九州・沖縄における建設投資の現状と先行きの展望

2015 年 2 月 19 日
日本銀行福岡支店
Bank of Japan Fukuoka Branch
金融経済トピックス
九州・沖縄における建設投資の現状と先行きの展望
当資料は当店ホームページに掲載しています
<内容に関するお問い合わせ先>
http://www3.boj.or.jp/fukuoka/
日本銀行福岡支店営業課 Tel:092-725-5513
(はじめに)

九州・沖縄(以下、当地という)における今回の景気回復局面の牽引役は、これま
で、財政政策・金融政策に後押しされた建設関連需要、すなわち、公共投資、住
宅投資等が中心であった。もっとも、公共投資関連予算の縮小、住宅着工におけ
る消費税率引き上げに伴う駆け込みの反動減もあって、これらの勢いはこのところ
鈍化しつつある。そこで本稿では、民間(企業)向けを含めた当地の建設投資全
体の動きについて、現状および先行きの展望について考察する。
1.建設投資の推移と建設業の業況感
(1)建設投資の推移

当地の建設投資(建設工事出来高)の推移をやや長い目でみると、所謂バブル
崩壊後から 2011 年度まで、ほぼ一貫して減少傾向を辿っている(図表1)。需要項
目別でみても、公共投資が予算縮小を反映して減少するなか、住宅投資や民間
(企業)向け投資についても、世界的な金融危機以前の 2005~2006 年度にかけ
て一時的に持ち直す局面もみられたが、その時期を除いて弱めで推移した。

もっとも、2012 年度以降は、経済対策関連の公共投資や低金利等を背景とした
住宅投資の増加、非製造業(小売業等)や太陽光発電を中心とした民間(企業)
向け建設投資の増加が相俟って、増加に転じた(図表2)。
(2)建設業の業況感

こうした中で、九州・沖縄の「企業短期経済観測調査」における建設業の業況判
断 D.I.は急速に回復してきた。直近のピークである 2014 年3月調査時(+24)は、
1992 年2月調査以来、約 22 年振りの高水準となっている(図表3)。また、収益性
についても同様に、2013 年度の売上高経常利益率は、比較可能な 1998 年度以
降で最も高い水準となっている(図表4)。
―― 収益性(売上高経常利益率)の回復については、供給サイド(建設業者)の
構造変化に伴い需給ギャップが改善した影響もあるとみられる。建設投資が
減少する中で供給過剰となっていた建設業者数は、所謂バブル崩壊以降、
減少傾向を辿っていたが、2013 年度以降は下げ止まっているほか、建設業
の倒産件数や負債金額も過去最低水準となっている(図表5、6)。
1
2.2014 年度中の建設投資の需要項目別にみた動き

2014 年度中の建設投資の動きをみると、全体では増加を続けた後、このところ一
服感が窺われる。これは、公共投資が高水準で推移するなかで、住宅投資が弱
め、民間(企業)向け建設投資が横ばい圏内の動きとなっているためである。需要
項目別にやや詳しくみると以下の通り。
―― このような建設需給の緩和を反映して、資材価格や建設工事価格は一頃
に比べて落ち着いてきている(図表7、8)。
―― 当地の建設投資における、公共投資、住宅投資、民間(企業)向け建設投
資のウェイトは、概ね5割、3割、2割となっている(図表9)。
(1)公共投資

2014 年度中の公共工事出来高1は、年度初から夏場までは増加を続けたものの、
資材価格の高騰による採算悪化や人手不足による供給サイドの制約もあって、高
水準ながら横ばい圏内の動きを続けている(図表 10)。
―― 建設作業員の労働需給状況をみると、2012 年秋以降、不足超に転じてい
る(図表 11)。この背景として、公共投資が増加した側面も強いが、構造的に
建設業の就業者数が急激に減少していることも影響しているものとみられる
(図表 12)。実際、建設関連業者からは、「団塊の世代が 65 歳になり就業者
が大幅に減少する一方、建設業で働きたいという若者は少ない」といった声
も聞かれている。

