者は、当該「個人番号カード」の
有効期間が満了した場合その他政令で定める場合には、政令で定めるところにより、当該
「個人番号カード」を「住所地市町村長」に返納しなければならない。
第 17 条第 8 項 第 17 条第 1 項から第 7 項に定めるもののほか、
「個人番号カード」の様式、
64
「個人番号カード」の有効期間および「個人番号カード」の再交付を受けようとする場合
における手続その他「個人番号カード」に関し必要な事項は、総務省令で定める。
第 18 条 「個人番号カード」の利用
第 18 条第 1 項 「個人番号カード」は、第 16 条の規定による本人確認の措置において利
用するほか、次の各号に掲げる者が、条例(*)で定めるところにより、
「個人番号カード」の
「カード記録事項」が記録された部分と区分された部分に、当該各号に定める事務を処理
するために必要な事項を「電磁的方法」により記録して利用することができる。この場合
において、これらの者は、
「カード記録事項」の漏えい、滅失または毀損の防止その他の「カ
ード記録事項」の安全管理を図るため必要なものとして総務大臣が定める基準に従って「個
人番号カード」を取り扱わなければならない。
(*)第 18 条第 1 項第 2 号の場合にあっては、政令。
第 18 条第 1 項第 1 号 市町村の機関:地域住民の利便性の向上に資するものとして条例で
定める事務
第 18 条第 1 項第 2 号 特定の個人を識別して行う事務を処理する「行政機関」
、地方公共
団体、民間事業者その他の者であって政令で定めるもの:当該事務
第 4 章 「特定個人情報」の提供
第 1 節 「特定個人情報」の提供の制限等
第 19 条 「特定個人情報」の提供の制限
第 19 条第 1 項 何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、「特定個人情報」の
提供をしてはならない。
第 19 条第 1 項第 1 号 「個人番号利用事務実施者」が「個人番号利用事務」を処理するた
めに必要な限度で「本人」または(その「代理人」または「個人番号関係事務実施者」)に対
し「特定個人情報」を提供するとき。
第 19 条第 1 項第 2 号 「個人番号関係事務実施者」が「個人番号関係事務」を処理するた
めに必要な限度で「特定個人情報」を提供するとき(*)。
(*)第 19 条第 1 項第 10 号に規定する場合を除く。
第 19 条第 1 項第 3 号 「本人」またはその「代理人」が「個人番号利用事務等実施者」に
対し、当該「本人」の「個人番号」を含む「特定個人情報」を提供するとき。
第 19 条第 1 項第 4 号 「機構」が第 14 条第 2 項の規定により「個人番号利用事務実施者」
(*)に「機構保存本人確認情報」を提供するとき。
(*)政令で定めるものに限る。
第 19 条第 1 項第 5 号 「特定個人情報」の取扱いの(全部または一部)の委託または合併そ
の他の事由による事業の承継に伴い「特定個人情報」を提供するとき。
65
第 19 条第 1 項第 6 号 「住民基本台帳法」第 30.6 条第 1 項の規定その他政令で定める「住
民基本台帳法」の規定により「特定個人情報」を提供するとき。
第 19 条第 1 項第 7 号 「情報照会者」が、政令で定めるところにより、
「情報提供者」に
対し、別表第 2 の第 2 欄に掲げる事務を処理するために必要な別表第 2 の第 4 欄に掲げる
「特定個人情報」(*)の提供を求めた場合において、当該「情報提供者」が「情報提供ネッ
トワークシステム」を使用して当該「特定個人情報」を提供するとき。
(*)「情報提供者」の保有する「特定個人情報ファイル」に記録されたものに限る。
第 19 条第 1 項第 8 号 下記の条件で「国税」または「地方税」に関する「特定個人情報」
を提供する場合で、かつ当該「特定個人情報」の安全を確保するために必要な措置として
政令で定める措置を講じているとき。

(国税庁長官が、都道府県知事または市町村長に対して提供)or (都道府県知事また
は市町村長が、国税庁長官、または他の都道府県知事、または市町村長に対して提供)

「地方税法」第 46 条第 4 項、第 46 条第 5 項、第 48 条第 7 項、第 72.58 条、第 317
条、第 325 条の規定、その他政令で定める「地方税法」または「国税」に関する法律
の規定に基づいている。
第 19 条第 1 項第 9 号 地方公共団体の機関が、条例で定めるところにより、当該地方公共
団体の他の機関に、その事務を処理するために必要な限度で「特定個人情報」を提供する
とき。
第 19 条第 1 項第 10 号 「振替機関等」が「社債等」の発行者(*)または他の「振替機関等」
に対し、これらの者の使用に係る電子計算機を相互に電気通信回線で接続した電子情報処
理組織であって、
「社債等」の振替を行うための口座が記録されるものを利用して、
「社債、
株式等の振替に関する法律」またはこれに基づく命令の規定により、
「社債等」の振替を行
うための口座の開設を受ける者が第 9 条第 3 項に規定する書面(**)に記載されるべき「個人
番号」として当該口座を開設する「振替機関等」に告知した「個人番号」を含む「特定個
人情報」を提供する場合において、当該「特定個人情報」の安全を確保するために必要な
措置として政令で定める措置を講じているとき。
(*)これに準ずる者として政令で定めるものを含む。
(**)「所得税法」第 225 条第 1 項(第 1 号、第 2 号、第 8 号、第 10 号から第 12 号までに
係る部分に限る)の規定により税務署長に提出されるものに限る)
第 19 条第 1 項第 11 号 第 52 条第 1 項の規定により求められた「特定個人情報」を「特定
個人情報保護委員会」に提供するとき。
第 19 条第 1 項第 12 号 下記のいずれかに該当するとき。

「各議院審査等」

その他政令で定める公益上の必要があるとき
第 19 条第 1 項第 13 号 人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合におい
て、
「本人」の同意があり、または「本人」の同意を得ることが困難であるとき。
66
第 19 条第 1 項第 14 号 その他これらに準ずるものとして「特定個人情報保護委員会」規
則で定めるとき。
第 20 条 収集等の制限
第 20 条第 1 項 何人も、第 19 条各号のいずれかに該当する場合を除き、
