廃ガラスを素材とした フッ化物イオン除去剤

ガラス粒子による排水中
のフッ素除去
鳥取大学 地域学部
中野惠文, 山本直樹
鳥取県衛生環境研究所
門木秀幸, 居蔵岳志
(株)鳥取再資源化研究所 田中弘樹
従来技術とその問題点(1)
凝集沈殿法
カルシウム塩法:水酸化カルシウムや塩化カルシウムなどを添加し,
フッ素をフッ化カルシウム(CaF2)として沈殿させて分離する。
⇒ 多量のカルシウム塩添加でも排出基準(8 mg L-1)以下にする
ことは困難
⇒ 大量の汚泥が発生し、汚泥(産業廃棄物)の処理に課題
アルミニウム塩法:硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニウムなどを添
加し,フッ素を中性付近で凝集沈殿あるいは共沈させて分離する。
⇒ 低濃度のフッ素含有排水のみに適用
⇒ 処理後のフッ素濃度を 5 mg L-1 以下にできるが,アルミニウム塩
の使用量,発生汚泥量が増加
従来技術とその問題点(2)
吸着法
活性アルミナ、層状複水酸化物、希土類化合物、Al担持キレー
ト樹脂などの吸着剤により除去する。
⇒ 高濃度のフッ素含有排水処理に難点
⇒ ランニングコストに課題
晶析法
フッ化カルシウム法、フルオロアパタイト法など晶種となる物質(シード
材)を添加して晶析により、除去する。
⇒ 試薬の添加量など反応条件の適正制御が必要
⇒ シード材により結晶化できるフッ素濃度の範囲が小さい
新技術の特徴・従来技術との比較
・ 発生汚泥量を大幅に減少でき、汚泥(産業廃棄
物)処理コストを削減できる。
・本技術の適用により、1/2~1/3程度のランニング
コスト削減が期待できる。
・フッ素の再資源化、使用済みガラスの再利用に寄
与する。
フッ素除去剤の作製
1. 未処理ガラス
ガラス(無色の瓶)を粉砕・篩い分けして粒径0.5 mm以下とする。
2. 発泡ガラス
粒径 0.5 mm以下のガラス粉末に発泡剤として SiC (0.5 wt%)を添加して約
900℃で焼成し、これを粉砕・篩い分けして粒径 0.5 mm以下とする。
3. 水熱処理ガラス
粒径 0.5 mm以下のガラス粉末 30 g に 5 mol L-1のNaOH 溶液 50 mL加え,
120℃で16 時間水熱処理する。次に、洗浄液の pH が 9 以下になるまで,1
mol L-1酢酸及び純水で洗浄し,80℃で約 20 時間乾燥する。
4. 水熱処理発泡ガラス
粒径 0.5 mm以下の発泡ガラス粉末 30 g に 5 mol L-1の NaOH溶液 50 mL
加え,120℃で16 時間水熱処理する。次に、洗浄液の pH が 9 以下になる
まで,1 mol L-1酢酸及び純水で洗浄し,80℃で約 20 時間乾燥する。
5
接触時間の影響
1000
未処理ガラス
吸着量 / mg・g-1
800
600
400
200
0
0
20
40
60
80
100
60
80
100
時間
発泡ガラス
吸着量 / mg・g-1
1000
800
600
400
200
0
0
20
40
時間
ガラス試料(粒径< 0.5 mm) 0.2 g /20 mL NaF溶液(CF = 10 g L-1, pH 4 ),接触
時間, 0.5~96 時間 (室温);ランタン-アリザリンコンプレキソン法により分析
10 g L-1のフッ素除去に及ぼすpHの影響
未処理ガラス
1000
800
800
吸着量 / mg・g-1
吸着量 / mg・g-1
発泡ガラス
1000
600
400
200
600
400
200
0
0
0
2
4
6
8
10
0
2
4
pH
8
10
pH
水熱処理ガラス
水熱処理発泡ガラス
1000
1000
800
吸着量 / mg・g-1
800
吸着量 / mg・g-1
6
600
400
200
600
400
200
0
0
0
2
4
6
pH
8
10
0
2
4
6
8
10
pH
ガラス試料(粒径< 0.5 mm), 0.2 g / 20 mL NaF溶液; 接触時間, 72 時間 (室温);
ランタン-アリザリンコンプレキソン法により分析
1.0 g L-1のフッ素除去に及ぼすpHの影響
未処理ガラス
発泡ガラス
100
除去量 / mg・g-1
80
60
40
20
0
1
3
5
7
9
80
60
40
20
0
11
1
3
5
pH
除去量 / mg・g-1
80
60
40
20
0
3
9
11
水熱処理発泡ガラス
100
1
7
pH
水熱処理ガラス
100
除去量 / mg・g-1
除去量 / mg・g-1
100
5
7
pH
9
11
80
60
40
20
0
1
3
5
7
9
11
pH
ガラス試料(粒径< 0.5 mm), 0.2 g / 20 mL NaF溶液; 接触時間, 72 時間(室温);
ランタン-アリザリンコンプレキソン法により分析
ガラス種類別ガラス粉末のフッ素除去量
種類
フッ素除去量 / mg g-1
石英ガラス
800
ホウケイ酸ガラス
870
CRTファンネルガラス
470
CRTパネルガラス
720
溶融スラグ
760
ソーダ石灰ガラス
730
平衡pH
3.3
3.1
4.2
4.4
3.7
3.3
粒径の影響
粒径/ mm
< 0.125
0.125 ~ 0.5
0.5 ~ 2
2 ~ 5.6
5.6 ~ 11.2
11.2 ~ 22.5
フッ素除去量 / mg g-1
900
750