こうした供給サイドの制約から、未消化工事高は、季節的な振れがあるものの、水
準としては高めで推移している(図表 13)。
(2)住宅投資

2014 年度中の住宅投資出来高2は、2014 年4月の消費税率引き上げに伴う駆け
込み需要の反動減の影響から、夏以降は増勢が一服し、徐々に弱めの動きとな
った(図表 14)。この間、緩和的な金融環境については、低水準の住宅ローン金
利を通じて潜在需要の掘り起こしに寄与していると考えられる(図表 15)。

利用関係別にみると、貸家は、世界的な金融危機後の供給減少のなかで、低金
利や各種制度変更等による需要喚起もあって、高めの水準で推移している。一方
1
2
当店における公共工事請負金額からの試算値。詳細は、【BOX1】を参照。
当店における新設住宅着工戸数からの試算値。詳細は、【BOX2】を参照。
2
で、持家、分譲については、消費税率引き上げの反動減等の影響を受け、弱め
の動きとなっているが、このところ、下げ止まりに向けた動きがみられている(図表
16)。
(3)民間(企業)向け建設投資

2014 年度の民間(企業)向けの建設投資は、非製造業を中心に横ばい圏内で推
移している(図表 17)。すなわち、非製造業では、太陽光発電関連の建設や、小
売業の新規出店や物流関連の案件が多くみられたことから高水準で推移してい
るとみられる。一方、製造業では、能力増強のための工場の新増設案件等はまだ
限定的で、既存設備の維持更新が中心となっていることから弱めの動きとなって
いるとみられる。
── 建築着工床面積3をみると、前年度と比べるとやや弱めの動きとなっている
(図表 18)。
3.先行きの展望

先行き(2015 年度)については、公共投資が徐々にピークアウトしていくとみられる
が、一方で民間(企業)向け建設投資の持ち直しに向けた動きが期待されるほか、
住宅投資についても下げ止まりから持ち直しに向けた動きに復することから、全体
としては底堅く推移すると考えられる。需要項目別にみた先行きの見通しは以下
の通り。
(1)公共投資

公共投資については、未消化工事高が高めであることから、当面は高水準を維持
するものの、2014 年度予算の早期執行や、同補正予算における公共投資関連予
算の減少などから先行きの発注高は減少することが予想されるため、工事出来高
ベースでみても、徐々にピークアウトしていくとみられる(前掲図表 10)。
(2)住宅投資

住宅投資については、2015 年度入り後は、政府による住宅市場活性化策や緩和
的な金融環境等が下支え要因となり、下げ止まりから持ち直しに向けた動きに復
すると考えられる(図表 19、前掲図表 14)。このほか、2017 年 4 月に予定されてい
る消費税率引き上げを前に、持家や分譲マンションの着工に向けた動きが再びみ
3
太陽光発電関連の建設は、当統計に含まれないケースが多いと考えられる。
3
られ始めることも想定される(前掲図表 14、16)。
(3)民間(企業)向け建設投資

民間(企業)向け建設投資については、非製造業の太陽光発電関連の案件は減
少していくものの、小売業や物流関連を中心とした案件は引き続きみられるほか、
製造業においても、輸出や企業収益の改善等を背景に、能力増強や研究開発強
化等のための建設投資案件がみられていることから、全体として持ち直していくこ
とが期待される(図表 20、21)。
(4)リスク要因

