平成27年度…国語(1.79MB)

●
平成27年度入学生
入学検査問題
語
国
受検上の注意
1
この問題冊子は指示があるまで開いてはいけません。
2
受検番号、氏名を次のように記入してください。
(1)解答用紙(マークシート)の上部に、受検番号、氏名を記入してく
ださい。
(2)解答用紙(マークシート)の左側の受検番号欄に、受検番号を記入
3456
し、その下に受検番号をマークしてください。
問題冊子は1ページから22ページまであります。
解答はすべて指示に従って解答用紙にマークしてください。
解答時間は50分です。
検査終了後、問題冊子は持ち帰ってください。
次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。
人間は他者と非常に親密になることができます。それは、人間が﹁言葉﹂を使えるからであり、お互いに﹁わかる﹂ことができ、
共感︵①白も胃身︶することができるからでもあります。コミュニケーションを行う上で、最も重要な心的現象が﹁共感﹂でもありま
す。例えば、誰かが﹁痛い﹂と訴えたとします。その﹁痛い﹂という言葉を聞いた時、聞いた人の内部では一つの過程が発生しま
す。﹁痛い﹂という言葉によって表現されたからだの状態に似た状態を、聞き手はみずからの体験に即して想像します。聞き手は、
体感として別段その部分に痛みを感じるわけではありません。けれど、﹁痛い﹂という言葉によって表現しようとしているからだの
状態がどのような性質であるかを知っているのです。そして、このような共感が積み重ねられていけばいくほど人間関係は深く
なっていきます。別の言い方をすれば、この﹁共感﹂の過程をコミュニケーションというのです。
小説を読んでいるときの人間の心の動きを分析してみると、前述のごとく読者は、作品の中の登場人物の﹁身になって﹂、つまり
﹁共感﹂しながら物語を追っています。この﹁共感﹂作業を繰り返すことで、私たちは多くの人たちの感情を理解できるようになり
ます。
本を読む、この行動を詳しく解析してみると、実は私たちは紙の上に描かれたインクを見つめているだけなのです。その上で想
あI
像力を働かせ、興奮や喜び、恐怖や悲しみなどを感じるようになっていくのです。それは不思議な現象であり、﹁言葉﹂を知らない
者から見れば非常に奇異な行為でもあります。本を読む、この行為に代表されるように、人間は実在世界的な世界の速記法として、
ま
するならば、労力と時間が必要になるのです。
育し、それらとの共生関係により植物はケンゼンな生育が達成されています。このように丈夫で栄養に富む植物を創り上げようと
al
が良くなり、植物にとって好ましい〃土″へと変わっていくのです。そこではバクテリアをはじめとする多くの動物や微生物が生
やっと元気な芽が出るのです。耕すことで土壌が発達し、適度なすき間を持った軟らかい土となります。、H川u保水力や通気性
れていないからです。畑は耕されることで、土の中の有機物や微生物とのバランスを整え、発酵していき、土が肥えたところで
ん。仮に出てきたとしても、細く、小さく、弱い植物にしか育つことができません。それは十分に栄養の行き渡るような土が作ら
本を読む、それは私たちの心に種を蒔く行為にも似ています。私たちが何か植物の種を蒔いたとしても、すぐに芽は出てきませ
I
記号の世界を泳ぐ能力を持っているのです。
A
1
巳
B
︲Dlllll
や
その一方で化学肥料というものもあいります。昔から化学肥料を使うと、土壌が痩せると一一一一口われています。化学肥料は作物が栄養
CDII
をキョクゲンまで取りやすいように配合され、作物にとって無駄な成分が全く入っていない肥料でもあります。また、前述した通
り無駄のないように製造工程が工夫されているため、大量生産が可能であることからカカク競争の面で有利であいリ、土壌を効率的
に利用する上でも必要不可欠な製品でもあります。[ⅡⅢⅡ]、化学肥料は有機肥料と比較して微生物の活用割合が低く、生息して
いる微生物が少ないため、化学肥料を使い続けた土地は酸性化が進み、重要な微生物が減少していき、ついには死滅してしまうこ
ともあります。これらの変化により、いわゆる﹁土地が痩せていく﹂といった現象が起こると言われています。土壌中の微生物や
注1
C
有機物のバランス
スが
が崩
崩れ
れる
ると
と、
、植
植物
物に
にと
とっ
って
て病
病気
気を
を発
発生
生し
しやすくなるとも言われています。
ややステレオタイプな例えになったかもしれませんが、 この化学肥料をインターネットや携帯電話の乱用、テクノロジーを用い
た社会の効率化に置き換えてみるとよくわかるのではないでしょうか。インターネットや携帯電話は確かに便利なものです。私た
ちの生活にはもはや欠かせないものとなりました。これらを用いてコミューーケーションを行えば、より早く、より効率的で、より
自分にとって居心地のよい環境をつくることができます。それはまるで化学肥料のように、私たちにとって非常に便利に、そして
簡単に、私たちが楽しめるコミューーケーション環境をつくることができるのです。
その一方で、これらのシールを使うことで、私たちは日常生活の中のコミュニケーションを行うことに対し、苦手意識を抱える
ことが増え、さらには﹁不安﹂という感情を抱きやすくなりました。これは化学肥料を用いることで起こる現象、﹁土地が痩せてく
る﹂と言い換えることはできないでしょうか?
