2015年度主要私立大志願状況(2月21日現在集計) - Kei-Net

2015年度入試情報
2015年度 主要私立大志願状況(2 月 21 日現在集計)
2015/2/24
私立大一般入試では2月入試が終盤を迎え、後期(3月)入試の出願がスタートしている。主要大の2月入試
の志願者数がほぼ出揃った現時点の志願者集計(2月 21 日現在)から今春入試を分析する。
■私立大志願者数は前年並み センター方式はやや敬遠
【表1】は現時点で志願者数が判明している全国 111 大学の状況をまとめたものである。今年度の一般入試の
志願者数は全体で前年比 101%とわずかに増加した。国公立大では2%ほど志願者が減少しているのとは対照的
である。今春は新課程初年度入試であったが、センター試験では理科で科目負担を感じる変更が行われた。主に
文系生が受験する理科①では「物理」
「化学」
「生物」
「地学」から2分野の受験が必要となり、理系生の多くが受
験する理科②では昨年までの理科Ⅰに比べ出題範囲が広がった。こうした変更からセンター試験が必須である国
公立大を敬遠して私立大を手厚く受験するといった動きが生じていると思われる。また、今春入試も一度の試験
で複数学部・学科への出願を認める、同時に複数方式に出願すると受験料を割引くといった一人あたりの出願校
数を増やす仕組みを導入する大学が増加していることも、私立大の総志願者数増加につながっている。
入試方式別にみると、一般方式で前年比 102%、センター方式で同 99%とセンター方式でわずかながら減少し
ている。センター方式の志願者が減少するのはここ 10 年で初めてである。センター方式の志願者減少も、先ほど
の国公立大敬遠と同様にセンター試験の変更が影響しているようだ。
【表1】の主な大学グループを除いたその他
の大学のセンター方式の志願者数は前年比 93%と、111 大学全体より減少率が高くなっている。難関大よりも比
較的入りやすい中堅以下の大学でセンター方式敬遠の傾向が強く出ている。なお、
「日東駒専」は全体の傾向とは
反対にセンター方式の志願者は前年比 117%と大きく増加している。これは東洋大がセンター方式で受験料割引
制度を導入した影響である。
【 表1】 私立大 大学グループ別志願状況
学校区分
主
な
内
訳
主要111大学 計
早慶上理
MARCH
日東駒専
成成明國武
首都圏理系9大学
首都圏女子13大学
関関同立
産近甲龍
上記以外の大学
14年度
1,485,964
194,284
259,758
128,682
53,602
106,958
33,755
170,572
132,038
406,315
一般方式
15年度
1,513,562
195,439
264,309
129,194
59,020
112,463
32,920
168,606
139,037
412,574
前年比
102%
101%
102%
100%
110%
105%
98%
99%
105%
102%
センター利用方式
14年度
15年度
前年比
728,847
718,100
99%
33,372
33,193
99%
131,250
130,033
99%
77,782
90,839
117%
35,486
35,581
100%
70,318
70,258
100%
24,359
22,741
93%
78,978
76,067
96%
46,079
43,742
95%
231,223
215,646
93%
14年度
2,214,811
227,656
391,008
206,464
89,088
177,276
58,114
249,550
178,117
637,538
合計
15年度
2,231,662
228,632
394,342
220,033
94,601
182,721
55,661
244,673
182,779
628,220
前年比
101%
100%
101%
107%
106%
103%
96%
98%
103%
99%
※数値は2/21現在、出願期間中の方式、2期入試および2部(夜間主)は集計対象外
(大学グループ)
早慶上理:早稲田・慶應義塾・上智・東京理科 MARCH:明治・青山学院・立教・中央・法政 成成明國武:成蹊・成城・明治学院・國學院・武蔵
日東駒専:日本・東洋・駒澤・専修 首都圏理系9大学:千葉工業・北里・工学院・芝浦工業・東京工科・東京電機・東京農業・麻布・神奈川工科
首都圏女子13大学:大妻女子・学習院女子・共立女子・白百合女子・実践女子・昭和女子・聖心女子・清泉女子・津田塾・東京女子・日本女子・東洋英和女学院・フェ リス女学院
関関同立:関西・関西学院・同志社・立命館 産近甲龍:京都産業・近畿・甲南・龍谷
■難関大グループの志願者数も前年並み 慶應義塾大は7年ぶりの志願者増
大学グループ別の志願状況では、
「早慶上理」は前年比 100%となっている。早稲田大、東京理科大はいずれも
前年比 98%とわずかに志願者が減少した。上智大ではTEAP利用型入試の導入により、志願者は前年比 111%
と大きく増加した。上智大はこれで4年連続の志願者増となる。慶應義塾大は志願者前年比 102%と7年ぶりに
増加した。
「MARCH」も前年比 101%と前年並みである。グループ内では青山学院大、立教大で志願者が増加、法政
大、明治大で前年並みとなっている。唯一志願者が減少したのが中央大で、4年連続の志願者減となった。
「日東
駒専」は志願者前年比 106%と大きく増加した。ただし、4大学すべてで志願者が増加しているわけではなく、
東洋大が前年比 139%と大きく志願者数を伸ばした影響である。東洋大では受験料割引制度を拡大した。これま
で割引制度がなかったセンター方式で前年の 1.8 倍の志願者数を集めた。
「首都圏理系9大学」は前年比 102%と
志願者が増加している。このグループの志願者はこれで7年連続の増加であるが、増加率は一時に比べ緩やかに
なっている。
西に目を向けると、
「関関同立」では4年ぶりに志願者が減少し、前年比 98%となった。立命館大、関西大の
志願者数は前年並みであるものの、同志社大、関西学院大では減少している。同志社大は5年ぶりの志願者減で
-1©Kawaijuku Educational Institution.
