米国:原油価格とタイトオイル - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報

更新日:2015/2/18
ワシントン事務所:佐藤陽介
米国:原油価格とタイトオイル
(③企業、⑧非在来型)
(EIA、Baker Hughes、NDDMR、企業 HP 情報)
・昨今の原油価格のおよそ 50%もの下落は、米国の原油生産量の急激な増加が一因とされている。
・この原油価格の下落が現在米国の原油増産を支えているシェールオイルやタイトオイル生産にどのよ
うな影響を与えるかは大きな関心どころである。
・シェールオイルやタイトオイルの独特な特徴は、当初生産量からの減少率が大きい、そのために集中
的・継続的な掘削を必要とする、そのためできるだけ早期の投資資金の回収を必要とする、そのた
め、短期的な価格の変動(特に下落)に大きな影響を受ける、そして、区域毎、井戸毎に異なる経済性
を持つということである。
・シェールオイルやタイトオイル生産に従事する企業は、この特徴をよく理解し、2015 年の支出額の削
減、価格ヘッジ、経済性の高いコアプレイへの特化などによる対応策を講じている。
・原油安が企業の体力をすり減らす前に、企業が生産性の効率化を実現できるかどうか、米国タイトオイ
ル産業は、正に現在“テスト”されている状況と言えよう。
1.はじめに
2014 年6 月以来の原油価格の下落は、100ドル/bbl 以上あった国際原油指標のブレント原油、米国原
油指標の WTI 原油の価格をともに 40~50 ドル/bbl 台まで押し下げている。2014 年 11 月の、減産を行
わないという OPEC の決定は、この傾向に更なる拍車をかけた。専門家達は、原油価格下落の原因を欧
州や中国の弱い経済成長による予想より低い石油需要と、非 OPEC 諸国からの生産増加による供給の
過剰に帰している(その他、好調な米国経済がもたらしている強いドルや、リビアやイラクにおける計画
外供給途絶状態の回復などが断続的な変動の理由として挙げられている)。特に、非 OPEC 諸国からの
生産増加は、米国における原油生産量の急増に負うところが大きい1。技術的進展と高い原油価格の下
での水圧破砕技術と水平掘削技術の組み合わせが、従来では商業ベースでの開発が不可能であった
非在来型資源の開発を可能とし、米国の原油生産量は、生産量が底打ちした 2005 年の 518 万 bbl/d と
比べて 2014 年の 867 万 bbl/d(推計)まで、350 万 bbl/d 増加した(米国エネルギー情報局(EIA: Energy
1
米国は原油の輸出制限を課しており特定の条件の下でライセンスを取得した場合にのみ国外への原油の輸出を許可している(現在大
多数はカナダへの輸出)。従って現在米国からの国際原油市場の供給量はそれほど大きくはなく凡そ 40 万 bbl/d の水準(2014 年 11
月には 50 万 bbl/d を超えた)である。それにも関わらず原油価格の下落の一因が米国における原油生産量の増加に帰せられるのは、巨
大な消費国米国において国内で生産された原油が海外からの輸入原油に置き換わっているからである。米国の原油輸入量は 2005 年の
1,017 万 bbl/d から 2014 年の 702 万 bbl/d まで減少した。
-1Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
Information Administration)。
原油価格がどこまで低くなるのか、低原油価格がどれほどの期間続くのかという疑問が専門家達の間
で広く共有されているなかで、焦点が当てられているのは米国のシェールオイル、タイトオイル生産の行
方である。本稿では、シェールオイル、タイトオイル開発の特徴、企業の動向について概観する。
2.タイトオイル生産の特徴2
(1)ピーク到来後の急激な生産減少
非在来型資源の生産量は、在来型資源と比べて生産の初期段階において急激な減少を経験すること
が指摘されている3。そのためこの減少の影響を防ぐために継続的な掘削が必要となるが、そのことはタ
イトオイルをはじめとする非在来型資源の開発・生産段階を資本集中的なものにする。
シェールオイルやタイトオイルの生産量は、最初の数週間にピークを迎えると言われており、それは一
般的に IP30(Initial Production during the first 30days.最初 30 日間の当初生産)と呼ばれている。そして、
このピーク生産量を迎えた生産井は、急激に生産量を減少させる。ハーバード大学のレオナルド・モー
ジュ氏は、2007 年から 2012 年にかけて生産を開始した 4,000 以上の生産井を検討し、米国タイトオイル
生産を牽引するイーグルフォード(テキサス州)、バッケン/スリーフォークス(ノースダコタ州、モンタナ
州)、パーミアンベイスン(テキサス州、ニューメキシコ州)の減少率を推定した4。表 1 の 1 年目の減少率
は、IP30 における生産量と 12 ヶ月後の平均生産量を比較した結果であり、2 年目以降は前年最後の月
の生産量平均に対して比較した結果を示している。非在来型資源の生産減少率とは対照的に、国際エ
