「スマイルケア食」を活用した食支援のための 社会システム構築に係る課題

「スマイルケア食」を活用した食支援のための
社会システム構築に係る課題
(中間整理)(案)
平成27年○月
介護食品のあり方に関する検討会議
社会システムに関するワーキングチーム
目
次
1. はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2. 食・栄養に関する情報を発信するための社会システム
(1) 噛むこと飲み込むことや低栄養への配慮事項の周知・・・・・・・・・・・1
(2) 「スマイルケア食」に関する情報の周知・・・・・・・・・・・・・・・・2
3. 「スマイルケア食」が必要な人の状況を把握するための社会システム
(1) 「スマイルケア食」が必要な人の「低栄養を始めとする食の問題」の把握・・3
(2) 「スマイルケア食」が必要な人をめぐる周辺環境の把握とQOLの向上・・4
4. 「スマイルケア食」関係者間での情報共有、連携が図られる社会システム・・・5
5. その他の論点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
(付録)
「新しい介護食品(スマイルケア食)の選び方」・・・・・・・・・・・・・・・・7
(参考)
「スマイルケア食」を活用した食支援のための社会システムの議論におけるイメージ図・・10
1. はじめに
今後、高齢社会が更に進展すると予測される中で、「新しい介護食品(スマイル
ケア食)」(以下「スマイルケア食」という。)が必要な方々の手に届くような環境
を実現していくためには、関係者が連携して「スマイルケア食」を活用した食支援
を行う社会システムの構築が必要である。
本とりまとめは、今まで介護食品のあり方に関する検討会議であがった、行政、
医療・介護等の専門職、食品関係事業者等や地域の住民が連携して社会システムを
構築するための課題を含め、社会システムのあり方に関するワーキングチームで議
論した課題について、「『スマイルケア食』を活用した食支援のための社会システム
構築に係る課題(中間整理)」として整理したものである。今後は、ここであげた
課題について関係者からの意見を伺い、さらに検討を深めていく必要がある。
2. 食・栄養に関する情報を発信するための社会システム
(1)噛むこと飲み込むことや低栄養への配慮事項の周知
〈総論〉
「スマイルケア食」が重要である背景には、噛むこと飲み込むことに問題を抱えてい
たり、食事への意欲が無くなったりして低栄養になってしまう問題等がある。これら
については、必要になったときに初めて知るということではなく、一般的知識として
広く国民に対して情報発信をしていく必要がある。
このため、
「スマイルケア食」が実際に必要になる前からしっかりと情報発信をして
いく必要があり、国民一人ひとりに自分にも関わる問題であるとの認識を持ってもら
うよう情報発信することが重要である。これらの情報発信は、行政、医療・介護等の
専門職、食品関係事業者等が一体となり、積極的に行って行く必要がある。
また、噛むこと飲み込むことや低栄養等の問題に関し、本人に自覚がない場合には、
家族の他、通所・訪問系サービスの職員等からの働きかけ、サポートが必要である。
(今後検討すべき事項)
以下については、行政、医療・介護等の専門職、食品関係事業者等が一体となっ
て情報発信を行う必要があるが、それぞれの役割分担や連携方法などについては、
さらに検討が必要である。
○広く国民に対する働きかけ
 いつまでも口から食べることができるよう、口腔ケアの重要性や低栄養に関す
る情報を、年齢に関係なく、広く国民に対して、適切に提供するには、ライフス
タイルに応じてどのような情報を、どのような方法で提供すればよいか。
 この際、マスメディア(新聞、テレビ、ラジオ、インターネット等)をどのよ
うに有効に活用すればよいか。

