2015 年 2 月 27 日 調査レポート 日本経済ウォッチ(2015 年 2 月号) 【目次】 1.今月のグラフ ·································································· p.1 ~求職を諦める長期失業者 2.景気概況······································································· p.2 ~景気は下げ止まっており、持ち直しの動きがみられる 3.今月のトピック:原油安と円安が企業業績に及ぼす影響 ~2015 年度も企業利益は史上最高益を更新する見込み ···················································································· p.3~12 (1)原油価格と為替レートの現状と展望 (2)原油安と円安の企業業績への影響 (3)企業業績の展望~2016 年度まで過去最高益の更新が続く 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 調査部●●主任研究員 小林 真一郎 調査部●●●●研究員 尾畠 未輝● あああああああああ調査部〒105-8501 東京都港区虎ノ門 5-11-2 TEL:03-6733-1070 ご利用に際しての留意事項を最後に記載していますので、ご参照ください。 (お問い合わせ) 調査部 TEL:03-6733-1070 1.今月のグラフ ~求職を諦める長期失業者 総務省「労働力調査」によると、2014 年の完全失業者は 236 万人と、1997 年以来の低水準に まで減少した。リーマン・ショックの影響によって 2009 年には 336 万人(年平均、以下同じ) にまで急増したが、その後は減少が続いている。ここで、完全失業者をその失業期間の長さ別に みてみる(図表 1)。失業期間が 3 ヶ月未満および 3 ヶ月~1 年未満の失業者は、2009 年にピー クを付けた後、減少傾向が続き、2014 年は直近の最低である 2007 年の水準を下回っている。一 方、一般的に「長期失業者」と定義される失業期間 1 年以上の完全失業者数は、2010 年に 121 万人でピークとなった。その後、減少が続いているのは失業期間が短い失業者と同じだが、2014 年は 89 万人と、リーマン・ショックの影響を受ける以前の水準までは減っていない。 長期失業には個人にとっても経済全体にとっても様々な悪影響があると考えられるが、さらに、 失業期間が長くなるにつれ、積極的な求職活動が行われなくなるという傾向がある(図表 2)。 失業期間別に失業者の求職状況(調査直前の 1 か月間に仕事を探したり、事業の開始の準備をし たかどうか)をみると、2014 年の失業者のうち求職活動をしなかった人は 63 万人で、失業者の うち 4 人に 1 人が 1 ヶ月間求職活動を行っていない。各階級において、求職活動をしなかった人 が失業者全体に占める割合は、失業期間 3 ヶ月未満の人では 9.1%にとどまる一方、同 1 年~2 年未満では 40.6%と水準は高い。さらに、同 2 年以上では 57.4%と、およそ 2 人に 1 人が求職 活動を行わなくなってしまっている。 なお、この割合は 2002 年以降、均してみるとほぼ横ばいで推移している。つまり、景気動向 にかかわらず、長期失業者は積極的な就職活動をなかなか行わないことが分かる。リーマン・シ ョックによって急増した失業者は、その後、景気が比較的早い段階で持ち直したことによって順 調に減少してきた。しかし、すぐに職に就けなかったために失業期間が長くなり、職探しを諦め てしまっている人も多い。既に雇用環境はかなり改善しているが、こうした失業者が存在してい ることで、失業者の減少幅は限定される可能性がある。 図表1: 失業期間別にみた完全失業者数 130 (尾畠 未輝) 図表2: 完全失業者の求職活動の状況 (年平均、万人) 70 120 60 110 50 100 40 90 30 80 20 (万人) 求職活動をこの1か月間 のうちにした 〃 しなかった(n) 各階級に占めるnの割合 70 3か月未満 3か月~1年 1年以上 10 0 60 2002 04 06 08 10 12 (年) 14 (注)2011年は東日本大震災の影響により欠損値 (出所)総務省「労働力調査(詳細集計)」 ご利用に際しての留意事項を最後に記載していますので、ご参照ください。 