ネルギー機関(IEA: International Energy Agency)が、世界エネルギー見通し2013で発表した1,600箇所
以上の鉱区を対象にしたスタディは、ピーク生産を過ぎた在来型資源の生産減少率を 1 年に約 6%と推
定している。米国タイトオイル生産に従事している独立系企業は、しばしば投資家向けのプレゼンテー
ション等において生産プレイの減少率を明らかにしているが、モージュ氏の試算結果に沿うものとなって
いる5。
2
シェールオイルとタイトオイルに共通する特徴は地層の空隙率と浸透性が非常に低く、井戸を掘削しただけでは自然の地下圧力で原油が
井戸に流れ込まないため、その採取のためには水圧破砕などの何らかの外的刺激が必要なことである。シェールオイルの地層は粘土質で、
亀裂が生じやすく、そして水平に何百何千マイルと広がっている。タイトオイルの地層はシルト岩(石英やその他鉱物の混合)や泥岩で構成さ
れる。データログ上はシェールオイルとタイトオイルとは相互に似た結果となるという。本稿ではタイトオイルが多いバッケン/スリーフォークス
を例示することが多いため一括してタイトオイルと述べる。
3
International Energy Agency, “World Energy Outlook 2013”, Nov 12, 2013,
http://www.iea.org/newsroomandevents/pressreleases/2013/november/weo-2013-light-tight-oil-doesnt-diminish-importance-of-mideast-suppl
y.html
4
Leonardo Maugeri. “The Shale Oil Boom: A U.S. Phenomenon” Discussion Paper 2013-05, Belfer Center for Science and International Affairs,
Harvard Kennedy School, June 2013, http://belfercenter.ksg.harvard.edu/publication/23191/shale_oil_boom.html
5
一例としては、Devon Energy の投資家向けプレゼンテーションが挙げられる。Devon Energy, “Capital One Energy Conference”, Dec 10,
2014, http://investors.devonenergy.com/files/doc_presentations/2014/DVN-Capital-One-Conference-presentation-121014_v001_s15264.pdf
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表 1:米国三大プレイ生産減少率推定
タイトオイルプレイ
イーグルフォード
バッケン/スリーフォークス
パーミアン
生産 1 年後
55%
43%
50%
生産 2 年後
40%
35%
40%
生産 3 年後
30%
30%
30%
生産 4 年後
20%
20%
20%
生産 5 年後
20%
20%
20%
出典:Leonardo Maugeri, “The Shale Oil Boom: A U.S. Phenomenon”、表から作成
(2)集中的な掘削活動の必要性
企業は既存の生産井からの生産減少を相殺し、さらに生産量を増加させるために新しい井戸を次々
に掘削することが必要になる。図 1 は、上記3プレイの掘削リグ稼働数の推移を表わしたものだが、2008
年の経済ショック後に一旦低下した後に急激に増加し、現在まで高い水準を維持しているが、ここ最近
はリグ数が横ばいになっていることがわかる。これは井戸毎の生産性が上昇したことを反映している。図
2 は、3 プレイの生産井当たりの生産量の推移を表わしたもので、イーグルフォードとバッケン/スリーフォ
ークスの生産性が上昇しているのに対して、パーミアンの生産性は比較的低い。これはパーミアンにお
ける高いリグカウントと併せて見るとよくわかるとおり、パーミアンでは井戸の生産性が比較的低いために、
より多くの掘削を行わなければならないと言うことができよう。
【単位:リグ数・基】
【単位:bbl/rig】
600
600
500
500
400
400
Eagle Ford
300
Eagle Ford
300
Bakken/TF
Bakken/TF
200
出典:EIA, Drilling Productivity Report から作成
Jul-14
Jul-13
Jan-14
Jul-12
Jan-13
Jul-11
Jan-12
Jul-10
Jan-11
Jul-09
Jan-10
Jul-08
Jan-09
Permian
Jan-07
Jul-14
Jul-13
Jan-14
Jul-12
Jan-13
Jul-11
Jan-12
Jul-10
Jan-11
Jul-09
Jan-10
Jul-08
Jan-09
Jul-07
Jan-08
Jan-07
100
100
Jul-07
Permian
Jan-08
200