「特定個人情報」
(*)を収集し、または保管してはならない。
(*)「他人」の「個人番号」を含むものに限る。
第 2 節 「情報提供ネットワークシステム」による「特定個人情報」の提供
第 21 条 「情報提供ネットワークシステム」
第 21 条第 1 項 総務大臣は、
「特定個人情報保護委員会」と協議して、
「情報提供ネットワ
ークシステム」を設置し、および管理するものとする。
第 21 条第 2 項 総務大臣は、
「情報照会者」から第 19 条第 7 号の規定により「特定個人情
報」の提供の求めがあったときは、次に掲げる場合を除き、政令で定めるところにより、
「情
報提供ネットワークシステム」を使用して、
「情報提供者」に対して「特定個人情報」の提
供の求めがあった旨を通知しなければならない。
第 21 条第 1 項第 1 号 「情報照会者」、「情報提供者」、「情報照会者」の処理する事務また
は当該事務を処理するために必要な「特定個人情報」の項目が別表第 2 に掲げるものに該
当しないとき。
第 21 条第 1 項第 2 号 当該「特定個人情報」が記録されることとなる「情報照会者」の保
有する「特定個人情報ファイル」または当該「特定個人情報」が記録されている「情報提
供者」の保有する「特定個人情報ファイル」について、第 27 条(*)の規定に違反する事実が
あったと認めるとき。
(*)第 27 条第 3 項と第 5 項を除く。
第 22 条 「特定個人情報」の提供
第 22 条第 1 項 「情報提供者」は、第 19 条第 7 号の規定により「特定個人情報」の提供
を求められた場合において、当該提供の求めについて第 21 条第 2 項の規定による総務大臣
からの通知を受けたときは、政令で定めるところにより、「情報照会者」に対し、当該「特
定個人情報」を提供しなければならない。
第 22 条第 2 項 第 22 条第 1 項の規定による「特定個人情報」の提供があった場合におい
て、他の法令の規定により当該「特定個人情報」と同一の内容の情報を含む書面の提出が
義務付けられているときは、当該書面の提出があったものとみなす。
第 23 条 情報提供等の記録
67
第 23 条第 1 項 「情報照会者」および「情報提供者」は、第 19 条第 7 号の規定により「特
定個人情報」の提供の求めまたは提供があったときは、次に掲げる事項を「情報提供ネッ
トワークシステム」に接続されたその者の使用する電子計算機に記録し、当該記録を政令
で定める期間保存しなければならない。
第 23 条第 1 項第 1 号 「情報照会者」および「情報提供者」の名称
第 23 条第 1 項第 2 号 提供の求めの日時および提供があったときはその日時
第 23 条第 1 項第 3 号 「特定個人情報」の項目
第 23 条第 1 項第 4 号 第 23 条第 1 項第 1 号から第 3 号に掲げるもののほか、総務省令で
定める事項
第 23 条第 2 項 第 23 条第 1 項に規定する事項のほか、
「情報照会者」および「情報提供者」
は、当該「特定個人情報」の提供の求めまたは提供の事実が次の各号のいずれかに該当す
る場合には、その旨を「情報提供ネットワークシステム」に接続されたその者の使用する
電子計算機に記録し、当該記録を第 23 条第 1 項に規定する期間保存しなければならない。
第 23 条第 2 項第 1 号 第 30 条第 1 項の規定により読み替えて適用する「行政機関個人情
報保護法」第 14 条に規定する不開示情報に該当すると認めるとき。
第 23 条第 2 項第 2 号 条例で定めるところにより地方公共団体または地方独立行政法人が
開示する義務を負わない「個人情報」に該当すると認めるとき。
第 23 条第 2 項第 3 号 第 30 条第 3 項の規定により読み替えて適用する「独立行政法人等
個人情報保護法」第 14 条に規定する不開示情報に該当すると認めるとき。
第 23 条第 2 項第 4 号 第 30 条第 4 項の規定により読み替えて準用する「独立行政法人等
個人情報保護法」第 14 条に規定する不開示情報に該当すると認めるとき。
第 23 条第 3 項 総務大臣は、第 19 条第 7 号の規定により「特定個人情報」の提供の求め
または提供があったときは、第 23 条第 1 項と第 2 項で規定する事項を「情報提供ネットワ
ークシステム」に記録し、当該記録を第 23 条第 1 項に規定する期間保存しなければならな
い。
第 24 条 秘密の管理
第 24 条第 1 項 総務大臣および(「情報照会者」と「情報提供者」)は、「情報提供等事務」
に関する秘密について、その漏えいの防止その他の適切な管理のために、(「情報提供ネッ
トワークシステム」および(「情報照会者」と「情報提供者」)が「情報提供等事務」に使用
する電子計算機)の安全性と信頼性を確保することその他の必要な措置を講じなければなら
ない。
第 25 条 秘密保持義務
第 25 条第 1 項 「情報提供等事務」または「情報提供ネットワークシステム」の運営に関
する事務に従事する者または従事していた者は、その業務に関して知り得た当該事務に関
68
する秘密を漏らし、または盗用してはならない。
第 5 章 「特定個人情報」の保護
第 1 節 「特定個人情報保護評価」
第 26 条 「特定個人情報ファイル」を保有しようとする者に対する指針
第 26 条第 1 項 「特定個人情報保護委員会」は、
「特定個人情報」の適正な取扱いを確保
するため、「特定個人情報ファイル」を保有しようとする者が、「特定個人情報保護評価」
を自ら実施し、
「特定個人情報取扱指針」を作成し、公表するものとする。
第 26 条第 2 項 「特定個人情報保護委員会」は、
「個人情報」の保護に関する技術の進歩
および国際的動向を踏まえ、少なくとも 3 年ごとに「特定個人情報取扱指針」について再
検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとする。
第 27 条 「特定個人情報保護評価」
第 27 条第 1 項 「行政機関の長等」は、「特定個人情報ファイル」(*)を保有しようとする
ときは、当該「特定個人情報ファイル」を保有する前に、「特定個人情報保護委員会」規則
で定めるところにより、
「評価書」を公示し、広く国民の意見を求めるものとする。当該「特
定個人情報ファイル」について、
「特定個人情報保護委員会」規則で定める重要な変更を加
