分析サマリー - 河合塾グループ

201
2015年度入試情報
201
2015年度国公立大志願状況
2015/2/23
国公立大の確定志願者数が 19 日に文部科学省から発表された。志願者総数は 474,546 人で、前年から約1
万人減少した。以下、発表された国公立大の出願状況について概況をまとめた。
■国公立大志願者総数は約1万
■国公立大志願者総数は約1万人の減少
1万人の減少
2月4日に締め切られた国公立大一般選抜の総志願者数は、前年から 9,874 人減少して 474,546 人であった。
募集人員に対する志願倍率は前年の 4.78 倍から 0.11 ポイントダウンし、4.67 倍となった【表1】
。
【表1】国公立大志願状況
区分
国立大学
公立大学
日程
募集人員
14 年度
15 年度
志願者数
14 年度
15 年度
志願倍率
前年差
前年比
14 年度
15 年度
前期
65,064
65,157
201,630
198,855
-2,775
99%
3.10
3.05
後期
15,929
15,789
149,603
146,137
-3,466
98%
9.39
9.26
計
80,993
80,946
351,233
344,992
-6,241
98%
4.34
4.26
前期
14,885
14,987
61,274
60,015
-1,259
98%
4.12
4.00
後期
3,555
3,714
45,181
43,261
-1,920
96%
12.71
11.65
中期
1,933
1,958
26,732
26,278
-454
98%
13.83
13.42
計
20,373
20,659
133,187
129,554
-3,633
97%
6.54
6.27
前期
79,949
80,144
262,904
258,870
-4,034
98%
3.29
3.23
国公立大学
後期
19,484
19,503
194,784
189,398
-5,386
97%
10.00
9.71
計
中期
1,933
1,958
26,732
26,278
-454
98%
13.83
13.42
101,366
101,605
484,420
474,546
-9,874
98%
4.78
4.67
計
※文部科学省資料より ※志願倍率は志願者数/募集人員
※分離・分割方式ではなく独自日程で実施する大学は上表には含まれていない
国公立大入試の中心である前期日程の志願者数は、258,870 人で前年から約4千人減少(前年比 98%)した。
今春の大学志願者数は前年から大きな変化はない見込みで、センター試験の受験者数も前年比 99.7%と前年
並みの状況であった。国公立大志願者数の変化もこれに呼応した動きといえる。
ただし、センター試験の受験者数の変化と比べ、僅かに減少率 【表2】国公立大(前期日程)地区別志願状況
が高くなったのは、今年は新課程入試への移行に伴い、負担感を
地区
14 年度
15 年度
前年差 前年比
感じる受験生が少なからずいたためだろう。
北海道
13,201
12,974
-227
98%
【表2】は、地区別の志願状況をまとめたものである。東北お
東北
22,323
21,135 -1,188
95%
よび南関東地区で減少率が高くなっている。東北地区では青森公
北関東
14,844
15,427
+583
104%
立大、南関東地区では千葉県立保健医療大、横浜市立大など、昨
南関東
54,179
52,055 -2,124
96%
年志願者大幅増となった大学が、その反動から大きく減少した影
甲信越
10,947
11,112
+165
102%
響が大きい。また、南関東地区では昨春入試で志願者を集めた工
北陸
9,894
9,676
-218
98%
学系で志願者の減少が目立った。首都圏の私立大工学系は堅調に
東海
22,597
22,817
+220
101%
志願者を集めており、地区内受験生が私立大へシフトいる様子も
近畿
43,069
42,600
-469
99%
感じられる。
中国
24,407
24,123
-284
99%
後期日程の志願者数は 189,398 人(前年比 97%)で、前期日程
四国
12,137
12,479
+342
103%
以上に志願者が減少した。後期日程の廃止・縮小が続く医学科で、
九州
35,306
34,472
-834
98%
今春は信州大が後期日程の募集人員 30 名を前期日程にシフトした。
※文部科学省資料より
例年高い人気を集めていただけに影響は大きく、同大医学科の後 ※北関東:茨城・栃木・群馬 南関東:埼玉・千葉・東京・神奈川
期志願者数は1千人以上の減少となった。
中期日程は、今春より長岡造形大が加わり公立 14 大学での実施となったが、志願者数は 454 人減少(前年
比 98%)した。今春入試で人気低下が鮮明な薬学部において、中期日程で実施する3大学が軒並み志願者減
となったことなどが影響している。
-1© Kawaijuku Educational Institution.