3か月 未満 3~6 か月 6か月 ~1年 2年 以上 (失業期間) (出所)総務省「労働力調査(詳細集計)」 (お問い合わせ) 調査部 TEL:03-6733-1070 1/12 1~2 年 2.景気概況~景気は下げ止まっており、持ち直しの動きがみられる 景気はすでに下げ止まっており、持ち直しの動きが広がっている。 1 月の鉱工業生産指数は、一般機械類、輸送用機械などの増加を受けて、前月比+4.0%と堅 調に増加した。8 月をボトムにして持ち直しの動きが続いており、生産の回復が鮮明となってき た。製造業生産予測指数では 2 月は同+0.2%と横ばいにとどまり、3 月には同-3.2%と減少す る計画であり、足元までの勢いが鈍化する可能性がある。しかし、予測指数通りであれば 1~3 月期は前期比+3.4%と 2 四半期連続での増加が期待され、均してみれば回復基調が強まりつつ あるといえる。 輸出も増加基調を維持しており、1 月は実質輸出(前月比+5.0%)、輸出数量指数(同+5.7%) ともに前月比で大幅なプラスとなった。米国を中心に海外経済が持ち直していることや、円安の 進行により輸出環境の好転が続いていることが、その背景にある。もっとも、中国の春節を控え ての輸出の前倒しの動きなど一時的な押し上げ効果の可能性もあり、2 月以降は伸び率も落ち着 いてくるであろう。 また、設備投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は、12 月には前月比+ 8.3%と順調に増加した。10~12 月期では前期比+0.4%と 2 四半期連続で増加しており、1~3 月期の見通しも同+8.3%と増加が続くと見込まれている。 賃金は上昇基調が定着化しており、12 月の一人当たりの現金給与総額(確報値)は前年比+ 1.3%と 10 カ月連続で増加した。所定内給与、所定外給与の増加に加え、冬のボーナスを含む特 別給与が前年比+2.1%と順調に増加し、全体を押し上げた。また、雇用情勢は良好な状態を維 持している。1 月の完全失業率は 3.6%に上昇したものの均してみれば低水準にあり、同月の有 効求人倍率も 1.14 倍と高い水準にある。 こうした雇用・所得情勢の持ち直しを受けて、個人消費も緩やかに持ち直しつつある。1 月の 家計調査の 2 人以上世帯の実質消費支出が前月比-0.3%と 5 カ月ぶりに減少に転じたが、趨勢 的には緩やかな持ち直しが続いているといえる。 個人消費にとってプラス材料となるのが物価の安定である。1 月の消費者物価指数(生鮮食品 を除く総合)の前年比の伸び率は、エネルギー価格の下落などを背景に前年比+2.2%まで縮小 してきた。増税の影響を除くと同+0.2%まで低下している。足元で原油価格が下げ止まり、小 幅上昇に転じているが、水準は大きく切り下がったままであり、エネルギー価格の下落はさらに 進むと予想される。このため、来年度初めにかけて前年比の伸び率はさらに縮小する見込みであ る。日本銀行のインフレターゲット達成の可能性は一段と後退するであろうが、個人消費にとっ ては明るい材料である。 以上のように、足元の景気は徐々に明るい材料が増えてきており、今後は持ち直しの足取りが しっかりしてくるであろう。 (小林 ご利用に際しての留意事項を最後に記載していますので、ご参照ください。 (お問い合わせ) 調査部 TEL:03-6733-1070 2/12 真一郎) 3 . 今 月 の ト ピ ッ ク :原 油 安 と 円 安 が 企 業 業 績 に 及 ぼ す 影 響 ~ 2015 年 度 も 企 業 利 益 は 史 上 最 高 益 を 更 新 す る 見 込 み 原 油 価 格 、円 の 対 ド ル レ ー ト と も 一 時 の 低 水 準 か ら 反 発 し た も の の 、そ れ ま で の 水 準 と 比 較 す る と 依 然 と し て か な り の 安 値 圏 に あ る 。原 油 価 格 、為 替 レ ー ト と も 企 業 業 績 に 対 し て メ リ ッ ト と デ メ リ ッ ト の 両 面 が あ る が 、差 し 引 き す る と 、企 業 部 門 全 体 に 対 し て 、ど う い う 影 響 が あ る と 考 え ら れ る の だ ろ う か 。