代表質問 - 民主党

平成27年2月18日
代表質問
民主党・新緑風会
浜
野
喜
史
民主党の浜野喜史です。
民主党・新緑風会を代表して、厳しい社会・経済情勢の中、真摯に様々な課
題に向き合い、懸命の努力を続ける数多くの方々の思いを踏まえ、政府4演説
に対して質問いたします。
(集団安全保障への参加について)
本年は国連創設70周年です。
4演説では、国連改革の必要性と、国連安保理常任理事国の責務を担う姿勢
が示されました。
総理は、安保理常任理事国の、国際平和維持のための権限と責任の関係をど
うお考えですか。
総理は「自衛隊が武力行使を目的として集団安全保障に参加することはない」
と繰り返されています。
この姿勢は、我が国が常任理事国入りした場合でも変わらないのでしょうか。
常任理事国として賛成した安全保障活動に、自国は参加しないということが、
可能でしょうか。
総理の見解を伺います。
(平成27年度予算案について)
来年度予算案は、総額96兆3420億円と過去最大であります。
政府は、国債費の金利を1.8%と想定していますが、現在の0.3%程度
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の長期金利とかけ離れており、このままでは、国債費に大きな不要分が生じま
す。
すでに、年度後半には、これを財源とした補正予算を組まれるお考えなので
しょうか。
消費税増税に際して、我々は社会保障制度の維持・充実に加えて、財政健全
化を約束したはずです。
そのためには、徹底した歳出削減に本気で取り組んでいかなければなりませ
ん。
金利を多めに見積もって、不要分を財源に回すというやり方では、歳出削減
への取り組みが中途半端になり、財政健全化目標は達成できません。
国債費の不要分は、全てを国債償還に充てるなどの財政法改正が必要と考え
ますが、総理の見解を伺います。
(残業代ゼロ制度について)
今国会には、いわゆる残業代ゼロ制度、労働基準法改正案の提出が予定され
ています。
働く者の代表として議席をお預かりしている私として、この法案には強い懸
念を持っております。
過重労働の防止策は示されず、制度の不明確さ、対象範囲の拡大などに対す
る不安もまったく払拭されていません。
そもそも、残業代ゼロ制度を創設する理由はどこにあるのでしょうか。
経済団体の要望もあると承知していますが、具体的にどのような職種の方・
企業が制度創設を本当に希望しておられるのでしょうか。寡聞にして私は存じ
ませんので、お教え願います。
また、本制度は金融市場を過剰に意識したとも疑われるものであり、我が国
の雇用・労働を破壊するものと断ぜざるを得ません。
総理の見解を伺います。
(製造業拠点の国内回帰について)
製造業の拠点の国内回帰について伺います。
総理は、昨年 10 月の衆議院予算委員会で、輸出の伸び悩みについて「企業は
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為替等、諸条件の変化が続くかどうか見ており、今後、国内への投資が伸びて
いくことによって是正されていく」と述べられました。また、法人税減税にも
取り組む姿勢を示されています。
しかし、企業は投資を判断する際、為替や税率だけではなく自らに関わるト
ータルのコストを見ています。
昨年末、再生可能エネルギー発電設備の接続に関する回答保留が、大きな話
題となりました。
必要な見直しを行わず、ただ機械的に認定し続けた結果、大量の設備が高値
で認定されました。経済産業省は認定設備が全て運開した際には、系統電力の
利用者が負担する賦課金は年間2.7兆円にものぼると試算しています。
今回の法人税減税額は6千7百億円。減税額をはるかに上回る負担でありま
す。
現在も認定は増え続けており、加えて、電力流通設備対策や調整用電力設備
の確保など、更なる追加費用も発生してきます。負担は2.7兆円に留まらず、
どこまで増えるかわかりません。
このような状況では、企業は安心して製造拠点を国内に設けることなどでき
ません。
賦課金の上限を設けるなど、早急な制度の見直しが必要と考えますが、総理
の見解を伺います。
また、現行の制度では、自家発電を導入すれば賦課金を逃れることができま
す。自家発電を導入できる余裕があれば、負担を回避できますが、そうすると
賦課金を分担する方が減り、自家発電を導入する余裕のない方の負担は更に増
えることになります。
負担のあり方についても早急な見直しが必要と考えますが、総理の見解を伺
います。
(地球温暖化対策について)
総理は、地球温暖化対策について、昨年 1 月の参議院本会議で「我が国の2
020年削減目標については、エネルギー政策及びエネルギーミックスの検討
の進展を踏まえて見直し、確定的な目標を設定いたします」と述べられました。
これは、聞こえのよい数字を決めた後、つじつま合わせをするというのでは
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なく、現実的かつバランスのとれたエネルギーミックスを検討した上で削減目
標を設定するということでしょうか。
設定のプロセスについて総理の見解を伺います。
総理は、先月の参議院本会議で、政策実行に係る政治姿勢について、
「できる
ことしか約束しない。約束したことは必ず実行する」と述べられました。
削減目標設定にあたっては、理想的な姿を描いたチャレンジングな目標も重