これらの取組は国だけでなく、行政、医療・介護等の専門職、食品関係事業者
1
等それぞれが通常行う広報活動や一般向けイベント等の中で取り組むことが重
要であるが、具体的にどのような方法で取り組むことが効果的か。
○低栄養の恐れがある又は低栄養の人への働きかけ
 まず、低栄養の恐れがある人をどのように把握していけばよいか。また、その
人に対し、日頃から、低栄養を始めとする食の問題について関心を持ってもらう
ためには、地域単位で、どのように関係者が役割分担をし、どのような方法で情
報提供すればよいか。
 介護予防事業、老人クラブの活動、コミュニティカフェといった日常的に高齢
者が集う場を活用して、低栄養に関する認識を持ってもらい、かつ、日ごろの食
事を単なる栄養補給ではなく、人生の楽しみとして感じてもらうためには、どの
ような方法が効果的か。
 既に低栄養状態になっている人をどのように把握し、どのような情報提供を行
えばよいか。
○噛むこと・飲み込むことに問題がある人への働きかけ
 通所・訪問系サービス、通院などの機会を通じて、噛むこと・飲み込むことに
問題がある人と直接接する関係者が、日頃の口腔ケアや噛むこと・飲み込むこと
のトレーニングの実施等の重要性と併せて低栄養への配慮事項等について説明
が行えるようにするためには、どのような環境整備が必要か。情報発信の際に、
地域包括支援センター、社会福祉法人などを通じ、個別に相談できる専門職を紹
介できる仕組みが作れないか。
○家族や通所・訪問系サービスの職員など介護を受ける人の身近な人への働きかけ
 家族や訪問介護員等に、噛むこと・飲み込むことが困難である人への対応方法、
低栄養への対応方法等について、誰がどのように情報提供を行い、どのような活
動をしてもらうとよいか。
(2)
「スマイルケア食」に関する情報の周知
〈総論〉
低栄養の改善等に役立つものとして「スマイルケア食」を知らない人にまずその存
在を知ってもらうための普及・啓発や、
「スマイルケア食」を知っている人に対しても、
毎日の食事をもっと手軽に楽しむための「スマイルケア食」の活用方法等の情報を発
信していくことが必要である。これらの情報発信は、
「スマイルケア食」を製造・販売
する提供者側が積極的に行い、医療・介護等の専門職においても、低栄養を始めとす
る食の問題について指導を行う際に、
「スマイルケア食」の存在やその入手方法につい
て併せて紹介するようにすることが必要である。
また、本人が自力で「スマイルケア食」を入手・利用することが困難な状況におい
2
ては、家族や通所・訪問系サービスの職員からの働きかけ、サポートが必要である。
(今後検討すべき事項)
○広く国民に対する働きかけ
 低栄養の改善等に役立つものとして「スマイルケア食」が存在することや、入
手及び使用方法について、「スマイルケア食」を製造・販売する提供者のみでな
く、医療・介護等の専門職と提供者が連携して、広く情報を提供するためには、
どのような方法が効果的か。
 「スマイルケア食の選び方」(付録、P7)を共通ツールとした、「スマイルケ
ア食」の普及にあたっては、飲み込みが困難かどうかの判断基準等、配慮すべき
点を理解して適切に「スマイルケア食の選び方」に沿った分析を行い、医療・介
護等の専門職につなぐことができる人が中心となることが望ましいが、そのため
の人材育成や、各専門職の役割分担については、どのように行っていけばよいか。
○低栄養の恐れがある又は低栄養の人への働きかけ
 介護予防事業、老人クラブの活動、コミュニティカフェといった日常的に高齢
者が集う場を活用して、低栄養に関する情報発信と併せて、「スマイルケア食」
の必要性を情報発信するためには、「スマイルケア食」を製造・販売する提供者
とどのように連携して取り組むことが効果的か。
 低栄養の人に対して、その人の状態にあった「スマイルケア食」を適切に提供
するためには、どのような仕組みを作ることができるか。
○噛むこと・飲み込むことに問題がある人への働きかけ
 通所・訪問系サービス、通院などの機会を通じて、噛むこと・飲み込むことに
問題がある人と直接接する関係者が、「スマイルケア食」の必要性を説明すると
ともに、商品を紹介したり、その場で購入できたりするような環境を提供するた
めに、どのような仕組みを作ることができるか。
○家族や通所系サービスの職員など介護する側の人への働きかけ
 「スマイルケア食」は介護の負担軽減に有効であることや、献立に1品追加し
たり、効果的に栄養補給を行うこともできるなどの特徴を有しているが、介護す
る側が抵抗感なく「スマイルケア食」を使用できるようになるためには、「スマ
イルケア食」を活用したバリエーション豊かな食事の提供方法について、どのよ
うな情報提供が効果的か。
3. 「スマイルケア食」が必要な人の状況を把握するための社会システム
(1)
「スマイルケア食」が必要な人の「低栄養を始めとする食の問題」の把握
〈総論〉
どのような食品や栄養素等が不足しているのか、噛むこと・飲み込むことについて
3
問題はないか等について、本人にスクリーニング及びアセスメントを行う必要がある。
アセスメントについては「スマイルケア食の選び方」を活用し、医師、歯科医師、
看護師、言語聴覚士、薬剤師、歯科衛生士、理学療法士、作業療法士、介護支援専門
員、訪問介護員等と管理栄養士が連携して、アセスメント結果や日頃の食生活に関す
る情報を把握する必要がある。
(今後検討すべき事項)
○低栄養の恐れがある又は低栄養の人を把握するための事項
 栄養だけでなく、飲み込みの問題や疾病等についても配慮してスクリーニング
を行うにはどのような方法があるのか。また、スクリーニング結果を医療・介護
等の専門職につなぐにはどのような仕組みが必要か。

管理栄養士による食事のアセスメントを、より多くの人に受けてもらうための
仕組みとして、地域の薬局やドラッグストア、栄養ケア・ステーション等をどの
ように活用することができるか。
 毎年の定期健診で行うBMIや血液検査の結果等から、低栄養を始めとする食
の問題についてスクリーニングを行い、食生活に関するアセスメントにつなげる
ためには、どのような仕組みが可能か。
 一人暮らしの人などに対して、個々の栄養状態等を誰が、どのような方法で把
握することが可能か。
○噛むこと・飲み込むことに問題がある人を把握するための事項

