The Daily NNAミャンマー版【Myanmar Edition】 第

2015 年(平成 27 年)2 月 12 日(木)
The Daily NNA ミャンマー版【Myanmar Edition】 第 00344 号[7]
労働法(8)懲戒処分
第15回
<今回のポイント>
今回は、懲戒解雇を含む懲戒処分について述べる。
次回以降、懲戒解雇を含む雇用契約終了時の法的規
制・権利義務関係について詳述する予定である。
1.懲戒処分総論
労働仲裁裁定上、使用者が労働者に対して懲戒処分を行
う場合、使用者は、当該労働者が行った懲戒事由に該当す
る企業秩序違反行為についての証拠を準備しなければなら
ないとされている(2012 年 193 号事件等)。
使用者が労働者に対して懲戒処分を行う場合、労働者の
懲戒事由に該当する秩序違反行為を知ってから 15 日以内
でなければ、当該行為を理由とする(解雇処分を除く)懲
戒処分を行うことができない(労働法(以下、法令名省略)
26 条1項)。使用者が懲戒解雇処分を行う場合については、
懲戒解雇事由に該当する重大な秩序違反行為を知ってから
7日以内でなければ、これを行うことができない(同条2
項)。
2.休職処分
(1)総論
休職処分中、使用者は労働者に対して賃金支払義務を負
わず(72 条1項)、他方、労働者は使用者に対して労働義
務を負わない。
もっとも、住居手当等の支払義務については休職期間中
も存続し(同条2項)、休職期間中も(原則として)年功手
当の計算に参入される(同条4項)。また、休職期間中も年
次有給休暇付与の基礎となることから(169 条1項)、これ
らの点については注意を要する。
休職期間終了後、労使間の法律関係は休職以前の状態に
戻る。
(2)休職処分を課するための事由
休職処分は、労働法 71 条各項規定の事由に基づいて行わ
れなければならない。
同条は休職処分を課するための各事由として、就業規則
に基づく懲戒処分としての休職処分(1項7号)、更に、使
用者の経済的状況の悪化を理由とする休職処分(2項)に
ついて規定している。
後者についても重要性が高いと思料されるため、本稿で
は懲戒処分としての休職処分に加えて説明する。
(3)懲戒処分としての休職処分
使用者は、労働者が行ったと疑われる秩序違反行為につ
いて調査する間、当該労働者を休職させることができる。
また、就業規則において懲戒処分として休職処分が規定
【ASIA】www.nna.jp/ 【EU】www.nna.eu/
されており、労働者の秩序違反行為が就業規則規定の懲戒
事由に該当する場合、使用者は当該労働者に対し、当該秩
序違反行為の重大性に応じた期間の休職処分を課すことが
できる(27 条)。
(4)使用者の経済的状況の悪化を理由とする休職処分
使用者は、経済的状況の悪化を理由として、最大2カ月
間、労働者を休職させることができる。
経済状況の悪化を理由とする休職処分は、労働監督官の
監督の下行われなければならない。
労働監督官の監督・承認を欠く場合、休職処分は無効と
なり、使用者は労働者に対して当該期間中の賃金を支払う
義務を負うことになる。
3.懲戒解雇処分
(1)懲戒解雇事由
労働法 83 条2号は、労働者による重大な企業秩序違反行
為として、次の各行為を例示列挙している。
・窃盗、横領等の行為
・雇用契約締結時における虚偽事実の申告、サボタージ
ュ又は職務上知り得た秘密の漏示等
・訓練、安全又は健康に関する規則上についての重大な
違反行為
・使用者や他の労働者に対する暴言、脅迫、暴行又は非
難行為
・重大な企業秩序違反行為を行うよう他の労働者を唆す
行為
・事務所における政治的プロパガンダ、政治活動又は政
治デモ行為
(2)懲戒解雇の手続
懲戒解雇処分を行う場合には、労働者に対する事前の通
知を要しない(82 条2号)。
(3)労働者からの解雇請求
労働仲裁において、労働者側からの、
「不正等を行った他
の労働者の解雇を求める」といった請求が散見される。
しかし、労働者の解雇は使用者の専権の裁量事項である
ため、労働者の行為が懲戒解雇事由に該当するからといっ
て、使用者が解雇処分を行わない限り、当該労働者の雇用
契約が終了することはない。
<プロフィル>
■藪本雄登(やぶもと ゆうと)JBL Mekong 代表
■村上暢昭(むらかみ のぶあき)JBL Mekong 常駐
弁護士、兵庫県弁護士会所属
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