えようとするときも、同様とする。
(*)専ら当該「行政機関の長等」の職員または職員であった者の人事、給与または福利厚生
に関する事項を記録するものその他の「特定個人情報保護委員会」規則で定めるものを除
く。
第 27 条第 1 項第 1 号 「特定個人情報ファイル」を取り扱う事務に従事する者の数
第 27 条第 1 項第 2 号 「特定個人情報ファイル」に記録されることとなる「特定個人情報」
の量
第 27 条第 1 項第 3 号 「行政機関の長等」における過去の「個人情報ファイル」の取扱い
の状況
第 27 条第 1 項第 4 号 「特定個人情報ファイル」を取り扱う事務の概要
第 27 条第 1 項第 5 号 「特定個人情報ファイル」を取り扱うために使用する電子情報処理
組織の仕組みおよび「電子計算機処理」等の方式
第 27 条第 1 項第 6 号 「特定個人情報ファイル」に記録された「特定個人情報」を保護す
るための措置
第 27 条第 1 項第 7 号 第 27 条第 1 項第 1 号から第 7 号に掲げるもののほか、
「特定個人
情報保護委員会」規則で定める事項
第 27 条第 2 項 第 27 条第 1 項前段の場合において、「行政機関の長等」は、「特定個人情
報保護委員会」規則で定めるところにより、第 27 条第 1 項前段の規定により得られた意見
69
を十分考慮した上で「評価書」に必要な見直しを行った後に、当該「評価書」に記載され
た「特定個人情報ファイル」の取扱いについて「特定個人情報保護委員会」の承認を受け
るものとする。当該「特定個人情報ファイル」について、「特定個人情報保護委員会」規則
で定める重要な変更を加えようとするときも、同様とする。
第 27 条第 3 項 「特定個人情報保護委員会」は、
「評価書」の内容、第 52 条第 1 項の規定
により得た情報その他の情報から判断して、当該「評価書」に記載された「特定個人情報
ファイル」の取扱いが「特定個人情報取扱指針」に適合していると認められる場合でなけ
れば、第 27 条第 2 項の承認をしてはならない。
第 27 条第 4 項 「行政機関の長等」は、第 27 条第 2 項の規定により「評価書」について
承認を受けたときは、速やかに当該「評価書」を公表するものとする。
第 27 条第 5 項 第 27 条第 4 項の規定により「評価書」が公表されたときは、第 29 条第 1
項の規定により読み替えて適用する「行政機関個人情報保護法」第 10 条第 1 項の規定によ
る通知があったものとみなす。
第 27 条第 6 項 「行政機関の長等」は、「評価書」の公表を行っていない「特定個人情報
ファイル」に記録された情報を第 19 条第 7 号の規定により提供し、または当該「特定個人
情報ファイル」に記録されることとなる情報の提供を第 19 条第 7 号の規定により求めては
ならない。
第 28 条 「特定個人情報ファイル」の作成の制限
第 28 条第 1 項 「個人番号利用事務等実施者」その他「個人番号利用事務等」に従事する
者は、第 19 条第 1 項第 11 号から第 14 号までのいずれかに該当して「特定個人情報」を提
供し、またはその提供を受けることができる場合を除き、「個人番号利用事務等」を処理す
るために必要な範囲を超えて「特定個人情報ファイル」を作成してはならない。
第 2 節 「行政機関個人情報保護法」等の特例等
第 29 条 「行政機関個人情報保護法」等の特例
第 29 条第 1 項 「行政機関」が保有し、または保有しようとする「特定個人情報」(*)に関
しては、
「行政機関個人情報保護法」第 8 条第 2 項第 2 号から第 4 号までおよび第 25 条の
規定は適用しないものとし、
「行政機関個人情報保護法」の他の規定の適用については、次
の表の<「行政機関個人情報保護法」の規定>欄中同表の<読み替えられる字句>欄に掲げる
字句は、同表の<読み替える字句>欄に掲げる字句とする。
(*)第 23 条に規定する記録に記録されたものを除く。
読み替えられる「行政
読み替えられる字句
読み替える字句
機関個人情報保護法」
の規定
70
第 8 条第 1 項
法令に基づく場合を除き、 利用目的
利用目的
自ら利用し、または提供し
自ら利用してはならない
てはならない
第 8 条第 2 項
自ら利用し、または提供す
自ら利用する
る
第 8 条第 2 項第 1 号
「本人」の同意があると
人の生命、身体または財産の保護のた
き、または「本人」に提供
めに必要がある場合であって、「本人」
するとき
の同意があり、または「本人」の同意
を得ることが困難であるとき
第 10 条第 1 項および
総務大臣
「特定個人情報保護委員会」
未成年者または成年被後
(未成年者または成年被後見人)の法定
見人の法定代理人
代理人または「代理人」
法定代理人
「代理人」
第3項
第 12 条第 2 項
第 13 条第 2 項、第 28
条第 2 項および第 37
条第 2 項
第 14 条第 1 項第 1 号、 未成年者または成年被後
第 27 条第 2 項および
「代理人」
見人の法定代理人
第 36 条第 2 項
第 26 条第 2 項
配慮しなければならない
配慮しなければならない。この場合に
おいて、「行政機関」の長は、経済的
困難その他特別の理由があると認める
ときは、政令で定めるところにより、
当該手数料を減額し、または免除する
ことができる
第 36 条第 1 項第 1 号
または第 8 条第 1 項および
番号法第 29 条第 1 項の規定により読み
第 2 項の規定に違反して利
替えて適用する第 8 条第 1 項および第
用されているとき
2 項(*)の規定に違反して利用されて
いるとき、(番号法第 20 条の規定に違
反して収集され、または保管されてい
るとき)、または番号法第 28 条の規定
に違反して作成された「特定個人情報
ファイル」(**)に記録されているとき
(*)第 1 号に係る部分に限る。
(**)番号法第 2 条第 9 項に規定する
「特
71
定個人情報ファイル」をいう。
第 36 条第 1 項第 2 号
第 8 条第 1 項および第 2 項
番号法第 19 条
第 29 条第 2 項 (省略)
第 29 条第 3 項 (省略)
第 30 条 情報提供等の記録についての特例
第 30 条第 1 項 「行政機関」が保有し、または保有しようとする第 23 条第 1 項および第
2 項に規定する記録に記録された「特定個人情報」に関しては、