私たち日本人も、この時代の移り変わりとともに非常に大きな変化を受けています。そして、それらを無意識的に活用しながら、
dl
に適
適応
応す
する
るよ
よう
うに
に生
生存
存し
して
てき
きま
まし
した
た。
。本
本j
も時代とともに変化していくでしょう。けれども、ここであえて前近代的な
時代の流れに
﹁読書﹂という手法の必要性を改めてテイァンします。
あらゆる書物は孤独の象徴でもあります。そこに収められた言葉たちは、何ヵ月、時には何年にも及びますが、一人の人間の孤
独を体現したものでもあります。同NMUある書物を一語読むごとに、人はその孤独を形成する一個の分子と向き合っていると
いってもよいのでしょう。その書物に共感し、登場人物と同じ気持ちを共有したりすることで、自身の世界も広がっていくのです。
︻I]
書物の中にはもちろん多くの言葉が書き記されています。その一つの言葉がもう一つの言葉を生み出し、一つのものがもう一つ
2
注2
の物になる。それらは私たちの頭の中で記憶と同じように積み重ねられ、一つの形として形成されます。そしてついには、その人
たちの内部に巨大なバベルの塔のような思慮の塔を形成していくのです。︻Ⅱ︼
注3
このような孤独な知的作業を抜きにしては、自分の言葉の力が他者に対して積極的な影響力を持つことはあり得ません。
現代社会では、インターネット、携帯電話、SNS、ツイッターなどのテクノロジーの発展により形成されたネットワークの輪
が私たちの周囲にはつくられつつあります。そして現代社会に生きる多くの人々は、特に意識もせずにこのネットワークの輪の中
に入ろうと努めています。インターネット上のコミューーヶーションサイトに広がる緩いネットワーク。そこに入れば新たな﹁トモ
ダチ﹂に囲まれて、精神的な安定を得られることもあるでしょう。多くの人々は現代という人間関係が薄くなってしまった時代に、
地縁、血縁、職場や学校などの人間関係とは異なる結びつきを求めています。︻Ⅲ一
あんどかん
ネット上の交流はあなたにとって都合の良い、実社会とは異なったON/OFFのはっきりした扱いやすいものでもあります。
時には強い連帯感を生み、あなたに力強いエネルギーや一時の安堵感を与えてくれるかもしれません。しかし結局は軽くて薄いも
のであり、現実とはかけ離れた関係でもあるのです。かつ、そこには経済的合理性を追求されたものが選別され、残されていくよ
うな仕組みになってしまっているのです。実社会のコミューーヶーションや﹁友達﹂とは明らかに違うのです。︻Ⅳ︼
●l
ネットワークの上では、あなたの代わりになるような人間は多く存在しています。コミューーティサイトでは、あなたがいなく
なっても特に大きな問題はなく、そのままの形でウンエイされていくでしょう。けれども実社会ではそうはいきません。実社会で
の﹁あなた﹂は結局のところあなた一人であり、あなたに代わる人間など、この世の中には誰もいないのです。︻V︼
私たちはコミューーヶーション技術の進歩により、逆に自分にとって不快であるもの、避けたいものを遠ざけるようになりました。
め
注4
その結果、多くの事象に眼を閉ざしてしまい、さらに﹁不安﹂という感情を抱きやすくなりました。多くのものに目を閉ざした結
い﹄?
果、世界の
のさ
さま
まざ
ざま
まな
な形
形や
や手
手触
触り
りと
と︵
の親密な交流を自らに禁じることになりました。私たちは審美的な喜びを味わう可能性から、
自分を遮断しようとしているのです。
インターネットや携帯電話の並白及に伴うテクノロジーの発展。このような時代の流れとともに引き起こされた変化は、いわば不
可逆的な変化とも言えます。すでに日本だけではなく、世界の隅々までインターネットや携帯電話は普及しています。今後、私た
たいじ
ちがインターネットや携帯電話の普及していない世界で過ごすことはまずありえません。
世界はあなた一人が対時するにはあまりに大きノ、、そして一人の人生はあまりに小さいものでもあります。今の仕事や今の生活
3
,
は生の一形式であり、単なる選択された結果ではありえません。けれど、あなたは世界と対時していかなければなりません。この
321
審美・⋮:自然や造形の美しさ、醜醜
﹄さを見極めること。
会員制サービスの一種。
*作問の都合上、本文を一部削除してある。
SNS⋮⋮﹁ソーシャル・ネットワーキング・サービス﹂の略。インターネット上で構築された社会的ネットワークの
バベ
ベル
ルの
の塔
塔・
・・
・・・⋮⋮
旧旧
約約
聖聖
書書
のの
中中
でで
伝、
伝えられる塔。天にも届くほどの高層の塔であったと伝えられている。
ステレオタイプ⋮⋮新鮮味がなく、型どおりであること。
︵森田幸孝﹃インターネットが壊した﹁こころ﹂と﹁言葉﹂﹂による︶
世界でどのように生きていくのか、この世界とどのように接するのか、それはあなたが決めていくしかないのです。
注4
4
注注注
問
一
l
bキョクゲン
−
ゲンカクな人柄
部a∼eの漢字と同じ漢字を含むものを、次の各群の①∼⑤の中からそれぞれ一つずつ選びなさい。