■難関国立大の志願状況
【表3】は旧帝大を中心とした難関 10 大学の志願状況をまとめたものである。
難関 10 大学全体では、前期日 【表3】国立難関 10 大学の志願状況
程は 736 人減(前年比 99%)と
前期日程
後期日程
なった。志願者の減少率は、
「そ
大学名
14 年度
15 年度
前年差 前年比
14 年度
15 年度
前年差 前年比
の他大」の方が高く、これら難
北海道
5,815
5,705
-110
98%
4,324
4,129
-195
95%
関大を敬遠した様子はうかがえ
東北
5,053
4,908
-145
97%
1,339
1,480
+141
111%
なかった。
大学別に見ると、東京大が前
東京
9,415
9,444
+29
100%
3,047
2,940
-107
96%
年並みの志願者数を維持した一
東京工業
3,857
3,803
-54
99%
549
483
-66
88%
方、近年高い人気を示していた
一橋
2,697
2,748
+51
102%
1,266
1,373
+107
108%
京都大でやや減少率が高くなっ
名古屋
4,728
4,914
+186
104%
41
65
+24
159%
た。
京都
8,355
8,041
-314
96%
-
-
-
-
志願者の増加率が高かったの
大阪
7,045
7,263
+218
103%
3,225
3,064
-161
95%
が、名古屋大と大阪大である。
名古屋大は工学部が志願者 15%
神戸
5,887
5,587
-300
95%
4,200
4,399
+199
105%
増と高い人気を示した。ここ数
九州
5,235
4,938
-297
94%
2,750
2,714
-36
99%
年志願者が減少していた反動に
難関 10 計
58,087
57,351
-736
99%
20,741
20,647
-94
100%
加え、同大関係者が昨秋ノーベ
98%
174,043
168,751 -5,292
97%
ル賞を受賞したことも人気上昇 その他大計 204,817 201,519 -3,298
※「その他大計」は難関 10 大を除いた国公立大計
を後押ししたのではなかろうか。
大阪大は、理、工、基礎工の理工系3学部が揃って昨年の志願者を上回った。10 大学中最も減少率が高くな
った九州大は、2次試験で地歴を追加する文学部で約2割志願者が減少したことなどが影響している。なお、
学部や学科別では、これら難関大においても昨春入試の反動による志願者の増減が随所で見られた。
後期日程の志願者数は前年並み(前年比 100%)であった。近年、後期日程の廃止・縮小が相次いでいたが、
今春入試はそれもなくグループ全体では落ち着いた数値となった。
以下に、大学別の状況を見てみる。
[北海道大]
前期日程は前年比 98.1%と志願者が減少した。文系学部は学部により状況が異なっている。昨春入試で志
願者が3割増となった法学部が一転して大幅減となったほか、総合入試文系が低調な人気であった。一方、そ
の他の学部(文、教育、経済)は2割以上の志願者増となった。
理系学部では、理科の必要科目数が3→2科目となり注目された医学科は前年比 88%と志願者が減少した。
昨年の模試では科目負担減から高い人気を示していたが、最終的には人気高騰が警戒されたのか敬遠された。
隔年現象が続いている歯学部は志願者6割増となった。
[東北大]
前期日程の志願者は前年比 97%と減少した。堅調な人気を示したのが医学部で、難関の医学科のほか看護
学、検査技術科学の両専攻で志願者が増加した。一方、教育、農、歯学部で志願者の減少率が高くなった。歯
学部は北海道大と同様に隔年現象が続いているが、その増減は北海道大とは逆になっており、今春は3割減と
なった。その他の学部は前年並みの志願者数となっている。
経済学部と理学部のみで実施される後期日程は、他の難関大の実施が少ないことから、いずれも前期日程以
上の志願者数を集め高い人気を維持している。今春は両学部とも前年より志願者が約1割増加した。
[東京大]
前期日程の志願者は前年比 100.3%と前年並みに落ち着いた。模試では一貫して志望者の減少が見られたも
のの、センター試験の高得点層増加が東大の人気回復を後押ししたと推測される。河合塾のセンター試験自己
採点集計「センター・リサーチ」で7科目受験者の成績分布を昨年と比較すると、900 点満点中 800 点以上の
高成績層が文系・理系ともに大きく増加しており、東大志望者の成績分布においてもこの層の増加が見られた。
文科類では、文科一類が前年比 107%、文科二類が前年比 102%と増加。文系最難関の文科一類で志願者が
増加したことからも、受験生の強気の志向が感じられる。一方、文科三類は前年比 95%と昨年に続き減少し、
第1段階選抜も実施されなかった。
理科類は、昨年の模試時から堅調な人気を示していた理科一類が前年比 102%と増加した。第1段階選抜の
-2© Kawaijuku Educational Institution.
