全国母と女性教職員の会要望書

2015年3月4日
民主党
代表 岡田 克也 様
憲法・平和・教育を守る
全国母と女性教職員の会
要 請 書
日ごろより国政において、ご尽力いただいていることに感謝申し上げます。
さて、
「母と女性教職員の会」は子どもたちの幸せを願い、平和で民主的な社会の実
現をめざし、母親と女性教職員が手をむすび全国で運動を続け今年で 61 年を迎えま
す。
今日まで「わが子、教え子を再び戦場に送るな」をスローガンに掲げ、子どもに身
近な存在として、全国各地の市町村で、都道府県で女性たちの思いをつないで運動し
てきました。学校給食の実現、教育予算拡充、女性差別撤廃、基地や原発の問題など
多くの課題にとりくんできました。
昨年も 8 月に全国集会を開催し、
“子どもたちに平和な未来を”をテーマに全国各地
の課題について話し合いました。わたしたちの声を国政の場において反映していただ
きたいと思います。
つきましては、以下の政策が推進されるよう要請します。
記
1.文部科学省関係事項について
2.厚生労働省関係事項について
3.外交・安全保障関係事項について
4.内閣府関係事項について
文部科学省関係事項
子どもの貧困率が過去最悪となりました。教育の機会均等を保障し、すべての子どもたちに良質
な教育を行う上で、その解決にむけたとりくみは最優先課題です。子どもの貧困や教育格差におけ
る現状把握と解決にむけた施策の充実を強く要望します。
いじめや不登校など、解決すべき問題は山積している一方で、多忙化により教職員が子どもとむ
き合う時間が十分に確保できていない現状が国際調査等でも表面化しています。そのような中、財
務省が企図した、小学校1年生の 35 人学級見直しが見送られたことは当然であります。子どもたち
一人ひとりが、安心で充実した学校生活を送ることができるよう、少人数学級のさらなる拡充にむ
けた教職員定数の抜本的改善を強く求めます。
若者の雇用と労働環境の厳しさは深刻であり、社会に出る前に労働者の権利やワーク・ライフ・
バランス等の観点からの労働教育が求められます。加えて女性の活躍・男女共同参画社会の実現に
むけ、研修の実施、学校教育の充実、地域における学習機会の提供など、最終年となる「第3次男
女共同参画基本計画」の実行についても喫緊の課題です。
憲法の理念、子どもの権利条約、女性差別撤廃条約等にもとづくゆたかな教育の実現のため、次
のことを要請します。
記
1.すべての子どもたちにゆたかな学びを保障するため、教育条件のさらなる充実にむけた施策を
推進すること。
①子どもの貧困や教育格差の拡大について、現状と問題点を把握するとともに、その解消にむけ
た実効性のある施策を講じること。
②少人数学級のさらなる拡充にむけ、教職員定数の計画的改善をすすめること。
③多様な子どもたちに対応するための加配措置等を拡充すること。
④高校授業料を無償とすること。また、給付型奨学金制度を創設すること。
⑤すべての子どもたちが地域の学校でともに学ぶことができるインクルーシブ教育の実現にむけ
たとりくみを推進すること。
⑥キャリア教育に労働教育の視点を加えること。
⑦義務教育費国庫負担制度の2分の1復元、及び地方交付税の財源を確保すること。
2.すべての子どもたちにとって安心安全な生活を確保すること。
①学校給食について、安全な食材を確保するとともに、食物アレルギーへの対応について学校全
体での共通理解をはかること。また、人的配置や施設改善などの条件整備に努めること。
②通学路の安全確保にとりくむとともに、事故防止にむけた対策をすすめること。
③東京電力福島第一原発事故に係り、放射線量モニタリングの強化、校庭・通学路などの放射性
物質の除染等をすすめること。
3.全国学力・学習状況調査について、調査のあり方を抜本的に見直すこと。また、調査結果の取
り扱いについては、序列化・過度の競争につながらないようにすること。
4.完全学校週5日制の趣旨をふまえ、土曜学習を行う場合は、家庭や地域が主体となって事業を
推進すること。そのための条件整備、環境づくりを行うこと。
5.男女共同参画社会を実現するため、推進体制を強化し必要な施策を実施すること。
①第3次男女共同参画基本計画にもとづき、男女平等教育や性の教育のカリキュラムの策定・研
