最 優 秀 賞 未来の水を守るために 「すごい。水が流れ出している。」 德永 万琳 学校法人宮崎学園宮崎学園中学校 三年 そこに大淀川の源流の一つが誕生していた。その山は、私が生まれた年に と地域の人たちが協力してどんぐりを植えた所だ。十年経って初めて、 N で活動している。 「どんぐり村」という森の遊び場も造ってい N P O う、とても貴重な体験ができるのである。 あるが、水道がないからこそ、水のありがたさが分かり限られた水を大切に使 わかしたり、料理をしたりするのだ。 「水道があれば便利なのに」と思うことも 朝、父と二十リットルのポリタンクに水を入れて持っていく。その水でお湯を 水は天からの恵みだと思っている。また、そこでイベントをする時はその日の うことに違和感があったが、慣れるとそんなことは感じなくなった。今では雨 貯めて、それで手を洗ったり、トイレの水を流したりする。最初はその水を使 がある自然いっぱいの場所だ。水道や電気はない。そこでは、雨水をタンクに る。そこは、ツリーハウスや木と竹で造られたブランコ、ジャングルジムなど りをする 私は、小さい頃から大淀川流域の山にどんぐりの木を植え、源流の森づく っているなんて、上流に住む私達しか知らない発見である。 は、山から流れ出る小さな湧水なのである。それがあの雄大な流れへとつなが 大淀川は、いつも大きくゆったりと私達のまちを流れている。でもその始まり 私の住む都城市は、宮崎県を流れる一級河川大淀川の上流に位置している。 る。 おいしさは今でも忘れられない。そして、いつ見に行っても水は流れ続けてい 小さな水流が確認された。その時そこにいたみんなが感動していた。その水の P O 私が取り組んでいるもう一つの活動は、東北の震災復興のための「どんぐり の苗づくり」である。私にも何かできることはないかと、震災後に岩手県より 送ってもらったどんぐりを畑で育てている。岩手と宮崎では気候が違うので、 苗を育てるのは簡単なことではない。暑い宮崎では、水やりはとても重要なこ とだ。夏場は特に毎日水をやらないと枯れてしまう。私が水をやるため、祖父 が古井戸を使えるようにしてくれた。十年以上も使っていなかったのに、きれ いな水があふれ出たことにとても驚いた。その水のおかげで、どんぐりの苗は スクスクと成長している。一メートル位になったら、岩手の地に植樹する予定 であるが、その日までに、いったいどれだけの水が必要なのだろう。苗を育て るだけでも、大量の水が必要であることが分かった。この宮崎の水で育った苗 が東北復興に役立てばとてもうれしい。 私は、もっとたくさんの中学生が植樹活動や、自然とふれあう体験をして欲 しいと思っている。木を植えることは、きれいな水を生み出すことで、私達が 生きる未来の環境を守ることにつながるからである。しかし、中学生は部活動 や勉強で忙しく、そのようなことを感じている人は少ないと思う。だから、も っと学校でも水や環境に関する学習を取り入れたらいいと思う。知ることは、 行動を起こすきっかけになるからである。やはり、一番大切なことは、一人ひ とりが今できる行動を起こすことである。蛇口の水を出しっぱなしにしないこ と、雨水の利用を考えること、そして、水源の森をつくるために木を植えるこ となど、できることはたくさんあるはずだ。 大淀川の河口、海と接するところには、毎年、夏になるとアカウミガメが遠 い海より産卵に訪れる。今年もまた、アカウミガメの赤ちゃんを見に行くのが とても楽しみだ。このように、たくさんの命を育む大淀川を、私はこれからも 守り続けていきたい。 それぞれの地域の大切な水、環境。それを未来の人達と共有するためにも、 今、この時から行動を始めよう。百年後、千年後もずっと私達の地球が「水の 惑星」であるために。
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