「行政機関個人情報保護法」
第 8 条第 2 項から第 4 項まで、第 9 条、第 21 条、第 22 条、第 25 条、第 33 条、第 34 条
および第 4 章第 3 節の規定は適用しないものとし、
「行政機関個人情報保護法」の他の規定
の適用については、次の表の<読み替えられる「行政機関個人情報保護法」の規定>欄に
掲げる「行政機関個人情報保護法」の規定中同表の<読み替えられる字句>欄に掲げる字
句は、同表の<読み替える字句>欄に掲げる字句とする。
読み替えられ
読み替えら
る「行政機関
れる字句
読み替える字句
個人情報保護
法」の規定
第 8 条第 1 項
法令に基づ
利用目的
く場合を除
き、利用目的
自ら利用し、 自ら利用してはならない
または提供
してはなら
ない
第 10 条第 1 項
総務大臣
「特定個人情報保護委員会」
未成年者ま
(未成年者または成年被後見人)の法定代理人または「代理
たは成年被
人」
および第 3 項
第 12 条第 2 項
後見人の法
定代理人
第 13 条第 2 項
法定代理人
「代理人」
第 14 条第 1 項
未成年者ま
「代理人」
第 1 号および
たは成年被
および第 28
条第 2 項
72
第 27 条第 2 項
後見人の法
定代理人
第 26 条第 2 項
配慮しなけ
配慮しなければならない。この場合において、「行政機関」
ればならな
の長は、経済的困難その他特別の理由があると認めるとき
い
は、政令で定めるところにより、当該手数料を減額し、ま
たは免除することができる
第 35 条
当該保有「個
総務大臣および番号法第 19 条第 7 号に規定する「情報照会
人情報」の提
者」または「情報提供者」(当該訂正に係る番号法第 23 条
供先
第 1 項および第 2 項に規定する記録に記録された者であっ
て、当該「行政機関」の長以外のものに限る。)
第 30 条第 2 項 (省略)
第 30 条第 3 項 (省略)
第 30 条第 4 項 (省略)
第 31 条 地方公共団体等が保有する「特定個人情報」の保護
第 31 条第 1 項 地方公共団体は、
「行政機関個人情報保護法」、「独立行政法人等個人情報
保護法」
、
「個人情報保護法」およびこの法律の規定により「行政機関」の長、「独立行政法
人等」および「個人番号取扱事業者」が講ずることとされている措置の趣旨を踏まえ、当
該地方公共団体およびその設立に係る地方独立行政法人が保有する「特定個人情報」の適
正な取扱いが確保され、そして(当該地方公共団体とその設立に係る地方独立行政法人)が保
有する「特定個人情報」の開示、訂正、利用の停止、消去および提供の停止(*)を実施する
ために必要な措置を講ずるものとする。
(*)第 23 条第 1 項および第 2 項に規定する記録に記録された「特定個人情報」にあっては、
その開示および訂正
第 32 条 「個人情報取扱事業者」でない「個人番号取扱事業者」が保有する「特定個人情
報」の保護
第 32 条第 1 項 「個人番号取扱事業者」は、人の生命、身体または財産の保護のために必
要がある場合において「本人」の同意がありまたは「本人」の同意を得ることが困難であ
るとき、および第 9 条第 4 項の規定に基づく場合を除き、
「個人番号利用事務等」を処理す
るために必要な範囲を超えて、
「特定個人情報」を取り扱ってはならない。
第 33 条
第 33 条第 1 項 「個人番号取扱事業者」は、その取り扱う「特定個人情報」の漏えい、滅
失または毀損の防止その他の「特定個人情報」の安全管理のために必要かつ適切な措置を
73
講じなければならない。
第 34 条
第 34 条第 1 項 「個人番号取扱事業者」は、その従業者に「特定個人情報」を取り扱わせ
るに当たっては、当該「特定個人情報」の安全管理が図られるよう、当該従業者に対する
必要かつ適切な監督を行わなければならない。
第 35 条
第 35 条第 1 項 「個人番号取扱事業者」のうち次の各号に掲げる者については、その「特
定個人情報」を取り扱う目的の全部または一部がそれぞれ当該各号に定める目的であると
きは、第 32 条から第 34 条の規定は、適用しない。
第 35 条第 1 項第 1 号 放送機関、新聞社、通信社その他の「報道機関」
:
「報道」の用に供
する目的
第 35 条第 1 項第 2 号 著述を業として行う者:著述の用に供する目的
第 35 条第 1 項第 3 号 (大学その他の学術研究を目的とする機関または団体)またはそれ
らに属する者:学術研究の用に供する目的
第 35 条第 1 項第 4 号 宗教団体:宗教活動(これに付随する活動を含む。
)の用に供する
目的
第 35 条第 1 項第 5 号 政治団体:政治活動(これに付随する活動を含む。
)の用に供する
目的
第 35 条第 2 項 第 35 条第 1 項第 1 号から第 5 号に掲げる「個人番号取扱事業者」は、
「特
定個人情報」の安全管理のために必要かつ適切な措置、
「特定個人情報」の取扱いに関する
苦情の処理その他の「特定個人情報」の適正な取扱いを確保するために必要な措置を自ら
講じ、かつ、当該措置の内容を公表するよう努めなければならない。
第 6 章 「特定個人情報保護委員会」
第 1 節 組織
第 36 条 設置
第 36 条第 1 項 「内閣府設置法」第 49 条第 3 項の規定に基づいて、「委員会」を置く。
第 36 条第 2 項 「委員会」は、内閣総理大臣の所轄に属する。
第 37 条 任務
第 37 条第 1 項 「委員会」は、国民生活にとっての「個人番号」その他の「特定個人情報」
の有用性に配慮しつつ、その適正な取扱いを確保するために必要な「個人番号利用事務等
実施者」に対する指導および助言その他の措置を講ずることを任務とする。
74
第 38 条所掌事務
第 38 条第 1 項 「委員会」は、第 37 条の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさ
どる。
第 38 条第 1 項第 1 号 「特定個人情報」の取扱いに関する監視または監督および苦情の申
出についての必要なあっせんに関すること。
第 38 条第 1 項第 2 号 「特定個人情報保護評価」に関すること。
第 38 条第 1 項第 3 号 「特定個人情報」の保護についての広報および啓発に関すること。
第 38 条第 1 項第 4 号 第 38 条第 1 項第 1 号から第 3 号に掲げる事務を行うために必要な
調査および研究に関すること。