修を促進すること。
②スクール・セクハラ、性暴力等の防止にむけ、教職員に対する研修の実施や相談体制の構築な
ど具体的なとりくみを充実すること。
6.憲法の理念や子どもの権利条約、障害者権利条約にもとづき、子ども・学校・地域の実態に即
した人権教育を推進すること。とりわけ、子どもの内面を評価する道徳の教科化は行わないこと。
7.世界の平和と共生を願い、人権尊重を重視した平和学習の推進をはかること。
以 上
厚生労働省関係事項
子どもや女性の人権が尊重され健康で安全に生活できる社会、男女がともに仕事と家庭の調和を
はかることができる社会の実現は、21 世紀の最重要課題です。
地域医療の衰退や介護現場の厳しい状況は、子どもや高齢者、障害者等を追い詰めています。児
童虐待の増加も深刻です。子どもの貧困率は 16.3%と高く、6人に1人が貧困状態にあります。格
差・貧困を解消するため、公的財政支出を拡充し、貧困の連鎖を防ぐ社会的セーフティネットの再
構築が必要です。
完全失業者数については減少しているものの、非正規雇用が増大するなど、雇用確保にむけた対
策の一層の推進とともに、希望を持って安心して働ける労働法制や適正な最低賃金の確立が必要で
す。女性の就業継続や仕事と生活の両立にむけ、制度や条件整備の拡充、男女の賃金格差や正規・
非正規の賃金格差の解消、同一価値労働同一賃金の実現も急がれます。雇用支援と高齢者や子ども
を含めた全世代支援型の社会保障をめざさなければなりません。
私たちは、すべての人のディーセント・ワークを可能にするワーク・ライフ・バランスの実現、
子どもたちが健やかに育つ社会環境の整備を強く願っています。すべての人々に健康で文化的な生
活を保障するために、次のことを要請します。
記
1.ワーク・ライフ・バランス、男女共同参画社会の実現にむけ、具体的施策にとりくむこと。
①雇用における男女の均等な機会と待遇を確保すること。
②男女がともに仕事と生活の両立を実現できるよう実効ある施策等を講じること。
③すべての労働者の保護と雇用安定をはかるため、労働者保護の観点に立った労働法制の改善を
はかり整備をすすめること。
④地域で若者の就労を支えるシステムを構築すること。
⑤改正次世代育成支援対策推進法にもとづく行動計画を策定し、着実な実行にむけ積極的な役割
を果たすこと。
2.医療・年金・介護など社会保障制度を充実させるとともに、すべての人が安心・安全に生きて
いける福祉社会の実現にむけた施策にとりくむこと。
①食品中の放射性物質の基準値については、外部被曝も考慮し、国際基準にもとづいた低い値に
見直すこと。
②「子どもの貧困対策法」にもとづき保護者の自立支援、経済的支援の充実をはかること。
③「児童虐待防止法」にもとづき、児童相談所等の人的増員や施設・設備の充実、加害者および
被害者に対する回復支援など、子どもの立場に立った施策を講ずること。
④「DV防止法」にもとづき、各都道府県における被害者救済センターの設立や充実をはかると
ともに、被害者の生活保障にむけた対策の具体化をはかること。
⑤子どもに不必要な検査や検診、家族の病歴・生活実態調査等を行わないこと。また、学校にお
ける集団フッ素洗口・塗布は行わないこと。
⑥医療格差を是正するとともに、地域医療の存続をはかること。
⑦安心して妊娠・出産できる環境づくりにむけ、産科医や助産師の十分な配置、緊急体制の充実
をはかること。
⑧乳がん・子宮がん検診の公費助成枠の拡大をはかること。
⑨HPV ワクチンについては、
「積極的勧奨の一時見合わせ」の経過を明らかにするとともに、
「安
全性・有効性・必要性」の観点から子ども、保護者への情報提供、接種後の事故等の健康被害
について救済措置を行うこと。
以 上
外交・安全保障関係事項
安倍政権は、昨年「国際協調主義にもとづく積極的平和主義の立場から、世界の平和と安定、繁
栄の確保にこれまで以上に積極的に関与していく」として、国家機密の任意的運用、集団的自衛権
行使の容認、武器輸出三原則の見直しなど国の安全保障政策を次々に閣議決定してきました。
日米両政府は、日本をはじめとしたアジア・太平洋地域の安定確保との名目で「日米防衛協力の
ための指針」の見直しなど日米防衛協力の強化をはかり、在日米軍基地再編により、米軍と自衛隊