出典:EIA, Drilling Productivity Report から作成
図1:リグ数の推移
図 2:1生産井当たりの生産量の推移
(3)短中期的な価格変動への脆弱性
タイトオイルなどの非在来型資源の生産井の、当初数週間に生産ピークを迎えその後急激な減少を
伴うという性質は、短期的、あるいは中期的な原油価格の動向が非常に重要であることを意味している。
例えば、原油価格が低い環境下においては、生産した原油を低い価格で販売しなければならなくなる
が、先にタイトオイルプレイの減少率を見たとおり、IP30 から 1 年で生産量が約半分にまで落ち込み、更
に 2、3 年後には前年の 40%、30%の生産量しか期待できないという特徴は、後年において投資資金を
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十分に回収できなくする可能性を大きくする。別の言葉で表現すれば、非在来型資源の開発は早期に
投資資金を回収することが必要になるために、短期的な原油価格の動向に大きな影響を受ける。そのた
め、タイトオイルなどの非在来型資源の開発に従事する多くの企業は、価格変動のリスクに対処するた
めにしばしばヘッジを用いている。ヘッジとは、先物市場において生産物の販売価格を固定して売買契
約を締結することであり、例えば、石油企業は、原油価格の変動に関わりなく合意した価格で原油を販売
することができる。これは特に原油価格が下落した時などに有効である。
(4)井戸毎に大きく異なる経済性
在来型石油・天然ガスにも妥当することだが、非在来型資源の場合、同じ地層内であっても地質的特
徴や資源の特徴の相違が特に大きく、そのため区域毎に経済性も変わってくると言われている。そのた
め、同じ地層であっても所定の原油価格の下で利益を生じさせる区域とそうでないもの(もっと言えば、
井戸毎にも異なると言われている)が生じることがある。下表はバッケン/スリーフォークス層が所在するノ
ースダコタ州の鉱物資源省(NDDMR: North Dakota Department of Mineral Resources)の資料から作成
したノースダコタ州内の各郡における損益分岐価格(Break Even Price)を示したものである6。各郡の損
益分岐価格は広い範囲に及んでいる。米国タイトオイル生産の損益分岐価格は50ドル/bblなどと指摘さ
れることもあるが、下表から明らかなようにそのような一括的なくくりでは多少の誤解を招くだろう。
表2:バッケン/スリーフォークスの損益分岐価格(郡毎) 【単位:USD/bbl】
損益分岐価格
郡
Billings
Bottineau-Renville
Bowman-Slope
Burke
Divide
Dunn
Golden Valley
McKenzie
McLean
Mountrail
Stark
Williams
10/15
情報*
$53
$51
$75
$81
$85
$29
$77
$28
$73
$42
$36
$37
1/8
情報**
$44
$52
$75
$62
$73
$29
$52
$30
$77
$41
$37
$36
価格平均
$55.58
$50.66
*10%の Rate of Return となる価格と NDDMR は説明。
**新規掘削が止まる価格と NDDMR は説明。
****バッケン産原油(Bakken Sweet Crude)の井戸元価格は
2 月 13 日時点で$34.50/bbl。
出典:NDDMR 発表情報を元に作成
6
North Dakota, Department of Mineral Resources, “House Appropriations Overview”, Jan 8, 2015,
https://www.dmr.nd.gov/oilgas/presentations/FullHouseAppropriations010815.pdf
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企業は生産井毎、区域毎の経済性を把握し、原油価格が下落した場合などにはコスト高の区域での
活動を手控え、より利益率の高い区域へと活動を集中させる必要がある。なお、この損益分岐価格は、
決して固定のものではない。ここ数年で井戸あたりの生産性が向上しているとおり、技術の進展や効率
化によって生産コストも下がってきている。また、昨今の原油価格の低迷によって企業も掘削を控えるな
か、需要と供給との関係から、需要減となったサービスはコストが低下する。その結果、表にも見られると
おり、損益分岐価格も変動していく。
3.原油価格下落の影響
(1)全般的な傾向
およそ 50%もの価格の降下は、現在米国タイトオイル産業にどのような影響をもたらしているか、各種
統計情報等を用いて整理してみたい。
下図は、WTI スポット価格と米国の石油掘削リグ数、WTI スポット価格と米国の原油生産量をそれぞれ
プロットしたものである。原油価格が下落する兆候が見え始めたのは秋頃からであるが、原油の生産井
を掘削するためのリグ数も冬頃から遅れて原油価格を追うように徐々に下降を始め、年末に入ると明らか