合格者最低点は 731 点(得点率 81%)と例年になく高い点数となった。
[一橋大]
前期日程の志願者数は、一昨年まで社会科学系の不人気を背景に3年連続で減少していたが、昨春入試でそ
れに歯止めが掛かり増加に転じた。今春入試も引き続き前年比 102%と志願者は増加しており、人気回復が感
じられる。
学部別では、志願者の減少が続いていた法学部で志願者が大幅に増加した。一方、昨年志願者が大幅に増加
した社会学部が約1割の志願者減となった。
[東京工業大]
一橋大と対照的な志願者数の動きとなっている。理系人気を背景に一昨年まで志願者が増加していたが、昨
春入試では減少に転じた。今春も引き続き志願者数が減少した。ただし、類によって状況は異なっている。理
学部の第1類と生命理工学部の第7類が大きく減少した一方、工学系である第2類〜第6類は堅調な人気を示
した。第7類はAO入試導入に伴い前期日程の募集人員が 20 名減となったことも敬遠された要因だろう。全
国的な人気系統となっている建築・土木系の第6類は約1割の志願者増となった。
[名古屋大]
地区内受験生の安全志向もあり志願者減少が続いていたが、今春入試では4年ぶりに増加に転じた。文系学
部は、文、教育学部で1割以上志願者が増加した。志願者の減少が続く法、経済の社会科学系両学部は、経済
学部が僅かに増加したものの、法学部は減少に歯止めが掛かっていない。地区内私立大では、法学系の人気回
復が見られるものの、その動きは国公立大にまでは及んでいない様子である。理系学部は工学部が志願者前年
比 115%と大幅に増加し、2000 年以降最多の志願者数となった。同大関係者が昨秋ノーベル賞を受賞するなど
明るいニュースも増加要因であろう。学科別に見ても電気電子・情報工が前年比 126%となったのをはじめ、
化学・生物工を除きいずれも大幅増となった。
[京都大]
志願者数は前年比 96%と減少した。今春は科目負担減や科目選択時の条件緩和などの入試変更が多数あり、
志願者増加の要素を多く抱えていたが、警戒されたのか志願者増には至らなかった。
なかでも低調な人気となったのが文系学部である。文、法、総合人間(文系)学部では、センター試験で「倫
理,政治・経済」の選択が可となり、2次試験の地歴はセンター試験の第1解答科目とは異なる科目の選択が
必要という条件がなくなった。他の難関大文系学部と同様の科目設定となったことから志願者増が予想された
が、増加したのは総合人間(文系)学部だけで、法学部では1割以上志願者が減少した。このほか、経済学部
も約1割の志願者減となり、東京大の文科一類、文科二類の志願者増とは対照的な状況となった。
理系学部は不人気系統である薬学部を除いて比較的堅調な人気を示した。志願者減少が続いていた理学部は
前年比 107%と増加した。しかし、理科の必須科目数が3→2科目となり注目された医学科は、前年比 101%
と前年並みの志願者数に留まった。
[大阪大]
前期日程の志願者数は前年比 103%と増加した。志願者の増加を牽引しているのが理工系3学部で、なかで
も理学部は2割以上の志願者増となり、2000 年以降で最多の志願者数となった。一方、文系学部では外国語
学部が1割以上志願者減となるなど減少が目立った。外国語学部の志願者減少は、東京外国語大が入試変更に
伴い人気を集めたことも少なからず影響していそうだ。
[神戸大]
前期日程の志願者数は前年比 95%と減少した。学部別に見ると、志願者が大きく増減した学部が目立つ。
文学部は前年比 136%と大きく増加した。昨春入試で約3割志願者が減少し、実質倍率が 1.7 倍と低倍率入試
となった反動だろう。一方、国際文化学部が前年比 77%、海事科学部が前年比 76%と減少した。また、当該
大では経済学部と経営学部の両学部間で志願者増減が逆となる年が多いが、今春は両学部とも志願者が減少し
た。前述の京都大、大阪大、さらには近隣の大阪市立大を含め地区内難関大の社会科学系学部は志願者数の減
少が目立った。
前期日程とは対照的に後期日程は前年比 105%と増加。学部別に見ても志願者増加が目立つ。工学部は前年
-3© Kawaijuku Educational Institution.