日本国ケンポウを守る
ケンアクな雰囲気が漂う
ケンコク記念日を祝う
お互いのケントウを祈る
ケンゴな城郭を構える
ゴウカな商品が当たる
作品をヒョウ力する
dテイアン
隣国と条約をテイケッする
約束のキゲンを守る
ゲンリョウを加工する
自宅のゲンカンを飾る
ゲンソウテキな光景
⑤④③②①
記念品をゾウテイする
全員参加がゼンテイ条件だ
⑤④③②①
梅雨前線がテイタイする
テイチョウにお断りする
5
作物をシユッカする
カヘイが流通する
ョ力を自由に過ごす
l
エイギョウ時間を調べる
ゼンエイ的な芸術
彼は新進キエイの作家だ
エイセイ中立を宣一一一一口する
I
回
回
−
−
−
aケンゼン
C,刀.カケ〆
eウンエノイ
利薩利雲矛
茅
謹ご利苦
中キを的ウ
碁矛│手套篤
−
−
−
−
⑤④③②①
⑤④③②①
⑤④③②①
回
回
回
問
一
l
I部﹁ながら﹂と、同じ意味・用法で﹁ながら﹂が用いられている文を、次の①∼⑤の中から一つ選びなさい。
わかっていながら知らないようなふりをしている。
あ奇異な
ア ア ア ア ア
さ・つそそす
らまれしる
にりにてと
風変わりで不思議な
もの珍しくて貴重な
あやしくて不愉快な
い不可逆的な
−
−
すぐれていて特別な
⑤④③②①
おもしろくて印象的な
回
−
−
反抗することもできないような
再びもとに一戻れないような
まるで納得できないような
予想とは全く異なるような
侵すことができないような
⑤④③②①
イそのうえウあるいは
イところがウところで
イただしウしかし
イけれどウだから
イむしろウすなわち
問四同uⅢⅡU∼同川剛叩U に入る語の組み合わせとして最も適当なものを、次の①∼⑤の中から一つ選びなさい.回
回
問三I琴いの語句の本文中の意味として最も適当なもの蛋次の①i⑤の中からそれぞれ一つずつ選びなさい。
⑤兄弟三人ながら、みな医者を目ざしているそうだ。
④歌手ながら最近は作家としても注目を浴びている。
③横断歩道では左右を確かめながら渡るようにする。
②この辺りは、昔ながらの町並みが今も残っている。
①
⑤④③②①
6
一
回
③︻Ⅲ︼
④︻Ⅳ︼
⑤︻V︼
問五次の一文は本文の︻I︼∼︻V︼のいずれかに入る。この一文が入る最も適当な箇所を、次の①∼⑤の中から一つ選びなさ
例︾︻Ⅱ︼
︻その中で何よりも﹁共感﹂を強く求めているのでしょう。︼
、
I
⑤インターネットなどの最新技術を利用して、コミュニケーションできる能力。
④言葉を駆使し、物事を想像することで、感じたことを表現し伝達できる能力。
③さまざまな言語を習得することで、国籍の異なる多くの人と交流できる能力。
②言語を用いて現実世界を記号化することで、世界を単純化して認識できる能力。
①抽象的な言葉を用いることで、非現実的な想像上の世界さえも構築できる能力。
ぴなさい.回
部A﹁記号の世界を泳ぐ能力﹂とありますが、どのような能力ですか。次の①∼⑤の中から最も適当なものを一つ選
ー
④労力と時間をかけて読書をすることが、人々の生活を豊かにし、より快適なものにしていくこと。
③労力と時間をかけた読書によって心という土壌が豊かになり、他者に共感できるようになること。
②読書によって心という土壌を耕すことで、自分にとって居心地のよい環境を簡単につくれること。
①多くの知識を吸収することで、さまざまな人々とのよりよい共生関係をつくりあげていけること。
∼⑤の中から最も適当なものを一つ選びなさい.回
ま
そ私
れた
は私
ち心
の心
種を
を毒
蒔く行為にも似ています﹂とありますが、どのようなことですか。次の①
問七1部B﹁本を義それは
ちたの
にに種
問六
○
⑤より効率的に読書をしていくことが、より多くの知識を身につけるために必要不可欠であること。
7
い
①
くわかるのではないでしょうか﹂とありますが、どのようなことがわかるというのですか。次の①∼⑤の中から最も適当な
もの を 一 つ 選 び な さ い 。
次の①∼⑤の中から最も適当なものを一つ選びなさい.回
1部D﹁実社会とは異なったON/OFFのはっきりした扱いやすいもの﹂とありますが、これはどのようなことです
にする要因になっていること。
⑤インターネットや携帯電話は、社会生活を効率化する非常に便利なものであるが、それらが私たちの心の状態を不安定
させるのは難しいということ。
④インターネットや携帯電話は、 効率的で居心地のよい環境を簡単に作れるが、時代の大きな移り変わりに私たちを適応
﹁不安﹂も感じさせるということ。
③インターネットや携帯電話は、十すべての使用者に精神的な安定をもたらすが、同時に便利で効率的な環境が私たちに
力を弱体化させるということ。
②インターネットや携帯電話は、 他者に﹁共感﹂することを可能にするが、効率的で大変便利な環境がその﹁共感﹂する
覚に受容しているということ。
①インターネットや携帯電話は、 コミューーヶーション環境を効率化できるが、そのような状況を私たちがあまりにも無自
画
実社会とは異なり、ネットワークの輪の中で感じる不安を容易に消去してくれるものであるということ。