あるが、関西学院大は2年連続の志願者減、ここ5年でみても志願者数は最少となっている。
「産近甲龍」は前年
比 103%と増加した。なかでも農学部を新設、国際学部をキャンパス移転する龍谷大で前年比 117%と大きく増加
している。昨年志願者数日本一だった近畿大は、1期入試のみ集計している現時点では、明治大、早稲田大に続
き、第3位となっている。近畿大は2期入試の募集区分が多く、大勢の志願者が集まる。例年通りの志願者数が
集まれば、今年も志願者数日本一は近畿大になりそうである。
■学部系統別-文系学部で人気回復
【グラフ2】私立大 学部系統別志願状況
【グラフ2】は学部系統別の志願動向である。ここ
118
数年「文低理高」が鮮明であったが、今春はその傾向
に変化が生じている。
「人文科学」は前年比 103%、
「社会科学」は同 101%
107
103
となった。長らく続いた文系学部の不人気は底を打っ
103
101
101
100 99
た。
「社会科学」では法学系で前年比 102%となってい
97
93
る。ただし、増加の中心は中堅以下の大学や地方の大
91
学で、難関大では早稲田大で前年比 101%となってい
85
るものの、慶應義塾大で同 98%、中央大で同 89%、同
志社大で同 88%など、減少しているところも見られる
(いずれも法学部)
。
人 社 理 工 農 医 歯 薬 看 医
全
そ
文 会
護 療 の 体
理系では系統により動向が異なる。
「理」では前年比
科 科
技 他
91%と志願者が大きく減少した。一方、「工」では同
学 学
術
103%と志願者は増加を続けている。
「理」は理系人気
※数値は志願者前年比(%)
の火付け役としてここ数年志願者の増加が続いていた
※2/21判明分で、出願期間中の方式、2期入試および2部(夜間主)は除いて比較
が、模試段階から志望者の減少が目立った。今春は新
課程入試移行への不安から、入試難易度が高めの「理」を避け、幅広い入試難易度の大学がある「工」を志望す
る受験生が多かったと推測する。
「農」は前年並みの志願者数を維持している。ただし、新設の龍谷大(農)に3
千人を超える志願者が集まったのを除くと減少しており、既存の大学では志願者の減少が目立つ。
医療系もここ数年高い人気を示していた。しかし、今春はその人気にも変化が見える。
「医」では入学定員増を
追い風に 2008 年度以降志願者の増加が続いていた。とくにここ2年は志願者が大きく増加したが、今春は前年並
みにとどまった。一般方式の志願者数は増加しているものの、センター方式での志願者減少が顕著である。医学
科では一部を除き理科②2科目が必須であり、冒頭で触れたセンター試験の変更が敬遠要因となったのではなか
ろうか。
「薬」
は近年の資格志向で人気が出ていた。
こちらも昨年までの2年間に大きく志願者が増加していたが、
今春は一転して減少した。背景には志願者増で競争率が上昇したことに加え、大学生の就職環境の改善も影響し
ているのではないか。敢えて修学年数の長い薬剤師を目指す受験生が減っているものと推測する。慶應義塾大、
東京理科大など難関大でも志願者の減少が目立つ。
「歯」は歯科医師の供給過剰予測から 2000 年代半ばから長らく不人気であったが、最近志願者の増加が見られ
る。昨年は2割以上志願者が増加していたが、その動きは今春も継続している。もともと設置大学が少ないため、
志願者の増減率は変動が大きくなりがちではあるが、難化した医学科からの流入などもあり、人気は確実に回復
してきている。
「看護」では今春も多くの学部・学科が新設された影響もあり、志願者前年比 108%と増加してい
る。しかし、志願者の分散により、既存の学部・学科では志願者が減少しているところも見られる。
■各地区主要大学の志願状況
次に全国の主要大学の志願状況(判明分)をみてみる。
【表3】はいずれも2月 21 日までに判明した1期(2
月実施)入試の集計である。
[東北学院大学]
大学全体の志願者数は前年比 95%と減少した。方式別にみると、一般方式で前年比 98%、センター方式で同
90%と、センター方式の減少が著しい。
学部別にみると、志願者が増加しているのは、文学部(前年比 108%)のみである。とくに歴史学科で一般・
センター方式ともに志願者が増えている。経済学部では志願者は前年並みとなっているが、昨年増加した志願者
数を維持した形だ。この2学部以外では各学部とも前年から1割ほど志願者が減少している。なかでも法学部は
7年連続の志願者減で、近年最も志願者が集まっていた 2008 年度当時の約半数まで減少している。
[青山学院大学]
大学全体の志願者数は前年比 107%と増加した。過去 10 年で最多の志願者数となった。地球社会共生学部を新
設した影響もあるが、既存学部も志願者が増加している学部が多く、大学として人気が上昇している感がある。
