1 帰還困難区域を含む国道288号及び県道35号の線量調査結果

帰還困難区域を含む国道288号及び県道35号の線量調査結果について
平成27年2月25日
原子力被災者生活支援チーム
1.概要
帰還困難区域を含む国道288号及び県道35号(以下「国道288号等」という。)の一部について、通
行証の確認を不要とする運用変更に伴い、同区間を自動車で通行する際の運転手等への放射性物質
の影響を確認するため、道路上の空間線量率の測定を行い、外部被ばく線量を評価した脚注1)。
その結果、国道288号等のうち、帰還困難区域6.5kmを自動車で1回通行する際の被ばく線量は0.
17μSv、帰還困難区域を含む富岡町から田村市までの15.1km区間を1回通行する際の被ばく線量
は0.28μSvであった。
これらの値は、日常生活で受ける放射線レベルと比較すると、胸部X線集団検診の被ばく線量(1回
あたり60μSv(参3、脚注2))のそれぞれ約340分の1脚注3)、約210分の1である。
2.調査対象
・ 国道288号等を自動車で通行する運転手等の外部被ばく線量
3.調査方法
(1)調査対象区間: 国道288号等15.1km脚注 3)[帰還困難区域6.5km、居住制限区域3.6km、避
難指示解除準備区域5.1km](図1)
(2)調査実施期間:平成26年11月7日~11月14日及び平成27年1月27日
(3)空間線量率の測定方法:
NaIサーベイメータを車内の所定の高さ(路面から1m)に固定したモニタリングカーで当該区間
の車線上を走行しながら車内の空間線量率を連続測定し、モニタリングカーの遮蔽係数で除するこ
とによって車外の車線中央の空間線量率を得た。なお、本測定は東京電力(株)の協力を得て行っ
た。
(4)外部被ばく線量の評価方法
(3)で得られた車外の車線中央の空間線量率に一般的な車両の遮蔽率(0.8)及び通行に要す
る時間を乗じて、運転手等の外部被ばく線量を評価した脚注4)。ここで、通行に要する時間は時速40
kmで通行する時間脚注5)とした。
1)本評価では被ばく線量を外部被ばく実効線量で代表した。これは、これまでの調査で実効線量に対する内部被ばくの
寄与は外部被ばくに比べて非常に小さいことが確認されているためである(参1、2)。なお、念のため、今後当該区間で空
気中の放射性物質濃度の測定を行い、その影響を確認する。
2)放射線医学総合研究所の Web サイト(参3)では、胸部 X 線集団検診の被ばく線量は0.06mSvと記載されているが、本
資料では単位換算して60μSvとしている。
3)本文中は有効数字2桁で表記しているため、この値と一致しない。
4)実効線量への換算係数は保守的に1とした。
5)国道288号等の制限速度は時速50kmであるが、平成22年度道路交通センサス(参4)の平均旅行速度を四捨五入し
て設定した。
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4.結果
(1)空間線量率
国道288号等の空間線量率分布を図2に示す。
①帰還困難区域の車外の空間線量率は0.53~2.39μSv/hの範囲で、平均値は1.33μSv/h
であった。
②本調査の全区間の車外の空間線量率は、0.15~2.39μSv/hの範囲で、平均値は0.91μS
v/hであった。
(2)外部被ばく線量
国道288号等のうち、帰還困難区域(6.5km)及び全区間(15.1km)を自動車で時速40kmで 1 回
通行する場合の外部被ばく線量を表1に示す。
①帰還困難区域を自動車で1回通行する際に運転手等が受ける外部被ばく線量は0.17μSvであっ
た。この値は、日常生活で受ける放射線レベルと比較すると、胸部X線集団検診の被ばく線量(1回
あたり60μSv)の約340分の1である。
②全区間を自動車で1回通行する際に運転手等が受ける外部被ばく線量は0.28μSvであった。こ
の値は、日常生活で受ける放射線レベルと比較すると、胸部X線集団検診の被ばく線量の約210分
の1である。
※この調査は、原子力規制庁職員の参画を得て実施したものである。
(参考資料)
参1 原子力被災者生活支援チーム、帰還困難区域内等の国道6号及び県道36号の線量調査結果に
ついて(平成26年9月12日公表)
参2 原子力被災者生活支援チーム、常磐自動車道(浪江IC~南相馬IC間)及び国道114号(浪江IC
~国道6号間)の線量調査結果について(平成26年10月3日公表)
参3 独立行政法人放射線医学総合研究所Webサイト(http://www.nirs.go.jp/rd/faq/medical.shtml)
参4 国道交通省、平成22年度道路交通センサス(平成23年10月公表)
参5 放射線量等分布マップ拡大サイト(http://ramap.jmc.or.jp/map/agreement.html)
(本資料の問合せ先)
内閣府 原子力災害対策本部
原子力被災者生活支援チーム(山田、川﨑、大塚)
電話:03-5114-2225(原子力規制庁内)
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(出典:放射線量等分布マップ拡大サイト(参5)の図を編集)
図1 線量調査の範囲
図2 空間線量率分布の測定結果及び積算線量の評価結果
表1 自動車で1回通行する場合の被ばく線量
自動車の運転手等
距離
走行速度
(km)
(km/h)
帰還困難区域
6.5
40
0.17
全区間
15.1
40
0.28
区間
4
の外部被ばく線量
(μSv)