な下降を見せる。米国では 11 月末の感謝祭シーズンや 12 月のクリスマスシーズンの休暇もあって、例
年その時期の掘削活動は若干減少し、1 月に入ると再び立ち上がる。しかし、今年は 1 月に入っても回
復の兆候は見られず、原油価格の下落がまずはリグ稼働数に影響を与え始めていると思われる。他方、
原油生産量には目に見える影響はまだ現れていない。リグ掘削の減少が原油生産量に影響を与えるま
でには若干のタイムラグがあるということであろう。
【単位:左軸、リグ数(基)、右軸:WTI 価格(USD/bbl)】
1,800
1,600
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
【単位:左軸、原油生産量(千 bbl/d)、右軸:WTI 価格(USD/bbl)】
120
9400
9200
9000
8800
8600
8400
8200
8000
7800
7600
7400
100
80
60
40
20
Weekly U.S. Oil Rig Count
Jan 03, 2015
Feb 03, 2015
Dec 03, 2014
Nov 03, 2014
Oct 03, 2014
Sep 03, 2014
Aug 03, 2014
Jul 03, 2014
Jun 03, 2014
Apr 03, 2014
May 03, 2014
Feb 03, 2014
Mar 03, 2014
Jan 03, 2014
0
Weekly WTI Spot Price
出典:EIA, Baker Hughes7データから作成
100
80
60
40
20
0
Weekly U.S. Field Production of Crude Oil
Weekly WTI Spot Price
出典:EIA, Baker Hughes データから作成
図 3:WTI 価格と米国石油リグ数の推移
7
120
図 4:WTI 価格と米国原油生産量の推移
Baker Hughes, http://www.bakerhughes.com/rig-count
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その理由としていくつかの要因が指摘されている。1 つは、生産企業は掘削を削減するが、掘削を
継続する残りの部分は最も利益率の高い“スウィートスポット”に焦点が当てられるということである。生産
企業の目標は収入を最大化することであり、それは生産量を最大化することによって達成される。2 つは、
近年では、多くの鉱区リース契約が生産企業によって生産保持条項(HBP: held by production)(高額なリ
ース権を保持し続けるために掘削と生産を要求する)を伴って契約締結されていることである。短期的な
非経済に関わらず、リースを保持し続けるために一定の掘削と生産が行われる。3 つは、生産企業の中
には生産物の価格をヘッジする企業もおり、将来の販売において高めに価格設定されたもののために
掘削と生産を継続することである。4 つは、生産企業の経済は掘削サービスコストの減少(掘削活動の減
少への反応として急速に生じる)によって改善されることである。そして 5 つは、掘削は完了しているが、
完成していない多数の井戸(バックログ)の存在である。このバックログは、許可発行と掘削活動の急激
な減少を相殺し、生産にとってのクッションとして働く。EIA は、米国の主要プレイのほとんどにおいて、こ
のバックログが現在 3 ヶ月から 7 ヶ月の範囲に及んでいると指摘している8。
(2)バッケンの動向
よりミクロに見ても全体の傾向は同様である。一例として比較的情報発信が多いバッケンについて見
てみる。下表は NDDMR が発表しているバッケンの統計データを整理したものである9。NDDMR によれ
ば、12 月まで原油生産量、生産井数(但しともに暫定評価)は過去最高記録を更新し続けている。他方、
秋~冬頃からリグ数は減少に転じた。掘削許可発行数は変動もありその傾向は把握し難いが、年平均と
しては 250 件と評価される。
表 3:バッケン統計情報(2014 年)
【単位:生産量 1,000bbl/d、原油価格 USD/bbl】
生産量
生産井
許可数*
価格*
リグ数
1月
935
10,114
253+0
74.20
188
2月
952
10,199
180+5
86.89
189
3月
977
10,472
250+2
86.72
193
4月
1,003
10,665
233+0
85.68
188
5月
1,040
10,902
234+1
88.31
189
6月
1,092
11,090
247+0
90.03
190
7月
1,114
11,293
265+1
86.20
192
8月
1,132
11,565
273+2
78.46
193
9月
1,186
11,758
261+2
74.85
193
10 月
1,183
11,903
328+1
68.94
191
11 月
1,188
11,942
235+1
60.61
188
12 月
1.227
12,124
251+0
40.74
181
平均
1,086
11,155
250
76.80
189