の「統合運用」などをすすめようとしています。私たちは、これらアメリカの世界戦略システムに
もとづく日米安全保障体制に異論を唱えてきました。日本は米国に対し「武力では平和はつくれな
い」ことを諭し、世界平和を構築する手法の変換を求めるべきです。
また、沖縄県民の反対を無視した辺野古の新基地建設、オスプレイの配備や日本国内での低空飛
行訓練への政府の対応は、国民のいのちと生活を保障しているとは言えません。昨年 6 月には米国
内でFA18(スーパーホーネット)とAV8B(ハリヤー)が相次ぎ墜落、9 月には、嘉手納基
地で着陸直後のハリヤーから出火する事故が発生しています。地元住民が安心して平和な生活を営
むうえで日本に米軍基地はいりません。対等な新しい日米関係の論議を優先し、日米地位協定の抜
本改定と在日米軍基地の縮小・撤去、米軍再編や在日米軍のあり方について日本国民の側に立った
見直しを求めます。
さらに、日米合同の軍事演習や、自衛隊の飛行訓練も安全面への不安や騒音など地元住民の大き
な負担となっています。シビリアンコントロールの徹底と消費税増税分を防衛費に回すことのない
よう防衛調達を透明化させ、自衛隊の縮小・改編をすすめ、国民の理解を得られる活動を行うよう
強く求めます。
以上のことから、子どもたちに明るい未来を保障するため、日本国憲法の遵守と世界の平和を実
現するため、次のことを要請します。
記
1.憲法が要請する「専守防衛」を堅持すること。また、
「統合機動防衛力」の名の下に自衛隊の強
化・拡張を行わないこと。
2.憲法9条の「戦力不保持」をふまえ、自衛隊の役割の見直しと縮小・改編をすすめること。ま
た、沖縄への自衛隊配備を強化しないこと。
3.
「集団的自衛権」行使等を容認する憲法解釈変更の閣議決定を撤回すること。また、集団的自衛
権行使にむけた自衛隊法や周辺事態法などを「改正」しないこと。
4.防衛装備移転三原則を抜本的に見直し、武器や関連技術の輸出を行わないこと。
5.日米地位協定を抜本的に見直すこと。
6.集団的自衛権の行使を前提とした「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)
」の再改定を行
わないこと。
7.沖縄をはじめとする在日米軍基地の縮小・撤去をはかること。また、辺野古の新基地計画等を
撤回するとともに、普天間基地を即時閉鎖すること。
8.オスプレイの配備撤回と全国各地での低空飛行訓練等の中止を求めること。また、災害救助訓
練にオスプレイを使用しないこと。
9.米軍と自衛隊の「統合運用」を行わないこと。また、在沖米軍海兵隊の砲撃演習をはじめとし
た日米合同軍事演習を行わないこと。
10.人権への配慮の徹底やオンブズパーソン制度の導入検討などにより、自衛隊の組織的体質を改
めること。
11.自衛隊員の募集は、学校を通じて行わないこと。また、募集にかかわる活動において学校敷地
及び施設の使用を行わないこと。
12.日本の防衛予算を一般市民にわかりやすく情報公開すること。特に、在日米軍に係る「思いや
り予算」等の内実を明らかにし、減額すること。
以上
内閣府関係事項
少子高齢化・人口減少社会に入り、格差や貧困がますます深刻になっています。子どもや女性、
高齢者などを含むすべての人が安心していきいきと暮らすことのできる社会を実現することが喫緊
の課題となっています。本年4月施行予定の子ども・子育て支援新制度は、
「子どもの最善の利益」
が保障され、社会全体で子どもを育てていく制度となるようとりくみをすすめていくことが必要で
す。
また、最終年となる「第3次男女共同参画基本計画」には、
「女性の活躍による経済活性化」
「男
性や子どもにとっての男女共同参画」
、
「生活困難な状況に直面する男女への支援」が強調されてい
ます。確実な実施にむけたとりくみをすすめるとともに、実行状況の検証をし、第4次の計画を策
定する必要があります。
女性参画の促進や民法改正については、国連女性差別撤廃委員会から日本政府に対して勧告が出
されています。国際的な評価を得られるよう、さらなるとりくみが必要となっています。
人権が尊重され、性別にかかわりなくその個性と能力を十分に発揮することができる社会、ワー
ク・ライフ・バランスの実現にむけて次のことを要請します。
記
1.
