The Japan Institute of Energy No.69 溶剤抽出フラクショネーション法による構造分析に基づく 石炭・粘結材のコークス化挙動予測の試み (京都大)○蘆田 隆一、高島 健人、三浦 孝一 (神戸製鋼所)奥山 憲幸、濱口 眞基、宍戸 貴洋 Prediction of Coking Behavior of Coking Coals and Binder through Characterization Utilizing High Temperature Solvent Fractionation ○Ryuichi ASHIDA, Kento TAKASHIMA, Kouichi MIURA (Department of Chemical Engineering, Kyoto University) Noriyuki OKUYAMA, Maki HAMAGUCHI, Takahiro SHISHIDO (Coal and Energy Technology Department, Technical Development Group, Kobe Steel, Ltd.) SYNOPSIS: Steel industries need to increase the use of low-grade coals in coke making due to the recent rapid increase in coking coal price. To do so, it is necessary to effectively use binders, and it is desired to develop a theory on how to mix coals and binders effectively. In this work the coal fractionation method proposed by the authors was applied to characterize coals and binders. Nine different-rank coals and two binders (HPC developed by Kobe Steel and ASP) that were heat-treated at 400°C in advance were separated into three fractions having different molecular weight by solvent extraction at 350°C. The chemical and physical properties of each fraction were found to be almost independent of the coal and binder types. Based on the results, it was clarified that the thermoplastic behaviors of the mixture of several coals and binders and the strength of their resulting coke can be correlated to the relative abundance of the fractions in the mixture. It is therefore possible to determine an appropriate mixing ratio of coals and binders to obtain high-strength coke. This approach can be expected as a new mixing theory which is applicable even to the low-grade coals that have not been used and newly-developed binders. 1. 緒言 製鉄用コークスの原料となる良質な石炭の枯渇が 懸念されるなか、コークス原料に占める劣質な石炭 の割合は今後ますます増加すると予想される。劣質 な石炭をコークス原料とするには、粘結材と複数の 石炭の効果的な配合が重要になると考えられるが、 現在石炭配合法は経験的手法を用いており、劣質炭 や粘結材にも適用できる構造特性に基づいた配合理 論は確立されていない。石炭・粘結材配合の最適化 を図るためには、石炭、粘結材両方の構造特性を評 価できる新たな手法が必要となる。 本研究室では、これまでに、350°C 以下における 無極性溶剤による石炭の抽出により、石炭を分解す ることなく分子量の異なる複数の成分に分離する溶 剤抽出フラクショネーション法を提案し、それが石 炭の新たなキャラクタリゼーション法となりうるこ とを示した 1)。本研究では、提案法により分離した 各成分の構成割合から原料炭や粘結材を特徴づけ、 それから配合炭のコークス化挙動やコークス強度を 予測する新たな手法の開発を目指した。 2. 実験 石炭として C: 83 ~ 92% の 9 種類の石炭を、粘結材 として一般炭を無極性溶剤で熱時抽出して製造した 高 性 能 粘 結 材 (HPC) 2) と ア ス フ ァ ル ト ピ ッ チ (ASP) を用いた。これら石炭、粘結材を一度 400°C まで加熱し熱分解の進行度を合わせた試料をフラク ショネーション実験に供した。 フラクショネーション実験には溶剤流通型の抽出 装置を用いた。抽出操作の詳細は前報 1) のとおりで あるが、一度の抽出操作で、高温で抽出され室温に おいても溶剤に可溶である成分 (Soluble)、高温で抽 出されるが室温では固体として析出する成 分 (Deposit) 、 抽 出 温 度 で も 抽 出 さ れ な い 成 分 (Residue) に、石炭および粘結材が分離される。