方式別にみても一般方式で前年比 108%、センター方式で同 103%といずれも増加しており、一般方式の志願者数
-2-
©Kawaijuku Educational Institution.
は4万5千人を超えた。
学部別にみると、新設の地球社会共生学部には 2,908 人の志願者が集まった。他の文系学部とは異なる相模原
キャンパスに設置されるが、人気の国際系学部であることから受験生の認知度も高かったようである。志願者が
減少したのは、総合文化政策、国際政治経済、経営、理工の4学部である。理工学部は9年ぶりの志願者減少と
なった。一般方式では前年並みの志願者数であったが、センター方式で前年比 85%と大きく減少した。センター
方式では、物理・数理学科、化学・生命科学科の理科の必要科目数が2→1科目に削減され、学部全体で理科は
1科目に統一されるなど、志願者が増加する環境にあったが、今春は新課程への移行からセンター試験の利用を
敬遠する動きもあり、志願者の増加にはつながらなかった。
志願者の増加が目立つのは、文、教育人間科学、経済、社会情報学部などである。教育人間科学部の志願者数
は前年比 121%と大きく上昇した。4年ぶりの増加でもある。経済学部も一昨年まで志願者の減少が続いていた
が、昨年より増加に転じており、堅調な人気となっている。
[慶應義塾大学]
大学全体の志願者数は
前年比 102%となった。7
年ぶりの志願者増である。
2008 年度をピークに以降
続いていた志願者の減少が
昨年、
一昨年と小幅になり、
下げ止まり感が出ていたが、
今春、いよいよ増加に転じ
た。
今春は入試日の変更が
最大のトピックである。
文、
法学部を除く各学部で入試
日が2~4日前倒しされた。
これにより国公立大の前期
との日程が開いたことも志
願者増加の一因となったよ
うだ。
学部別にみると、志願者
の増加が目立つのは総合政
策、商、看護医療学部など
である。いずれも昨年から
1割以上志願者が増加して
いる。なかでも商学部は5
年ぶりの志願者増となる。
商学部では一般入試の募集
人員が減少した(A方式
560→480 名、B方式 140→
120 名)が、影響はみられ
なかった。
志願者が減少している
のは、法、経済、薬学部で
ある。薬学部は昨年、一昨
年と2年連続で志願者が増
加していた反動もあろう。
法学部は昨年過去十数年で
最低となった志願者数がさ
らに減少した。経済学部も
志願者減少が続いている。
法、経済学部は私立大全体
では人気が回復してきてい
るが、当該大では人気を盛
り返した状態とはまだまだ
言い難い。
【 表3】 主要私立大 大学別志願状況
大学
一般方式
14年度
15年度
センター利用方式
前年比
14年度
15年度
合計
14年度
前年比
15年度
前年比
北星学園
1,768
1,978
112%
1,036
1,022
99%
2,804
3,000
107%
北海学園
3,672
3,676
100%
2,096
2,094
100%
5,768
5,770
100%
東北学院
5,094
4,981
98%
3,296
2,973
90%
8,390
7,954
95%
青山学院
42,121
45,544
108%
13,772
14,194
103%
55,893
59,738
107%
学習院
14,453
11,798
82%
82%
北里
12,409
12,720
103%
慶應義塾
42,398
43,352
102%
工学院
10,867
11,886
109%
4,887
4,752
國學院
9,322
11,037
118%
5,313
5,991
国際基督教
1,508
1,870
124%
国士舘
8,137
8,916
110%
9,160
駒澤
20,597
19,311
94%
芝浦工業
19,226
20,054
104%
上智
28,523
31,740
111%
-
成蹊
14,161
12,867
91%
8,863
8,111
92%
成城
7,048
10,976
156%
5,971
6,409
107%
専修
19,418
18,073
93%
11,310
10,673
7,108
7,406
104%
5,513
5,756
39,205
38,072
97%
32,712
30,974
1,690
1,539
91%
1,973
2,151
21,730
22,163
102%
17,734
14,915
4,638
4,405
95%
3,558
4,090
大東文化
中央
津田塾
東海
東京女子
-
-
14,453
11,798
74%
18,591
17,294
93%
-
42,398
43,352
102%
97%
15,754
16,638
