札幌オフィス市場の現況と見通し (2015 年)

ニッセイ基礎研究所
2015 年 2 月 17 日
札幌オフィス市場の現況と見通し
(2015 年)
金融研究部 不動産市場調査室長
竹内 一雅
e-mail : [email protected]
1. はじめに
札幌市では 2014 年に、大規模ビルとしては数年ぶりとなる札幌三井 JP ビルの竣工があった。こ
のため一部では市況の悪化が懸念されていたが、需要の増加が上回り全体の空室率は低下した。本
稿では札幌オフィス市場の現況とともに 2021 年までのオフィス賃料の予測を行う1。
2. 札幌のオフィス空室率・賃料動向
札幌市のオフィス市況は改善が続いている。
2015 年 1 月の空室率は 8.55%と、ピークだった 2010
年 8 月(12.61%)に比べ、4 ポイントを上回る低下となった。過去一年間は札幌三井 JP ビル2の竣
工などから空室率の下落スピードは落ちたが、主要政令指定都市の中でも福岡市や名古屋市ととも
に最も低い水準が続いている(図表-1)
。
三幸エステートと共同で開発しているオフィスレント・インデックス(成約賃料指数)によると、
2014 年下期の成約賃料は 9,310 円/坪
(前年同期比+9.4%)で 3 四半期連続の上昇だった(図表-2)
。
ただし三幸エステートによると平均募集賃料は約 3 年間ほぼ同水準で底ばいが続いている3。
図表-2 主要都市のオフィス成約賃料
(オフィスレント・インデックス)
図表-1 主要都市のオフィス空室率
空室率
15,000
22%
大阪市
20%
名古屋
18%
札幌市
12,500
16%
仙台市
福岡市
14%
12%
仙台市, 10.46%
大阪市, 9.30%
札幌市, 8.55%
10%
8%
10,000
名古屋市, 8.42%
福岡市, 7.74%
6%
東京都心3区,
4.88%
4%
東京都区部,
5.31%
7,500
2%
0%
東京都区部
東京都心3区
(出所)三幸エステート
1
2
3
札幌市
福岡市
仙台市
大阪市
名古屋市
5,000
2014-H2
2014-H1
2013-H2
2013-H1
2012-H2
2012-H1
2011-H2
2011-H1
2010-H2
2010-H1
2009-H2
2009-H1
2008-H2
2008-H1
2007-H2
2007-H1
2006-H2
2006-H1
2005-H2
2005-H1
2004-H2
2004-H1
2003-H2
2003-H1
2002-H2
2002-H1
2001-H2
2001-H1
2000-H2
2000-H1
1999-H2
1999-H1
1998-H2
1998-H1
1997-H2
1997-H1
00/01 01/01 02/01 03/01 04/01 05/01 06/01 07/01 08/01 09/01 10/01 11/01 12/01 13/01 14/01 15/01
(出所)三幸エステート・ニッセイ基礎研究所、
2014 年の見通し結果は竹内一雅「札幌オフィス市場の現況と見通し(2014 年版)」不動産投資レポート 2014.2.18 ニッセイ基礎研
究所、を参照のこと。
札幌三井 JP ビルディングは、三井不動産と日本郵便を事業主として、2014 年 8 月竣工した延べ床面積 6 万 8 千㎡、事務所賃貸
面積 2 万 5 千㎡、地上 20 階、地下 3 階のオフィス・商業の複合ビル。プレスリリース参照のこと。
平均募集賃料は 6,400 円程度で約 3 年間、底ばいが続いている。三幸エステート「調査月報」参照のこと。
1|
|不動産投資レポート 2015 年 2 月 17 日|Copyright ©2015NLI Research Institute
All rights reserved
規模別に空室率をみると、大型ビルと中型ビルでは大きく空室率の改善が見られる(図表-3)
。
一方、大規模ビルでは 2014 年半ばにいったん空室率が上昇した後に元の水準に戻っているが、こ
れは 8 月に満室で竣工した札幌三井 JP ビルやその二次空室の影響などと考えられる。
三鬼商事によると、
2014 年末の札幌ビジネス地区4の空室面積は 7 年ぶりに 4 万坪を下回り、
2007
年末のファンドバブル期の水準にほぼ等しくなった(図表-4)
。
図表-4 札幌ビジネス地区の賃貸可能面積・
賃貸面積・空室面積
図表-3 札幌の規模別空室率
55万坪
空室率
10万坪
20%
9万坪
50万坪
8万坪
15%
7万坪
45万坪
6万坪
40万坪
10%
5万坪
4万坪
35万坪
3万坪
5%
2万坪
30万坪
1万坪
25万坪
0万坪
平均空室率
賃貸可能面積
(注)大規模:基準階面積 200 坪以上、大型:同 100~200 坪未満、中型:同 50~
100 坪未満、小型:同 20~50 坪未満
(出所)三幸エステート
賃貸面積
2014.12