家族や訪問介護員等といった、噛むこと・飲み込むことに問題がある人の身近
にいる関係者が、日頃の対話、食事、生活の様子等により、飲み込みや低栄養等
の食の問題についてスクリーニングを行い、必要に応じて医師、歯科医師、言語
聴覚士等の専門職へつなぐには、どのような仕組みが必要か。
 訪問介護員がサービス時に気付いた症状や、訪問診療等で訪れた医師、歯科医
師等が指導した普段の食生活で気を付けるべきこと、配食サービス事業者が回収
した容器から把握した食事の摂取量など、その人の食に関する情報を関係者間で
共有するには、どのような方法をとればよいか。
(2)「スマイルケア食」が必要な人をめぐる周辺環境の把握とQOLの向上
〈総論〉
栄養状態について一人一人のスクリーニングやアセスメントを行うにあたって、本
人の買い物に行く能力、調理能力や、住環境等についても把握する必要がある。
それらの周辺環境に関する情報は、
「スマイルケア食」が必要な人との接触が多い者
が中心となって把握し、状況に応じて、買い物の支援等も併せて検討し、QOLの向
上を図る必要がある。
また、アセスメントを行うことにより、偏りのない、栄養のバランスに配慮した食
事を提供する必要があるが、本人の嗜好により、日頃はあまり食欲が湧かない食形態、
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食べることのできない食形態であっても、好物の食べ物については例外として食べる
ことができる場合があることにも配慮すること等により、QOLの向上を図ることも
重要である。
(今後検討すべき事項)
○低栄養の恐れがある又は低栄養の人、噛むこと・飲み込むことに問題がある人の
「スマイルケア食」が必要な人をめぐる周辺環境の把握とQOLの向上

食生活に関するアセスメントを行う際、買い物に行く能力や、調理能力、住
環境などを把握して、その人の周辺状況を踏まえてどのようにアセスメントす
べきか。また、アセスメントの結果を踏まえ、買い物や調理の支援の必要性の
有無等の情報を、関係者間でどのように共有できるか。

飲み込みが困難な人が、その人にとって適切でない食形態の食事を望んだ場
合の対応方法を検討することが重要であり、本人の意思を尊重しつつ、安全を
確保するためにどのような対応をとるべきか。

食欲の無い人に対して、その人の食の嗜好を、家族、通所・訪問系サービス、
配食サービス事業者等の関係者間でどのように把握・共有し、少しでも食事の
量を増やせるよう働きかけができるか。
4. 「スマイルケア食」関係者間での情報共有、連携が図られる社会システム
〈総論〉
「スマイルケア食」をめぐっては、多様な関係者が関わっており、それぞれ高度な
専門的知識を必要とするため、1及び2で記載したような情報の把握から発信までの
流れを、1つの主体で完結して行うことは難しい。事業者によって、把握できる情報
の範囲、発信できる情報の範囲も様々である。
そのため、
・各事業者が把握した情報を関係者に共有し、助言をもらう仕組み、
・専門性が異なる別の事業者にバトンをつなぐ連携の仕組み
を構築していく必要がある。
また、医療・介護等の専門職間の連携を強化していく必要があるのはもちろんのこ
と、
「スマイルケア食」を製造・販売する提供者側と医療・介護等の専門職との連携を
強めていくことが、「スマイルケア食」の普及に当たっては重要である。
なお、関係者が情報を共有するにあたっては、個人の情報をどこまでの関係者で共
有できるのかを整理しておく必要である。
(今後検討すべき事項)

「スマイルケア食」を活用し、噛むこと・飲み込むことが困難な人も、食生
活の支援を通じて、QOLが向上される社会の実現を図るには、噛むこと・飲
み込むことが困難な人と接する各関係者が、食生活への支援について関心を持
つことが、一番重要である。異なる業種同士で、普段のそれぞれのサービスの
中で配慮すべきこと、改善するための方法などの情報を共有し、食生活の支援
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について意識を高めるためには、どのような仕組みが構築できるか。

日々の取組のモチベーションが上がるよう、各関係者が連携した食生活の支
援を通じてQOLの向上が果たされたとき、第三者から評価されるといった仕
組みの構築は可能か。

医師、歯科医師、看護師、言語聴覚士、薬剤師、歯科衛生士、理学療法士、
作業療法士、管理栄養士等の専門職が、
「スマイルケア食の選び方」で示す食形
態の分類に沿ったアセスメントを実施できるようにするためには、どのような
環境整備が必要か。

食支援についての観点で、医療・介護等の専門職、食品関係事業者等の関係
者間が情報共有を行い、それぞれの意見を持ち寄ってアセスメント方法を検討
するには、どのような仕組みが必要か。
5. その他の論点
社会システム構築に係る課題のその他の論点としては、本ワーキングチームでは、
以下のものがあげられた。これらの課題については、今後関係省庁とも連携し、検討
していく必要がある。
1)
「スマイルケア食」を必要とする人及びその家族の自助努力の可能性や、ボラン
ティア等の活用
2)低栄養の周知、「スマイルケア食」の普及等の取組を通じた経済的効果の試算
3)医学教育における食の取扱いの拡充
4)介護保険、診療報酬等における課題
5)
「スマイルケア食」に関する科学的根拠に基づく実践、実践に基づく研究の取組
の促進
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