106%
113%
14,635
17,028
116%
-
1,508
1,870
124%
6,459
71%
17,297
15,375
89%
11,643
10,093
87%
32,240
29,404
91%
14,958
15,524
104%
34,184
35,578
104%
28,523
31,740
111%
23,024
20,978
91%
13,019
17,385
134%
94%
30,728
28,746
94%
104%
12,621
13,162
104%
95%
71,917
69,046
96%
109%
3,663
3,690
101%
84%
39,464
37,078
94%
115%
8,196
8,495
104%
6,182
-
-
-
4,574
-
-
-
東京電機
9,733
10,266
105%
8,404
8,025
95%
18,137
18,291
101%
東京都市
8,201
8,043
98%
7,662
6,539
85%
15,863
14,582
92%
東京農業
21,774
20,174
93%
10,341
9,032
87%
32,115
29,206
91%
東京理科
32,973
31,467
95%
18,338
18,579
101%
51,311
50,046
98%
東洋
30,311
33,624
111%
21,885
39,128
179%
52,196
72,752
139%
日本
58,356
58,186
100%
32,944
30,945
94%
91,300
89,131
98%
6,640
5,982
90%
5,325
4,271
80%
11,965
10,253
86%
64,023
65,007
102%
30,785
28,979
94%
94,808
93,986
99%
武蔵
8,918
10,453
117%
3,718
3,643
98%
12,636
14,096
112%
明治
73,908
73,688
100%
30,548
31,533
103%
104,456
105,221
101%
明治学院
14,153
13,687
97%
11,621
11,427
98%
25,774
25,114
97%
立教
40,501
41,998
104%
23,433
24,353
104%
63,934
66,351
104%
早稲田
90,390
88,880
98%
15,034
14,614
97%
105,424
103,494
98%
愛知
11,343
10,766
95%
6,251
5,666
91%
17,594
16,432
93%
中京
14,604
15,559
107%
11,299
11,697
104%
25,903
27,256
105%
南山
13,281
13,085
99%
9,263
10,657
115%
22,544
23,742
105%
名城
18,778
20,114
107%
11,717
11,591
99%
30,495
31,705
104%
京都産業
22,385
19,182
86%
10,900
9,114
84%
33,285
28,296
85%
同志社
42,340
40,185
95%
10,572
9,156
87%
52,912
49,341
93%
立命館
42,072
43,923
104%
37,029
36,328
98%
79,101
80,251
101%
龍谷
26,814
32,736
122%
7,602
7,595
100%
34,416
40,331
117%
関西
57,133
57,116
100%
18,629
17,598
94%
75,762
74,714
99%
近畿
71,129
76,283
107%
19,944
20,473
103%
91,073
96,756
106%
関西学院
29,027
27,382
94%
12,748
12,985
102%
41,775
40,367
97%
甲南
11,710
10,836
93%
7,633
6,560
86%
19,343
17,396
90%
広島修道
4,618
4,081
88%
2,252
2,386
106%
6,870
6,467
94%
松山
5,144
5,629
109%
2,058
1,933
94%
7,202
7,562
105%
西南学院
12,013
11,857
99%
7,160
6,517
91%
19,173
18,374
96%
福岡
31,133
29,966
96%
13,887
12,182
88%
45,020
42,148
94%
日本女子
法政
※数値は2/21現在、出願期間中の方式、2期入試およ び2部(夜間主)は集計対象外