今 月 は 、今 後 の 原 油 価 格 、為 替 レ ー ト の 予 測 も 踏 ま え た うえで、企業業績の先行きについて整理した。 (1)原油価格と為替レートの現状と展望 原 油 価 格 は 昨 年 秋 以 降 の 急 落 に 歯 止 め が か か り 、や や 水 準 を 切 り 上 げ て 推 移 し て い る 。価 格 の 下 落 を 受 け て 供 給 が 絞 り 込 ま れ る と の 見 方 が そ の 背 景 に あ り 、今 後 は 実 際 に 生 産 量 が 減 少 す る こ と が 確 認 さ れ る に つ れ て 、 徐 々 に 水 準 を 切 り 上 げ て 行 く と 考 え ら れ る ( 図 表 1 )。 た だ し 、需 給 が 一 気 に ひ っ 迫 す る ほ ど 供 給 が 絞 り 込 ま れ る こ と も 難 し く 、上 昇 の ペ ー ス は 緩 やかとなるであろう。 図表1.原油価格の予測 (ドル/バレル) 130 120 予測 110 100 90 80 70 WTI原油 60 ブレント原油 ドバイ原油 50 40 08 09 10 11 12 (注)期中平均値 (出所)NYMEX、ICE、日本経済新聞 13 14 15 16 17 (年、四半期) 為 替 レ ー ト に つ い て は 、E C B の 量 的 緩 和 の 導 入 で ユ ー ロ 安 が 進 ん だ こ と も あ り 、円 安 の 動 き が 一 服 し て い る 。 円 は 昨 年 10 月 の 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 の 実 施 に 後 、 一 時 1 ド ル = 120 円 台 ま で 下 落 し た が 、今 年 に 入 っ て か ら は 120 円 を 下 回 る 水 準 で も み 合 っ て い る 。今 後 は 米 国 の 金 融 引 き 締 め の 時 期 を に ら ん で 、円 安 ・ ド ル 高 地 合 い が 続 き そ う で あ る 。も っ と も 、そ う し た 両 国 の 金 融 政 策 の 方 向 の 違 い に つ い て は 、お お む ね 金 融 市 場 に は 織 り 込 ま れ て い る と 考 え ら れ 、円 の 下 落 余 地 は そ れ ほ ど 大 き く な い で あ ろ う 。2015 年 中 は 円 安 気 味 の 動 き と な っ て も 、 2016 年 に 入 る と 1 ド ル = 120 円 程 度 で の 横 ば い 推 移 と な る と 予 想 さ れ る ( 図 表 2 )。 ご利用に際しての留意事項を最後に記載していますので、ご参照ください。 (お問い合わせ) 調査部 TEL:03-6733-1070 3/12 図 表 2. 円 /ド ル レ ー ト の 予 測 (円/ドル) 125 予測 120 115 110 105 100 95 90 85 80 75 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (年、四半期) (出所)日本銀行ホームページ こ れ ら 原 油 、為 替 レ ー ト の 予 測 か ら 、円 建 て 原 油 価 格 の 予 測 値 を 計 算 さ せ る と 、2015 年 中 は 前 年 比 で マ イ ナ ス 推 移 が 続 き 、特 に 足 元 の 1~ 3 月 期 に マ イ ナ ス 幅 が 最 大 に な る( 図 表 3 )。 2016 年 に は 、 円 建 て 原 油 価 格 の 下 落 は 一 巡 し 、 今 度 は プ ラ ス に 転 じ る 見 込 み で あ る 。 こ の よ う に 、 原 油 安 、 円 安 は 、 2015 年 と 2016 年 で は 全 く 逆 の 効 果 を も た ら せ る と 予 想 さ れ る。 図表3.円建て原油価格の予測(ドバイ) (前年比、%) 30 予測 20 10 0 -10 -20 -30 -40 -50 12 13 (注)期中平均値 (出所)日本経済新聞 ご利用に際しての留意事項を最後に記載していますので、ご参照ください。 