第 38 条第 1 項第 5 号 所掌事務に係る国際協力に関すること。
第 38 条第 1 項第 6 号 第 38 条第 1 項第 1 号から第 5 号に掲げるもののほか、法律(法律
に基づく命令を含む。
)に基づき「委員会」に属させられた事務
第 39 条 職権行使の独立性
第 39 条第 1 項 「委員会」の委員長および委員は、独立してその職権を行う。
第 40 条 組織等
第 40 条第 1 項 「委員会」は、委員長および委員 6 人をもって組織する。
第 40 条第 2 項 委員のうち 3 人は、非常勤とする。
第 40 条第 3 項 委員長および委員は、人格が高潔で識見の高い者のうちから、両議院の同
意を得て、内閣総理大臣が任命する。
第 40 条第 4 項 委員長および委員には、「個人情報」の保護に関する学識経験のある者、
情報処理技術に関する学識経験のある者、社会保障制度または税制に関する学識経験のあ
る者、民間企業の実務に関して十分な知識と経験を有する者および「連合組織」の推薦す
る者が含まれるものとする。
第 41 条 任期等
第 41 条第 1 項 委員長および委員の任期は、5 年とする。ただし、補欠の委員長または委
員の任期は、前任者の残任期間とする。
第 41 条第 2 項 委員長および委員は、再任されることができる。
第 41 条第 3 項 委員長および委員の任期が満了したときは、当該委員長および委員は、後
任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。
第 41 条第 4 項 委員長または委員の任期が満了し、または欠員を生じた場合において、国
会の閉会または衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総
理大臣は、第 40 条第 3 項の規定にかかわらず、第 40 条第 3 項に定める資格を有する者の
75
うちから、委員長または委員を任命することができる。
第 41 条第 5 項 第 41 条第 4 項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事
後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認が得られないと
きは、内閣総理大臣は、直ちに、その委員長または委員を罷免しなければならない。
第 42 条 身分保障
第 42 条第 1 項 委員長および委員は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、在
任中、その意に反して罷免されることがない。
第 42 条第 1 項第 1 号 破産手続開始の決定を受けたとき。
第 42 条第 1 項第 2 号 この法律の規定に違反して刑に処せられたとき。
第 42 条第 1 項第 3 号 禁錮以上の刑に処せられたとき。
第 42 条第 1 項第 4 号 「委員会」により、心身の故障のため職務を執行することができな
いと認められたとき、または(職務上の義務違反その他委員長または委員たるに適しない
非行があると認められたとき)
。
第 43 条 罷免
第 43 条第 1 項 内閣総理大臣は、委員長または委員が第 42 条第 1 項第 1 号から第 4 号の
いずれかに該当するときは、その委員長または委員を罷免しなければならない。
第 44 条 委員長
第 44 条第 1 項 委員長は、
「委員会」の会務を総理し、「委員会」を代表する。
第 44 条第 2 項 「委員会」は、あらかじめ常勤の委員のうちから、委員長に事故がある場
合に委員長を代理する者を定めておかなければならない。
第 45 条 会議
第 45 条第 1 項 「委員会」の会議は、委員長が招集する。
第 45 条第 2 項 「委員会」は、委員長および 3 人以上の委員の出席がなければ、会議を開
き、議決をすることができない。
第 45 条第 3 項 「委員会」の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、
委員長の決するところによる。
第 45 条第 4 項 第 42 条第 1 項第 4 号の規定による認定をするには、第 45 条第 3 項の規
定にかかわらず、本人を除く全員の一致がなければならない。
第 45 条第 5 項 委員長に事故がある場合の第 45 条第 3 項の規定の適用については、第 44
条第 2 項に規定する委員長を代理する者は、委員長とみなす。
第 46 条 事務局
76
第 46 条第 1 項 「委員会」の事務を処理させるため、「委員会」に事務局を置く。
第 46 条第 2 項 事務局に、事務局長その他の職員を置く。
第 46 条第 3 項 事務局長は、委員長の命を受けて、局務を掌理する。
第 47 条 政治運動等の禁止
第 47 条第 1 項 委員長および委員は、在任中、政党その他の政治団体の役員となり、また
は積極的に政治運動をしてはならない。
第 47 条第 2 項 委員長および常勤の委員は、在任中、内閣総理大臣の許可のある場合を除
くほか、報酬を得て他の職務に従事し、または営利事業を営み、その他金銭上の利益を目
的とする業務を行ってはならない。
第 48 条 秘密保持義務
第 48 条第 1 項 委員長、委員および事務局の職員は、職務上知ることのできた秘密を漏ら
し、または盗用してはならない。その職務を退いた後も、同様とする。
第 49 条 給与
第 49 条第 1 項 委員長および委員の給与は、別に法律で定める。
第 2 節 業務
第 50 条 指導および助言
第 50 条第 1 項 「委員会」は、この法律の施行に必要な限度において、
「個人番号利用事
務等実施者」に対し、
「特定個人情報」の取扱いに関し、必要な指導および助言をすること
ができる。この場合において、
「特定個人情報」の適正な取扱いを確保するために必要があ
ると認めるときは、当該「特定個人情報」と共に管理されている「特定個人情報」以外の
「個人情報」の取扱いに関し、併せて指導および助言をすることができる。
第 51 条 勧告および命令
第 51 条第 1 項 「委員会」は、
「特定個人情報」の取扱いに関して法令の規定に違反する
行為が行われた場合において、
「特定個人情報」の適正な取扱いの確保のために必要がある
と認めるときは、当該違反行為をした者に対し、期限を定めて、当該違反行為の中止その
他違反を是正するために必要な措置をとるべき旨を勧告することができる。