*12 月の生産量、生産井数は暫定評価。12 月まで最高記録を更新。
*許可数+n:(n)地震探査許可数、*井戸元価格:Bakken Sweet Crude
*許可数過去最高は 2012 年 10 月の 370 件。リグ数過去最高は 2012 年 5 月 29 日 218 カウント。
出典:NDDMR 統計情報から作成
8
EIA, “Today in Energy, Lower 48 oil production outlook stable despite expected near-term reduction in rig count”, Jan 26, 2015,
http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=19711
9
North Dakota, Department of Mineral Resources, “Directors Cut Archive”, https://www.dmr.nd.gov/oilgas/directorscut/directorscutarchive.asp
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【単位:左軸、リグ数(基)、右軸:原油価格(USD/bbl】
【単位:左軸、原油生産量(千 bbl/d、右軸:原油価格(USD/bbl】
110
194
100
192
1200
110
100
1150
90
90
190
80
1100
188
70
186
60
184
50
182
40
950
180
30
900
WTI Spot
70
60
1000
50
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
リグ数
80
1050
40
30
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
生産量
Bakken原油価格
出典:EIA, NDDMR データから作成
WTI Spot
Bakken原油価格
出典:EIA, NDDMR データから作成
図 5:WTI,Bakken Sweet Crude, リグ数の推移
図 6:WTI, Bakken Sweet Crude, 生産量の推移
表 4 は、先に掲載したバッケンの損益分岐価格に対してリグ稼働数を付け加えたものである。NDDMR
によれば、2 月 13 日時点のバッケン原油の価格(Bakken Sweet Crude)は$34.50/bbl である。こ
の水準で稼働の継続が見込めるのは Dunn 郡と Mckenzie 郡の 2 郡ということになる。しかし、NDDMR
が説明しているとおり、
既存生産井を閉めなければならない価格は$15/bbl ということであるので、
この価格帯であれば他の郡においても既存生産井からの生産を継続するとも思われる。また、損益
分岐価格とリグ数の対応関係から見るに、採算の低いプレイについては掘削を控える一方、コアプ
レイについては掘削を継続している。
表 4:ノースダコタ州各郡の損益分岐価格と直近リグ数
損益分岐価格
郡
Billings
Bottineau-Renville
Bowman-Slope
Burke
Divide
Dunn
Golden Valley
McKenzie
McLean
Mountrail
Stark
Williams
価格平均/リグ合計
10/15
情報*
1/8
情報**
10/15
リグ数***
12/12
1/7
$53
$51
$75
$81
$85
$29
$77
$28
$73
$42
$36
$37
$55.58
$44
$52
$75
$62
$73
$29
$52
$30
$77
$41
$37
$36
$50.66
4
4
0
3
8
28
0
66
1
31
2
43
190
2
5
2
3
4
28
0
64
1
33
0
40
183
1
4
3
2
6
26
1
59
0
28
1
35
166
*10%の Rate of Return となる価格と NDDMR は説明。
**新規掘削が止まる価格と NDDMR は説明。また既存井が停止するのは$15/bbl としている。
***2/13 時点リグ数合計は 137 カウントである。
出典:NDDMR 資料、報道資料から作成
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
(3)企業の対応状況
タイトオイル生産に従事する企業の反応はどのようなものであるか。企業は、2015 年において
大幅な支出削減を計画するとともに、価格ヘッジを行うなどして原油安に対する防衛対策を行って
いる。
表 5 は、主に米国内でタイトオイル生産に従事する独立系企業が発表した 2015 年支出計画を整
理した一例である。興味を引かれるのは、支出削減を行いながら生産量は横ばい、あるいは増加を
目標とし、または見込んでいる点である。この点、企業が見込んでいるのは掘削や完成コストの効
率化や削減、リターンが大きいコアな部分への集中である。
表 5:企業の投資計画の一例(2015 年計画)
企業
発表日
Marathon Oil
12 月 17 日