○
実社会とは異なり、常に強い連帯感を生み出し、力強いエネルギーを与えてくれるものであるということ。
実社会とは異なり、経済的合理性を追求されたものだけが選別され、残されていくものであるということ。
実社会とは異なり、自分にとって不快なものや避けたいものを、簡単に遮断できるものであるということ。
実社会とは異なり、テクノロジーの進展による生活環境の変化から守ってくれるものであるということ。
8
問八1部C﹁この化学肥料をインタ︲ネットや携帯電話の乱用テクノロジ︲を用いた社会の効率化に置き換えてみるとよ
問九
力
到
⑤④③②①
問十本文の内容に合わないものを、次の①∼⑤の中から一つ選びなさい.画
①コミュニケーション技術が進歩したことで、私たちは居心地のよい、緩いネットワークをつくるようになった反面、実
社会のコミュニケーションに苦手意識を抱えることが増えてしまった。
②インターネットや携帯電話は、実社会とは異なる新たなコミューーヶーションをつくるうえで便利なシールだが、読書と
いう孤独の伴う行為と比べれば、はるかに劣っているものである。
③コミュニケーションにおいて、他者に対して積極的な影響力をもつ言葉を獲得したいと考えるならば、読書という孤独
な知的作業を行うことで、自分の世界を広げていくことが必要である。
④現実社会を生きていくうえでは、自分という存在がかけがえのないものであることを自覚したうえで、この世界にどの
ように接し、どのように生きていくかを考えていかなければならない。
⑤コミューーケーション技術が進歩した時代だからこそ、それを利用した安易なネットワーク形成に潜む問題点を自覚し、
現実世界との接し方を個人個人が考えていくべきである。
9
しづか
次の文章は、中学校一年生のむつ美が、新しい学校生活の中で志津香と山山会い、演劇部に誘われたときのことを描いた場面です。
これを読んで、後の問いに答えなさい。
春休みは、一一一月のおわりと四月のはじめを合わせて、二週間以上もあった。むつ美には、そのあいだに使える魔法はいくつもあ
るょうに感じられた。小学校の同級生がひとりもいない学校に行ける。髪の毛がまつすぐになるかもしれない。痩せてきれいにな
はなぜだか自分は生まれ変われるのだと信じた。
い
ついてきていることを︽2︾確認した。
たんす
そう言って歩き始めた彼女の後ろを、坐むつ美はなんとなく追いかけた。 彼女は、おしりの下のカバンを揺らしながら、むつ美が
﹁部活とか緊張するよね−なんか﹂
わっているみたいだ。
、、周りのクラスメイトのことをちらりと見た。みんな、入学式の次の日から、放課後は部活の見学をしてま
彼女は
はそ
そう
う言
言う
うとと
﹁二週間の仮入部、金曜までに決めなきゃでしよ﹂
分がおしりよりも下にきてしまっている。
髪の毛の薄い女の子は、放
つつ
圭美に声をかけてきた。肩掛けカバンのヒモを一番長く設定しているから、カバンの袋の部
放課
課後
後も
もむむ
﹁ねえ、部活もう決めた?﹂
髪の毛はまっすぐになっているはずだ。朝、ぶどうの皮を剥くみたいに水泳帽をはぎ取りながら、むつ美はいつもそう信じていた。
む
広がる二週間のその先には、これまでの私のことなんて知らない人たちが待っている。その人たちの前に立つとき、きっと、この
しの中から、水泳道具を引っ張り出した。髪の毛を押し付けるように、ぴちぴちの水泳帽をかぶって眠った。目の前にたっぷりと
髪の毛を濡らして、まつすぐになるように手で伸ばした。それを、お風呂上りに毎日、一時間以上続けた。箪笥の小さな引き出
ふろ
れるかもしれない。目が︽1︾大きくなるかもしれない。そんなわけはないのに、最後のランドセルを下ろしたとたん、むつ美
や
まるで友達のように隣を歩いていいものなのか、むつ美にはよくわからなかった。この子は、私と一緒にいるところを誰かに見
られることが嫌ではないのだろうか。
1
0
A
むつ美は思わず、木村さん、と、彼女の名前を小さな声で呼んだ。彼女は気づかない。薄い色の髪の毛が、その細い首を隠して
○
のはずだ。
注lいがらしそうた
を見て、むつ美には、その絵があまりにも遠い距離に置いてあるように感じられた。三年四組なんて、この校舎の中のどこにある
囲気のものだ。空の上から見た田園風景、そこに人間はひとりもいない。 作 者 の 名 前 の 横 に 書 か れ て い る ﹁ 三 年 四 組 ﹂ と い う 文 字
B
廊下の壁には、美術部の生徒のものだろうか、額縁に入れられた絵が飾 られていた。むつ美が普段描いている絵とは全く違う雰
けだったらしい。
れぞれの五十嵐壮太が座っている。五十嵐壮大は個性ではなく、ひとつの教室に必ずひとつは用意されている枠に収まっていただ
がいることを知った。教室が十個あれば五十嵐壮太は十人いるし、修学旅行のバスが十台あれば、それぞれの一番後ろの席にはそ
が、廊下の真ん中に立ち止まっている志津香をじゃまそうに晩む。むつ美は中学校に入って、どの教室にも五十嵐壮太のような人
にら
志津香は突然立ち止まると、﹁でもこういうのは何がすごいのかわかんない﹂と言った。その場を通り過ぎようとする男子たち
