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第 2 特 集
P A
2
R T 福谷電器
(神奈川県横浜市)
「私も着けてます」で説得力倍増 !
年間 25 台以上を売る「秘けつ」とは
神奈川県横浜市に店を構える福谷電器は、
年商約 8,000 万円、粗利益率 38% の地域有力
店だ。福谷直晴社長は 2014 年 4 月から補聴器
の販売を本格的にスタートさせ、1 年足らず
で 25 台、金額にして約 700 万円も販売した実
績を持つ。
補聴器に本腰を入れて取り組んだきっか
けは「14 年度の売り上げを何で作っていく
◀自ら補聴器を着け
て御用聞き営業に
回っている福谷直
晴社長
か」について真剣に考えたことだった。昨年
の 4 月と言えば、消費増税後の反動減が目に
見えており、冷夏の予想もあったため主力商
と考えた。また、何よりも強い動機になった
品のエアコンの販売も期待できないという不
のは福谷社長自身が補聴器を着けてみて、そ
安がよぎったという。
の良さを実感して「提案すれば、必ず売れる」
そんなとき、これまで何台か売ったことの
と確信したことだ。
ある補聴器にもっと力を注いでみてはどうか
福谷社長は現在 60 代半ば。年齢とともに聴
力も落ちてきていた。店の従業員や家族は、
会話をするたびに何度も聞き返され、大声で
話さなければならず困っていた。福谷社長と
コミュニケーションを取ることに消極的にな
ることもあったほどだ。
そうした事情もあり、福谷社長は補聴器を
着けてみた。そのとき初めて、着けていなか
った時の不便さを実感したという。懸念して
いた雑音もなく、見た目もほとんど目立たな
所在地
年 商
粗利率
顧客数
従業者
系 列
神奈川県横浜市
約 8,000 万円
約 38%
約 700 世帯
4名
(うちパート 1 名)
パナソニック
54 技術営業 2015.3
い。何度か調整して、1 カ月ほどで使い慣れ
た。現在では着けていることを忘れるほど違
和感を感じないという。
従業員や家族との会話も大声を出さずに
済み、コミュニケーションがスムーズになっ
第 2 特 集
●図 福谷社長の補聴器営業
1 訪問
福谷社長
2 聴力測定・試着
お客
話がしづらくて娘さんが
困っているみたいですよ
● 私も着けているんですよ
● 測定してみませんか
相談員
福谷社長
お客
相談員
福谷社長
お客が試しに着けて、聞こえを実感した後
私のはこれ(最上位の
タイプ)
です。
(ワンラン
ク下のタイプよりも)
調
整が幅広くできますよ
測定してみようかしら
➡相談員がお客の家に訪問する
日程を決める
私もそれにするわ
成約率ほぼ100%
お客
調子はどうですか
福谷さんはどれを着けているの?
…
●
3 調整
「耳が痛い」
「高い音が
気になる」.etc
私も着けているので
よく分かりますよ。調
整しましょう
➡相談員や福谷社長が調整
に使ってもらうには必須だからだ。
ったり、
「どうせ買っても聞こえない」
というネ
そのことが如実に表れているエピソードが
ガティブなイメージにつながってしまうのだ。
ある。数年前に補聴器を自店で購入したお客
現在では、購入から 1 週間後と 1 カ月後に
を福谷社長が訪問したある日のこと。
「以前ご
は、相談員が同行して必ずメンテを行ってい
購入いただいた補聴器はどうですか」と尋ね
る。一回ごとのメンテがお客の多くの不満を
ると、普段穏やかなお客が怒った様子で「捨
解消する。その際、お客に違和感や痛みなど
てた !」
と答えたという。
の不満点をあらかじめ箇条書きにしておいて
理由は、お客が慣れるまで調整を行わなか
もらっている。訪問時にはその内容をもとに
ったためだ。当時の福谷社長は「補聴器の調
調整。箇条書きの内容がすべてなくなるまで
整はお客から言われたときだけでいい」と思
何度も調整を続ける仕組みだ。
い込んでおり、自分から購入後の聞こえ具合
福谷社長は「耳が痛い」
「聞こえづらい」な
を聞いたりしていなかった。
どのお客の不満に対して「私も着けているの
福谷社長自身が補聴器を使用してメンテ
でよく分かりますよ」と伝えてから調整を行
の重要性を知った今、補聴器を捨ててしまっ
う。お客は「自分の気持ちを分かってくれる」
たお客に改めて提案した。慣れるまでには何
と感じられるからこそ、安心してメンテにも
度も調整が必要で、慣れれば着けていること
応じてくれるのだろう。
を忘れてしまうほどになることを自身の体験
今、売り上げを作るのに悩んでいる店にと
を交えて伝えた。するとお客は怒っていたに
って補聴器ほど適した商品はない。聴力測定
も関わらず、再び購入を決めたという。
やメンテ面におけるメーカー相談員によるサ
購入客は耳が痛くて聞こえづらくても、自
ポートも助かる。福谷社長は「私と同じくら
分からはそのことを積極的に話さない。家電
いの年齢の店主であれば、まずは自分が補聴
製品とは異なり、デリケートな商品だからこ
器を着けるべき。そうすれば必ず良さが分か
そ、店側から「調子はどうですか」と尋ねなけ
り、その実感をお客に伝えられる。補聴器を
れば、補聴器がタンスの肥やしになってしま
始めない手はない」
と語る。
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