こ こでは、抽出を 350°C で実施した。 3. 結果と考察 石炭および粘結材の各フラクションの割合を Fig. 1 に示す。抽出される成分 (Soluble、Deposit) の割合 は F 炭が 6 割弱、A 炭が 2 割強などと石炭によって 大きく異なった。また、粘結材は石炭よりも抽出成 分の割合が大きく、ASP では 8 割、HPC では 6 割強 にも達した。このように石炭と粘結材の間だけでな く、石炭間、粘結材間でも、フラクションの構成比 が大きく異なった。 - 134 - NII-Electronic Library Service The Japan Institute of Energy Residue 高強度領域 Soluble Deposit (C%) A coal (91.8) B coal (90.5) C coal (90.2) D coal (89.6) E coal (87.0) F coal (85.7) 低強度領域 G coal (83.9) H coal (83.9) I coal (83.4) ASP HPC 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 Proportion of each fraction [kg/kg-d.b.] DI 0.0 Fig. 1 Composition of the coals and binders. Deposit Soluble 87.7 87.4 87.2 87.2 86.7 86.6 86.4 86.2 86.1 86.0 85.4 85.2 85.2 85.1 85.0 85.0 84.5 84.5 84.4 84.2 84.1 83.3 82.7 82.7 82.7 79.4 77.8 77.8 77.6 74.7 0.2 Residue 0.4 0.6 0.8 1.0 Proportion of each fraction [kg/kg-d.b] Residue Composition of mixtures of coals and binders arranged in DI order. Deposit Soluble G coal 86 78 Coal Binder 600 40 30 20 0 10 90 Temperature [°C] 10 % 80 70 60 Residue 90 10 0% 各フラクションの元素分析、分子量分布測定、熱 重量、熱機械分析から、各フラクションの性状はそ の由来が石炭か粘結材かにかかわらず、ほぼ同じで あることがわかった。例として、Fig. 2 に各フラクシ ョンの熱機械分析曲線を比較した。ほとんどの Soluble は 100 ~ 200°C という比較的低温で顕著な軟 化溶融性を示し、その挙動はもとの石炭、粘結材の 種類にあまりよらなかった。Deposit はいずれの石炭、 粘結材のものであっても同様に 400°C 付近以上で軟 化溶融した。一方、いずれの石炭、粘結材の Residue も全く溶融性は示さなかった。 以上より、石炭、粘結材、配合炭のコークス化挙 動、コークス強度は各フラクションの割合の違いに よって説明できる可能性が示唆された。 そこで、3 ~ 4 種類の石炭、あるいは 4 ~ 5 種類の 石炭/粘結材から成る配合炭の各フラクションの構 成比と、それらから製造されるコークスの強度との 関係を調べた。配合炭の各フラクションの構成割合 とコークス強度 (DI: ドラム指数、大きいほど強度が 高い) の関係を Fig. 3 に示す。図より、Soluble の割合 が多く Residue の割合が少ない配合炭ほどコークス 強度が高い傾向がみられる。さらに、三角図を用い て各成分の構成割合とコークス強度 (DI) の関係を 検討した (Fig. 4) 。図より、3 つのフラクションの構 成割合と DI に相関が見られ、Soluble : 30%、Deposit : 12%、Residue : 58% あたりで最大の DI となった。 0 40 0 Fig. 2 Thermomechanical analysis curves. 30 500 20 400 10 300 50 80 200 60 70 74 100 70 60 76 -1.0 80 50 -0.8 90 40 80 F coal 100% 30 82 20 84 Soluble -0.6 10 -0.4 0 88 50 -0.2 Fig. 3 DI Normalized displacement [-] 0.0 Deposit Fig. 4 Contour plot of DI on a ternary diagram of the three fractions. 以上より、3 つのフラクションの割合を調整して石 炭および粘結材を配合することにより、望ましい強 度のコークスが得られる可能性が示された。 4. 結言 溶剤抽出フラクショネーション法によって、石炭 および粘結材を、原料種に性状が依存しない複数の フラクションに分離し、その構成割合から石炭と粘 結材の配合試料の軟化溶融挙動や得られるコークス の強度を合理的に予測できることを示した。この手 法により劣質炭の使用割合の増加に対応して粘結材 を効率的に利用できるようになるだけでなく、同手 法は使用する種類が拡大しつつある石炭そのものの 新たな配合理論としても期待される。 【謝辞】 本研究は NEDO 事業「環境調和型製鉄プロセス技術開発 (COURSE50)」の一環で実施されたものである。 【参考文献】 1) Ashida R. et al., Fuel, 87, 576–582 (2008) 2) 奥山憲幸ら, 神戸製鋼技報, 56, 15–22 (2006) - 135 - NII-Electronic Library Service
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