﹁絵描くみたいだし、やっぱ美術部に入るのかなって﹂
﹁え?なに?﹂
気が付いた。
廊下を歩いていると、志津香が言った。少しの沈黙のあと、むつ美は、いま話しかけられているのは自分だということにやっと
﹁やっぱり美術部?﹂
は全く想像 で き な か っ た 。
たつ年上に見える。これから毎日この場所に通い続け、やがてそれが当たり前のようになっていくだなんて、このときのむつ美に
廊下に出ると、まるで、nHHUを歩いているような気持ちがした。違う小学校から来た子たちは、不思議とみんな、ひとつふ
彼女は、木村志津香、
あと、入学式の日に配られたクラス名簿で彼女の名前を確認した。女子の出席番号一番が明元むつ美、一こつ後ろの席に座っていた
あきもと
むつ美はこっそり、プリントを後ろの席に配るとき、彼女が自分よりもいくつ後ろの席に座っているのかを数えておいた。その
一緒に歩いていいみたいだ、と、むつ美は思った。
る
のだろう。ひとりで足を踏み入れられない場所にある、ということしかわからない。
1
1
い
﹁描きたいのって、どっちかっていうとこういう感じ?﹂
あら
志津香はくるんと振り返ると、その向かいに貼ってあるポスターを指さした。細い前髪が動いて、広い額が露わになる。
演劇部仮入部歓迎、という文字の下で、慌ただしそうに駆け回っている男女の姿がある。男女ともに、制服ではない服を着てい
て、一番上にはポスター全体を照らすような大きなスポットライトが描かれている。
﹁こうやって輪郭がちゃんと描かれてる絵って、トーン、貼りやすいんでしよ?﹂
頭の中で考えていたことをそのまま言われたので、むつ美は﹁あ、うん﹂と上の空で返事をした。
﹁昼休み話したドラマのね、主人公がそう言ってたんだ。漫画家と編集者の話で﹂
志津香は身振り手振りを加えて、いかにそのドラマが面白いかということを話しはじめる。
いぶか
﹁編集者役の人がイケメンでね、先週はその人が﹂廊下の真ん中で熱弁をnMⅢUいる志津香のことを、 他 の ク ラ ス の 生 徒 た ち が
ぎて
てい
いく
く。
。そ
それ
れで
で︲
も志津香は気にしていない。
相旧
変変
わわ
らら
ずず
証謡
1し
しげ
げに
に晩
晩み
みな
ながら通り過ぎ
気にしていない
いふ
ふり
りを
をし
して
てい
いる
る、
、と、むつ美は思った。
﹁木村さんは、演劇部に入るの?﹂
名簿
簿で
で砦覚えた名前が間違っていたらどうしよう、と思ったけれど、志津香は﹁あ、だめ﹂と慌ただしく
声に出してみたあとで、名
顔の前で手を振った。
それれ、、
﹁今までずっとキムってあだ名で呼ばれてて、そ
シちょっとやだったんだよね﹂
よみがえ
あんまりかわいくないじゃん、と言いながらく
、志
志津
津香はさりげなく廊下の端に寄った。坊主頭の男子生徒が、大きなエナメル
バッグを揺らしながら空いたスペースを歩いていった。
あき
下名
の一
名一前。だから、志津香とかし−ちゃんって呼んで﹂
﹁志津香っていうの、私。下の
志津香はむつ美を見て、言った。
﹁明元さんはな んて呼ばれてた?﹂
﹁アキ﹂
むっちゃん、中学校はバラバラになっちゃうけど、これからもよろしくね。
1
2
a
志津香と目が合ったとき、むつ美の口の中で、愛季が差し出してくれたオレンジジュースの甘い味が蘇った気がした。
C
﹁名字、明元だから。たまに、ア
アッ
どキーって呼ぶ人もいた﹂
卒業式のあと、愛季は、む
美美
にに
︷向かってオレンジジュースを差し出してくれた。 そして乾杯するように、自分の紙コップの縁
むつつ
をむつ美のそれにこつんと合わせた。
私はあの子みたいになりたかった。 愛季のいなくなった世界で、むつ美は、強く強くそう思った。
うなず
﹁アキモトだからアキかあ。ふうん﹂
志津香は領くと、﹁やっぱ私は演劇部だなあ−﹂、とわざ、とむつ美に聞かせるように語尾を伸ばした。この子は、わざと廊下の真ん
中 に立 ち 止 ま っ た
たり
り、
、大
大き
きな
な声
声を
を出
出し
した
たり
り、
、そのことを周りが気にしていることを気にしていないふうを装うこ、とによって、大切
演劇って、小道具とかいろいろあるから、絵がうまい人って絶対必要なんだって﹂
ない、だったけれど、むつ美は一応あいまいな言葉を付け足した。
竜 『 I , 、 二
向こう側を自転車に乗って通り過ぎていく知らないクラスの子たちがいた。
志津香は、なんてことない様子でそう言った。むつ美は思わず、ペダルから顔をあげた。そこには制服姿の志津香がいて、その
﹁明日、ちょうど金曜日だし、仮入部しにいこうよ﹂
少し大きな自転車は、引きながらだと歩きにくい。膝の裏に当たりそうになるペダルのことがどうしても気になってしまう。
﹁私、あのポスターにトーン貼って、演劇部かわいくしてほしいな。アキに﹂
と書かれていたことを思い出し、むつ美は断った。
﹁後ろに乗っけてよう﹂志津香にそうせがまれたけれど、自転車のシールと一緒にもらった注意書きに二人乗りをしてはいけない