Continental Resources
12 月 22 日
Hess Corporation
1 月 26 日
Occidental Petroleum
1 月 29 日
2015 年支出計画
主な北米操業
地域
2015 年の資本的支出を 2014 年比 20%削 イ ー グ ル フ ォ
減、43-45 億ドルへ。
ード
2014 年生産量比一桁増加を見込む。
バッケン
2015 年の資本的支出を 2014 年比 41%削
減、27 億ドルへ。
2014 年生産量比 16~20%増加を見込む。
2015 年 Q1 中に稼働リグ数を 51 から 34
に削減。年平均 31 基を維持する。
2015 年の資本的支出を 2014 年比 16%削
減、47 億ドルへ(うち 21 億ドルが非在来
型への投資)。
2015年中に非在来型稼働リグ数を17から
9.5 に、生産井を 238 から 210 に削減。
2015 年の資本的支出を 2014 年比 33%削
減、55 億ドルへ。
石油・天然ガス 2014 年生産量比 6~10%
増加を見込む。
バッケン
スクープ(オク
ラホマ州)
バッケン
ウーティカ
備考
2013 年テキサス州生
産量 7 位
2013 年バッケン生産
量6 位
米国外にも展開
2013 年バッケン最大
の生産企業
2013 年バッケン生産
量3 位
米国外にも展開
パーミアン
2012 年パーミアン最大
の生産企業
2013 年テキサス州生
産量 2 位
米国外にも展開
Pioneer Natural
2 月 10 日
2015 年の資本的支出を 2014 年比 45%削 パーミアン
2012 年パーミアン生産
Resources
減、18 億 5 千万ドルへ。
イーグルフォ 量2 位
年間生産成長率 10%以上を見込む。
ード
2013 年テキサス州生
産量 7 位
Apache Corporation
2 月 12 日
2015 年の北米への資本的支出を 2014 年 加モントニー
2013 年テキサス州原
比 73~75%削減、21~23 億ドルへ。
パーミアン
油生産量 4 位
2014 年北米陸上生産量比 1~2%の増加 イ ー グ ル フ ォ 2012 年パーミアン生産
を見込む。
ード
量3 位
オクラホマ州
米国外にも展開
*他の主要企業(EOG Resources:イーグルフォード、Chesapeake:主要 3 プレイ)は、2015 年支出計画を発表しておらず 2 月の
決算説明会で発表するものと思われる。
出典:各社プレスリリース等から作成
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効率化に関しては、単位あたりのコスト削減のみならず、1 生産井当たりの生産量の増加という観点か
らも読み取ることが可能であろう。表 6 は、EIA の Drilling Productivity Report のデータを元に、各主要タ
イトオイルプレイにおける 1 生産井当たりの生産量の増加(週ベース)を平均して整理したものである10。
年によって変動があるが、2007 年から 2014 年までの平均を見ると概ねプラスの方向で効率化が進んで
いる。2008 年 7 月に原油価格が 140 ドル/bbl を超え、米国の金融不況のために、その年の 12 月には
30 ドル/bbl 台まで下がった時があった。この時タイトオイル産業は黎明期であり、言わば最初の”テスト”
を経験したと言えるが、後続の 2009 年において効率化の割合が他の年に比べて高くなっているのは興
味深い。企業は価格の低下という危機に直面し、効率化や改善を経てこの苦境を乗り切ったと聞く(例え
ば、バッケンでは多段階水圧破砕の技術の適用に成功して生産効率を上げ、他の企業もこれにならっ
た)。現在の低価格状況において同じような効率化が進むことを注意深く楽観視したいと思うが、企業が
現在の状況をモチベーションとしてどのように捉え効率化や改善を進めることができるかは、専門家が的
確に表現しているように第 2 の“テスト”と言えるだろう。
表 6:主要プレイにおける効率化の推移(1 井戸当たり生産量)
WTI 平均($/bbl)
イーグルフォード
バッケン
パーミアン
2007 年
$72.34
-2.92%
0.65%
-0.95%
2008 年
$99.67
0.70%
3.81%
3.29%
2009 年
$61.95
5.72%
4.42%
3.39%
2010 年
$79.48
7.27%
-3.67%
-0.87%
2011 年
$94.88
3.80%
2.68%
-0.49%
2012 年
$94.05
2.94%
1.04%
1.65%
2013 年
$97.98
2.78%
3.26%
1.17%
2014 年
$93.17
1.71%
1.68%
1.85%
07-14 平均
$86.69
2.81%
1.74%
1.15%
出典:EIA データから作成
次にヘッジの状況であるが、表 7 は一例として企業のヘッジポジションをまとめたものである。いずれも
2015 年、あるいは 2016 年までに、現在の市場価格よりも高い原油価格で相当量の取引を成立させてい