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
小型ビル
1999
中型ビル
1998
大型ビル
1997
大規模ビル
1996
00/01 01/01 02/01 03/01 04/01 05/01 06/01 07/01 08/01 09/01 10/01 11/01 12/01 13/01 14/01 15/01
1995
0%
空室面積(右目盛)
(出所)三鬼商事
3. 札幌のオフィス需給と地区別動向
札幌ビジネス地区ではオフィス賃貸面積(稼動面積)は 4 年連続の増加となった(図表-5)
。4
年連続の増加は 2003~06 年以来のことである。賃貸面積の増加は 2003~06 年が+5 万坪、2012~
14 年が+3 万坪と前回に比べて大幅に少ないが、2003~06 年当時の需要拡大は大量の新規供給によ
り生み出された面があり、空室面積の減少は 2003~06 年は▲3 千 5 百坪、2012~14 年は▲1 万 7
千坪と今回の市況回復時が大きく上回っている。月次でみると賃貸面積、賃貸可能面積ともに、札
幌三井 JP ビルが竣工した 2014 年 8 月の増加が突出している5。
図表-5 札幌ビジネス地区の賃貸オフィス需給面積増加分
<年次>
<月次>
14,000坪
2.5万坪
12,000坪
2.0万坪
10,000坪
1.5万坪
8,000坪
1.0万坪
6,000坪
4,000坪
0.5万坪
2,000坪
0.0万坪
0坪
-0.5万坪
-2,000坪
-1.0万坪
-4,000坪
-1.5万坪
-6,000坪
2014.12
2014.11
2014.10
2014.9
2014.8
2014.7
2014.6
2014.5
賃貸面積
2014.4
2014.3
2014.2
賃貸可能面積
2014.1
2013.12
2013.11
2013.10
2013.9
2013.8
2013.7
2013.6
2014.12
2013
2012
2011
空室面積
2010
2009
2008
賃貸面積
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
賃貸可能面積
空室面積
(出所)三鬼商事
4
5
三鬼商事の定義による。札幌の主要 5 地区(駅前通・大通公園地区、駅前東西地区、南 1 条以南地区、創成川東・西 11 丁目近
辺地区、北口地区)からなる。
三幸エステートのネットアブソープション(吸収需要:各調査期間内のオフィス需要面積(稼動面積)の増減)でも、2014 年の需要
の増加は顕著で、2012 年 20,104 坪、2013 年 1,501 坪、2014 年 24,017 坪だった。三幸エステート「調査月報」より
2|
|不動産投資レポート 2015 年 2 月 17 日|Copyright ©2015 NLI Research Institute
All rights reserved
札幌のオフィス賃貸面積の一年ごとの増加を新築ビルと既存ビル別に見ると、2014 年は新築ビル
による増加が増分のほぼすべてを占めている(図表-6)
。2014 年はわずかながら既存ビルでも面積
は増加しているため、2003 年や 2006 年のように新築ビルの稼動が既存ビルの賃貸面積を減少させ
ることはなく、既存ビルでも新築ビルに奪われた需要を埋めるだけの新規需要があったようだ。
札幌ビジネス地区では、どの地区でも空室率は低下傾向にある(図表-7)
。特に空室率の低下が
著しいのが、創成川東・西 11 丁目近辺地区と南 1 条以南地区というビジネス地区での周辺エリア
である。一方、駅前東西地区では 2014 年の一年間にほとんど空室率は改善せず、北口地区ではわ
ずかながら空室率が悪化した。
札幌ビジネス地区で最も賃貸可能面積が大きいのが駅前東西地区(28.8%)であり、次いで駅前
通・大通公園地区(27.7%)が続いている(図表-8)。賃貸面積比率もほぼ賃貸可能面積と同程度
である。
2014 年に札幌ビジネス地区の賃貸可能面積は+6 千坪の増加だったが、このうち駅前通・大通公
園地区で+8 千坪の増加、北口地区では 2.4 千坪の増加で、一方、駅前東西地区では▲5.4 千坪の減
少だった。賃貸面積は全体の+1.0 万坪の増加に対して、駅前通・大通公園地区で+8.8 千坪の増加、
南 1 条以南地区で+2.4 千坪の増加、北口地区で+2 千坪の増加、駅前東西地区で▲4.9 千坪の減少だ
った。空室面積は全体の▲4 千坪の減少に対して、創成川東・西 11 丁目近辺地区が▲2.0 千坪の減
少と最も大きく、次いで南 1 条以南地区が▲1.1 千坪の減少だった。
図表-7 札幌ビジネス地区の地区別
オフィス空室率推移
図表-6 札幌ビジネス地区の賃貸面積増分
2.0万坪
18%
1.5万坪
16%
1.0万坪
14%
0.5万坪
12%
南1条以南地区, 9.56%
0.0万坪
10%
-0.5万坪