14 15 16 17 (年、四半期) (お問い合わせ) 調査部 TEL:03-6733-1070 4/12 (2)原油安と円安の企業業績への影響 まず、原油価格の下落が企業の業績に及ぼす影響について考えて行こう。 円 建 て の 原 油 価 格 の 下 落 が 企 業 業 績 に 及 ぼ す 影 響 の う ち 、マ イ ナ ス の 影 響 を 受 け る 業 種 は 、 石 油 、商 社 な ど で あ る 。石 油 元 売 り 会 社 で は 過 去 の 高 い 値 段 で 購 入 し た 在 庫 に 評 価 損 が 発 生 し 、海 外 資 源 に 対 す る 権 益 を 保 有 す る 商 社 で は 減 損 損 失 が 発 生 し 業 績 が 悪 化 し て い る 。ま た 、 資源開発関連への資材や機械を提供する企業にとっても、利益の押し下げ要因となる。 図 表 4 は 、石 炭 ・ 原 油 ・ 天 然 ガ ス 、石 油 製 品 の 中 間 投 入 額 が 国 内 生 産 額 に 対 す る 比 率 が 高 い 業 種 を み た も の で あ る 。こ れ に よ る と 、原 油 価 格 下 落 に よ っ て 業 績 改 善 効 果 が 見 込 ま れ る のが、原材料や燃料などとして多くの原油、ガスを使用している業種である。電力業では、 発 電 の た め の コ ス ト を 抑 制 で き る た め 、収 益 の 押 し 上 げ 要 因 と な る 。ま た 、運 輸 業 で は ガ ソ リ ン 代 、電 気 料 金 な ど 燃 料 費 の 削 減 効 果 が 大 き い 。さ ら に 、化 学 工 業 で は 原 材 料 費 の 削 減 と いうメリットを享受できる。 加 え て 、電 力 料 金 、燃 料 費 な ど の 下 落 を 通 じ て 、多 く の 業 種 で コ ス ト が 削 減 さ れ る 。物 価 下 落 に よ っ て 家 計 の 購 買 力 も 増 す た め 、そ う し た お 金 が 消 費 に 回 れ ば 、小 売 業 や サ ー ビ ス 業 と い っ た 企 業 に も 間 接 的 な メ リ ッ ト が 発 生 す る だ ろ う 。特 に 自 動 車 、電 機 機 械 と い っ た 輸 出 関 連 企 業 で は 、売 上 原 価 が 減 少 す る 一 方 で 、最 近 の 円 安 に よ っ て 売 上 高 が 膨 ら む 効 果 を 得 る こともできるため、業績の改善幅が大きくなっている。 図表4.国内生産額に対する石炭・原油・天然ガス、石油製品の中間投入合計額の比率 (%) 40 35 30 25 20 15 10 5 0 運 輸 ・ 郵 便 化 学 製 品 窯 業 ・ 土 石 製 品 鉱 業 農 林 水 産 業 パ ル プ ・ 紙 ・ 木 製 品 繊 維 製 品 対 個 人 サ 鉄 鋼 建 設 ー 電 力 ・ ガ ス ・ 熱 供 給 飲 食 料 品 ビ ス (注)石炭・原油・天然ガスと石油製品を生産する鉱業、石油・石炭製品業を除く (出所)(出所)総務省「平成23年(2011年)産業連関表(速報)」より作成 次に、円安が企業の業績に及ぼす影響の効果について考えてみよう。 日 本 銀 行 が 作 成・発 表 し て い る 実 質 実 効 為 替 レ ー ト は 、2010 年 = 100 の 基 準 で 2014 年 12 月 に 69.20 ま で 下 落 し た ( 1 月 に は 70.76 に 反 発 )。 こ の 水 準 は 、 実 に 1973 年 1 月 以 来 の 低 水 ご利用に際しての留意事項を最後に記載していますので、ご参照ください。 (お問い合わせ) 調査部 TEL:03-6733-1070 5/12 準 で あ る が 、1973 年 1 月 と い え ば 変 動 相 場 制 に 完 全 に 移 行 す る 直 前 の こ と で あ り 、当 時 の 円 /ド ル レ ー ト は 1 ド ル = 300 円 程 度 で あ っ た ( 図 表 5 )。 こ の よ う に 、 現 在 の 円 レ ー ト は 、 実 質値でみれば、歴史的な安値圏にある。 図表5.