る。このことは、当面、油価下落のインパクトを受け止めるのに役立つはずである。しかし、取引数量が決
まっているため、数量を超える分については低油価に曝されることになる。また、今からこれらの取引を
設定しようとしても、誰もが原油価格の低迷が当面続きそうだと考えているなかでは、設定する固定価格
も低くなってしまうことが想定される。そのため、ここでも原油価格が低い状態がいつまで続くのかという
ことが問題となる。
10
EIA, “Drilling Productivity Report”, http://www.eia.gov/petroleum/drilling/
-9-
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
表 7:企業のヘッジ状況の一例
企業
Anadarko
Petroleum
Apache
Corporation
Chesapeake
Energy
Continental
Resources
期間-指標
2014年-WTI
2014年-WTI
2014年-Brent
短期
長期
2014年Q4-WTI
2014年Q4-Brent
2015年-WTI
2015年-Brent
2016年-Brent
2015年-WTI
数量
カラー取引
下限値
9,125,000 bbl
$100.00
(25,000 bbl/d)
2015年-WTI
2014年Q4-WTI
Devon Energy
スワップ取引
数量
価格
51,100,000 bbl
$101.94
(140,000 bbl/d)
5,750,000
5,750,000
16,900,000
2,700,000
3,335,000
4,508,000
bbl $90.83
bbl $100.05
bbl $94.34
bbl $95.15
bbl $96.22
bbl $103.29
24,637,500 bbl $100.85
27,375,000 bbl
(75,000 bbl/d)
38,958,640 bbl
(106,736 bbl/d)
$94.14
$91.22
上限値
3,300,000 bbl
1,100,000 bbl
$80.00
$80.00
$98.94
$98.94
552,000 bbl
4,380,000 bbl
730,000 bbl
1,464,000 bbl
23,633,750 bbl
(64,750 bbl/d)
11,497,500 bbl
(31,500 bbl/d)
$90.83
$87.00
$95.00
$90.00
$107.13
$98.36
$107.70
$107.70
$89.33
$100.00
$89.67
$97.84
EOG Resources 2015年上半期
2015年下半期
2015年-Brent
2014年-WTI
Pioneer Natural
Resources
2015年-WTI
7,300,000 bbl
$100.41
(20,000 bbl/d)
14,600,000 bbl
$109.17
(40,000 bbl/d)
5,475,000 bbl
$96.31
(15,000 bbl/d)
2016年-WTI
25,185,000 bbl
(69,000 bbl/d)
34,954,955 bbl
(95,767 bbl/d)
59,000 bbl/d
価格
20,100,000 bbl $99.76
29,800,000 bbl $100.15
15,330,000 bbl
$116.43
(42,000 bbl/d)
10,220,000 bbl
$116.43
(28,000 bbl/d)
18,500 bbl/d $103.11
70,080,000 bbl
(192,000 bbl/d)
7,300,000 bbl
(20,000 bbl/d)
3,650,000 bbl
(10,000 bbl/d)
2014年Q4-WTI
2014年-WTI
その他
数量
$117.55
2016年-WTI
Hess
Corporation
オプション取引
数量
価格
$93.70
$114.05
$87.98
$99.36
$86.14
$98.55
$96.15
$91.41
$89.98
*スワップ:原油の固定価格と市場価格をあらかじめ契約した条件のもとで交換する。石油企業は固定価格での支払を得る。
*カラー:オプション取引の一種。 市場価格が下限値及び上限値の範囲を逸脱した場合でも固定価格で売買する。
*オプション:生産物をその時の市場価格に関係なく予め決められた価格で買う又は売る権利を売買する。
*EOG Resources についてはスワップ、カラー、オプションなどのヘッジを行っているが参照した資料ではいずれを指している
のか不明であったため「その他」に分類した。
*取引数量が bbl/d ベースで表記されているものについては合計生産量(×365)に換算して併せて記載した。
出典:各社の証券取引委員会への提出資料(第 3 四半期決算報告 Q-10)から作成
4.価格、生産量の見通し
さて、原油価格や原油生産量の見通しはどのようになっているか。この点、投資銀行や専門家は、概
ね 2015 年の第 1 四半期あるいは上半期中に生産量の減少や原油価格の底値を経験し、2015 年の下半