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[上智大学]
志願者数は前年比 111%と大きく増加した。これで4年連続の志願者増となる。
今春、全学部でTEAP(アカデミック英語能力判定試験)利用型入試を導入、志願者は全学で9千人を超え
た。TEAP利用型入試は一度の出願で複数学科に出願可能であること、さらに複数学科に出願する場合は受験
料が割引になることが、これだけの志願者数につながった。なお、TEAP利用型入試導入の影響を受け、既存
の一般方式では志願者数は前年の8割程度にとどまっている。
学部別にみると、総合グローバル、理工学部で志願者が減少した。新設2年目となる総合グローバル学部では、
昨年の人気の反動で志願者は前年比 94%となった。理工学部の志願者が4千5百人を割ったのは8年ぶりとなる。
理工学部では、今春、A方式を廃止、一般方式はB方式に一本化された。この2方式は併願できたため、今春の
延べ志願者数が減少することになった。
志願者が大きく増加しているのは、文、総合人間科学、法、経済の各学部である。文学部を除く3学部は昨年
の志願者減の反動もあろう。文学部は4年連続の志願者増と人気を示している。総合人間科学部は学部全体の志
願者数は増加しているものの、開設5年目を迎える看護学科では減少が続いており、今春は学科全体で5百人を
下回った。私立大看護系学部・学科は昨年、今春と新設が相次いでおり、志願者の分散も無関係ではないだろう。
[中央大学]
今春の志願者数は大学全体で前年比 96%となった。昨春入試も前年から1割以上志願者が減少したが、減少に
歯止めがかからない。これで4年連続の志願者減となる。中央大では今春も学部・学科の新設や大きな入試変更
などがなく、志願者増加につながる要因がなかったことも影響していよう。方式別にみても一般方式で前年比
97%、センター方式で同 95%と、いずれも減少している。
学部別にみても、文学部以外はいずれも減少している。文学部は昨年志願者が2千人近く減少しており、その
反動もあろう。一方、法学部では昨年2割減、今春もさらに1割減、経済学部では昨年、今春ともに1割減と志
願者の減少に歯止めがかからない状況だ。経済学部では慶應義塾大の同系統学部と入試日がバッティングしてい
ることも影響がありそうだ。理工学部でも2年連続で約1千人ずつ志願者が減少している。2年とも一般方式の
志願者数には大きな変化はなく、センター方式で減少している。
[東京理科大学]
大学全体の志願者数は前年比 98%。東京理科大ではここ数年の志願者数は5万人前後で推移しており、安定し
た動きとなっている。方式別には一般方式の志願者数が前年比 95%、センター方式が同 101%と一般方式で減少
している。なお、センター方式ではセンター試験前に出願を締め切るA方式の志願者が前年比 93%と減少してい
るのに対し、2月中旬に締め切るC方式では同 135%と大きく増加、対照的な動向となった。
学部別にみると、建築、電気工、機械工の3学科で入学定員が増員となる工学部で志願者が増加、これで3年
連続の増加となる。昨春入試で2割近く志願者が増加した経営学部は、今春もその志願者数を維持した。経営学
部は 2016 年度に埼玉県の久喜キャンパスから東京の神楽坂キャンパスに全面移転する。
従来とは異なる受験者層
が加わっているのかもしれない。
理、
理工、
基礎工、
薬の各学部では志願者が減少している。
理学部は志願者前年比 96%であるが、
一般方式 90%、
センター方式 108%と減少は一般方式による。一般方式では数学、物理、化学の3学科の入試日が慶應義塾大の
理工学部と重なった。志願者が減少しているのはこの3学科であり、慶應義塾大の入試日変更の影響を受けたと
推測する。
基礎工学部は 2007 年度から 2012 年度まで志願者の増加が続いた。
その後2年間は横ばいであったが、
今春は減少に転じた。薬学部は志願者前年比 92%と、減少率が全学部の中で最も高くなった。昨年までの4年間、
毎年1割近く志願者が増加していたが、5年ぶりの志願者減となった。
[法政大学]
大学全体の志願者は前年比 99%と前年並み。昨春は3年ぶりに志願者数が9万人を超えたが、今春もその志願
者数を維持した。方式別にみると一般方式で前年比 102%、センター方式で同 94%と、センター方式で志願者が
減少している。
今春は、グローバル教養学部と法学部で入学定員が増員された。入学定員が 66→100 名と大きく増加したグロ
ーバル教養学部では前年比 99%と前年並みにとどまった。
とくに一般方式では前年比 88%と志願者は減少してお
り、競争は緩和された。一方、法学部は前年比 107%と志願者が増加した。法学部では入学定員の増員とともに