先行きについては、①需要サイドでは、輸出・生産といった企業サイドを起点とし
た雇用・所得環境の改善が想定通り進んでいくか、②供給サイドでは、建設業従
事者の趨勢的な減少に伴う人手不足のなかで、建設需要が制約を受けないか、
という点には留意する必要がある。
以
4
上
(図表1)建設投資の推移(九州・沖縄、兆円)
9.0 公共投資
8.0 住宅投資
7.0 民間(企業)向け建設投資
6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13 (年度)
(注)住宅投資は、民間の「居住用」(以下同じ)。
(資料)国土交通省「建設総合統計」
(図表2)建設投資の推移(九州・沖縄、前年度比、寄与度、%P)
30.0
公共投資
25.0
住宅投資
20.0
民間(企業)向け建設投資
建設投資計
15.0
10.0
5.0
0.0
▲ 5.0
▲ 10.0
▲ 15.0
00
01
02
03
04
05
06
(資料)国土交通省「建設総合統計」
5
07
08
09
10
11
12
13 (年度)
(図表3)業況判断D.I.の推移(九州・沖縄、建設業、「良い」-「悪い」
、%P)
良い超
40
30
20
10
0
▲ 10
悪い超
▲ 20
▲ 30
▲ 40
▲ 50
99 00 01
02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
14 15 (年)
(注)直近は、2014 年 12 月調査時点での 2015 年 3 月予測値。
シャドーは景気後退局面(内閣府調べ)
。
(資料)日本銀行福岡支店「九州・沖縄『企業短期経済観測調査』
」
(図表4)売上高経常利益率の推移(九州・沖縄、建設業、%)
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
(注)2014 年度は、2014 年 12 月調査時点での計画値。
(資料)日本銀行福岡支店「九州・沖縄『企業短期経済観測調査』」
6
14 (年度)
(図表5)建設業許可業者数の推移(九州・沖縄、万社)
7.5
6.9 7.0
2000年度対比で
約▲2割減少
6.5
6.0
5.5 5.5
5.0
4.5
4.0
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
(年)
14
(注)各年とも3月末時点。
(資料)国土交通省「建設業許可業者数調査」
(図表6)倒産件数および負債金額の推移(九州・沖縄、建設業、件、億円)
900
2,000
件数(右軸)
1,800
800
負債金額(左軸)
1,600
700
1,400
600
1,200
500
1,000
400
800
300
600
200
400
100
200
0
0
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
(資料)(株)東京商工リサーチ福岡支社「九州・沖縄地区企業倒産状況」
7
14
(年)
(図表7)主要建設資材価格の推移(九州・沖縄)
生コンクリート
4.50 4.00 (上昇)
↑
(横ばい)
3.50 3.00 ↓
(下落)
2.50 13/1
4
7
10
14/1
(月)
4
7
10
15/1
4
7
10
15/1 (月)
7
10
異形棒鋼
4.50 4.00 (上昇)
3.50 ↑
(横ばい)
3.00 ↓
(下落)
2.50 13/1
4
7
10
14/1
アスファルト合材
4.50 4.00 (上昇)
↑
(横ばい)
3.50 3.00 ↓
(下落)
2.50 13/1
4
7
10
14/1
4
15/1
(月)
(注)現在の価格動向を、1(下落)、2(やや下落)、3(横ばい)、4(やや上昇)、5(上
昇)として、各モニターから回答を各都道府県別に集計し、その平均により算出した
もの。さらに地域内の8県を単純平均。
アスファルト合材は、新材と再生材の平均値。
(資料)国土交通省「主要建設資材需給・価格動向調査」
8
(図表8)建設工事費デフレーターの推移(全国、2005 年基準、後方3か月移動平均)
114 112 建 設総 合
住 宅建 築
110 土 木総 合
108 106 104 09/1
3
5
7
9
11
10/1
3
5
7
9
11
11/1
3
5
7
9
11
12/1
3
5
7
9
11
13/1
3
5
7
9
11
14/1
3
5
7
9
11
102 (資料)国土交通省「建設工事費デフレーター」
(図表9)建設投資に占める需要項目別のウェイト
