米の現物市場の現状と課題

第3回 米の安定取引研究会資料
米の現物市場の現状と課題
平成27年2月17日
農林水産省 生産局
資 料2
米の現物取引について ①
○
米については、
① 一年一作の作物であり、保存性が高く、適切に保管されていれば、長期間品質が劣化しにくいこと
② 主食として消費されることから、価格が下がれば需要が大きく増えるというものではないこと
③ かなり以前より集荷、流通、販売のルートが整っていたこと
等から、野菜や水産物とは異なり、集荷業者・全農等と、卸売業者等との「相対取引」が商業的な取引の相当部分
を占めてきた。
○ この「相対取引」で形成される「相対取引価格」は大ロットかつ、長期の契約に基づいて決められることを反映
して、年間を通して比較的安定したものとなっている。
○ 他方、民間事業者が運営する取引の場においては、中小事業者等が米の調達・販売や在庫の調整等の場として、
十トンから数十トン単位の取引を行っているが、小ロットのスポット取引であることから、そこでの「業者間取引
価格」(スポット価格)は、相対取引価格に比べて変動幅が大きい。
米の流通経路別流通量の状況
(単位:万㌧(23年産米))
事前契約の拡大が必要
生
産
者
265
(
840
373
出
荷
業
者
全
国
出
荷
団
体
者中卸
等食売
・ 業
外者
265
)
単
位
農
協
等
491
消
費
者
食
事
業
100
126
7
96
その他(加工用米等、もち米、減耗等)
76
農家消費等
170
資料:農林水産省調べ
注:米穀の取引に関する報告及び全国出荷団体調べ等による推計値
1
米の現物取引について ②
○
米の現物取引について、以前は(財)全国米穀取引・価格形成センター(コメ価格センター)が主に活用されて
いた。平成16年の食糧法改正により米の流通が自由化されて以降は、売り手(集荷団体等)にとっては上場メリッ
ト、買い手(卸等)にとっては入札による調達メリットが感じられなかったことにより同センターを通じた取引数
量は激減、結果平成23年3月末をもって解散したところ。
○ コメ価格センターの取引状況について
(千トン)
1,200
取引数量
(千トン)
1,000
1,035
931
793
800
782
平成16年食糧法改正
米流通の原則自由化
987 987 977
902
817
757
729
611
600
508
451
384
400
209
200
92
41
10
4
0
20
21
22
0
平成2 3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
(年産)
2
米の現物取引について ③
○
現在、米取引の指標となる価格については、
① 農林水産省が出荷団体等から徴取した相対取引価格を毎月公表しているほか、
② 現在、大きく3つの民間現物市場において、スポット取引が行われており、その価格はHP等で公表されている
ところ。
○ また、その他に流通ニーズの多様化の中で、①複数年産米コメ市場、②卸売事業者による新たな市場構想、③個
別申込取引(全農)等、民間での新たな動きが生じている。
○ 民間におけるスポット取引の市場について
(1)(株)日本農産情報
ホームページ上で売り注文、買い注文を掲載するこ
とによる仲介取引を実施。
会員数:約3,000社(組合含む)
年間取扱高:約400万俵(24万トン)
(2)日本コメ市場株式会社
取引会における入札取引のほか、電話・FAX・IT等
により成立する随時取引を実施。
会員数:約200社
年間取扱高:約3万トン
(3)(株)加工用米取引センター
平成23年1月に加工用米に特化した市場として成立。
平成23年12月からは主食用米の取扱いも開始。
会員数:20社
年間取扱高:約2千トン
○ 民間における新たな動きについて
(1)複数年産米コメ市場
大型農業者及び集荷業者と需要者(加工業者
等)との間の複数年契約で取引を推進するための
斡旋業務を26年10月1日から開始。
(2)卸売事業者による新たな市場構想
既存のスポット的な米取引市場ではなく、中長期
的な米取引の場を検討中。
(3)個別申込取引(全農)
全農の相対基準価格の参考とするため、26年8
月以降、毎月1回を基本として「個別申込取引」を
導入。
3
米の現物市場の現状
㈱日本農産情報
(昭和54年~)
取引形態
○仲介取引が基本。㈱日本農産物情報は
ホームページ上で売り注文、買い注文を随時
掲載(1時間毎に更新)。
注文が成立した場合の流れは以下の通り。
① 買い手はまず日本農産情報あてに代金を
振り込み
② 日本農産情報は買い手からの入金確認後、
売り手に発送を依頼
③ 買い手は商品受取後、日本農産情報に納
品を伝達。その後日本農産情報は売り手の
速やかに代金を振り込み。
日本コメ市場株式会社
(平成9年~)
㈱加工用米取引センター
①東京・大阪・福岡の3会場において1~2ヶ
月に一度程度開催される取引会における入
札取引(日本コメ市場・クリスタルライスの共
催)
②電話・FAX・IT等により成立する随時取引
の2形態で行われており、会員間取引が原則。
①加工用米取引センターのホームページ上で
数量と価格を付して取引。枚数・価格による
匿名取引
②電話等において仲介・斡旋を行うことにより
成立する随時取引
の2形態で行われており、会員間取引が原則。
(平成23年~)
取扱数量
○年間取扱高は約400万俵(24万トン)。
○年間取扱高は約3万トン(平成25年度)。
取引会1回当たりの上場数量は4千~1万3
千トン程度、落札数量は400~1,200トン程度。
(平成25年度実績:取引会を計7回開催)
○年間取扱高は約2千トン。(平成26年度)
参加者数