実効為替レートの推移 (2010年=100) 160 名目実効為替レート 140 実質実効為替レート 円高↑ 2014年12月の水準 120 100 80 60 40 20 73 75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15 (年、月) (出所)日本銀行ホームページ こ れ ほ ど ま で 円 安 が 進 む と 、期 待 さ れ る の が 、円 安 に よ る 輸 出 数 量 の 増 加 効 果 で あ る 。し か し 、2012 年 秋 以 降 、円 安 が 進 む 中 に あ っ て も 輸 出 企 業 は 輸 出 価 格 を 値 引 き し て 数 量 の 増 加 を ね ら う こ と は せ ず 、契 約 通 貨 ベ ー ス で の 輸 出 価 格 に 大 き な 変 化 は み ら れ な か っ た 。結 果 的 に 円 建 て 輸 出 価 格 は 円 安 と ほ ぼ 連 動 し て 上 昇 し 、輸 出 企 業 の 売 上 高 が 増 加 し 、業 績 は 急 改 善 している。 し か し 、最 近 で は 契 約 通 貨 建 て の 輸 出 価 格 も 徐 々 に 低 下 し て い る( 図 表 6 )。昨 年 秋 以 降 、 輸 出 数 量 の 回 復 が 鮮 明 と な っ て い る が 、こ の 背 景 に は 契 約 通 貨 建 て の 輸 出 価 格 の 下 落 が 関 係 しているのだろうか。 そ こ で 、契 約 通 貨 建 て の 輸 出 価 格 の 業 種 別 の 動 き を 、円 安 が 進 み 始 め た 2012 年 11 月 の 水 準 を 100 と し て み て み る と 、金 属 ・ 同 製 品 、化 学 品 な ど の 製 品 価 格 が 急 落 し 、全 体 を 押 し 下 げ て い る こ と が わ か る 。こ れ ら の 製 品 は 、原 材 料 価 格 や 供 給 過 剰 に よ っ て 国 際 市 況 が 下 落 し て い る 製 品 で あ り 、価 格 を 引 き 下 げ て 輸 出 せ ざ る を 得 な い 情 勢 に あ る 製 品 で あ る 。一 方 、従 来 か ら 輸 出 が 底 堅 い 一 般 機 械 や 自 動 車 で は 、契 約 通 貨 建 て 輸 出 価 格 に 大 き な 変 化 は み ら れ な い。 こ の よ う に 、造 船 業 な ど 一 部 で は 円 安 効 果 に よ っ て 価 格 競 争 力 を 強 め て い る 製 品 で 輸 出 が 増 え て い る 可 能 性 は あ る も の の 、輸 出 企 業 が 値 下 げ に よ っ て 価 格 競 争 力 を 強 め よ う と す る 動 きは依然小さいと考えられる。 ご利用に際しての留意事項を最後に記載していますので、ご参照ください。 (お問い合わせ) 調査部 TEL:03-6733-1070 6/12 図表6.輸出物価指数と為替レートの推移 (2010年=100、円/ドル) 130 輸出物価(契約通貨ベース) 120 輸出物価(円ベース) 円/ドル 110 100 90 80 70 11 10 12 13 14 (出所)日本銀行ホームページ 15 (年、月次) 図表7.業種別輸出物価指数(契約通貨建て)の推移 (2012年11月=100) 105 100 95 90 85 総平均 繊維品 化学製品 金属・同製品 一般機械類 電気・電子機器 輸送用機器 その他産品・製品 80 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 13 14 15 (年、月) (出所)日本銀行ホームページ こ こ ま で み て き た よ う に 、製 造 業 に と っ て は 最 近 の 原 油 安 に よ っ て 投 入 価 格 が 下 落 す る と 同 時 に 、円 安 に よ っ て 産 出 価 格 が 上 昇 す る こ と に な る が 、こ れ は 交 易 条 件 の 改 善 を 意 味 し て いる。 製 造 業 の 交 易 条 件( 産 出 物 価 指 数 ÷投 入 物 価 指 数 )は 、2012 年 の 後 半 以 降 、円 安 と 原 油 ・ 資 源 価 格 上 昇 に よ る 影 響 で 悪 化 が 続 い て い た が 、昨 年 の 秋 以 降 、急 速 に 改 善 し て い る( 図 表 8 )。 