(2013 年度、%)
九州・沖縄
(参考)全国
公共投資
50.3
42.4
住宅投資
27.1
32.1
民間(企業)向け建設投資
22.7
25.5
建設投資計
100.0
100.0
(注)四捨五入により、内訳の合計は 100 とならない場合がある。
(資料)国土交通省「建設総合統計」
9
(月)
(図表 10)公共工事出来高の実績および先行きの試算値
(九州・沖縄、季節調整値、09~13 年平均=100)
180 140 公共工事請負金額(左軸)
(試算値)
公共工事出来高(右軸)
160 120 試算値(右軸)
140 100 120 80 100 80 60 60 40 40 20 20 0 2Q
15/1Q
4Q
3Q
2Q
14/1Q
4Q
3Q
2Q
13/1Q
4Q
3Q
2Q
12/1Q
4Q
3Q
2Q
11/1Q
4Q
3Q
2Q
10/1Q
4Q
3Q
2Q
09/1Q
0 (注)14/1Q以降の公共工事出来高については、公共工事請負金額をもとに当店で試算(詳
細は【BOX1】を参照)
。
X-12-ARIMA による季節調整値(以下、
「季節調整値」は全て同じ)。
(資料)西日本建設業保証(株)
「九州の公共工事動向」、国土交通省「建設総合統計」
不足超
(図表 11)建設作業員の労働需給状況
(九州、原数値、後方3か月移動平均、%)
12
10
8
確保したかったが出
来なかった労働者数
-
確保したが過剰となっ
た労働者数
確保している
労働者数
+
確保したかったが出
来なかった労働者数
過不足率=
×100
6
4
0
▲2
▲4
09/1
3
5
7
9
11
10/1
3
5
7
9
11
11/1
3
5
7
9
11
12/1
3
5
7
9
11
13/1
3
5
7
9
11
14/1
3
5
7
9
11
過剰超
2
(月)
(注)6職種(型わく工<土木>・同<建築>・左官・とび工・鉄筋工<土木>・同<建築>)計。
直近は 12 月(+3.3%)。
(資料)国土交通省「建設労働需給調査」
10
(図表 12)就業者数の推移(九州・沖縄、建設業、1990 年=100)
120
建設業
110
全産業
100
90
80
70
90
95
00
10 (年)
05
(注)日本標準産業分類が改訂された時期のものについては、改訂に伴う組替集計された
計数を使用。組替集計がなされていないものについては、直近の計数を使用。
(資料)総務省「国勢調査」
(図表 13)未消化工事高の推移(九州・沖縄、公共・民間の合計、実質、兆円)
3.0 2.5 2.0 1.5 7
10
4
14/1
7
10
4
10
13/1
7
4
12/1
10
7
4
11/1
10
7
4
10/1
10
7
4
09/1
1.0 (注)未消化工事高を、建設工事費デフレーターで除することで実質化している。
(資料)国土交通省「建設総合統計」
、「建設工事費デフレーター」
11
(月)
(図表 14)住宅投資出来高の実績および先行きの試算値
(九州・沖縄、季節調整済値、10 年=100)
200 160
新設住宅着工戸数(左軸、10年=100)
180 (試算値)
出来高(民間建築居住用、右軸、10年=100)
140
出来高試算値(デフレータ換算値、右軸、10年=100)
160 120
140 100
120 100 80
80 60
60 40
40 20
20 0 2Q
4Q
15/1Q
3Q
2Q
14/1Q
4Q
3Q
2Q
4Q
13/1Q
3Q
2Q
4Q
12/1Q
3Q
2Q
4Q
11/1Q
3Q
2Q
4Q
10/1Q
3Q
2Q
09/1Q
0
(注)14/1Q以降の住宅投資出来高については、新設住宅着工戸数をもとに当店で試算(詳細は
【BOX2】を参照)。なお、試算値は実質化するため建設工事費デフレーターで除している。
(資料)国土交通省「建築着工統計」
、「建設総合統計」、
「建設工事費デフレーター」
(図表 15)フラット35金利の推移(年利、%)
3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 09/1
5
9
10/1
5
9
11/1
5
9
12/1
5
9
13/1
5
9
14/1
5
9
15/1 (月)
(注)直近は 15/2 月(1.37%)。
(資料)住宅金融支援機構
(図表 16)新設住宅着工戸数の推移(九州・沖縄、利用関係別、季節調整値、千戸)
14
13
持家
貸家
分譲
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