「子どもの貧困対策の推進に関する法律」にもとづき、対策に充てる予算を確保・増額し、保護
者負担の軽減をはかること。
2.子ども・子育て支援新制度の本年 4 月実施にむけ、都道府県・市区町村の子ども・子育て支援事
業が円滑に行われるようとりくみをすすめること。また、子ども・子育て支援新制度が、子ども
の権利条約をふまえ子どもの最善の利益を保障する施策となるようにすること。
3.保育の質や教育の機会均等を確保するためにも、幼児教育の無償化や幼稚園、保育所、認定こ
ども園などを維持・拡大し、施設・設備、人的措置等の環境整備において、地域格差が生じない
よう制度設計を行うこと。
4.
「第3次男女共同参画基本計画」の実施最終年にあたり、計画の確実な実施にむけてとりくむと
ともに、実行状況の検証を行い、予算措置や立法措置を伴うポジティブ・アクション等実効ある
措置を講じること。また、性別にかかわらず性的マイノリティ等も含め推進すること。
①固定的性別役割分担の見直しをはかり、同一価値労働同一賃金を確立するとともに、選択可能
で自立して生活できる多様な働き方を確立するための施策を講じること。
②LGBTの人々や外国人、先住民など、マイノリティの視点にたった具体的な提言を行い、と
りくみを推進すること。
③長時間労働の抑制、男性の家事・育児への参画の促進など、子育てや介護を支える社会基盤を
確立するために、数値目標達成にむけた具体的な施策を講じること。
④セクシャル・ハラスメント、マタニティ・ハラスメント、DVなど国連の各種委員会でも懸念
が表明された差別行為について、ジェンダーにかかわらず有効な対策をとること。
⑤「2020 年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも 30%とする」という目標実現にむ
けて、官民あげてクオータ制やインセンティブ付与など実効性のあるポジティブ・アクション
を推進すること。
⑥改正されたDV防止法、ストーカー規制法を実効あるものとするとともに、暴力の根絶と性犯
罪への対策のため性被害を親告罪としないなど、司法手続きの変更や罰則の強化等を推進する
こと。被害者支援および加害者の更正にむけたプログラムや被害者の生活立て直し対策を啓発
するなど、実効あるとりくみを行うこと。また、各自治体に対し、被害者支援体制の確立を強
く働きかけること。
⑦リプロダクティブ・ヘルス/ライツの知識の普及や、望まない妊娠を防ぐ観点も含めた総合的な
施策を推進し、生涯を通じた健康支援を行うこと。
⑧女性の活躍が推進される男女共同参画社会の実現にむけ「ジェンダーの主流化」をすすめ、あ
らゆる施策の立案、予算編成、執行、評価等の段階でジェンダーの視点を入れること。
5.婚姻最低年齢の差別解消や選択的夫婦別姓制度の導入などの民法改正や、女性参画の促進等に
ついて対応をすすめるとともに、女性差別撤廃条約選択議定書の批准を早期に行うこと。
以 上