志津香は自転車通学ではなかったので、学校を出てからも、むつ美は自転車を引いて歩いた。
の隙間から見える額が、少し汗ばんでいる。
すきま
これもドラマの受け売りなんだけど、と一
一言う志津香は、むつ美の返事の内容にはあまり興味がないという表情をした。 細い前髪
と
b
放課後はこういうところにあったんだ、と、むつ美は思った。誰かが隣にいれば、学校の授業が終わったそのあとの時間は放課
1
3
な何かを守っているのだとむつ美は思った。
W
i
i
1
﹁アキは演劇に興味ない?﹂
司 司 D
E
後という呼び名に変わる。
む︵つ美と同じ方向ではあったけれど、中学校のすぐ近くだった。
志津香の家は、む
﹁よろしくね、明日﹂
志津香はそう言って手を振ると、家の中へ入っていった。二階建てのきれいな家だった。
廊下
下の
のポ
ポス
スタ
ター
ーに
に背
背を
を向
向け
けて
てか
から
らも
も、
、通
通学
学路
路をを歩歩
志津香は、廊
いい
てて
﹄いるあいだも、何度も﹁演劇部﹂と口にした。むつ美の中で何
かが動いてしまわぬよう、何度も何度も確認しているみたいだった。
むつ美は自転車にまたがる。スカートが広がり、視線が少し高くなる。すると、道の幅も︽3︾広がったような感覚になる。
立ちこぎをする。風で分かれた前髪はきっと変なふうになっているけれど、このあたりにはむつ美の知っている人は住んでいな
ので
で、
、全
全ノ
く気にならない。
いはずなの
むつ美は思った。
志津香は、中学校から家が近かった。つまり、同じ小学校から、同じように進学している人がたくさんいるはずだ。だけど今日
まで、志津香が別の誰かと話しているところをあまり見たことがない。
むつ美は、もっともっと早くペダルをこいだ。体が左右に揺れる。どうでもいいことばかりが巡るこんな頭、まるごと、どこか
へ投げてしまいたい。体育で二人組を作るとき、教室から音楽室へ移動するとき、遠足の班を決めるとき、プールの授業を休みた
いとき。あんなにも狭い場所にたくさんの人がいるのに、一体誰のそばにいていいかわからなかったとき、むつ美は、ひとりで浮
注2しゆうすけ
遊している自分をその場にいる全員にじっと見つめられているような気持ちだった。だけどもうこれからは、これまでずっと悩ん
でいたことに悩まなくていい。それはとても甘くて、爽快な発見だった。
肩にかけたカバンの中で、黄色い表紙の方眼ノートが揺れているのが分かる。むつ美は、修輔の喜ぶ顔を思い出す。
一緒に演劇部に入ったら、志津香はきっと喜んでくれる。私がもっとかわいいポスターを描けば、志津香だけじゃない、演劇部
たた
の人だって喜んでくれるかもしれない。そうして絵がうまくなれば、修輔だってもっともっと喜んでくれる。修学旅行のしおりの
表紙を描いたとき、愛季が手を叩いて﹁すごい﹂と一一一一口ってくれたときみたいに。
遠くの方に見える信号の色が、赤から青に変わった。むつ美はさらに、自転車のスピードを上げる。
︵朝井リョウ﹃スペードの3﹄による︶
1
4
注1五十嵐壮太.:⋮むつ美の小学校時代の同級生。クラスの中で人気があり、女子の中にも好意を寄せる人が多かった。
−
⑯
広々とした海岸
見知らぬ村の中
人里離れた山道
通い慣れた通学路
高層ビルの林立する都会
⑤④③②①
イ
回
ふるって
とばして
こぼして
となえて
たたいて
⑤④③②①
⑱
ぼんやりとした様子で
落ち着きを失った様子で
−
−
一
気持ちを高揚させた様子で
落ち着いて冷静な様子で
相手を圧倒する様子で
受
冗
ゴー
け
回り
小さなことを大げさに言うこと
部a.bの語句の本文中の意味として最も適当なものを、次の①∼⑤の中からそれぞれ一つずつ選びなさい。
−
一
一
一
一
b
知識をひけらかすように言うこと
聞いたことをそのまま言うこと
うわさを事実のように言うこと
意見を押しつけるように言うこと
⑤④③②①
1
5
注2修輔⋮⋮むつ美の弟。修輔の黄色い表紙の方眼ノートに、むつ美がイラストを描いてあげていた。
一
一
ア
問一同HⅡU・nMⅢuにあてはまる言葉として最も適当なものを、次の①∼⑤の中からそれぞれ一つずつ選びなさい。
問
問三︽l︾∼︽3︾に入る語の組み合わせとして最も適当なものを、次の①∼⑤の中から一つ選びなさい。
つ つ つ つ
きくきき
りらりり
とととと
3すっと
2ぐるっと
3ほっと
3かつと
の①茎ごつし﹂
2こそつと
2じろりと
2じつと
①1ぱっちりと2ちらりと3わっと
はふすく
⑳
④新しく通う中学校では、今までとは違った新しい生活が始まるのではないかと思い、期待のようなものを感じている。
③新しく通う中学校の様子が分からないまま、二週間以上も過ごすことになって、とまどいのようなものを感じている。
②新しく通う中学校でも、小学校の時と同じような学校生活を送れることを確信して、興奮のようなものを感じている。
①新しく通う中学校には知り合いがおらず、一人で行かざるをえなくなったことに、おびえのようなものを感じている。
むつ美の心情として最も適当なものを、次の①∼⑤の中から一つ選びなさい.回