T日程の入試科目が3教科から2教科に減った。このT日程の志願者数のみでは前年比 116%となっている。な
お、T日程では社会学部でも科目減となっており、こちらも前年比 124%と大きく増加した。
このほか、志願者が増加しているのは経営、理工、生命科学、キャリアデザインの各学部である。理工、生命
科学部は3年連続の志願者増である。
一方、志願者が減少している学部をみてくと、デザイン工学部では前年比 94%となり、2年連続の志願者増か
ら一転減少した。また、国際文化、現代福祉、経済、スポーツ健康、人間環境の各学部では、志願者が昨年から
1割以上減少している。各学部とも昨年大きく志願者を増加させており、その反動が強く出たようだ。
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[明治大学]
大学全体の志願者数は前年比 101%と前年並みである。志願者数 10 万5千人は現時点では全国一であるが、こ
の後、2期入試の志願者数が加わると変動がありそうだ。方式別にみると、一般方式で前年比 100%、センター
方式で同 103%とセンター方式で増加している。
今春入試では募集区分の変更や入試方式の拡大など、部分的ながらも入試動向に影響しそうな変更があった。
これらの変更と志願動向を学部別にみていく。
経営学部では学科別募集から学部一括募集に変更した。このため、一般方式の志願者は前年比 90%と減少した。
一方、センター方式で3科目方式を導入した。この3科目方式には従来からの4科目方式の2倍近い志願者が集
まった。
理工学部では電気電子生命学科に生命理工学専攻が新設されたが、この影響は小さかった。理工学部全体では
一般方式は前年比 105%と志願者が増加したものの、センター方式では同 91%と減少した。大学全体のセンター
方式の志願者数は増加しているものの、理工学部のほか新設2年目の総合数理学部(前年比 70%)
、商学部(同
81%)などで減少率が高くなっている。商学部のセンター方式の理科では理科①の利用が認められていない。な
かでも6科目方式では理科②1科目が必須となっているため、志願者数は昨年の半分以下となった。
志願者の増加が目立つのは、文、法学部である。文学部は3年ぶり、法学部は5年ぶりの志願者増となった。
文系学部への回帰の動きと、これまでの志願者減による狙い目感などが要因となったようである。
[立教大学]
大学全体の志願者数は前年比 104%と増加した。昨年は志願者が約1割減となった反動もあるだろう。方式別
にみても、一般・センター方式ともに前年比 104%となっている。
志願者の増加が目立つのは文、現代心理、コミュニティ福祉、経済学部である。文、現代心理、コミュニティ
福祉学部は昨年志願者が大きく減少しており、その反動が出た形だ。一方、経済学部は2年連続の志願者増であ
る。とくにセンター方式では前年から 1 千8百人増加し、志願者数は5千人を超えた。対照的に法学部では昨年
大きく減った志願者数が、今春も前年並みにとどまった。一般方式では前年から1割以上志願者数を増やしたも
のの、センター方式で前年比 84%と減らした。
志願者が減少しているのは理学部である。学部全体で前年から1割近く志願者が減少しているが、とくにセン
ター方式では前年比 82%と減少幅が大きい。全国的にも理学系は不人気となっており、同様の傾向となっている。
[早稲田大学]
志願者数は約2千人減少し、前年比 98%となった。志願者減少は8年連続である。ただし、ここ3年の減少数
は以前に比べ小幅になっており、そろそろ底が見えてきた感はある。方式別では、一般方式で前年比 98%、セン
ター方式で同 97%といずれも減少している。
学部別にみると、教育、国際教養、商学部などで志願者が増加している。国際教養学部は志願者が増加したも
のの昨春入試で1割以上志願者を減らしており、一昨年の数までは回復しなかった。教育学部は2年連続の志願
者増となり、志願者数は7年ぶりに1万4千人を超えた。教育学専攻の各専修や社会科学科などで志願者が増加
している。
社会科学系の学部では動向が分かれた。社会科学(前年比 95%)
、政治経済(同 96%)の2学部は前年に続き
志願者が減少した一方、法(同 101%)
、商(同 102%)では増加に転じた。なお、政治経済学部も学部全体の志
願者数は減少しているものの経済学科では増加している。とくにセンター方式では前年比 108%と増加が顕著だ。
このほか志願者が減少しているのは、文化構想、基幹理工、スポーツ科学、人間科学部である。基幹理工学部
は、昨年は学科新設や募集体系の変更などで志願者数は5千人に迫る勢いだった。今春はその反動からか志願者
は減少、一昨年並みまで戻った。人間科学部では志願者は前年比 94%と減少している。志願者数が7千人を割っ