創成川東・西11丁目
近辺地区, 8.47%
8%
-1.0万坪
駅前東西地区,
7.46%
6%
駅前通・大通公園地区,
7.87%
札幌ビジネス地区, 7.78%
北口地区, 5.32%
-1.5万坪
2014.12
2013
2012
2011
2010
2009
既存増加-前年新築
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
新築
全体増加
4%
2%
2014.12
2013
2012
2011
南1条以南地区
2010
2009
2008
駅前東西地区
2007
2006
2005
駅前通・大通公園地区
2004
2003
2002
2001
2000
札幌ビジネス地区
1999
1998
1997
1996
1995
(出所)三鬼商事
創成川東・西11丁目近辺地区
北口地区
(出所)三鬼商事
図表-8 札幌ビジネス地区の地区別
賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積構成比
図表-9 札幌ビジネス地区の地区別
オフィス需給面積増加分(2014 年)
-10,000
-5,000
0
5,000
10,000
15,000
20,000
北口地区
12.6%
駅前通・大通公
園地区
27.7%
27.7%
12.9%
創成川東・西11
丁目近辺地区
16.1%
16.2%
8.6%
賃貸可能面積
駅前東西
地区,
-4,874
賃貸面積
27.6%
14.4%
28.9%
空室面積
駅前東西地区
28.8%
駅前通・大通公園地区,
8,810
創成川東
・西11丁目
近辺地区,
1,799
南1条以
北口地区,
南地区,
2,003
2,430
駅前
東西
北口
地区,
地区,
-527
創成川東 南1条
397
・西11丁目 以南
近辺地区, 地区, 駅前通
-2,027
-1,078 大通園
地区,
-817
駅前通・大通公園地区
3|
南1条以
駅前通・大通公園地区,
南地区, 北口地区,
7,993
2,400
1,352
28.0%
18.1%
(出所)三鬼商事
駅前東西
地区,
-5,401
17.7%
外:賃貸可能面積
中:賃貸面積
内:空室面積
南1条以南地区
14.7%
創成川東・
西11丁目
近辺地区,
-228
駅前東西地区
南1条以南地区
創成川東・西11丁目近辺地区
(出所)三鬼商事
|不動産投資レポート 2015 年 2 月 17 日|Copyright ©2015 NLI Research Institute
All rights reserved
北口地区
4. 札幌におけるコールセンター需要
近年の札幌市のオフィス市場にとってコールセンターは最も重要な業種となっている。2013 年は
近年のコールセンター需要急増への一服感などから、札幌市による調査開始以来、初めてコールセ
ンター雇用者数は横ばいとなった。しかし 2014 年はコールセンターやバックオフィスの増員が続
き、雇用者数は 31,700 人(前年比+4,300 人)、常用雇用者数は 24,900 人(前年比+2,900 人増)と
大幅な増加となった(図表-10)
。
昨年は新築の札幌三井 JP ビルに、アマゾンジャパンやアクサ生命のコールセンターが入居した6。
コールセンターにおける正社員採用も増加しており(昨年比+17.3%の増加7)、中核人材の囲い込み
の動きも継続している8。札幌市ではコールセンターの集積が進んでいるため、今後しだいに人材確
保やビル不足の問題が出てくると思われるが9、道内外からの人口流入が継続していることなどから、
現時点では札幌市へのコールセンター需要拡大の流れは変わらないと考えられる10。
図表-10 札幌市内コールセンター・バックオフィス企業数・雇用者数
<推移>
<業種別(2014 年 12 月現在)>
80社
76社
70社
76社
70社
60社
58社
60社
業種
30,000人
コールセンター
アウトソーサー
21社
19,600人
15,100人
25,000人
(インバウンド)
金融(保険)
8社
1,800人
1,700人
金融(その他)
6社
1,400人
1,300人
24,900人
21,800人
22,000人 22,000人
50社
43社
14,900人 14,600人
33社
30社
18,200人
39社
40社
29社
10,800人
11,900人
12,700人
20,000人
17,100人
IT
10,000人
6,400人
4,300人
5,000人
0社
0人
2005
2006
2007
2008
雇用者数(右目盛)
2009
2010
12社
3,200人
2,600人
流通(卸・小売)
8社
2,100人
1,500人
その他
9社
1,900人
1,700人
64社
30,000人
23,900人
小計
5,000人
10社
2004
雇用者数
15,000人
13,600人
8,200人
