平成27年2月県議会 定 例 会 に お け る 環境部長議案説明要旨 今回提出いたしました議案のうち、環境部関係につきまして、その概要を御 説明申し上げます。 環境部関係の平成 27 年度当初予算案の総額は、一般会計 62 億 2,714 万6千 円、流域下水道事業費特別会計 116 億 2,323 万円2千円であります。 今日の環境問題は、水・大気環境の保全や廃棄物による環境負荷などの身近 なところから、地球温暖化の進行、生態系の変化など地球規模にまで広がりを 見せています。 私たちが暮らす長野県は、雄大な山岳、豊かな森林とそこで育まれた清らか な水など、四季の変化に富んだ全国でも有数の美しい自然に恵まれています。 県民の貴重な財産である本県の美しく豊かな環境を、確実に未来へ引き継いで いくことが、今、強く求められています。 また、地方創生に向けては、人口減少の抑制と人口減少を踏まえた地域社会 の維持・活性化が大きな課題となっております。環境部といたしましては、こ うした取組の基盤となる本県の豊かな自然環境に一層磨きをかけるほか、自然 エネルギーの導入推進等による地域の活性化や人口減少社会における上下水道 の維持管理に適切に取り組んでいく必要があると考えております。 このほか、昨年大きな被害をもたらしました御嶽山噴火災害や神城断層地震 につきましては、被災地の一日も早い復旧、復興に向けて、被災市町村や国と 連携を密にし、全力で取り組んでまいります。 こうした状況を踏まえ、来年度は、引き続き「しあわせ信州創造プラン」及 - 1 - び「第三次長野県環境基本計画」に基づき、県民、事業者、行政など、あらゆ る主体により、「参加と連携で築く 豊かな環境・持続可能な信州」を目指して、 地球温暖化対策と環境エネルギー政策の推進、循環型社会の形成、水・大気環 境や自然環境の保全などに、取り組んでまいります。 以下、主な施策につきまして、環境部の施策体系に沿って、順次御説明申し 上げます。 第一に「参加と連携による環境保全」について申し上げます。 地球温暖化防止や循環型社会の形成などに向けた取組を推進し、持続可能な 社会を構築するためには、行政はもとより、県民、事業者、関係団体など、あ らゆる主体の参加と連携による取組を進めていくことが必要です。経済団体な どと連携して「信州環境フェア」を長野市で開催するとともに、各地域で開催 される環境イベント等への出展を拡充し、環境保全の取組を各地域に広めてま いります。また、県下の幅広い分野の団体で構成する「信州豊かな環境づくり 県民会議」を通じて、環境保全一斉行動などの県民運動を推進するとともに、 様々な主体による環境学習活動を支援してまいります。 環境影響評価につきましては、来年度も複数の審査案件が見込まれておりま すので、水・大気環境、動植物、景観など幅広い観点から十分な環境保全対策 が講じられるよう求めていくとともに、県の公共事業に対しても、公共事業等 環境配慮制度に基づき、事業実施に当たり環境への配慮が適切になされるよう 取り組んでまいります。 第二に「地球温暖化対策・環境エネルギー政策の推進」について申し上げま す。 県では、温室効果ガス排出量の増加や福島第一原子力発電所の事故等に伴う - 2 - エネルギー情勢の変化を踏まえ、平成 25 年2月に策定した「長野県環境エネル ギー戦略」に基づき、省エネルギー化の促進、自然エネルギーの普及拡大及び 総合的な地球温暖化対策の推進を3つの柱として施策を展開しているところで す。発電設備容量でみるエネルギー自給率につきましては、平成 25 年度に 70.0 パーセントとなり、しあわせ信州創造プランの目標を4年前倒しで達成するこ とができました。 来年度は、現在国において検討されている固定価格買取制度の見直しの内容 も踏まえながら、この目標の上方修正を行い、引き続き「長野県環境エネルギ ー戦略」に基づく施策を推進してまいります。 省エネルギー化の促進につきましては、省エネアドバイスや省エネ診断によ り家庭の省エネ・節電の取組を直接支援する「家庭の省エネサポート制度」を、 年間 25,000 件を目標に、引き続き推進するほか、「事業活動温暖化対策計画書 制度」に基づく事業者の省エネ化の取組を支援し、温室効果ガスの排出量の前 年度比1パーセントの削減を目指してまいります。 自然エネルギーの普及拡大につきましては、固定価格買取制度を活用した自 然エネルギーの導入を推進するため、地域のNPOや中小企業の皆様が行う自 然エネルギー発電事業のソフト事業に対して支援を行ってまいりましたが、来 年度は補助対象を施設設備にまで拡充してまいります。中でも今後の普及が期 待される小水力発電については、その導入を促進するため、補助率等を優遇し た支援を行ってまいります。また、地域主導型で行う熱利用による自然エネル ギー事業の創出や、市町村などが行う避難所や防災拠点への自然エネルギー設 備の導入に対して支援してまいります。 