比 113%と増加した。併願関係の強い大阪大(工、基礎工)の前期志願者増加も関連しているだろう。
[九州大]
前期日程の志願者数は前年比 94%と 10 大学で最も減少率が高くなった。昨春入試で前期日程としては過去
最低の志願者数となった法学部が、その反動から約3割の志願者増となったほかは、全体的に低調な人気とな
った。2次試験で新たに地歴を追加した文学部は前年比 81%と従前の予想通り受験生に敬遠された。
■学部系統別の志願状況
次に学部系統別の動向を見てみよう。【表4】は国公立大の前期日程の志願状況を、学部系統別に集計した
ものである。ここ数年、学部系統の人気は「文低理高」が鮮明の状況であったが、今春はその状況に歯止めが
掛かった様子がうかがえる。
前期日程全体の志願者数が減少するなか、文系では「社会・国際」
「法・政治」
「教員養成課程」の志願者が
増加した。なかでも「法・政治」学系は前年比 107%と、近年の志願者減少から一転して人気の回復が感じら
れる。近年の「文低理高」の背景には、景気低迷に伴う大学卒業者の就職状況の悪化があった。就職を意識し
た動きから、医療系をはじめとした資格が取得できる学部や、卒業後の進路に直結しているイメージの強い理
系学部へと人気がシフトした。しかし、就職状況が急速に改善してきていることや、志願者減少が続いた文系
学部では、受験生には狙い目と映る大学も多く出てきていることが人気回復の要因ではなかろうか。加えて、
今春のセンター試験では文系型の平均点が上昇しており、国公立大を諦めず出願する姿勢は理系生以上に強か
ったものと思われる。
理系の各系統は軒並み志 【表4】国公立大(前期日程)学部系統別志願状況
募集人員
志願者数
志願倍率
願者が減少した。模試では
系統
14 年度 15 年度 14 年度 15 年度 前年差 前年比 14 年度 15 年度
安定した人気を示していた
文・人文
7,581
7,717 24,967 24,528
-439
98%
3.29
3.18
「工」学系も志願者が減少
社会・国際
2,597
2,601
9,056
9,105
+49 101%
3.49
3.50
した。また、近年高い人気 法・政治
4,119
4,272 11,721 12,496
+775 107%
2.85
2.93
を示していた医療系も前年 経済・経営・商
8,084
7,985 25,957 24,799 -1,158
96%
3.21
3.11
比 96%と減少率が高く、そ 教育-教員養成課程
7,204
7,328 19,511 19,697
+186 101%
2.71
2.69
の人気に翳りが見え始めた。 教育-総合科学課程
2,241
2,037
6,645
6,249
-396
94%
2.97
3.07
5,078
5,102 15,914 15,285
-629
96%
3.13
3.00
「医」が前年比 95%、
「医療 理
22,700 22,565 70,697 69,626 -1,071
98%
3.11
3.09
技術」が前年比 93%となっ 工
農
5,294
5,288 17,722 17,142
-580
97%
3.35
3.24
たほか、
「薬」が前年比 87%
医・歯・薬・保健
10,458 10,508 42,726 40,964 -1,762
96%
4.09
3.90
と大幅に志願者が減少した。
医
3,609
3,648 19,919 19,000
-919
95%
5.52
5.21
「薬」は前期日程だけでな
歯
448
450
2,005
2,022
+17 101%
4.48
4.49
く、後期日程、中期日程と
薬
760
763
3,324
2,886
-438
87%
4.37
3.78
もに1割以上の志願者減少
看護
3,852
3,872 11,577 11,557
-20 100%
3.01
2.98
となっている。
医療技術・他
1,789
1,775
5,901
5,499
-402
93%
3.30
3.10
725
741
2,592
2,558
-34
99%
3.58
3.45
最も増加率が高くなった 生活科学
1,529
1,618
7,551
7,789
+238 103%
4.94
4.81
「総合・環境・情報・人間」 芸術・スポーツ科学
