「視点を変えて」 発注者 新庄河川事務所 施行者 株式会社 新東京ジオ・システム 工事名 志津地すべり中沼沢川第9号集水井ほか工事 発表者 ○現場代理人 武田 建悦 主任技術者 奥山 昭男 1.はじめに 本工事は、地すべり地における地下水排除を目的として、集水井3基、各集水井内からの集排 水ボーリングを施工する工事です。本文では、当工事において安全教育の一貫として実施した、 「危険体感訓練」と「労働衛生コンサルタントの活用」について、報告いたします。 2.安全教育とパトロール 工事を進めるにあたり「安全第一」が大原則であり、その理念を遂行するために、元請け下請 け問わず、一丸となって無事故無災害を目指しています。 安全担当者は作業員に、「口が酸っぱくなるほど」安全について指導し、一方、作業員からし てみれば「耳にタコができる」くらいに同じことを聞かされる。といったぐあいに、立場が違え ば受け取り方も変わってきます。 事故や災害についても同様に、起きてないのに被災した時の事を考えること。被災した状態を 仮に体験してみて、逆に安全に対しての重要性を考えること。前者は、他人ごとやマンネリ化が おきやすく、意識内に浸透しづらい場合があります。そこで、後者の被災状況を仮体験する「危 険体感」訓練が大いに役に立つものと思われます。 また、店社パトロールでも、見慣れた作業員や工種・工法が対象となる場合が多く、厳しい指 摘の中にも見逃がしが発生する可能性があります。そこで、毎月「労働衛生コンサルタント」を 招いて、現場のパトロールを実施してもらいました。 3.「危険体感」訓練 「百聞は一見に如かず」何回聞かされるより見た方が実感できる。それ以上に事故が起きた時 の状態を一回経験した方が、なおさら強く安全を意識することができると思います。 「危険体感」は、文字通り危険を体で感じ、肌で感じる教育訓練です。 当現場で、これまで実施した「危険体感」訓練の例として、 ① 安全帯ぶら下がり体感 ② 玉掛けワイヤー切断危険体感 があり、その概要は、次の通りです。 ① 安全帯ぶら下がり体感 <目的> 安全帯のをフックは、なぜ高い位置に掛ける 写真-1 安全帯ぶら下がり体感 必要があるかを認識させます。 <実施方法> 作業員に安全帯を着用させ、クレーンで ゆっくり吊りあげます。 <効果> 体が浮くか浮かないかの状態までゆっくり 吊りあげただけでも、腹部に相当の負荷がかかり、痛 みを生じます。もしも作業中に転落した場合、フック の掛ける位置が低いと、落下距離が長く、いかに大き な衝撃が腹部や背骨にダメージを与えるかを実感することができます。 ② 玉掛けワイヤー切断危険体感 写真-2 玉掛けワイヤー切断危険体感 <目的> ワイヤーが切断する時の衝撃と、切断時のワ イヤー状況を認識させることにあります。 <実施方法> 敷いた鉄板の上にバックホーが載り、鉄 板の吊り穴にシャックルでワイヤーを固定します。も う片端をバックホーで徐々に引き上げます。 <効果> ワイヤーは、一瞬にして大きな音とともにス 切断状況 トランドがバラバラに切断されます。 切断時の大きな衝撃とワイヤーの跳ね返りの状況 を体感するとともに、ワイヤーの切断状況、切断しやすい部分を確認することが でき、日常点検の重要性と重点的に点検すべき箇所が把握できます。 4.「労働安全のプロ」による現場パトロール 「労働衛生コンサルタント」は、災害事例に対する見識も高く、土木工事の現場のみならず、様々 な職種業種の現場や工場等をパトロールされています。そこで、当現場に於いても現場状態や資機材・ 作業の状態等を詳細にわたって、チェックしていただきました。 安全に関するプロフェッショナルの目、第三者の目で確認してもうことにより、私たちが常日頃う っかり見逃したり、気にも止めなかった、危険箇所を洗い出してもらいました。 5.おわりに 安全を担当するものにとって、工事に携わる一人一人の安全に対する意識をいかに向上させられる かは、大きな課題でもあります。たまには安全教育やパトロールを、いつもと違う視点を変えて実施 することは、安全意識をより長く強く持続させる一つの手段であると思います。今後も現場において 視点を変えた、安全教育を取り入れていきたいと思います。
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