第 51 条第 2 項 「委員会」は、第 51 条第 1 項の規定による勧告を受けた者が、正当な理
由がなくてその勧告に係る措置をとらなかったときは、その者に対し、期限を定めて、そ
の勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
第 51 条第 3 項 「委員会」は、第 51 条第 2 項の規定にかかわらず、
「特定個人情報」の取
77
扱いに関して法令の規定に違反する行為が行われた場合において、個人の重大な権利利益
を害する事実があるため緊急に措置をとる必要があると認めるときは、当該違反行為をし
た者に対し、期限を定めて、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置
をとるべき旨を命ずることができる。
第 52 条 報告および立入検査
第 52 条第 1 項 「委員会」は、この法律の施行に必要な限度において、
「特定個人情報」
を取り扱う者その他の関係者に対し、
「特定個人情報」の取扱いに関し、必要な(報告または
資料)の提出を求め、またはその職員に、(当該「特定個人情報」を取り扱う者その他の関係
者の事務所その他必要な場所に立ち入らせ、
「特定個人情報」の取扱いに関し質問させ、ま
たは帳簿書類その他の物件を検査させる)ことができる。
第 52 条第 2 項 第 51 条第 1 項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明
書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
第 52 条第 3 項 第 52 条第 1 項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認めら
れたものと解釈してはならない。
第 53 条 適用除外
第 53 条第 1 項 第 50 条から第 52 条の規定は、「各議院審査等」が行われる場合または第
19 条第 1 項第 12 号の政令で定める場合のうち「各議院審査等」に準ずるものとして政令
で定める手続が行われる場合における「特定個人情報」の提供および提供を受け、または
取得した「特定個人情報」の取扱いについては、適用しない。
第 54 条 措置の要求
第 54 条第 1 項 「委員会」は、
「個人番号」その他の「特定個人情報」の取扱いに利用さ
れる「情報提供ネットワークシステム」その他の情報システムの構築および維持管理に関
し、費用の節減その他の合理化および効率化を図った上でその機能の安全性および信頼性
を確保するよう、総務大臣その他の関係「行政機関」の長に対し、必要な措置を実施する
よう求めることができる。
第 54 条第 2 項 「委員会」は、第 54 条第 1 項の規定により第 54 条第 1 項の措置の実施
を求めたときは、第 54 条第 1 項の関係「行政機関」の長に対し、その措置の実施状況につ
いて報告を求めることができる。
第 55 条 内閣総理大臣に対する意見の申出
第 55 条第 1 項 「委員会」は、内閣総理大臣に対し、その所掌事務の遂行を通じて得られ
た「特定個人情報」の保護に関する施策の改善についての意見を述べることができる。
78
第 56 条 国会に対する報告
第 56 条第 1 項 「委員会」は、毎年、内閣総理大臣を経由して国会に対し所掌事務の処理
状況を報告するとともに、その概要を公表しなければならない。
第 3 節 雑則
第 57 条 規則の制定
第 57 条第 1 項 「委員会」は、その所掌事務について、(法律または政令)を実施するため、
または(法律または政令)の特別の委任に基づいて、「特定個人情報保護委員会」規則を制定
することができる。
第 7 章 「法人番号」
第 58 条 通知等
第 58 条第 1 項 国税庁長官は、政令で定めるところにより、
「法人等」に対して、
「法人番
号」を指定し、これを当該「法人等」に通知するものとする。
第 58 条第 2 項 「法人等」以外の法人または「人格のない社団等」であって政令で定める
ものは、政令で定めるところにより、その者の商号または名称および本店または主たる事
務所の所在地その他財務省令で定める事項を国税庁長官に届け出て「法人番号」の指定を
受けることができる。
第 58 条第 3 項 第 58 条第 2 項の規定による届出をした者は、その届出に係る事項に変更
があったとき(*)は、政令で定めるところにより、当該変更があった事項を国税庁長官に届
け出なければならない。
(*)この項の規定による届出に係る事項に変更があった場合を含む。
第 58 条第 4 項 国税庁長官は、政令で定めるところにより、「法人番号保有者」の商号ま
たは名称、本店または主たる事務所の所在地および「法人番号」を公表するものとする。
ただし、
「人格のない社団等」については、あらかじめ、その代表者または管理人の同意を
得なければならない。
第 59 条 情報の提供の求め
第 59 条第 1 項 「
「行政機関の長等」」は、他の「行政機関の長等」に対し、
「特定法人情
報」の提供を求めるときは、当該「法人番号」を当該他の「行政機関の長等」に通知して
するものとする。
第 59 条第 2 項 「行政機関の長等」は、国税庁長官に対し、「法人番号保有者」の商号ま
たは名称、本店または主たる事務所の所在地および「法人番号」について情報の提供を求
めることができる。
79
第 60 条 資料の提供
第 60 条第 1 項 国税庁長官は、第 58 条第 1 項の規定による「法人番号」の指定を行うた
めに必要があると認めるときは、法務大臣に対し、「会社法人等番号」(*)(**)その他の当該
登記簿に記録された事項の提供を求めることができる。
(*)「商業登記法」以外の他の法令において準用する場合を含む。
(**)「会社法」その他の法令の規定により設立の登記をした法人の本店または主たる事務所
の所在地を管轄する登記所において作成される登記簿に記録されたものに限る。
第 60 条第 2 項 第 60 条第 1 項に定めるもののほか、国税庁長官は、第 58 条(第 1 項また
は第 2 項)の規定による「法人番号」の(指定または通知)または第 58 条第 4 項の規定による
公表を行うために必要があると認めるときは、官公署に対し、「法人番号保有者」の商号ま
たは名称および本店または主たる事務所の所在地その他必要な資料の提供を求めることが
