情報処理学会第64回(平成14年)全国大会 4

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情報処理学会第64回(平成14年)全国大会
計算流体力学に基づく雲のアニメーション作成
6 ド ー 0
宮崎玲ナ土橋宜典ま西田友是卞
4
卞東京大学ま北海道大学
1.はじめに
雲などの自然現象のシミュレーションは(^?にお
いて重要な研究分野の一つである。とりわけ雲は景
観画像の作成において重要な役割を果たす。雲は大
気流体を可視化したものと言えるので、リアルな雲
を作成するには、流体シミュレーションに基づく手
法が有効である。本稿では、乱流の禍によってモク
モクした形態の積雲'稹乱雲のアニメーションを作
成するためのI^3V161^-3(;01^63方程式の数値解法をべ
—スとしたシミュレーション手法を提案する。
2,提案法の概要
シミュレーションの解析空間は3次元のポクセ
ルで表現し、各ポクセルは速度、雲密度、温度の状
態量を記憶する。穣雲'穣乱雲のダイナミクスをシ
ミュレ一シヨンするために、流体運動
(^)^V;^I^-8^01^^8方程式)の他に以下の要素を簡略化
したモデルを使用する。
~温度差による浮力
,ェントレインメント(空気の取り込み)
~相転移と潜熱
,断熱膨張
1タイムステップ毎に各状態量を更新する。各パ
ラメータとシミュレーション空間底面に境界条件
として雲の密度分布と温度を設定する。それを元に
雲が発達する。シミュレーシヨン空間の高さと生じ
る上昇気流の強さを変化させて、錯直方向の成長が
小さいものを穣雲、大きいものを積乱雲として作り1
分ける。
3,シミュレーションのために考慮する要素
(!)流体運動(!V8V!ば-810I^^!5方程式)
流体運動を記述する?^3V16[-5^01^63方程式を数値
的に解くことで速度を更新し、温度,雲密度を輸送
する。大気流体は本来,圧縮性流体であるが圧縮性
は小さいので非圧縮性と近似して計算する。非圧縮
性流体のI^3V;^I^-5101^^5方程式は以下で与えられる。
0
マ
1
」
1
1
(!)
ここでVは速度場、【は外力(風や浮力,重力等)、
/^は圧カ.は流体'密度、レは粘性係数である。こ
の方程式を,差分法を用いて離散化しシミュレーシ
ヨンを行なう。連続の式(!^ママ-ひを満たすための圧
力計算はポヮソン方程式に帰着させて、ヤコビの反
復法を用いて解く。
ラグランジュ微分/)//)(の部分、つまり状態量の輸
送は56111レしの手法[リ121を用いる。この手
法はどんな速度に対しても安定に計算することがで
きる。以下にこの手法について簡単に述べる。
流体のある1点に注目した流体粒子!)が時刻パこ
位置:^/りにあるとすると、この時の速度マ^!;,りで、
1タイムステップ厶(分バックトレースし、時刻
ひー厶りにおける!)の位置X メ/ —厶りを求める。そし
て位置乂^ひ-厶りの状態量を時刻/、位置乂/りの状
態量として輸送する(図1〉。輸送は各ポクセルに
対して行なう。
!^ひ-」りから11^(1》
へ!?ひ-^り上の速
X 、 3度.雲密度等
(^の状8量^送
11.(1》からV(ぶ,I》溯
リ,,タイムステップ
/!^前の11の位置1^
を求める
X"'-め
図1状飽量の�送
また数値計算の誤差によって、流体の小さい渦は消
滅してしまう。そこで文献【21の手法によって、外力
Iの一部として付け加えて、消滅した渦を補う。
は)浮力
重力場のある空気塊と周囲の温度との間に温度差
がある場合に.浮力により上昇気流が生じる。
各ポクセルの流体にその温度に比例した力と雲に
かかる荷重を考慮した浮力の簡単なモデルを採用す
る[?]【3】。
【0。。コ"び-ァ,,リ)? — ゴ 2
(力
ここでな。。は浮力と重力、ひとタは定数,『はポ
(!;乂
V
二
クセルの温度、7;,メま環境温度,^/は雲密度、2は鉛
01011(18 ^11113110118お0(100 001111)11(21101131?1111(10^'0^[I11^3
IIン0
I 丫05ヒ;11011001)3811! I101110^1*11^1811113卞
X 801^)^3^(10リ111ソ5"ほゲ
直方向の単位ベクトルを表す。これは式(!)の外
力?の一部となる。環境温度は解析空間の高さに対し
て線形に低くなるように設定する。
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(ョ)ェン卜レインメント,相転移と潜熱
流体の渦によつて雲外部の空気が雲内部に取り込
まれる。実際の物理現象では、外部の湿った空気が
取り込まれれば、雲内部の水蒸気密度が上がり水蒸
気が相転移を起こし、凝結し雲が生成される。そし
て潜熱が解放され温度も上がる。逆に乾燥空気が雲
内部に取り込まれれば、雲を気化させ、空気が冷却
される[ヌ]【4し
この現象を簡略化したモデルを使用する。シミュ
レーシヨンでは各タイムステップに、外部の空気が
取り込まれるポクセルの雲密度ゴに比例する量ゴゴ。,1
増減する。温度も^^。,1に比例して増滅する。ゴ。,|は、
高さなどの空間の関数としてユーザーが設定してお
《
(斗)断熱冷却
大気中の空気塊は上空に運ばれるに連れ断熱冷却
が起こる。ここではタイムステップ毎に温度ァは速
度の2成分に比例し滅少するモデルを用いる。
5,計算結果
提案法による計算結果を図3に示す。(ひ)(!?)
が積雲の発達過程.((;)が積乱雲の発達過
程である。シミュレーション空間のポクセル数は積
雲が200X150X40、積乱雲が100X100X100であ
り、計算時間は1^611は11111111 (1.2^!II2)で各タイム
ステップそれぞれ約3秒かかる。雲のレンダリング
は文献【5】の方法を用いた。
参考文献
計算では、状態量の輸送を行なう際、流体粒子!)が
時刻パこ位置X。(す)にあり、そこが雲の内部(雲密度
がある値以上)であり、時刻(/―厶りにおける13の位
置^。(?-/^/)が雲の外部(雲密度がある値以下)であ
るときに、雲密度^と温度7"が増減する。
雲外部
X
口
り
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雲外部111(1-4ォ)から,内部
1おりへ状8量が輪3される
とき—雲!^!部の状!!量が堪
図2ェン卜レインメント
((;)積乱雲
^
発達前
((!)積乱雲
図3計算結果