地球温暖化の影響につきましては、国の予測では、今世紀末には全国の年平 均気温が最大で 4.4 度の上昇が見込まれており、農作物の栽培適地の変動、生 態系や自然環境の損失、降雨量の増加など、様々な影響の可能性が指摘されて - 3 - います。そのため、省エネ等により温室効果ガス排出量を削減し、温暖化の進 行を抑制する「緩和策」とともに、地球温暖化に伴う気候変動に備える「適応 策」の取組を進めていくことが必要となっています。 県においては、気候変動に適応する技術開発を促進し、信州から国内外へ発 信することを目指した取組に着手することといたしました。来年度はその第一 歩として、関係機関のネットワークを構築し、気象情報等のデータベース化を 進め、精度の高い気候変動予測とその影響分析に取り組んでまいります。 第三に「循環型社会の形成」について申し上げます。 生活の豊かさと環境保全の両立による持続可能な循環型社会の形成を目指し て、県では平成 23 年度から 27 年度を計画期間とする「第三期長野県廃棄物処 理計画」に基づき、県民、事業者、市町村との連携・協働により、廃棄物の徹 底した排出抑制と環境に配慮した循環的利用、適正処理の推進に取り組んでま いりました。この計画期間が満了することから、来年度は、有識者や市町村な どの御意見を伺いながら、これまでの成果と課題を検証し、平成 28 年度から 32 年度を計画期間とする次期の計画を策定してまいります。 スリーアール 循環型社会システムの構築に向け、県では、生活全般へ 3 R (リデュース・ リユース・リサイクル)の行動を広げ、廃棄物の発生抑制や再資源化に取り組 む社会づくりを進めております。平成 25 年 10 月の消費者団体・事業者・県及 び市町村による「レジ袋削減協働アピール」に基づき、県民のマイバッグ等持 参率 80 パーセント以上と、事業者のレジ袋総使用量の前年度比減を目指し、各 主体の取組を支援してまいります。 ごみ減量化の取組につきましては、平成 24 年度の 1 人 1 日当たりの排出量 は 862 グラムであり、近年横ばい傾向となっております。このため、平成 29 年度の目標である 800 グラムを目指し、職員による政策研究グループの提案や - 4 - 市町村からの要望を踏まえ、県下 10 地方事務所において所長をトップとするご み減量化に向けた「チャレンジ 800 実行チーム」を設置し、市町村と連携し地 域の実情に応じた取組を進めてまいります。また、食品ロスを削減するため、 「食べ残しを減らそう県民運動」の充実や、新たに次代を担う子供たちに食の 大切さ・食の循環を学ぶ機会の提供を実施してまいります。 スリーアール また、産業廃棄物の減量化や適正処理については、産業廃棄物 3 R 実践協 定の締結事業者の拡大を図り、自主的に取り組む事業者の支援を行うほか、平 成 38 年度までの適正な処分が求められているPCB廃棄物について、期限内に 処理を完了させるため、PCB使用製品やPCB廃棄物を把握するための調査 を実施してまいります。 廃棄物の不適正処理や不法投棄の防止につきましては、産業廃棄物排出事業 者、処理業者に対する立入検査の実施や違反に対する行政処分など厳正かつ迅 速な対応を行ってまいります。また、不法投棄監視連絡員及び廃棄物指導員を 引き続き配置するほか、夜間パトロールや消防防災ヘリコプターによる廃棄物 上空監視を実施するなど、県民や市町村、警察等の関係機関と連携した監視体 制により、不法投棄の未然防止と早期発見に努めてまいります。 第四に「水・大気環境の保全」について申し上げます。 長野県は、8つの一級水系の源流域であるとともに、数多くの水源を有して おり、下流域の貴重な水瓶としての役割も担っています。 県民共有の貴重な財産であるこれらの水資源を将来にわたって保全してい くため、引き続き「第5次長野県水環境保全総合計画」に基づき、水環境保全 対策の総合的な推進を図ってまいります。来年度は、現在とりまとめ中の水資 源実態調査の結果を踏まえ、各地域において水資源のかん養や利活用について の取組を進めるとともに、「長野県豊かな水資源の保全に関する条例」に基づ - 5 - く水資源保全地域の指定を希望する市町村を積極的に支援し、円滑な指定につ なげていくほか、安曇野市で開催される全国名水サミットの開催を支援してま いります。また、人口減少下においても安全安心な水道を将来にわたって維持 していくため、水道事業者を始めとする関係者の取組の指針となる水道ビジョ ンの策定に着手してまいります。 このほか、河川・湖沼・地下水等の水質常時監視や発生源対策を引き続き実施 するとともに、特に本県の代表的な湖である諏訪湖については、湖底の貧酸素 状態の解消を始めとした環境改善手法の検討を進めるなど、農政部、建設部と 連携しながら、しじみの採れる諏訪湖を目指して、環境改善に取り組んでまい ります。 