401kの運用利回りについて

401kの運用利回りについて
2015.1
2001年10月に導入された企業型401k(Defined Contribution)の加入者が昨年、
500万人を超えました。最近では総合型厚生年金基金の解散・代行返上に伴い、基金の
後継制度・代替制度として401kを検討・導入する企業も多く、また、個人型401k
についても従来は加入が出来なかった公務員や専業主婦(夫)も将来的に加入対象となる
ことが見込まれるなど公的年金をサポートする制度として401kの関心が高まりつつあ
ります。
401kの関心が高まる中、企業型DCの導入を検討する社長・担当者などから“40
1k加入者の利回りはどの程度なのか”と聞かれることがあります。この質問に明確に答
えることは難しいですが、2013年末、ある経済新聞に『401k加入者の平均運用利
回りは3.54%、含み損解消』との記事が掲載されました。記事は大手運営管理機関3
社の協力を得てデータ集計した結果、2013年9月末時点の加入者平均の通算利回りが
1年前のマイナス0.28%から大きく改善し、年率3.54%になったとの内容でした。
また、直近のデータとなる2014年9月末ではさらに上昇し、過去最高の3.59%、
運用利回りがプラスとなっている加入者の割合は98.6%まで拡大していました。この
調査は半期に一度、年金関連の専門誌を発行する企業が行うもので、サンプル数も多く、
信頼性は高いデータです。
企業型401k導入時、加入期間中の利回りの見込値として『想定利回り』を設定する
ことが一般的です。想定利回りを設定しないあるいは1%以下にするなど、昨今の長期金
利に合わせて低くする企業もありますが、経験的には2%程度とする企業が多く、この2%
を上回れば、予定する退職給付額を超えることになります。3.59%の利回りは仮に想
定利回りを2%で設定していれば、予定する給付水準を超える金額がその時点では積み立
てられている状況です。この利回りで判断する限り、加入者(従業員)にとって積立金額
が予定より多く、401k導入はメリットになっていると言えるでしょう。
しかし、データを詳細に見ると全ての加入者が予定の積立水準を超えているわけではあ
りませんでした。この3.59%の数字は“単純平均の利回り”
。つまり、利回りの合計値
を人数で割ったものです。利回りを順に並べて、ちょうど分かれ目となる値、いわゆる中
央値は1%台となっており、利回り10%以上の加入者が1割弱いる一方、0%~1%未
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満の加入者は4割強。半数以上は一つの基準値である“2%”未満の利回りになっていま
した。
アベノミクスによる株高や円安などを追い風に、一部の“高利回り加入者”が平均値を押
し上げて、運用商品を定期預金や保険商品など元本確保型のみで運用する“低利回り加入
者”と二極化が進んでいました。
401k業務に携わる一人として利回り3.59%という数字は注目すべきものであり
ますが、半数近くの加入者の利回りは0%~1%未満。
“低利回り”と“高利回り”の加入
者の格差・二極化が進んでおり、また、運営管理機関(401k 制度を運営・管理する専門機
関)ごとの利回りも、データ上、1.7ポイント程度の差がありました。おそらく、企業
ごとの利回り“格差”も一定程度あると思われます。401kは利回りだけで良し悪しが
決められる制度ではありませんが、利回りが高まり、給付額が増えることは望ましいこと。
加入者・企業・運営管理機関がそれぞれの立場で利回りが高まるよう継続的に努力をして
いく必要があると考えています。
以上
(三井住友海上火災保険株式会社 伊藤 稔)
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