総合資源エネルギー調査会 発電コスト検証ワーキンググループ(第1回会合) 資料4 2011年コスト等検証委員会に対する 主な御意見について ※公表されたHP、論文及び書籍等に基づき作成 試算方法・試算の前提及び試算結果に関する御意見 【割引率】 近年の低金利政策を踏まえれば、代表数値として割引率を1%程度で評価すべきではないか。 事業収益を考えると、1~5%の割引率では低すぎるのではないか。 【資本費の割引】 全ての電源設備で建設費の減価償却費に割引率をかけて現在価値換算するのは誤り。(建設 費は初期投資で実コストは現在価値のため割り戻しの必要なし)。 【設備利用率】 原子力の設備利用率は、昨今の状況を考えると、70%ないし80%はおかしいのではないか。 新設のモデルプラントを想定するのであれば、石油火力の設備利用率を他電源と合わせた上、 発電効率も最新の技術を想定したものとするべき。 【試算結果】 原子力発電コストは、 ①資本費(建設費、追加安全対策含む)、②事故リスク対応費、③政策 経費について、最新の数値を参考に試算すると、最低11.3円、最大で17.1円以上にのぼる。た だ、事故リスク対応費や保険費などは定められないため、これ以上になる可能性もある。 1 その他の個別費用に関する御意見 【既設プラントのコストについて】 既設の原子力発電コストについて、政府試算だと6.4円/kWh(モデルプラント8.9円-資本費2.5 円)だが、8.3〜14.0円/kWhとなる。 既存の各原子炉について、残存簿価・廃炉費用と安全対策費用を考慮し、厳密な40年運転を 想定、更に社会的コスト等を積みまして算定。加えて、原子炉が廃炉となった場合、その残存簿 価・廃炉費用・安全対策費用を「不良債権」として、同一電力会社の原子炉に転嫁されたと仮定 し、コストを試算。 【海外原発の資本費(建設費・廃炉費用)】 米国、フランス、フィンランドなどにおいて、近年建設されている原子力発電所の建設費は、当 初の計画と比較すると2倍から最大5.6倍にまで建設費が高騰しており、これらの傾向を反映す べき。(50万円/kW、 70万円/kWに設定。 ) 英国において、ヒンクリーポイントC原発の新設が決定したが、建設費は160億ポンド/2基(約2.7 兆円)とされており、これに対して差額決済契約(CfD)が導入が決定している。kWh当たり15.7 円で買い取ることとしており、原発コストは高いのではないか。 欧米におけるプラントの建設価格の高騰は、新型炉の建設に伴う詳細設計の遅れや安全基準 への適合に時間がかかること等による遅延が原因。我が国の発電コスト試算に当てはめて考 えることは適切ではない。 廃炉が進められている東海原発は、当初見積もりの545億円から885億円へと増加しており、諸 外国においても約2,000億円から3,500億円程度を廃炉費用として見積もっている。 2 事故リスク対応費用、核燃料サイクル費用に関する御意見 【事故リスク対応費用】 政府試算では、福島第一原子力発電所事故の現時点で明らかになっている損害額をもとに損 害想定額を6.8兆円と設定している。他方、米国・スリーマイル島及びチェルノブイリ原発事故及 び除染の見通しを勘案すると、総額20兆円から最大75兆円程度となる。 コスト検証委では40年間50基が維持される前提であるが、原子炉等規制法における運転期間 延長認可制度を厳格に適用し、その時点の原子力事業者が相互扶助方式によって負担したと する考えを採用すると、残余の原発の発電電力量を用いるべき。 損害費用について、現在の試算方法は、現実に発生した福島原発事故の費用を原子力事業者 間の相互扶助方式で負担するものであり、モデルプラント方式への「補正」は不適切。 コスト検証委では、損害額を最低6兆円と見積もり、かつ40年に1回、福島第一原発事故相当の 事故が起こるという想定に等しい試算となっているが、原子力規制委員会による安全基準の前 提よりもあまりに過大な想定。 【核燃料サイクル費用】 核燃料サイクルに必要な費用が十分盛り込まれておらず、過小評価。加えて、全量再処理を進 める上で必要な第二再処理工場の費用も含めるべき。 3 CO2対策費用、燃料価格に関する御意見 【CO2対策費用】 CO2コストが低すぎるのではないか。火力発電には温暖化対策にかかる「炭素価格」が今後か かるはず。仮に、中期的にCO2トンあたり10000円の炭素税をかけて気候変動対策を促進する ならば、「炭素価格」は石炭で8.2円/kWh、石油で6.3円/kWh、LNGで4.5円/kWhとなり、従来の 発電コストを大きく上回るはずである。 【その他の外部コスト】 CO2価格を積むだけでは、気候変動、大気汚染や自然破壊などの環境費用を考慮しきれていな いのではないか。 【燃料価格】 World Energy Outlook(WEO)2010の予測は低すぎるのではないか。将来の化石燃料価格は、近 年の推移はIEAの予測をすでに上回っており、これからの資源枯渇、ピークオイル、需要増、原 発低迷などの要素も考慮すれば、IEA予測より高めに推移すると考えるのが妥当である。 2030年における石油価格は予測不可能であるため、横置きとすべき。 直近の油価下落による影響を分析すべきではないか。 4 再エネの将来価格等に関する御意見 【再エネの普及拡大の波及効果】 再エネの価格低減効果要因が充分に考慮されていない。産業経済効果などでコストが下がる 可能性。 【再エネの将来価格(太陽光導入見通し)】 将来の再エネコスト低下見通しは、学習曲線に基づく低コスト化シナリオが楽観的にすぎ、根拠 が乏しい。立地適地の漸減による効率性低下・限界費用の逓増などのコスト変動要素を踏まえ た現実的なシナリオを設定すべき。 再生可能エネルギーの将来的な技術革新や量産によるコストダウンには想定が存在することを 明示すべき。 FITの導入で再生可能エネ関連のコスト低下(特に太陽光発電)が著しいが、コスト低下が永続 的か精査が必要。 【バイオマス発電の諸元】 発電設備・運用に関わる諸元(バイオ燃料価格、建設費、人件費、発熱量、熱効率等)が妥当で ない(実際はもっと高い)。 5 政策経費、系統安定化対策費用に関する御意見 【政策費用】 再エネの研究開発費や政策費用が不考慮になっているため、過小評価になっている。前提を揃 えた中立的な比較をするのであれば、政策経費も計上すべきではないか。 原子力発電について、原子力事故の被害想定範囲が拡大するため、電源立地交付金の大幅 な増額(現行の2.5倍)を想定すべきではないか。 【系統安定化対策費用】 太陽風力などの間欠電源と安定電源を円/kWhで同列に評価するなら系統安定化費用を計上 する必要。 6
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