図 表 1 、 2 の 原 油 価 格 、 円 ド ル レ ー ト の 予 想 値 を 前 提 と す れ ば 、 交 易 条 件 ( た だ し 、 輸 出 物 価 指 数 ÷輸 入 物 価 指 数 )は 2015 年 に 入 っ て さ ら に 急 改 善 す る と 予 想 さ れ る( 図 表 9 )。 そ の 後 は 、原 油 価 格 の 持 ち 直 し 、円 安 の 影 響 か ら 悪 化 に 転 じ る が 、高 い 水 準 は 維 持 す る と 予 想 さ れ 、限 界 利 益 率 の 改 善 を 通 じ て 、2015 年 度 の 企 業 利 益 の 押 し 上 げ に 寄 与 す る 見 込 み で あ ご利用に際しての留意事項を最後に記載していますので、ご参照ください。 (お問い合わせ) 調査部 TEL:03-6733-1070 7/12 る。 図表8.製造業の交易条件は足元で急改善 (2005年=100) 93.0 92.5 92.0 91.5 91.0 90.5 90.0 12 13 14 (年、月) (注)交易条件=産出物価指数÷投入物価指数×100 (出所)日本銀行「製造業部門別投入・産出物価指数」 図表9.製造業の交易条件の予測 (2010年=100) 98 予測 96 94 92 90 88 86 84 12 13 14 (注)交易条件=輸出物価指数÷輸入物価指数×100 (出所)日本銀行「輸出入物価」 15 16 (年、四半期) 17 た だ し 、原 油 安 の 影 響 は 、石 油 業 、商 社 な ど の 一 部 の 業 種 を 除 け ば 業 績 に プ ラ ス に 効 く が 、 円 安 は 必 ず し も 全 て の 製 造 業 に と っ て プ ラ ス と い う わ け で は な い 。そ こ で 、製 造 業 の 業 種 別 の 交 易 条 件 を 、2012 年 11 月 を 100 と し て 、2014 年 12 月 の 水 準 を み た も の が 図 表 10 で あ る 。 ま ず 、も っ と も 基 準 時 と 比 べ て 交 易 条 件 が 改 善 し て い る の が 輸 送 機 械 で あ る 。ま た 、精 密 機 械 、鉄 鋼 、一 般 機 械 と い っ た 業 種 で も 改 善 し て い る 。こ れ に 対 し 、非 鉄 金 属 、食 料 品 、パ ル プ・紙・木製品では悪化した状態にある。両者違いは何が原因だろうか。 そ こ で 、 輸 送 機 械 と 食 料 品 で 、 産 出 価 格 、 投 入 価 格 の そ れ ぞ れ の 動 き を 、 2012 年 11 月 を ご利用に際しての留意事項を最後に記載していますので、ご参照ください。 (お問い合わせ) 調査部 TEL:03-6733-1070 8/12 100 と し て 比 較 し て み た 。 図 表 10. 製 造 業 の 業 種 別 の 交 易 条 件 の 水 準 ( 2014 年 12 月 時 点 ) (2012年11月=100) 110 105 100 95 90 85 パ 化 石 窯 鉄 非 金 一 ル 学 油 業 鋼 鉄 属 般 金 製 機 プ 製 ・ ・ 属 品 械 ・ 品 石 土 炭 石 紙 製 製 ・ 品 品 木 製 品 (出所)日本銀行「製造業部門別投入・産出物価指数」 製 造 業 総 合 食 料 品 繊 維 製 品 電 気 機 械 電 子 部 品 情 報 ・ 通 信 機 器 輸 送 機 械 精 密 機 械 そ の 他 製 造 工 業 製 品 ま ず 輸 送 機 械 で は 、 投 入 物 価 が 緩 や か な 上 昇 に と ど ま っ て い る ( 図 表 11)。 こ れ は 、 生 産 のために投入される中間財が主として国内で調達されるため円安の影響を受けづらいこと に 加 え 、生 産 に 使 用 す る 鉄 鋼 製 品 な ど も 原 材 料 の 価 格 下 落 に よ っ て 価 格 が 安 定 し て い る こ と が 背 景 に あ る 。