できる。
第 61 条 正確性の確保
第 61 条第 1 項 「行政機関の長等」は、その保有する「特定法人情報」について、その利
用の目的の達成に必要な範囲内で、過去または現在の事実と合致するよう努めなければな
らない。
第 8 章 雑則
第 62 条 「指定都市」の特例
第 62 条第 1 項 「指定都市」に対するこの法律の規定で政令で定めるものの適用について
は、区および総合区を市と、区長および総合区長を市長とみなす。
第 62 条第 2 項 第 62 条第 1 項に定めるもののほか、
「指定都市」に対するこの法律の規定
の適用については、政令で特別の定めをすることができる。
第 63 条 事務の区分
第 63 条第 1 項 第 7 条第 1 項および第 2 項、第 8 条第 1 項(*)、
第 17 条第 1 項と第 3 項(**)、
および附則第 3 条第 1 項から第 3 項までの規定により市町村が処理することとされている
事務は、
「地方自治法」第 2 条第 9 項第 1 号に規定する第一号法定受託事務とする。
(*)附則第 3 条第 4 項において準用する場合を含む。
(**)第 17 条第 4 項において準用する場合を含む。
第 64 条 権限または事務の委任
第 64 条第 1 項 「行政機関」の長は、政令(*)で定めるところにより、第 2 章、第 4 章、第
80
5 章および第 7 章に定める権限または事務を当該「行政機関」の職員に委任することができ
る。
(*)内閣の所轄の下に置かれる機関および会計検査院にあっては、当該機関の命令
第 65 条 主務省令
第 65 条第 1 項 この法律における主務省令は、内閣府令・総務省令とする。
第 66 条 政令への委任
第 66 条第 1 項 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法
律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
第 9 章 罰則
第 67 条
第 67 条第 1 項
(「個人番号利用事務等」、第 7 条(第 1 項または第 2 項)の規定による「個
人番号」の(指定または通知)、第 8 条第 2 項の規定による「個人番号」とすべき番号の(生
成または通知)、または第 14 条第 2 項の規定による「機構保存本人確認情報」の提供に関
する事務)に従事する者または従事していた者が、正当な理由がないのに、その業務に関し
て取り扱った個人の秘密に属する事項が記録された「特定個人情報ファイル」(*)を提供し
たときは、(4 年以下の懲役または 200 万円以下の罰金)に処し、またはこれを併科する。
(*)その全部または一部を複製し、または加工した「特定個人情報ファイル」を含む。
第 68 条
第 68 条第 1 項 第 67 条に規定する者が、その業務に関して知り得た「個人番号」を(自己
または第三者)の不正な利益を図る目的で提供し、または盗用したときは、(3 年以下の懲役
または 150 万円以下の罰金)に処し、またはこれを併科する。
第 69 条
第 69 条第 1 項 第 25 条の規定に違反して秘密を漏らし、または盗用した者は、(3 年以下
の懲役または 150 万円以下の罰金)に処し、またはこれを併科する。
第 70 条
第 70 条第 1 項 (人を欺き、人に暴行を加え、または人を脅迫する行為により)、または(財
物の窃取、施設への侵入、
「不正アクセス行為」その他の「個人番号」を保有する者の管理
を害する行為により)、
「個人番号」を取得した者は、3 年以下の懲役または 150 万円以下の
罰金に処する。
81
第 70 条第 2 項 第 70 条第 1 項の規定は、「刑法」その他の罰則の適用を妨げない。
第 71 条
第 71 条第 1 項 (国の機関、地方公共団体の機関、または「機構」)の職員または(「独立行
政法人等」または地方独立行政法人)の(役員または職員)が、その職権を濫用して、専らそ
の職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する「特定個人情報」が記録された文
書、図画または「電磁的記録」を収集したときは、2 年以下の懲役または 100 万円以下の罰
金に処する。
第 72 条
第 72 条第 1 項 第 48 条の規定に違反して秘密を漏らし、または盗用した者は、2 年以下
の懲役または 100 万円以下の罰金に処する。
第 73 条
第 73 条第 1 項 第 51 条第 2 項または第 3 項の規定による命令に違反した者は、2 年以下
の懲役または 50 万円以下の罰金に処する。
第 74 条
第 74 条第 1 項
第 52 条第 1 項の規定において、下記のいずれかを行う者は、1 年以下の
懲役または 50 万円以下の罰金に処する。
・ 報告または資料の提出をしない
・ 虚偽の報告をし、または虚偽の資料を提出する
・ 当該職員の質問に対して答弁をせず、または虚偽の答弁をする
・ 検査を拒み、妨げ、または忌避する
第 75 条
第 75 条第 1 項 偽りその他不正の手段により「通知カード」または「個人番号カード」の
交付を受けた者は、6 ヶ月以下の懲役または 50 万円以下の罰金に処する。
第 76 条
第 76 条第 1 項 第 67 条から第 72 条までの規定は、日本国外においてこれらの条の罪を犯
した者にも適用する。
第 77 条
第 77 条第 1 項 (法人(*)の代表者または管理人)、(法人または人)の「代理人」、または使用
人その他の従業者が、その(法人または人)の業務に関して、第 67 条、第 68 条、第 70 条ま
82
たは第 73 条から第 75 条までの違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その(法
人または人)に対しても、各本条の罰金刑を科する。
(*)法人でない団体で代表者または管理人の定めのあるものを含む。
第 77 条第 2 項 法人でない団体について第 77 条第 1 項の規定の適用がある場合には、そ
の代表者または管理人が、その訴訟行為につき法人でない団体を代表するほか、法人を被
告人または被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
附則
(省略)
別表第 1 (第 9 条関係)
項番
対象機関
対象事務
1
厚生労働大臣