たのはここ 10 年で初めてである。こちらも昨年はセンター方式での新方式を導入などから志願者数は大きく増加
していた。今春はセンター方式で減少したほか、一般方式も3年連続の志願者減となっている。
[南山大学]
大学全体の志願者数は前年比 105%と増加した。数字でみても過去 10 年で最多となった。方式別では、一般方
式で前年比 99%、センター方式で 115%と、センター方式で増加している。なお、センター方式では併用型では
志願者が減少、3教科型(前年比 126%)
、5教科型(同 135%)で増加している。南山大のセンター方式の出願
締切日はセンター試験後である。今春は文系型でセンター試験の平均点が上昇しており、文系学部ではセンター
得点のアドバンテージで挑戦しようという受験生が多かったものと思われる。
今春、郊外の瀬戸キャンパスから名古屋市内のキャンパスに全面移転する理工学部は、志願者数が前年比 123%
と増加している。とくにセンター方式では前年の約 1.5 倍の志願者が集まった。昨年も学科の再編、募集体系の
変更などで志願者が大きく増加したが、さらなる人気上昇となった。志願者数が3千人を超えたのは、数理情報
学部時代も含め過去 10 年で初めてとなる。このほか、外国語、法学部などで志願者の増加が目立つ。法学部では
ここ数年隔年現象を引き起こしており、昨年の志願者大幅減の反動とみられる。
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[同志社大学]
大学全体の志願者数は前年比 93%、5年ぶりに減少に転じた。昨年は過去 10 年で最多の志願者数となってい
たが、今春は5万人に届かなかった。今春は学部の新設や大きな入試変更もなく、近年の人気の反動がそのまま
影響したようだ。方式別にみると、一般方式で前年比 95%、センター方式で同 87%と、センター方式で減少率が
高い。
学部別にみると、志願者が増加しているのは経済、文化情報の2学部のみで、志願者が減少している学部が目
立つ。とくに文、社会、法、商学部などで減少数が多くなっている。法学部は3年連続の志願者減である。対照
的に経済学部は3年連続の志願者増になっており、2年前はほぼ同数だった両学部の志願者数は、今春は1千3
百人の差がついた。社会、商学部では昨年までの2年間志願者が増加しており、その反動が出た形だ。
理系の各学部では、理工学部で前年並みの志願者数となっているものの、生命医科学部では前年比 76%と大幅
に減少している。とくにセンター方式の志願者は前年の6割以下に落ち込んでいる。学科別にみると、一般・セ
ンター方式ともに医工学科、医生命システム学科で志願者の減少が目立つ。一方、2学科に比べ難易度が低めの
医情報学科では大きな減少は見られず、入試難易度の高い学科が敬遠されている。理工学部でも比較的入試難易
度が低い電気工、電子工学科の志願者が増加した一方、入試難易度が高い機能分子・生命化学科では減少してお
り、動向が分かれている。
[立命館大学]
大学全体の志願者数は前年比 101%となった。関関同立の中で唯一志願者が増加した。2年連続の志願者増で、
今春は7年ぶりに8万人を超えた。方式別にみると、一般方式で前年比 104%、センター方式で同 98%となって
いる。センター方式はやや減少しているものの、昨春入試で1割以上増加した志願者数をほぼ維持している。
今春、大阪府に「大阪いばらきキャンパス」を設置、経営、政策科学の2学部が移転する。京都市内の衣笠キ
ャンパスから移転する政策科学部では前年並みの志願者数にとどまったものの、滋賀県のびわこ・くさつキャン
パスから移転する経営学部では前年比 120%と志願者が大きく増加した。模試段階でも大阪や兵庫の志望者が増加
しており、キャンパス移転によって新たな受験者層を掘り起こしたようである。
薬学部では4年制の創薬科学科(入学定員 60 名)を新設した。新学科には 450 人の志願者が集まったが、一方
で既存の薬学科(6年制)の志願者が同程度減少し、学部全体の志願者数は前年並みにとどまった。2学科の入
試は同日実施で併願できないため志願者は分散した。なお、既存学科の入学定員(100 名)は保持されたため、学
部入学定員は増加、競争は緩和している。
その他の学部では、法、経済学部で志願者の増加が目立ち、社会科学系の人気復活を思わせる。とくに経済学
部では前年から2千人、3割も志願者が増加した。理系学部では、前年志願者が減少した情報理工学部は増加、
前年増加した理工学部は減少と対象的な動向を示している。生命科学部は2年連続の志願者減である。他の理系
学部に比べ入試難易度が高めということもあってか、敬遠されているようである。
[関西大学]