20社
企業数
常用雇用
者数
区分
27,400人 27,400人
52社
49社
35,000人
31,700人
2011
常用雇用者数(右目盛)
2012
2013
バックオフィスセンター
12社
1,700人
1,000人
合計
76社
31,700人
24,900人
2014
企業数
(出所)札幌市「コールセンター・バックオフィス雇用者数調査」2014.12 調査
5. 札幌の新規供給・人口見通し
札幌では人口規模に比べて大規模賃貸ビルの新築供給が少ない状況が続いている(図表-11)。
2010 年に北洋大通センター、2012 年に札幌北ビル、2014 年には札幌三井 JP ビルの供給があった
が、複数の大規模ビルの供給が同年に重なることがないため、2007 年以降の供給は常に 1 万坪を下
回っている。こうした新規供給の少なさが札幌のオフィス市況の悪化を抑制し、コールセンター需
要拡大の中で継続的な空室率の改善につながっている。2015 年 1 月に明治安田生命札幌大通りビル
が竣工し、2017 年には札幌駅前通共同ビル(仮)が竣工予定であるが、市況を大きく下押しするよ
うな供給圧力にはならないと思われる。
2014 年の札幌市の転入超過数は 8,309 人で、2013 年に続き主要政令指定都市の中で最多だった
6
北海道新聞 2014.10.31 朝刊、北海道建設新聞 2014.2.20、日本経済新聞地方経済面 2014.8.2 など
札幌市「コールセンター・バックオフィス雇用者数調査」より
8
札幌市経済局産業振興部電話ヒアリングなど。報道によるとコールセンター運営の VALWAY121 ネットは札幌市内で契約社員 94
人を正社員登用したという(日本経済新聞地方経済面 2014.10.3)。
9
札幌のコールセンターの課題として、コールセンターの入居条件に適したビル(立地、規模、築年、設備、賃料など)がかつてに
比べてしだいに少なくなっていることが、コールセンター設置の制約条件になり始めているようだ。
10
札幌市では本社機能の移転誘致を強化している。アクサ生命のコールセンターも札幌本社内に設置されている。コールセンタ
ー立地への公的補助金としては、札幌市「コールセンター・バックオフィス立地支援制度」などがある。
7
4|
|不動産投資レポート 2015 年 2 月 17 日|Copyright ©2015 NLI Research Institute
All rights reserved
(図表-12)
。札幌市の転入超過数の特徴は、①1990 年代より転入超過数は高水準で安定的に推移、
②女性の 20 代前半の転入超過数の多さ、③男性の 20 代前半の転入超過数の少なさ(転入者数と転
出者数がほぼ均衡)
、④年少者から高齢者までまんべんなく転入超過数が存在するという点にある11
(図表-13)
。最近のコールセンター立地は、大規模な流入超過が続く 20 代女性などの勤務先とし
ても重要な役割を果たしていると考えられる。
転入超過の継続により札幌市の人口は増加が続いている。札幌市の 5 年ごとの見通しによると
2015 年をピークに減少がはじまると予測されている(図表-14)。ただし、2014 年の人口(日本人
人口)は 5,217 人の増加とまだ十分な増加が続いている。このうち自然増加(出生数-死亡者数)
は▲3,107 人で、社会増加(+8,324 人)が自然減を補っている状況にある12。
図表-11 札幌における大規模ビル新規供給計画
図表-12 主要都市の転入超過数
2.5万坪
15,000
予測
10,000
2.0万坪
5,000
1.5万坪
0
-5,000
1.0万坪
-10,000
0.5万坪
-15,000
-20,000
2014
2013
2012
大阪市
2011
2010
2009
2008
名古屋市
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
仙台市
福岡市
図表-14 札幌市の年齢別人口見通し(5 年毎)
1,093
50%
220万人
926
男
予測
女
200万人
182
188
191
194
193
191
187
176
180万人
663
800人
2000
1999
1998
1997
1996
1995
札幌市
(出所)住民基本台帳人口移動報告
図表-13 札幌市の男女年齢別転入超過数(2013 年)
1,000人
1994
2017予
2016予
2015予
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
(出所)CBRE、三幸エステート
1,200人
1993
0.0万坪
45%
182
40%
167
154
160万人
35%
140
129
132
129
121
120万人
123
118
110
101
100万人
30%
114
109
102
99
5
32
57
67
119
20%
73
80万人
60