生活排水対策につきましては、平成 25 年度末の汚水処理人口普及率が 96.8 パーセントで全国5位と高い水準にあります。県ではこれまで、人口減少や流 入水量の減少予測等に対応した経営の改善、あるいは、汚泥の有効利用など多 くの課題に対応するため、平成 22 年度に策定した「長野県“水循環・資源循環 のみち 2010”構想」に基づき、県と市町村が一体となって地域の状況に合わせ た計画的・効率的な施設整備や管理経営に取り組んでまいりました。構想の策 定から5年目を迎える来年度は、社会情勢や各自治体の状況の変化に対応する ため、この構想の見直しを行ってまいります。 流域下水道における幹線管渠、終末処理場の水処理施設、汚泥焼却炉等の整 備や改築、農業集落排水における施設の改築については、長寿命化や耐震性を 向上させながら計画的に推進するとともに、合併処理浄化槽の整備に対して助 成を行います。また、流域下水道施設の維持管理業務につきましては、来年度 から「長野県出資等外郭団体改革基本方針」に基づき、すべての処理場におい て長野県下水道公社への委託を廃止し、県の直営管理となりますので、円滑に 移行できるよう万全を期してまいります。 - 6 - 大気環境につきましては、微小粒子状物質「PM2.5」や光化学オキシダン トなどに対応するため、一般環境や道路周辺の大気汚染状況を的確に把握し、 迅速な情報提供を行ってまいります。また、中国の大気環境改善のための都市 間連携協力として、先月、河北省と覚書を締結いたしました。今後、環境保全 研究所を中心に、研修生の受入れ等の交流を進めてまいります。 第五に「自然環境の保全」について申し上げます。 すべての生命の基盤である生物多様性を守り、その恵みを将来にわたって享 受していくため、県では「生物多様性ながの県戦略」に基づき、県民、団体・ NPO、事業者等と連携の上、世界の生物多様性のホットスポットともいわれ る長野県の自然や生態系の特性に応じ、効果的な保全対策を進めております。 絶滅のおそれのある野生動植物のレッドリストについては、昨年度から見直 しを進めており、年度内には改訂版が完成の予定ですが、この結果、県内の動 植物の生息環境が悪化し、絶滅危惧種も増加していることが明らかとなりまし た。県のシンボルであるライチョウについては、絶滅のおそれが高まっている ことから、保全対策の基礎となる生息状況調査を実施するとともに、保全活動 に取り組む方々の育成を図ってまいります。また、新たに「人と生きもの パ ートナーシップ推進事業」を立ち上げ、県内各地域の保全活動と企業をはじめ とする多様な主体とをつなぐ仕組みづくりを進めてまいります。 自然公園の管理につきましては、 「信州 山の日」制定により醸成された機運 を活かし、本県の自然公園の魅力を向上させ、県内外に発信していくため、県 立公園のあり方を検討するとともに、山ノ内町で開催される東アジア生物圏保 全地域(ユネスコエコパーク)ネットワーク会議の開催を支援してまいります。 山岳環境の整備につきましては、世界水準の山岳高原観光地づくりを進め、 山岳環境の保全と適正な利用を図るため、今年度、国、市町村、山小屋関係者 - 7 - からなる山岳環境連絡会を立ち上げ、山岳環境の保全に係る方針等について検 討を行ってまいりました。今後の課題として、関係者の合意による山域のデザ インと登山道の維持管理のあり方の検討、昨年度の調査で判明した 300 か所の 危険か所の早期解消、登山者への情報発信などの必要性が、明らかになってま いりました。このため、来年度は、5つの山域をモデルとして、山岳関係者等 との登山道の協働管理体制を構築しながら、協議に基づく整備を進め、この結 果を踏まえて、全国に先駆けて、山岳環境の保全と適正な利活用のための方針 を策定してまいります。特に、御嶽山噴火により被災した登山道につきまして は、入山規制の状況を踏まえて、地元町村の御要望もお伺いしながら、迅速な 復旧がなされるよう支援してまいります。 次に、債務負担行為といたしましては、流域別下水道整備総合計画の策定に ついて 918 万円、流域下水道事業において 31 億 6,800 万円を設定いたしました。 環境部に関係する条例案につきましては、「長野県手数料徴収条例の一部を 改正する条例案」及び「廃棄物の適正な処理の確保に関する条例の一部を改正 する条例案」の2件であります。 事件案につきましては、「流域下水道建設事業施行に伴う市町村の負担につ いて」及び「長野県千曲川流域下水道の維持管理に要する費用の負担について」 の2件であります。 以上、環境部関係の議案につきまして、その概要を御説明申し上げました。 よろしく御審議の程をお願い申し上げます。 - 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