こ れ に 対 し 、国 内 向 け 出 荷 分 に つ い て は 価 格 に 変 動 が な い も の の 、輸 出 向 け が 円 安 効 果 に よ っ て 押 し 上 げ ら れ て い る た め 、産 出 物 価 は 順 調 に 上 昇 し て い る 。特 に 、円 安 が 加 速 し た 昨 年 11 月 以 降 は 上 昇 ペ ー ス が 増 し て い る 。 こ う し た 動 き の 結 果 が 、 交 易 条 件 の 改善につながっている。 図 表 11. 輸 送 機 械 の 産 出 ・ 投 入 物 価 の 推 移 (2005年=100) 108 107 産出物価 106 投入物価 105 104 103 102 101 100 99 11 12 1 12 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 13 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 14 (注)交易条件=産出物価指数÷投入物価指数×100 (出所)日本銀行「製造業部門別投入・産出物価指数」 ご利用に際しての留意事項を最後に記載していますので、ご参照ください。 2 (年、月) (お問い合わせ) 調査部 TEL:03-6733-1070 9/12 一 方 、食 料 品 で は 、円 安 に よ っ て 海 外 か ら 調 達 す る 原 材 料 価 格 が 円 安 に よ っ て 高 騰 し て お り 、 投 入 物 価 は 振 幅 し な が ら も 着 実 に 上 昇 し て い る ( 図 表 12)。 中 で も 、 円 安 が 加 速 し た 昨 年 11 月 以 降 の 上 昇 幅 が 大 き い 。 こ う し た コ ス ト の 増 加 分 を 販 売 価 格 に 転 嫁 で き て お ら ず 、 産 出 物 価 は 、一 進 一 退 を 繰 り 返 し な が ら 横 ば い 圏 で 推 移 し て い る 。こ の 結 果 、交 易 条 件 は 悪 化する傾向にあり、利益を抑制する要因となっている。 こ の よ う に 、両 者 の 間 に は 投 入 、産 出 の 両 面 で 大 き な 違 い が あ り 、製 造 業 の 中 で 業 績 格 差 を 生む原因となっている。 な お 、非 製 造 業 に つ い て は 、製 造 業 の 交 易 条 件 の 統 計 は な い が 、輸 出 企 業 の よ う な 円 安 メ リ ッ ト を 享 受 で き な い た め 、円 安 に よ る コ ス ト 増 加 分 を 販 売 価 格 に 転 嫁 で き な け れ ば 、業 績 の マイナス要因となることは明らかである。 図 表 12. 食 料 品 の 産 出 ・ 投 入 物 価 の 推 移 (2005年=100) 106 105 104 103 投入物価 102 産出物価 101 100 99 11 12 1 12 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 13 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 14 (注)交易条件=産出物価指数÷投入物価指数×100 (出所)日本銀行「製造業部門別投入・産出物価指数」 ご利用に際しての留意事項を最後に記載していますので、ご参照ください。 2 (年、月) (お問い合わせ) 調査部 TEL:03-6733-1070 10/12 ( 3 ) 企 業 業 績 の 展 望 ~ 2016 年 度 ま で 過 去 最 高 益 の 更 新 が 続 く 2014 年 度 の 実 質 G D P 成 長 率 は 、消 費 税 率 引 き 上 げ の 影 響 に よ り 、マ イ ナ ス 成 長 に 陥 る こ と は 確 実 で あ る 。そ れ に も か か わ ら ず 、企 業 業 績 は 改 善 が 続 き 、経 常 利 益 は 史 上 最 高 を 更 新 す る 可 能 性 が 高 い( 図 表 13)。ま た 、2015 年 度 も 、景 気 が 持 ち 直 す こ と も 加 わ っ て 増 益 が 続 くと見込まれる。 2014~ 2015 年 度 中 は 、交 易 条 件 の 改 善 が 製 造 業 を 中 心 に 利 益 の 押 し 上 げ 要 因 と な る と 予 想 さ れ る 。