49
55
-13
40万人
19
23
20万人
90歳以上
85~89歳
80~84歳
75~79歳
70~74歳
65~69歳
60~64歳
55~59歳
(出所)住民基本台帳人口移動報告
50~54歳
45~49歳
40~44歳
35~39歳
30~34歳
25~29歳
20~24歳
15~19歳
5~9歳
10~14歳
0~4歳
58
61
64
19
17
16
2025
2030
2035
15%
39
-200人
25%
88
82
60万人
0人
-400人
128
124
261
115
316
188
347
142
273
150
281
216
330
231
242
164
151
241
183
335
173
312
248
137
157
200人
198
268
271
316
407
400人
140万人
487
600人
29
32
33
12
3
5
7
9
1965
1970
1975
1980
30
15
27
20
26
25
33
23
22
10%
22
21
5%
0%
0万人
札幌市人口
1985
1990
うち年少人口
1995
2000
うち生産年齢人口
2005
2010
2015
うち高齢者人口
2020
高齢者比率(右目盛)
(出所)札幌市
6. 札幌のオフィス賃料見通し
札幌におけるオフィス供給計画や人口流入、経済の成長見通しなどに基づくオフィス需給の見通
しから、2021 年までの札幌のオフィス賃料を予測した(図表-15)
。
推計の結果、札幌市のオフィス賃料は、今後、2016 年(下期、以下同じ)まで+8.0%上昇(2014
11
12
住民基本台帳人口移動報告を参照のこと。主要都市の人口移動については、竹内一雅「震災後の国内人口移動(2)-主要都
市の人口移動と特徴」不動産投資レポート 2013.11.26 ニッセイ基礎研究所などを参考のこと。
東日本大震災を契機に札幌市への転入超過数(社会増加)は 5 千人程度から 8 千~1 万人程度へと増加した。現状の転入超過
数が続くのであれば、人口の減少時期は札幌市の予測より少し遅くなる可能性があると思われる。
5|
|不動産投資レポート 2015 年 2 月 17 日|Copyright ©2015 NLI Research Institute
All rights reserved
年下期比)して 1 万円/坪を回復した後、消費税率の 10%への引き上げを契機に下落に転じ、2019
年には 2014 年比で▲3.9%となった後に再上昇し、2021 年には同+2.5%になると予測された。
当面の賃料上昇は、楽観シナリオでは 2014 年比+14.3%(2016 年)
、悲観シナリオでは同+1.0%
(2015 年)であった。その後の賃料の底はともに 2019 年で、楽観シナリオでは 2014 年比+7.1%、
悲観シナリオでは同▲2.03%だった。2021 年の賃料水準は、標準シナリオで 2014 年比+2.5%、楽
観シナリオで+13.5%、悲観シナリオで▲16.3%だった。
図表-15 札幌オフィス賃料見通し
12,000
予測
11,000
10,000
9,000
8,000
7,000
標準
6,000
楽観
悲観
5,000
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
(注)各年下期の賃料を記載
(出所)賃料の実績値は三幸エステート・ニッセイ基礎研究所「オフィスレント・インデックス」
(出所)賃料の将来見通しは「オフィスレント・インデックス」などを基にニッセイ基礎研究所が推計
7. おわりに
札幌市のオフィス市況は、コールセンター需要の増加と新規の大規模供給が少ないことから改善
が続いている。当面はオフィス需要の増加が続くと考えられることに加え、新規供給が限定される
ため、2016 年までは賃料の改善が続く予想される。2017
年以降後は消費税率の引き上げに伴う
景気減速により 2019 年まで賃料は下落するが、その後は 2020 年の東京オリンピックに向けて再び
上昇するという結果となった。
今後も札幌のオフィス市場におけるコールセンターの重要性は変わらないと考えられるが、さら
に中長期的なオフィス市場の成長を図るためには、同じ IT 関連ではあるがコンテンツ産業等の誘致
や成長が欠かせないと思われる。男性の 20 歳代前半では人口の純流入がほぼないのは、男性の大学
卒業後の勤務先の不足を意味していると思われる(図表-13)。中高年の転入者の中には、U ター
ン者を含めさまざまな経験や技能を持っている人がいると思われる。こうした人材がベンチャーと
して活発に起業できるような環境作りなども、札幌のオフィス市場のさらなる成長のためには必要
と思われる。
6|
|不動産投資レポート 2015 年 2 月 17 日|Copyright ©2015 NLI Research Institute
All rights reserved