○全国約3,000社(組合含む)
○1回当たりの参加は50~80卸(70~100名程
度)。
○会員数約200社
○参加会社数20社。
参加条件
○利用には取引口座の開設が必要。
①日本コメ市場㈱の会員であること(入会金:
50万円)
②米穀機構との債務保証契約を締結すること
が必要。保証がない場合は前金制度で取引。
○原則として登録会員のみとし、非会員は登
録会員を通じて売買が可能(入会費5万円、
年会費2万円) 。
○会員になるには、米穀取扱い業者の資格を
有し、年間60トン以上の取扱いを行っている
ことが必要。
公表
○成約状況(銘柄及び成約価格)については、
市場概況としてホームページや業界紙に掲
載。
○成約状況(銘柄及び成約価格)については、
市場概況としてホームページや業界紙に掲
載。
○成約状況(銘柄及び成約価格)については、
市場概況としてホームページで公表。
注) 各市場のHP掲載情報を参考に作成
4
新たなコメ取引の動き
複数年産米コメ市場
(国産米使用推進団体協議会)
(26年10月1日から開始)
卸売事業者による新たな市場
(全米穀販売事業共済協同組合)
(検討中)
個別申込取引
(全農)
(26年産から開始)
取組の趣旨
○大型農業者が将来を見通して安心してコメ生産
を行うとともに、需要者が安定的に原料米確保を
行えるよう、複数年契約での取引を推進するため
の市場を創設。平成30年産までの間は斡旋業務
を実施。
○既存のスポット的な米取引市場ではなく、
中長期的な米取引の場を検討中。
○全農の相対基準価格の参考とするため、相
対取引の手法の一つとして、26年8月以降、
毎月1回を基本として「個別申込取引」を導入。
主な仕組み
(検討内容)
○米政策の見直しの平成30年を見据え、29年産ま
では試行期間として以下のとおり斡旋業務を行う。
① 売り手構成員・買い手構成員は、希望する品
名・数量・価格等を提示
② 「市場」は、売り手・買い手のそれぞれの条件を
勘案し、引き合わせ、仲介。
③ 両者が合意した場合には、その後の諸手続き
は当事者間で実施。
④ 斡旋業務は、(株)加工用米取引センターが、
業務委託を受けて実施。
―
○対象産地銘柄は各県本部の手挙げ。
○全農は、取引先から購入希望数量と価格を
セットで申し込みを受ける。
○全農は、申し込み内容を各県本部に連絡し、
各県本部は、価格の高いものから順に、各県
本部の判断する価格まで成約させる。
○ 取引先に積極的な参加を促進するため、
契約価格は個別の成約価格にメリットを減じ
た価格とする。
取引数量・
契約単位等
契約単位:原則100㌧以上
取引単位:1ロット12㌧
検討中
各県本部は、年間販売数量に応じて1回ごと
の提示数量を判断。
参加条件・
取引対象者
○入会金及び年会費1万円を納め構成員として認
められた以下の者(クローズされたコメ市場)
①生産者:原則30ha以上の耕作面積
②実需者、集荷業者、流通業者
:原則として年間取扱数量が1,000㌧以上。
3年間債務超過でないこと。
○農業者、JA、実需者も参加できる条件を
検討中。
○全農と売買基本契約を締結している米穀卸
売事業者等
公表
○成約内容は、非公表。
―
○成約内容は、非公表。
注) 各市場の公表情報等を参考に作成
5
産業競争力会議における民間市場に関する指摘
(平成27年1月19日 産業競争力会議主査指摘ペーパー抜粋)
工程表に盛り込むべき項目
▶ 民間の米市場(現物・先物)の活性化
→ 透明・公正な価格形成に向け、農林水産省と民間が協働して、現物市場(既存の民間市
場を含む)を活性化させ、2018年度までに代表的銘柄を含む指標性をもつ規模(例えば
100万トン以上)のものへと育成するべき。米の安定取引研究会において、このための具
体的な政策手法を明示するべき。また、今夏の先物市場の本上場に向けて検討を進める
べき。これを通じて、価格変動リスクを軽減し、安定取引(複数年契約や播種前契約等)の
拡大を図るべき。
(注) 全農県本部・経済連による概算金を通じた価格形成には、生産者に需要や価格の動
向が伝わりにくい面。民間の米市場を通じて、透明・公正な価格形成を図るとともに、農
協においては、「農林水産業・地域の活力創造プラン」で決定したとおり、単位農協が、
農産物の買取販売を数値目標を定めて段階的に拡大するべき。
6
現物市場に関する論点
現物市場の活性化を図り、取引に売り手買い手が参画しやすくするためにどの様な対応が必要か。
ユーザー(売り手、買い手)の視点
○
現物市場は、今後もスポット取引の場や、相場の情勢を見るための参考情報を得る場としての役割であり、
メインの取引の場としては考えられない。
○
現物市場での取引が、スポット的な取引である以上、市場での取引価格がそのまま相対取引の価格の基準
となることはない。
○
一方で、価格の傾向等、相対取引の参考とされることはあることから、一定の現物市場取引は必要。
○
現在は、市場取引に参加していない米の取引関係者も、集荷数量に対し相対取引数量が下回ることがあれ
ば、利用を検討する。
○
取引に透明性が確保されることや、利用しやすいインフラ整備などが活性化に向けての可能性のひとつ。
現物市場開設者の視点
○ 現物市場は、メインの取引を行う場としては利用されておらず、今後もそれは難しいことから、取扱数量が大きく増大
するとは見通し難い。
○
平成16年に米の流通が自由化され、現状、現物市場において自由に取引が可 能であり、制度的な支障はない。
○ 取引を拡大させるためには、自主的努力により、ユーザーに対する丁寧な情報提供等により、ユーザーの信頼を
獲得することが重要。
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