問四1部A﹃むつ美に陸そのあいだに使える魔法はいくつもあるように感じられた﹂とあ‘ます海ここから読み取れる
1 1 1 1
⑤新しく通う中学校が始まるまでに、何としても生まれ変わっていなければと思い、あせりのようなものを感じている。
1
6
⑤④③②
問五l部旦作者の名前の横に書かれている一三年四組一という文字を見てむつ美に其その絵があま‘にも遠い距離に
置いてあるように感じられた﹂とありますが、このときのむつ美の心情の説明として最も適当なものを、次の①∼⑤の中か
ら一つ選びなさい。
①小学校の生活では持てなかった希望を中学での生活には持てると思いながらも、中学校の仲間から疎外されていると感
じ、苦悩している。
②今見ている絵は自分の描く絵のスタイルとはかけ離れており、中学校での勉強や活動は高度なものが要求されるのだと
思い、恐れている。
③志津香のように積極的に学校生活に関われない自分にふがいなさを感じ、消極的な性格を修正しなくてはいけないと思
い、あせっている。
④期待していた中学校での新たな生活は想像していたのとは異なる未知のことばかりで、将来の自分の姿をイメージでき
ず不安を感じている。
⑤中学校の生活になかなか慣れることができないことにいら立っていたが、絵を見ることでいらいらした気持ちが和らぐ
のを実感している。
問六1部C﹃志津香と目が合ったとミむつ美の口の中で愛季が差し出してくれたオレンジジュ︲スの甘い味が蘇った気
がした﹂とありますが、このときのむつ美の心情の説明として最も適当なものを、次の①∼⑤の中から一つ選びなさい.四
①自分のことをアキと呼んでくれた親友のことを思い出し、親友と離れ離れになってしまったことを悲しんでいる。
②小学校時代の友人の愛季のことを思い出し、愛季に憧れの気持ちがあったことをあらためて思い出している。
③アキというあだ名で呼ばれていた小学校時代を思い出し、中学校でもがんばらなければと決意を新たにしている。
④小学校時代に自分を支えてくれた愛季のことを思い出し、この場に愛季がいてくれればと切なく感じている。
⑤憧れていた愛季の強さを思い出し、このまま志津香に振り回されてはいけないと、奮い立つ気持ちになっている。
1
7
四
かも﹂とありますが、このようにむつ美が返事をした理由として最も適当なものを、次の①∼⑤の中か
問七I部D﹁ない参
ら−つ選びなさい。四
①志津香が思いがけないことを突然質問してきたことに対して、うとましさを感じてしまったから。
②美術部に入ることしか考えていなかったので、志津香にその思いをはっきりと伝えたかったから。
③演劇部に興味はなかったものの、きっぱり否定しては志津香に悪いかと気を遣ってしまったから。
④演劇にすごく興味をもっていることを志津香に見すかされたように感じて、照れくさかつたから。
⑤志津香の言葉をはっきりと否定してしまったら、志津香が急に怒りだすようで、こわかったから。
問八1部E﹁放課後はこういうところにあ書たんだ:っ美は思った﹂とあります海このときのむつ美の心情の説明
として最も適当なものを、次の①∼⑤の中から一つ選びなさい.四
①今まで独りぼっちで過ごしていた寂しさを思い出して、やり切れない気持ちになっている。
②何かの部活動をすることで、一緒に行動できる友人が生まれることにうれしくなっている。
③演劇部に入るように何度も説得してくる志津香の態度に接することに、うんざりしている。
④授業が終わったあとに自分たちの将来のことなどを真剣に話し合うことに、満足している。
⑤誰かと一緒にたわいもない話をしながら過ごす時間の楽しさに、新鮮な喜びを感じている。
1
8
問九本文の内容と文章蚕の特徴についての説明として最も適当なものを、次の①∼⑤の中から一つ選びなさい.四
①小学校のころは周囲になじむことができなかったむつ美が、クラスの中心的存在である志津香に出会ったことで、積極
的に中学校生活を送ろうと決意する様子が、優れた比職で生き生きと描かれている。
②小学校のころを懐かしむあまり、中学校では浮いた存在になっていたむつ美が、志津香に出会うことで周囲に溶け込ん
でいこうと決心する様子が、回想場面を巧妙に織り交ぜながら劇的に描かれている。
③周りにうまくなじむことができず、自信を持てずにいたむつ美の前に、志津香との出会いを通じて新しい世界が広がっ
たことで前向きな明るい気持ちになっていく様子が、巧みな情景描写に暗示されて描かれている。
④自分自身の容姿に対してコンプレックスを感じていたむつ美が、志津香との出会いを通じて、ありのままの自分でいる
ことに喜びを感じ始める様子が、倒置法を多く用いることで印象的に描かれている。
⑤美術部に入ることで自分の絵の才能を試したいと思っていたむつ美が、志津香に誘われて演劇部に入部することになっ
てしまったいきさつが、二人のたわいのない会話文を通じて客観的に描かれている。
1
9
注1注2ちごぐ注3ちくぶ
次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。
ころ
引き連れて
はく