大学全体の志願者数は前年比 99%と前年並みである。方式別にみると、一般方式で前年比 100%、センター方
式で同 94%と、センター方式で減少している。
学部別にみると、文、外国語、社会安全、法、政策創造学部など、文系学部で志願者の増加が目立つ。このう
ち社会安全学部は2年連続の志願者増である。2010 年度の学部新設以降、初めて志願者数が3千人を超えた。社
会安全学部ではセンター方式(中期)で、個別試験の数学を英語に変更した。また一般方式では全学部日程の2
教科型の数学を必須から国語との選択に変更した。どちらも数学が必須ではなくなり、入試科目の変更が志願者
増につながったものとみる。政策創造学部は近年隔年現象を起こしている。志願者増減の幅が大きく、今春は前
年比 141%となった。
理工系学部では環境都市工学部で前年比 110%となったものの、システム理工(同 94%)
、化学生命工(同 85%)
の2学部は志願者が減少した。理工系では理学系から工学系へ人気が移っており、とくに建築・土木などの分野
が人気となっている。この動きを象徴する動向となっている。
[関西学院大学]
大学全体の志願者は前年比 97%、2年連続の志願者減である。過去 10 年で最少の志願者数となった。方式別
では、一般方式で前年比 94%、センター方式で同 102%と、一般方式で減少している。
学部別にみると、文、教育、社会、法、総合政策、経済学部などで志願者の減少が目立つ。法、総合政策は昨
年志願者が増加しており、その反動もありそうだが、その他の学部は2年または3年連続の志願者減となってい
る。一方、理工学部の志願者は前年比 118%と増加した。理工学部では学科の新設・改組により入学定員が 460
→700 名に大きく増加した。新設された先進エネルギーナノ工学科、環境・応用化学科には一般・センター方式
合わせて1千4百人近い志願者が集まった。一方で専攻から学科に昇格、入学定員が倍増した生命科学科と生命
医科学科の志願者は前年比 106%と増加したものの、入学定員の増員に比べると増加幅は小さい。理学系の不人
気が影響した形だ。
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[西南学院大学]
大学全体の志願者数は前年比 96%となった。今春はインターネット出願を導入、ネット出願をした場合は受験
料が割安になったが、志願者増にはつながらなかった。方式別では、一般方式で前年比 99%、センター方式で同
91%と、センター方式で減少している。センター方式では、併用型の志願者はそれほど減っていないものの、セ
ンターのみの方式で前年比 80%と大きく減少している。
学部別にみて志願者の減少数が多いのは、経済、商、人間科学部である。ただし学科間で差があり、経済学部
では経済学科で志願者が減少しているものの、国際経済学科ではそれほど減っていない。商学部でも減少してい
るのは経営学科であり、商学科の志願者は減っていない。人間科学部では心理学科の志願者は増加しているが、
児童教育、社会福祉学科の志願者が減少、不人気となっている。
唯一、志願者が増加しているのが法学部である。法学部ではここ4年ほど隔年現象を起こしている。今春は増
加の年にあたり、前年比 109%と増加した。
[福岡大学]
大学全体の志願者数は前年比 94%と減少した。昨年は医学科のセンター方式導入などから志願者数は過去 10
年で最多となったが、今春は志願者増の要因となる入試変更はなく、3年ぶりの減少となった。方式ごとにみる
と、一般方式で前年比 96%、センター方式で 88%とセンター方式で減少幅が大きい。
学部別にみると、人文、経済、商、理、工、薬学部などで志願者の減少が目立つ。人文系学部は全国的には今
春は志願者増に転じているが、福岡大では2年連続の減少となっており、人気回復は見られない。理学部は4年
ぶり、工学部は3年ぶりの志願者減となる。理学部は系統不人気により、一般・センター方式ともに志願者が減
少している。工学部では一般方式の志願者はそれほど減っていないものの、センター方式では前年比 78%と大き
く減少した。工学部ではセンター4科目型を廃止し、センターのみの方式は7科目型に一本化された。このため
センターのみの方式で志願者は前年の6割程度まで減少した。
志願者が増加しているのは、法学部、医学部看護学科などである。とくに看護学科では前年比 116%と志願者
が大きく増加した。一方、医学科では前年比 98%と、志願者はやや減少している。一般方式では前年並みの志願
者数となったものの、センター方式では1割ほど志願者が減少した。センター方式導入初年度である昨年が厳し
い入試であったことなどから、やや敬遠されたものと思われる。
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