要です。
一方で、過去の新エネルギーの目標などを見てもわかるとおり、エネルギー
の開発は、計画どおりに進まないのも現実です。
国際公約となる削減目標については、我が国の実情を踏まえたものとする必
要があると考えますが、総理の見解を伺います。
(岩盤規制の打破について)
総理は、いわゆる岩盤規制の打破に強い決意を示されました。
イノベーションを阻害する規制を改革していくことは重要です。
一方で、無責任に規制を改悪し、新規参入をあおった結果、重大な事故を起
こしたツアーバスのようなことになってはなりません。
電力は、発電所や送電線など、設備形成に長期間のリードタイムを要するも
のが多く、一度システムが崩壊すると容易にもとに戻せません。
原子力発電所の長期にわたる停止の結果、需給状況はタイトとなり、電力会
社の財務体質は大きく毀損しています。このような状況下で、自由化や会社を
分割して経営の柔軟さや企業体力を奪う法的分離を行うと、守るべき電力の安
定供給に支障が生じかねません。
電力システム改革については、安定供給のための仕組み・ルールの整備や、
改革に即した原子力事業環境整備、電力需給環境の改善等、システム改革を進
める前段で解決すべき課題が山積しています。
こうした課題についてどのように対応していくのか、総理の見解を伺います。
電力システム改革を進める一方で、ガスシステム改革は、
「電力システム改革
に数年遅らせる」との報道がありました。
エネルギー基本計画にもあるように、総合エネルギー事業を育成していくと
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いう観点からは、電力・ガスの改革を一体で進めていくべきであると考えます
が、総理の見解を伺います。
改革に関連して検討課題とされていた電力に関わる労働者のスト規制法につ
いては、「電力需給が逼迫し、供給への不安が残っている」などという理由で、
「スト規制法の存続が妥当」とされました。
「電力供給不安があるので労働者に関するスト規制は残す」、片や「電力供給不
安はあるが、システム改革は進める」、ではまったく整合性がとれていません。
電力システム改革については、闇雲に実施時期を決めるのではなく、先に述
べた課題を一つ一つ検証し、解決した上で進めるべきと考えますが、総理の見
解を伺います。
更に、電力で働く者に関しては、
「会社役員だけではなく一般の従業員につい
ても、送電部門から発電や小売部門等への異動を制限する人事管理規制を導入
する」との資料が経済産業省から提示されています。
人事院勧告で保護され、身分保障のある国家公務員においても廃止された関
連企業等への転職規制を導入するというのは、電力で働く者への性悪説に立つ
ものであり、日々安定供給のため懸命に努力する者が納得できるものではあり
ません。
これは、憲法で保障されている、職業選択の自由を阻害するものと考えます
が、総理の見解を伺います。
万が一にも、電力間競争の公正の観点からこうした規制が必要であるとする
ならば、送配電部門から新電力への転職も規制すべきとなります。
また、送配電部門から新電力への転職には守秘義務を課すことで足りるので
あれば、電力グループ間の異動においても同様の義務を課せばよいとするのが
道理です。総理の見解を伺います。
何より、働く者の権利を制限しなくては安定供給が保たれないとするならば、
それは、制度設計が誤っているということです。
制度の歪みを働く者に押しつけない、王道のシステム改革を行うという総理
の決意をお聞かせ下さい。
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(原子力規制委員会について)
次に、原子力規制委員会について伺います。
原子力発電所の再稼働について、当初、審査にかかる期間は、1基あたり半
年から1年との目安を原子力規制委員会委員長が述べておられましたが、1年
半が経過した現在でも、1基も審査は終了していません。
審査が最も進んでいるといわれる川内原子力発電所は、昨年の9月に原子炉
設置変更許可申請が許可され、11月には地元同意が得られましたが、未だに
工事計画認可の審査が終わらない状況です。
2012年の衆議院選挙で自民党は「再稼働の可否については、順次判断し、
全ての原子力発電所について3年以内の結論を目指す」としていました。
新たな規制基準のため、当初の想定を上回る審査内容となっているのであれ
ば、体制の強化はもとより、安全性の徹底的な追求の上に立った効率的な審査
がなされるような施策が講じられるべきではないでしょうか。総理の見解を伺
います。
原子力規制委員会の現状については、昨年の衆議院原子力問題特別委員会で
意見を陳述された参考人をはじめ、有識者や立地自治体など各方面から、
「科学
的・技術的視点から離れている」
「独善的である」等の数多くの指摘が寄せられ
ています。
原子力規制委員会設置法には、3年以内の見直し規定があり、問題点を早急
に整理していく必要があります。
どのように検討し、見直していくのか、総理の見解を伺います。
(最後に)
最後に、我々民主党は、平和で活力に満ちた誇りある日本の継承・創造に向
け、責任ある選択肢・政策を国民に示していく決意であることを申し上げ、質
問を終わります。
ありがとうございました。
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