い づ れ の 比 の 事 に か 、 山 僧 あ ま た と も な ひ て 、 児 な ど 且 ︿ し て 竹 生 島 へ 参 り た り け り 。 巡礼はてて、今は帰りなんとしける時、児
“A
黄﹄ふら
どもいふやう、﹁この島の僧たちは、水練を業、として面白き事にて侍るなる、いかがして見るべき﹂、といひければ、住僧の中へ使ひ
や
帰りけり。
注4こ注5ぎぬ注6注7けさ
みもの
しかたなく
いふやう、﹁かたじけなく小人達の御使を給ひて候ふ。折ふし若者ども皆たがひ候
衣をひざのところまでたくし上げて
たる水練の見物あるべき。目を驚かしたりけり。
注1山僧⋮⋮比叡山延暦寺の僧。
注2児・
なな
どど
をを
学学
ぶぶ
たた
めめ
﹄に寺院にあずけられた少年。
児・
.・
⋮⋮
.学
、問
学問
注3竹竹
生生
島島
⋮⋮
⋮⋮滋
滋賀
賀県
県の
の琵
琵琶湖に
﹄浮かぶ小島。観音堂や弁天堂などがある。
単位
位。
。一
一町
町は坐
約一○九メートル。
注4町町
⋮⋮
⋮⋮
長長
ささ
のの単
注5はは
りり
衣衣
⋮⋮
⋮⋮
つつや
やを
を出
出し
しび
ぴんⅢ
と張った布でつくった僧衣。
注6長絹
長・
絹・・・
⋮⋮
固固
くく
てて
光光沢
沢の
のあ
ある
る函
絹。
︵﹁古今著聞集﹂による︶
ひて、御所望むなしくて御帰り候ひぬる、生涯の遺恨候ふよし、老僧の中より申せと候ふなりといひてかへりにけり。これに過ぎ
目をすまして見ゐたる所に、 近 く あ ゆ み 寄 り て
D
七十あまりもやあるらんと見ゆる一人、腰をかきあげて海の面をさしあゆみてきたるあ胴リ。舟をとどめて、﹁ふしぎの事かな﹂と、
はぎ
舟に乗りて一一一一一町ばかhソ漕ぎ出でたりけるほどに、はり衣のあざやかなるに、長絹の五帖の袈裟のひたあたらしきかけたる老僧、
i
の事つかうまつる若者、只今皆たがひ候ひて、一人も候はず。返す返す口惜しき事なり﹂といひたりければ、力およばでおのおの
C
を些追hソて、﹁
﹁小人達の所望かく候ふ。いかが候ふくき﹂といひ遣りたりければ、住僧の返事に、﹁いとやすき事にて候ふを、さやう
B
注7五帖
筋筋
のの
布布
をを
雑縫い合わせてつくった袈裟。
五の
帖袈
の裟
袈.
裟.⋮
..
⋮五
.五
2
0
目
一
一
一
I部A﹁小人達の所望かく候ふ一と竺児たちがこのようなことを望んでいます一という意味です海どのようなこ
とを望んでいるのですか。次の①∼⑤の中から最も適当なものを一つ選びなさい.画
①水練が達者な竹生島の僧たちと一緒に泳いで帰りたいということ。
②水練が達者な竹生島の僧たちに泳ぎを教えてもらいたいということ。
③水練が達者な竹生島の僧たちの泳ぎぶりを見てみたいということ。
④水練が達者な竹生島の僧たちに自分たちの泳ぎを見てほしいということ。
⑤水練が達者な竹生島の僧たちに一度でも会ってみたいということ。
部B﹁いひ遣りたりければ﹂とありますが、だれがだれに﹁いひ造﹂ったのですか。次の①∼⑤の中から最も適当な
ものを一つ選びなさい。臣
①﹁山僧﹂が﹁児ども﹂
②﹁山僧﹂が﹁住僧﹂に
③﹁児ども﹂が﹁山僧﹂
④﹁児ども﹂が﹁住僧﹂
⑤﹁住僧﹂が﹁山僧﹂に
す返す口惜しき事なり﹂とありますが、なぜこのように言ったのですか。次の①∼⑤の中から最も適当なも
問三1部C﹁返﹁
す返返
のを一つ選びなさい。
⑤はるばる竹生島まで出かけて行ったのに、島に住む僧や若者に全く相手にされなかったから。
④はるばる竹生島まで出かけて行ったのに、目的を果たせないまま帰らざるを得なかったから。
③昔ならば簡単だったのに、今では若い僧が皆年老いてしまい、難しくなってしまったから。
②せっかく自慢ができると思っていたのに、若者たちが全員申し出を辞退してしまったから。
①せっかくの申し出があったのに、それをかなえることができる若者が留守にしていたから。
四
2
1
四
に
に
に
問
問
問四1部D﹁近くあゆみ育て﹂の主語として最も適当なもの菱次の①︲⑤の中から一つ選びなさい。⑳
①山僧②児ども③住僧④若者⑤老僧
問五1部E﹁いふやう﹂とあります表会話の部分は﹁かたじけなく一から始iこで終わっていますか.次の①i⑤
の中から最も適当なものを一つ選びなさい.回
①給ひて候ふ
②御帰り候ひぬる
③遺恨候ふよし
④老僧の中より申せ
⑤候ふなり
問六本文の内容に合うものを、次の①∼⑤の中から一つ選びなさい.国
①比叡山の山僧が竹生島の住僧と口論になったが、老僧が取りなしたことで和解することができた。
②比叡山の山僧が竹生島を訪れて、島の人々の泳ぎのすばらしさに触れ、舌を巻いて帰っていった。
③比叡山の山僧が竹生島の若者以上に達者な泳ぎを披露したことに、竹生島の人々は感嘆してしまった。
④竹生島の老僧が水面を歩くようにして泳いできたことに、比叡山の人々はひどく驚いてしまった。
⑤竹生島の老僧が船を追いかけてまで、比叡山の山僧に謝罪してきたことに人々は驚きあきれてしまった。
※解答用紙の 国以後はマークしないこと
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