09/1Q 2Q
3Q
4Q 10/1Q 2Q
3Q
4Q 11/1Q 2Q
3Q
4Q 12/1Q 2Q
(資料)国土交通省「建築着工統計」
12
3Q
4Q 13/1Q 2Q
3Q
4Q 14/1Q 2Q
3Q
4Q
(図表 17)設備投資額の推移(九州・沖縄、前年比、寄与度、%)
25
20
15
10
5
0
▲5
▲ 10
▲ 15
製造業
▲ 20
非製造業(除く電気・ガス)
全産業(除く電気・ガス)
▲ 25
▲ 30
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14 (年度)
(注)2014 年度下期は、2014 年 12 月調査時点での計画値。
シャドーは景気後退局面(内閣府調べ)
。
(資料)日本銀行福岡支店「九州・沖縄『企業短期経済観測調査』
」
(図表 18)建築着工床面積の推移(九州・沖縄、民間非居住用、千㎡)
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
05/1Q
2Q
3Q
4Q
06/1Q
2Q
3Q
4Q
07/1Q
2Q
3Q
4Q
08/1Q
2Q
3Q
4Q
09/1Q
2Q
3Q
4Q
10/1Q
2Q
3Q
4Q
11/1Q
2Q
3Q
4Q
12/1Q
2Q
3Q
4Q
13/1Q
2Q
3Q
4Q
14/1Q
2Q
3Q
4Q
500
(資料)国土交通省「建築着工統計」
13
(図表 19)主な住宅市場活性化策
活性化策
内
容
①対象住宅
省エネ性能を満たすエコ住宅の新築、対象工事を実施す
省エネ住宅に関する
ポイント制度の実施
フラット 35Sの
金利引下げ幅の拡大
(住宅金融支援機構)
るエコリフォーム、及び省エネ性能を満たす完成済みの新
築住宅の購入
②対象期間
2014 年 12 月 27 日(閣議決定日)以降に契約
(着工は契約締結日から 2016 年 3 月 31 日までの間)
③ポイント数
新築および完成済み新築住宅の購入:30 万ポイントを限度
エコリフォーム:最大 30 万ポイントを限度
(耐震改修を行う場合:最大 45 万ポイントを限度)
省エネルギー性等に優れた住宅の取得を促進するフラッ
ト 35Sについて、当初5年間又は 10 年間の金利引下げ幅を
現行の 0.3%から 0.6%に拡大。
補正予算成立(2月3日)後速やかに開始し、最大1年間実
施。
(資料)国土交通省
14
(図表 20)工場立地件数・敷地面積の推移(九州・沖縄、電気業、件、千㎡)
350
18,000
16,000
300
14,000
件数(右軸)
12,000
敷地面積(左軸)
250
10,000
200
8,000
150
6,000
100
4,000
50
2,000
0
0
09
10
11
12
13
14 (年)
(注)14 年は上期の数値を2倍にして年ベースに換算。
(資料)経済産業省「工場立地動向調査」
(図表 21)先行きの民間(企業)向け建設投資の案件例
はん用・生産用・
業務用機械工業
(A 社)
輸送機械工業
(B 社)
金属製品工業
(C 社)
拡大する需要に対応するため、更なる生産能力増強と生産性向上
を企図して、事業所内に工場を新設する。隣接する部品の機械加
工工場と直結し、部品加工・組立・試験・塗装等の一貫生産により
生産ライン全体最適化を実施し、生産性を向上させる(15 年度上
期中に稼働開始予定)。
敷地内に開発棟を建設する。開発機能を強化して、これまであまり
自社で行ってこなかった製品改良などを手がけて、製品力の向上
につなげる(16 年春に稼働開始予定)。
自動車エンジンに使う材料の生産工場を新設する。国内外におけ
る将来的な需要拡大を見込み、能力を大幅に拡大し生産体制を強
化する(16 年春に稼働開始予定)。
15
【BOX1】公共投資出来高の試算方法
・
GDPに計上されるベースとなる公共投資出来高(以下、出来高という)を公共工事請負金
額(季節調整値)(以下、請負金額という)などから試算した。
―― 2015 年 2 月以降の請負金額は、2015 年 1 月の金額で一定と仮定。
(試算方法)
① 請負・着工から完成(出来高として計上)するまでの工期
・ 請負金額と出来高の月次の時差相関係数を全国の計数を使い計測したところ、両者の相
関性が最も高いのは7か月であったため、請負・着工から完成(出来高として計上)するま
での工期を7か月とした。
▽請負金額と出来高との時差相関(全国)
0.6
相関係数
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