輸 出 企 業 が 円 安 の メ リ ッ ト を 享 受 す る と 同 時 に 、原 油 安 が 輸 入 物 価 を 押 し 下 げ 、企 業 部 門 全 体 に 対 す る 円 安 の デ メ リ ッ ト を 打 ち 消 す た め で あ る ( 図 表 14)。 売 上 高 経 常 利 益 率 の 推 移 を み る と 、こ れ ま で の リ ス ト ラ 効 果 も あ っ て 順 調 に 上 昇 し て き て い る が 、交 易 条 件 の 改 善 が 加 わ っ て 、 2015 年 度 に は さ ら に 高 ま る と 見 込 ま れ る ( 図 表 15)。 図 表 13. 経 常 利 益 の 予 測 ( 全 産 業 ) (兆円) 80 予測 70 60 50 40 30 20 10 0 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年度) (出所)財務省「法人企業統計」 図 表 14. 原 油 安 ・ 円 安 が 景 気 に 及 ぼ す 影 響 ( 概 念 図 ) 円安 原油安 ×コスト増 ○コスト減 ○売上増 ○コスト減 製造業 非製造業 業績改善 ○賃金増 ○物価安 ご利用に際しての留意事項を最後に記載していますので、ご参照ください。 ×物価高 家計 (お問い合わせ) 調査部 TEL:03-6733-1070 11/12 図 表 15. 売 上 高 経 常 利 益 率 の 予 測 ( 全 産 業 ) (%) 5.5 予測 5.0 4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年度) (出所)財務省「法人企業統計」 さ ら に 、家 計 に お い て も 輸 入 物 価 の 下 落 が 実 質 賃 金 の 押 し 上 げ 要 因 と な る う え 、企 業 業 績 の 改 善 を 背 景 と し て 賃 金 の 上 昇 が 見 込 ま れ 、個 人 消 費 の 回 復 に つ な が る と 期 待 さ れ る 。こ れ は国内需要の拡大を通じて、企業業績にとってもプラス要因となってくる。 も っ と も 、こ う し た 円 安 と 輸 入 物 価 の 下 落( 交 易 条 件 の 改 善 )が 同 時 に 進 む こ と は 、一 時 的 な 現 象 で あ る 。2016 年 度 に は 交 易 条 件 の 改 善 効 果 が 一 巡 し 、逆 に 企 業 業 績 に は マ イ ナ ス の 要 因 と な っ て く る と 考 え ら れ る 。さ ら に 、人 件 費 な ど コ ス ト が 増 加 す る こ と な ど に よ り 、売 上 高 経 常 利 益 率 の 上 昇 に も 歯 止 め が か か る で あ ろ う 。し か し 、景 気 の 持 ち 直 し が 続 く こ と か ら 売 上 高 の 増 加 が 利 益 の 押 し 上 げ 要 因 と な る こ と や 、年 度 後 半 に は 消 費 税 率 引 き 上 げ 前 の 駆 け 込み需要が加わることによって、経常利益は増益基調を維持すると見込まれる。 (小林 真一郎) - ご利用に際して - 本資料は、信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。 また、本資料は、執筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社の統一的な見解を示すものではありません。 本資料に基づくお客様の決定、行為、及びその結果について、当社は一切の責任を負いません。ご利用にあたっては、お客様ご自身でご判断くだ さいますようお願い申し上げます。 本資料は、著作物であり、著作権法に基づき保護されています。著作権法の定めに従い、引用する際は、必ず出所:三菱UFJリサーチ&コンサル ティングと明記してください。 本資料の全文または一部を転載・複製する際は著作権者の許諾が必要ですので、当社までご連絡下さい。 ご利用に際しての留意事項を最後に記載していますので、ご参照ください。 (お問い合わせ) 調査部 TEL:03-6733-1070 12/12
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