総合・環境・情報・人間
2,346
2,386
7,844
8,627
+783
110%
3.34
3.62
は、前期募集人員を 40 名増
国公立 計
79,956 80,148 262,903 258,865 -4,038
98%
3.29
3.23
とした島根県立大(総合政 ※河合塾調べ(一部大学発表の数値と文部科学省資料の数値と異なるところは大学発表値を優先)
策)や、センター試験数学 ※系統の分類は河合塾による
の必要科目数を減らすなど
入試変更を行った熊本県立大(総合管理)で大幅に志願者増となった影響が大きい。
以下に、主な系統の状況を確認してみよう。
※文中の志願者数・前年比は特に記載がない場合、前期日程を表す
[文・人文]
系統全体の志願者は前年比 98%と減少。難関大では、東京大(文科三類)95%、京都大(文)95%と減少
したほか、九州大(文)が2次試験科目の追加で約2割の志願者減少となった。一方、北海道大(文)120%、
名古屋大(文)111%、神戸大(文)136%で大きく増加した。北海道大、神戸大は昨年大幅に志願者が減少し
ており、難関大においても前年の状況を意識した受験生の動きが見られた。このほか、金沢大(人文学類)56%、
山口大(人文)77%などで隔年現象による志願者の減少がみられた。
東京外国語大(言語文化)は、2次試験の地歴で日本史を新たに選択科目として加えたことから前年比 124%
-4© Kawaijuku Educational Institution.
と大きく増加した。新設2年目となった長崎大(多文化社会)は、昨年から大幅に志願者が減少し募集人員
88 名に対し、志願者 86 人と志願倍率は1倍を割り込んだ。英語の得点で実施する第1段階選抜は、必要な得
点が8割と高い設定であることも敬遠された要因だろう。
[法・政治]
はじめにこの系統の数値に対してお断りをしておく。志願者前年比は 107%であるが、千葉大(法政経)の
昨年の数は選抜区分(法、経済、総合政策)別にそれぞれの学部系統に含めて集計しているのに対し、今春は
学科一括募集となったことから「法・政治」系として集計している。この影響もあり増加率が高くなっている。
ただし、これを除いて集計しても前年比 104%と増加している。4年連続で志願者が減少していたこの学系で
あるが、その人気低下にいよいよ歯止めが掛かったといってよいだろう。
旧帝大を中心とした難関大では、東京大(文科一類)107%、一橋大(法)118%や、志願者の減少が続いて
いた九州大(法)で増加に転じた。しかし、その他の大学は低調な人気である。北海道大(法)72%、東北大
(法)98%、名古屋大(法)96%、京都大(法)87%、大阪大(法)95%となっている。難関大全体では前年
比 100%となっており、志願者の増加はその他の大学に拠るところが大きい。
主な志願者増加大は、首都大学東京(都市教養-法学系)117%、新潟大(法)115%、金沢大(法学類)119%、
京都府立大(公共政策)161%、鳥取大(地域-地域政策)132%、岡山大(法(昼))126%、広島大(法(昼))
141%、鹿児島大(法文-法政策)146%などである。
[経済・経営・商]
昨春入試で志願者の減少に歯止めが掛かり、その数が増加に転じたが、今春入試では前年比 96%と減少し
た。法学系とはやや対照的な状況である。
難関大では東京大(文科二類)102%、一橋大(経済)106%が増加したほか、志願者減少が続いていた北海
道大(経済)126%で大幅増となった。しかし、京都大(経済)90%、神戸大(経営)89%、九州大(経済)
86%などで減少率が高くなった。難関 10 大学全体では前年比 98%と減少している。
この系統では公立大では隔年現象が起きている大学が多い。昨春入試で志願者が増加した青森公立大(経営
経済)54%、大阪市立大(経済)80%、公立鳥取環境大(経営)53%、尾道市立大(経済情報)50%、下関市
立大(経済)70%などで大幅に志願者が減少した一方、高崎経済大(経済)155%、県立広島大(経営情報)
138%などで増加している。
[教育-教員養成課程・総合科学課程]
資格系学部の人気上昇に伴い、当該系統も 2010〜12 年度にかけて志願者が増加して人気の高まりが感じら