880
630
540
430
平衡pH
4.6
4.4
4.0
4.2
4.1
3.9
ガラス試料, 0.2 g / 20 mL NaF溶液(CF=10 g L-1);接触時間, 72 時間 (室温);
ランタン-アリザリンコンプレキソン法により分析
X線回析
①未処理ガラス
②フッ素吸着後の
未処理ガラス
③水熱処理ガラス
④フッ素吸着後の
水熱処理ガラス
0
●
20
40
60
2q / degree
80
100
ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム (Na2SiF6)
ヘキサフルオロケイ酸ナトリウムの生成反応
NaF
→ Na+ + F-
F- + H+ ⇆ HF
(pKa = 3.2)
SiO2 + 6HF → SiF62- + 2H+ + 2H2O (pH < 3.2)
SiO2 + 4H+ + 6F- → SiF62- + 2H2O (pH > 3.2)
SiF62- + 2Na+ → Na2SiF6
ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム
(ケイフッ化ナトリウム)
フッ素吸着除去剤の除去量
吸着除去剤
フッ素除去量 接触時間
(mg g-1)
(時間)
740
72
未処理ガラス
850
72
発泡ガラス
930
72
水熱処理ガラス
800
72
水熱処理発泡ガラス
Schwertmannite (Fe8O8(OH)6(SO4)·nH2O)
55
24
Nano-geothite
59
2
Glutaraldehyde/Calcium alginate
74
1.5 - 2
Al(OH)3 /Lime stone
84
5
Fe3/O4/Al(OH) 3 nanoparticles
88
4
Al-Ce hybrid adsorbent
91
24
Fe-Al mixed hydroxide
92
2
Tunisian clay mineral
93
72 - 96
CaO/ Activated alumina
101
48
CaO nanoparticles
163
0.5
Fe-Al-Ce trimetal oxide
178
24
Calcined Mg-Al-CO3 lyered double hydroxides
213
5
Nanomagnesia
268
1.5 - 2
平衡
pH
4.4
4.4
4.4
3.5
3.8
5.8
8
8
6.5
6
4
3
5.5
2-8
7
6
7
A. Bhatnagar, E. Kumara, M. Sillanpaa, Chem. Engineering J., 171 (2011) 811.
12
フッ素の初濃度と
除去量
除去量 / mg g-1
1000
100
10
1
0.1
1
10
100
CF /mg L -1
1000
10000
水熱処理発泡ガラス, 0.2 g / 20 mL NaF溶液;接触時間, 4 時間; 25℃; イオン電極法により分析
固液比の影響
100
除去率/ %
80
60
40
20
0
0.001
0.01
0.1
0.5
固液比
CF/ mg L-1: ○, 100; □, 1000
水熱処理発泡ガラス, 0.02 ~4.0 g / 20 mL NaF溶液;接触時間, 4 時間; 25℃; イオン電極法により分析
カラム法によるフッ素の除去と溶離
120
破過曲線
100
残存率/ %
80
60
40
20
0
0
溶離曲線
200
400
通水量/mL
600
200
通水量/mL
300
800
100
CF/mg
80
60
40
20
0
0
100
400
水熱処理発泡ガラス(粒径 0.5 ~ 1.0 mm),10 g; 流速, 0.9 mL min-1; NaF溶液(CF = 1.1 g L-1), 1 L;
溶離液, 0.5 mol L-1 HNO3; ランタン-アリザリンコンプレキソン法により分析
想定される用途
- フッ素含有廃液の減量化、処理の低コスト化を
図る半導体製造、液晶製造、金属加工の企業
並び廃液処理業社での使用
- フッ素系の材料廃棄物をフッ素資源として再生
している企業での適用
実用化に向けた課題
- 産業廃水処理プラントでの検証
- テトラフルオロホウ酸イオン(BF4-)の除去
企業への期待
• 未解決のテトラフルオロホウ酸イオン(BF4-)の除去
は、 BF4- の分解により克服できる。
• フッ素の再資源化技術を有する企業との共同研究
を希望する。
• フッ素含有排水処理コストの低減化を検討している
企業には、本技術の導入が有効と思われる。
本技術に関する知的財産権
●発明の名称
●出
願番号
●出 願 人
●発
明 者
フッ素除去剤、フッ素含有廃水の
処理方法
特願2012-023795
国立大学法人鳥取大学
鳥取県
株式会社鳥取再資源化研究所
中野惠文, 山本直樹
門木秀幸, 居蔵岳志
田中弘樹
お問い合わせ先
鳥取大学 地域学部 特任教授 中野惠文
TEL
:0857-31-5073
FAX
:0857-31-5076
e-mail :[email protected]
鳥取大学 産学・地域連携推進機構
知的財産管理運用部門長・教授 三須 幸一郎
TEL
:0857-31-6000
FAX
:0857-31-5474
e-mail :chizai@adm.tottori-u.ac.jp