[12]The Daily NNA タイ版【Thailand Edition】 第 04903 号 2014 年(平成 26 年)12 月 24 日(水) 第12回・労働法(5)休暇その2 <今回のポイント> 今回は、前回に引き続き休暇について述べる。 1.特別休暇 (1)取得日数及び要件 労働者は、自ら及び子の結婚、妻の出産、並びに、 配偶者、子及び親の病気及び死亡時等、家族にとって 重大な出来事があった場合、1年間に7日まで、有給 の特別休暇を取得することができる(労働法(以下、 法令名省略)171 条、2001 年労働省令 267 号第1条、 労働仲裁 2012 年 144 号事件)。 (2)年次有給休暇との関係 この点、当該労働者の年次有給休暇が残存している 場合、使用者は、当該労働者が取得した特別休暇の日 数を残存している年次有給休暇から差し引くことがで きる(同省令第2条)。 他方、年次有給休暇の残りがない場合には、使用者 は当該労働者に対し、特別休暇の分の労働を埋め合わ せるために、勤務日の所定労働時間外に総労働時間が 日に 10 時間、週 54 時間を超えない限度で労働するこ とを求めることができる(同省令3条)。なお、この期 間中の賃金は、残業代の割合ではなく、通常の賃金の 割合で計算される(同省令4条)。 2.病気休暇 (1)病気休暇の取得(71 条) 労働者は、病気について医師の証明書がある場合、 6カ月まで病気休暇を取得することができる。他方、 休暇期間6カ月を超える場合、使用者は当該労働者を 解雇することができる。 (2)病気休暇中の賃金 労働法は、病気休暇中の労働者に対する賃金に関す る規定を置いていない。しかし、労働省は使用者に対 し、以下の病気休暇に関する規定を就業規則に置くこ とを求めている(2002 年労働省通達 14 号添付資料)。 ・1カ月目は賃金全額を支払う ・2カ月目と3カ月目は賃金の 60%を支払う ・4カ月目から6カ月目までは無給であるが勤続年 数には加算される (3)皆勤手当との関係 第 10 回で述べたところではあるが、労働者が適法に 病気休暇を取得した場合であっても皆勤に該当しうる こと、そして、皆勤に該当する場合には、病気休暇分 を差し引いた割合の皆勤手当が支払われることになる ことに注意を要する。 3.出産・育児に関する規定 (1)産休 (ア)期間について 労働者は、90 日間の産休を取得することができる (182 条1項)。 この点、労働法は、いつからいつまでの間に 90 日の 産休を取得することができるかについて明記していな いが、実務上は、産前から産後の労働者の希望した期 間に産休を取得することができるという運用がなされ ている。 (イ)産休中の給与等について 1年以上勤続した労働者は、産休期間中、手当を含 んだ給与の半額の支払いを受けることができる(183 条1項、4項)。 労働仲裁委員会の判断によれば、支払われるべき「手 当を含んだ給与の半額」は、産休取得前 12 カ月間に当 該労働者に支給された給与及び手当の総額を 12 カ月 で割ったものの半額として計算されなければならな い。 (2)育児期間中の労働者保護に関する規定 (ア)授乳時間の付与(184 条) 使用者は、自らの子に授乳を行う労働者に対し、出 産から1年間、所定の休憩時間とは別に1日1時間、 有給の授乳時間を付与しなければならない。 (イ)授乳室及び託児所の設置(186 条) 100 人以上の女性労働者を雇用する使用者は、授乳 室及び託児所を設置しなければならない(同1項)。 使用者は、対象となる女性労働者に対して託児所の 費用・手当を支払うことによって託児所の設置義務を 免れることができるが(同2項)、他方、授乳室の設置 義務は費用等の支払いによっても免れることができな いため(労働仲裁 2011 年 74 事件等)、注意を要する。 <プロフィル> ■藪本雄登(やぶもと ゆうと)JBL Mekong 代表 ■村上暢昭(むらかみ のぶあき)JBL Mekong 常駐 弁護士、兵庫県弁護士会所属 Copyright(C) NNA All rights reserved. 記事の無断転載・複製・転送を禁じます 【ASIA】www.nna.jp/ 【EU】www.nna.eu/
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