れたが、その後は人気が沈静化し、昨春入試では志願者の減少率が高く不人気が鮮明であった。今春入試では、
教員養成課程は前年比 101%と増加に転じたものの、募集枠の減少が続く総合科学課程は前年比 94%と志願者
の減少が続いている。
課程の再編等を行った大学の状況を見ると、総合科学課程を1課程に集約した東京学芸大は、大学全体で前
年比 88%と志願者が減少した。一方、専攻の改組を行うとともに前期日程に募集人員をシフトした北海道教
育大(札幌)は、前年比 119%と増加した。総合科学課程を廃止した山口大(教育)は、学部全体の志願者数
は前年比 85%と減少したものの、教員養成課程は小学校総合の志願者が約3倍となったのをはじめ堅調な人
気をみせた。このほか、センター試験の必要科目数が減少した茨城大(教育)、群馬大(教育)は予想通り志
願者が増加した。
[理]
前期日程の志願者数は前年比 96%と減少した。模試時から志望者の減少が目立ち、人気の低下が感じられ
る。
難関大では、京都大(理)前年比 107%、大阪大(理)121%、神戸大(理)107%と近畿3大学で増加した。
京都大や神戸大は昨年まで2年連続で志願者が減少しており、狙い目と思われた感もある。また、科目負担減
にも関わらず志願者が増加しなかった京都大などの地区内医学科志望者の流入もあったのではなかろうか。
一方、東京工業大(第1類)93%、名古屋大(理)85%、九州大(理)93%では、模試時の人気の低下をそ
のまま反映した志願状況となった。
このほか、筑波大(生命環境)80%、静岡大(理)79%、大阪市立大(理)66%、広島大(理)74%、高知
-5© Kawaijuku Educational Institution.
大(理)81%などで志願者の減少率が高かった。また、後期日程では茨城大(理)が約6割の志願者減となっ
た。入試変更(センター試験の科目数増、個別試験の廃止など)が受験生に敬遠されたと思われる。
[工]
模試では、理、農学系の志望者減少が目立つなか、工学系は堅調な人気を示していたが、最終的な志願者は
前年比 98%と減少した。分野により志願状況が異なっており、
「電気・電子」
「情報・通信」
「土木・環境」と
いった分野で志願者増加が目立つ反面、
「材料工」
「生物工」分野では志願者が減少したところが多い。特に「生
物工」は全国的に志願者減少が目立っている。センター試験で生物の平均点が低かったことも少なからず影響
しているだろう。
大学別にみると、旧帝大を中心とした難関大は比較的堅調である。東京大(理科一類)をはじめ、東京工業
大(第2類、第4類、第6類)、名古屋大(工)、大阪大(工、基礎工)、神戸大(工)などで志願者が増加し
た。難関 10 大学のみで集計すると志願者前年比は 101%と増加しており、減少はその他の大学に拠る。特に
首都圏の大学で志願者の減少が目立つ。埼玉大(工)66%、千葉大(工)94%、電気通信大(情報理工)85%、
東京農工大(工)74%、東京海洋大(海洋工)81%と減少した。このほか、昨年志願者が大幅に増加した富山
県立大(工)71%、香川大(工)65%、長崎大(工)70%、熊本大(工)76%などで志願者が減少した。
募集人員を後期日程に大きくシフトした兵庫県立大は、前期日程の志願者は前年比 70%に減少した。ただ
し、募集人員の減員に伴い、志願倍率は 3.2 倍から 4.0 倍に上昇している。募集人員が3倍以上増加した後期
日程は、従前の予想通り志願者数が増加し 1,054 人(前年比 154%)となった。
[農]
前期日程の志願者前年比は 97%と減少した。難関大では、東北大(農)88%、神戸大(農)91%と減少し
た一方、北海道大(水産)102%、名古屋大(農)103%、京都大(農)103%が増加するなど大学により状況
が異なる。
その他の大学では、昨春入試で志願者が大幅に減少した山形大(農)147%、三重大(生物資源)110%、宮
崎大(農)115%などで増加した一方、鳥取大(農)75%、島根大(生物資源科学)55%、山口大(農)77%、
香川大(農)47%などで志願者の減少率が高い。センター試験の理科について、他の一般的な理系学部とは異
なる「理科①と理科②1科目を必須」とした琉球大(農)は約3割の志願者減となった。なお、来春は科目の
指定方法が見直され、他大学と同様の「理科②から2科目必須」となることが公表されている。