4
5
6
7
8
9
(請負金額の先行期間、月)
(注)計測期間は請負金額の 2008 年 4 月~2013 年 3 月。
② 事業区分毎の構成比と工事進捗パス(工事進捗率)
・ 道路:治水:公共建築(除く居住用)の事業区分毎の構成比について、当地における国の
2014 年度本予算、同補正予算における一般公共事業費を参考に以下とした。
▽事業区分毎の構成比
道路
治水
公共建築(除く居住用)
50%
30%
20%
・ 事業区分毎の工事進捗パス(工事進捗率)については、「建設総合統計」(国土交通省)
の計数を使用した。
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(試算結果)
公共投資出来高の試算値(季節調整値、09~13 年=100)
140 180 公共工事請負金額(左軸)
公共工事出来高(右軸)
160 120 試算値(右軸)
140 100 120 80 100 80 60 60 40 40 20 20 0 2Q
15/1Q
4Q
3Q
2Q
14/1Q
4Q
3Q
2Q
4Q
13/1Q
3Q
2Q
4Q
12/1Q
3Q
2Q
4Q
11/1Q
3Q
2Q
4Q
10/1Q
3Q
2Q
09/1Q
0 (注1) 実際に行われる工事の進捗に関しては、早期に進捗する場合や供給制約要因等に
より工期が遅れる場合など、前後する場合がある。この点、実際に、2013 年度から
2014 年度にかけて建設業者からは工期の遅れを指摘する声が多く聞かれている。
(注2) 請負金額と出来高の額には差がある点に留意する必要がある。
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【BOX2】住宅投資出来高の試算方法
・ GDPに計上されるベースとなる住宅投資出来高(以下、出来高という)を新設住宅着工戸
数(季節調整値)(以下、着工戸数という)などから試算した。
―― 2015 年 1 月以降の着工戸数は 2014 年 12 月の戸数で一定、利用関係別の構成比
は 2013 年度中の構成比で一定と仮定。
(試算方法)
① 着工から完成(出来高に計上)するまでの工期と工事進捗パス(工事進捗率)
・ 利用関係別の工期については、当地企業からの聞き取り情報をもとに、以下とした。
▽利用関係別の工期
持家・分譲戸建
分譲マンション
貸家
(マンション)
貸家
(その他)
5か月
12 か月
10 か月
8か月
(注)分譲マンションとは、分譲のうち鉄筋鉄骨コンクリート造、鉄筋コンクリート造、
鉄骨造の建築物を指す。
・ 工事進捗パス(工事進捗率)については、「建設総合統計」(国土交通省)の計数を使用し
た。
② 工事単価・工事高
・ 工事単価については、「建築着工統計」(国土交通省)における工事費予定額、当地企業
からの聞き取り情報をもとに、以下の金額とした。
▽利用関係別の工事単価
(単位:万円)
持家・分譲戸建
分譲マンション
貸家
試算に使用した工事単価
2,000
1,700
900
(参考)工事費予定額(注)
2,265
1,542(分譲住宅)
898
(注)2014 年 12 月時点(国土交通省「建築着工統計」)
・ 工事高の算定にあたっては、建設工事費デフレーターを使用し、物価変動を加味した。
―― 2014 年 12 月以降の建設工事デフレーターは 2014 年 11 月の数値で一定と仮定。
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(試算結果)
住宅投資出来高の試算値(季節調整値、10 年=100)
160
200 新設住宅着工戸数(左軸、10年=100)
180 出来高(民間建築居住用、右軸、10年=100)
140
出来高試算値(デフレータ換算値、右軸、10年=100)
160 120
140 100
120 80
100 80 60
60 40
40 20
20 0
2Q
4Q
15/1Q
3Q
2Q
14/1Q
4Q
3Q
2Q
13/1Q
4Q
3Q
2Q
4Q
12/1Q
3Q
2Q
4Q
11/1Q
3Q
2Q
10/1Q
4Q
3Q
2Q
09/1Q
0 (注) 実際に行われる工事の進捗に関しては、早期に進捗する場合や供給制約要因等によ
り工期が遅れる場合など、前後する場合がある。この点、実際に、2013 年度から 2014 年
度にかけて建設業者からは工期の遅れを指摘する声が多く聞かれている。
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