「健康保険法」第 5 条第 2 項または第 123 条第 2 項の規定に
より厚生労働大臣が行うこととされた健康保険に関する事務
であって主務省令で定めるもの
2
全国健康保険協会
「健康保険法」による保険給付の支給または保険料等の徴収
または健康保険組
に関する事務であって主務省令で定めるもの
合
3
厚生労働大臣
「船員保険法」第 4 条第 2 項の規定により厚生労働大臣が行
うこととされた船員保険に関する事務であって主務省令で定
めるもの
(以下、省略)
別表第 2 (第 19 条、第 21 条関係)
項
「情報照
事務
「情報提供者」
「特定個人情報」
番
会者」
1
厚生労働
「健康保険法」第 5
「医療保険者」または
「医療保険給付関係情報」
大臣
条第 2 項の規定に 後期高齢者医療広域連
であって主務省令で定める
より厚生労働大臣
合
もの
が行うこととされ
市町村長
「地方税関係情報」、「住民
た健康保険に関す
票関係情報」または「介護
る事務であって主
保険給付等関係情報」であ
務省令で定めるも
って主務省令で定めるもの
の
(厚生労働大臣または日
「年金給付関係情報」であ
本年金機構)または共済
って主務省令で定めるもの
組合等
83
2
全国健康
「健康保険法」に
「医療保険者」または
「医療保険給付関係情報」
保険協会
よる保険給付の支
後期高齢者医療広域連
であって主務省令で定める
給に関する事務で
合
もの
あって主務省令で
「健康保険法」第 55 条
「健康保険法」第 55 条また
定めるもの
または第 128 条に規定
は第 128 条に規定する他の
する他の法令による給
法令による給付の支給に関
付の支給を行うことと
する情報であって主務省令
されている者
で定めるもの
市町村長
「地方税関係情報」、「住民
票関係情報」または「介護
保険給付等関係情報」であ
って主務省令で定めるもの
(厚生労働大臣または日
「年金給付関係情報」であ
本年金機構)または共済
って主務省令で定めるもの
組合等
3
健康保険
「健康保険法」に
「健康保険法」第 55 条
「健康保険法」第 55 条に規
組合
よる保険給付の支
に規定する他の法令に
定する他の法令による給付
給に関する事務で
よる給付の支給を行う
の支給に関する情報であっ
あって主務省令で
こととされている者
て主務省令で定めるもの
定めるもの 「医療 市町村長
「地方税関係情報」、「住民
保険者」または後
票関係情報」または「介護
期高齢者医療広域
保険給付等関係情報」であ
連合 「医療保険給
って主務省令で定めるもの
付関係情報」であ
(厚生労働大臣または日
「年金給付関係情報」であ
って主務省令で定
本年金機構)または共済
って主務省令で定めるもの
めるもの
組合等
(以下、省略)
84
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【参考サイト】
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86
研究レポート一覧
No.419
立法爆発とオープンガバメントに関する研究
-法令文書における「オープンコーディング」の提案-
榎並
利博 (2015年3月)
No.418
太平洋クロマグロ漁獲制限と漁業の持続可能性
-壱岐市のケース-
濱崎
加藤
生田
博
望 (2014年11月)
孝史
No.417
アジア地域経済統合における2つの潮流と台湾参加の可
能性
金
堅敏 (2014年6月)
米山
秀隆 (2014年5月)
趙
瑋琳 (2014年5月)
No.414 創造性モデルに関する研究試論
榎並
利博 (2014年4月)
No.413 地域エネルギー事業としてのバイオガス利用に向けて
加藤
望 (2014年2月)
No.412 中国のアジア経済統合戦略:FTA、RCEP、TPP
金
堅敏(2013年11月)
湯川
木村
抗
(2013年11月)
直人
趙
瑋琳(2013年10月)
梶山
恵司(2013年10月)
高橋
洋 (2013年7月)
No.416 空き家対策の最新事例と残された課題
No.415
No.411
中国の大気汚染に関する考察
-これまでの取り組みを中心に-
我が国におけるベンチャー企業のM&A増加に向けた提
言-のれん代非償却化の重大なインパクト-
No.410 中国における産業クラスターの発展に関する考察
木質バイオマスエネルギー利用の現状と課題
-FITを中心とした日独比較分析-
3.11後のデマンド・レスポンスの研究
No.408
~日本は電力の需給ひっ迫をいかにして克服したか?~
No.409
Innovation and
No.407 ビジョンの変遷に見るICTの将来像
Technology Insight Team
No.406 インドの消費者・小売業の特徴と日本企業の可能性
No.405
日本における再生可能エネルギーの可能性と課題
-エネルギー技術モデル(JMRT)を用いた定量的評価-
No.404 System Analysis of Japanese Renewable Energy
(2013年6月)
長島
直樹 (2013年4月)
濱崎
博 (2013年4月)
Hiroshi Hamasaki
(2013年4月)
Amit Kanudia
No.403 自治体の空き家対策と海外における対応事例
医療サービス利用頻度と医療費の負担感について
No.402 高年齢者の所得と医療需要、負担感に関するシミュレー
ション
No.401 グリーン経済と水問題対応への企業戦略
電子行政における外字問題の解決に向けて
No.400
-人間とコンピュータの関係から外字問題を考える-
米山
秀隆 (2013年4月)
河野
敏鑑 (2013年4月)
生田
孝史 (2013年3月)
榎並
利博 (2013年2月)
No.399 中国の国有企業改革と競争力
金
堅敏 (2013年1月)
柯
隆(2012年12月)
No.398
チャイナリスクの再認識
-日本企業の対中投資戦略への提言-
No.397 インド進出企業の事例研究から得られる示唆
再生可能エネルギー拡大の課題
-FITを中心とした日独比較分析-
Living Lab(リビングラボ)
No.395
-ユーザー・市民との共創に向けて-
No.396
長島
直樹(2012年10月)
梶山
恵司 (2012年9月)
西尾
好司 (2012年9月)
http://jp.fujitsu.com/group/fri/report/research/
研究レポートは上記URLからも検索できます