難関の「獣医」分野は約1割志願者が減少した。大学別にみても 10 大学中6大学で志願者が減少した。な
かでも鳥取大(農-共同獣医)67%、鹿児島大(共同獣医)60%で減少数が大きかった。
「水産」分野では、水産教員養成課程を廃止し、水産学科は3領域での募集とするなど募集枠の変更があっ
た鹿児島大(水産)が、志願者前年比 53%と人気が振るわなかった。この影響もあってか近隣の長崎大(水
産)では前年比 139%と志願者が大幅に増加した。
[医・歯・薬・保健]
系統全体の前期日程志願者は前年比 96%と減少した。分野別にみても歯学部を除いて志願者が減少してお
り、近年の医療系人気に翳りが見える。
医学科は、昨年の模試では比較的堅調な人気を示していたが、志願者数は前年比 95%と減少した。今年の
センター試験は、理系生にとって得点が取りやすい状況ではなかったことも影響していると思われる。最終的
には他系統へ志望変更をした者も多かったのではなかろうか。
医学科では志願動向に直結するような入試変更が行われている。信州大では、
「前期日程の2段階選抜導入」
「後期募集人員の前期へのシフト」
「2次試験での理科増」など多くの入試変更点があり、その動向が注目さ
れた。志願者数は前期が約1割、後期は約7割の志願者減となった。後期日程の志願者減少は従前より予想さ
れており、近隣大への影響が懸念されたが、後期募集人員を増加させた山梨大も警戒されたのか最終的な志願
者数は前年を下回った。後期日程で極端な志願者増となった鳥取大(前年比 160%)のみで、全医学科で1割
以上の志願者減少となった。このほか、前・後期ともに2段階選抜を導入した鹿児島大は両日程ともに志願者
が半減した。
人気低下が鮮明なのが「薬学部」である。前期日程では、実施 12 大学のうち志願者が増加したのは大阪大
のみであった。ここ数年人気を見せていた6年制課程で減少率が高い。冒頭で触れたとおり、中期日程のみの
実施となる岐阜薬科大、静岡県立大、名古屋市立大も志願者減となった。複数の受験機会を活かすべく他地域
-6© Kawaijuku Educational Institution.
からの受験者が多い3大学の志願者減少は、薬学部離れを裏付けている。
「看護」は前年比 100%となった。近隣に複数大学で看護系学科が設置されているケースでは、前年の倍率
が低かった大学に志願者が集まる傾向があることから、激しい隔年現象を起こす大学が多い。また、今春入試
では、センター試験の理科の科目指定が「理科①で受験可の大学」と「理科②が必要な大学」に科目設定が分
かれた。こうした影響もあり、極端な志願者増減を見せた大学が目立つ。地区別では四国地区、九州地区で志
願者の減少が目立った。
[芸術・スポーツ科学]
前期日程の志願者数は前年比 103%と増加した。
芸術系の主な大学の状況を見ると、東京芸術大は美術学部が前年比 92%、音楽学部が前年比 93%といずれ
も減少した。美術学部は 1997 年度の志願者数 6,925 人をピークに減少が続いており、今年度の志願者数は
2,736 人であった。その他の大学では比較的堅調に推移している。筑波大(芸術)129%、金沢美術工芸大(美
術工芸(中期)
)102%、静岡文化芸術大(デザイン)101%、愛知県立芸術大(音楽)102%、愛知県立芸術大
(美術(後期)
)99%、京都市立芸術大(美術)96%、岡山県立大(デザイン)184%となった。岡山県立大は
センター試験の必要教科数が減少したことも増加の要因だろう。公立大として初の入試となる長岡造形大(造
形)は、前期日程が志願者数 293 人(志願倍率 2.9 倍)
、中期日程が 322 人(志願倍率 10.7 倍)となった。
「スポーツ・健康」分野は、筑波大(体育)110%、鹿屋体育大(体育)98%となった。
大学別の国公立大の出願状況は河合塾入試情報サイト Kei-Net(※)にて閲覧が可能となっているのでご活
用いただきたい。
※Kei-Net 国公立大大学別出願者数:http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/shutsugan/
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