期にいずれも上昇に向かうのではないかと予想している。昨年来のリグ稼働数の減少は即座に生産量
に影響をもたらさないが(バックログの存在や一定の生産井からの生産継続などによる)、掘削数の減少
は遅れて、しかし、ジワリと、影響を及ぼしはじめる。
一例として、図 7 は EIA が 1 月と2月に発表した予測を示したものである11。米国の原油生産量は 2015
年 5 月頃まで増加を続けるが同年 9 月までに減少に転じ、2015 年後半に入ってから再び上昇に向かう。
原油価格は 2015 年第 2 四半期までに底値を経た後、徐々に上昇に向かうというシナリオである。
- 10 Global Disclaimer(免責事項)
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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
【右軸・原油価格:USD/bbl、左軸・生産量:100 万 bbl/d】
80.00
10.00
75.00
9.80
70.00
9.60
65.00
9.40
U.S. Crude Oil Production Jan
U.S. Crude Oil Production Feb
Brent Spot Average Jan
60.00
55.00
50.00
9.20
Brent Spot Average Feb
9.00
WTI Spot Average Jan
WTI Spot Average Feb
8.80
45.00
40.00
8.60
Jan Mar May Jul
Sep Nov Jan Mar May Jul
Sep Nov
*2 月発表の予測における 1 月の数字は実績(推定)。従って 1 月予測と比較はその乖離を示す。
出典:EIA, STEO(1 月、2 月)データから作成
図 7:EIA による WTI 価格と米国原油生産量の予測(2015-2016 年)
この点EIAは、多くの企業が主要タイトオイルプレイのコア地域に焦点を当て始めていること、バッケン
やイーグルフォード、パーミアンにおけるいくらかの開発掘削活動を支える分にはまだ原油価格は十分
高いままであることを指摘している。そして、予想される WTI 価格の 2015 年下半期における上昇とともに、
企業の掘削活動も再び増加することも予想され、企業は鉱区リース及び掘削サービスの低コスト化を利
用して、WTI 原油価格が比較的低いなかにあっても生産量の増加を再開させると述べている。しかし、
多くの識者が市場の動向に関して未だ不確定な部分が多いと述べているとおり、市場や企業の活動のリ
アリティを反映してこの予測も変わっていくことであろう。
また、NDDMR は、25 ドル/bbl から 85 ドル/bbl までの範囲に及ぶ異なる井戸元価格の想定の下での生
産量の予測を行っている(図 8)。現在のバッケン/スリーフォークスの生産量はおよそ 120 万 bbl/d、
Bakken Sweet Crude 価格の 12 月平均は 40.74 ドル/bbl であるが、この予測によれば、井戸元価格が平
均して 55 ドル/bbl から 65 ドル/bbl の範囲にあれば生産量を維持できることを示している。
11
EIA, “Short-Term Energy Outlook, January”, http://www.eia.gov/forecasts/steo/
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【単位:千 bbl/d】
1,800
1,600
1,400
1,200
1,000
2015.7.1時点
800
2016.7.1時点
2017.7.1時点
600
400
200
0
$25
$35
$45
$55
$65
$75
$85
出典:NDDMR 資料から作成
図 8:異なる価格想定の下でのバッケン生産量見通し
5.むすびに
本稿では非在来型資源(特にタイトオイル)の特徴とそれが昨今の原油価格の低下によってどのような
影響を受けているかについて概観してきた。タイトオイルは急激な価格の変動に大きく影響を受けること
が指摘されていたが、それは現在までに稼働リグ数の減少や企業の支出計画に現れ始めている。そし
て遅かれ早かれこれは実際の生産量にも反映されていくことであろう。しかし、区域毎の生産性の違いと
企業の活動のコアプレイへの特化や生産の効率化、ヘッジなどの防衛対策により、タイトオイル産業は
原油価格の低下に対してある程度の抵抗力を有しているようにも見える。次の関心は、現在の原油低価
格の状況が企業の体力をすり減らす前までに、企業が 2015 年の支出計画において想定しているような
生産の効率化をどのように実現していくかということになるだろう。在来型石油・天然ガスの知見がおよそ
100 年に及ぶのに対して非在来型の経験はずっと浅く、産業としてはまだまだ始まったばかりである。そ
のためタイトオイル産業のこれからの発展の可能性も未知の部分が多く、従って、原油安に対してどのよ
うに対応していくのかも未知である。正に識者が指摘しているように、タイトオイル産業が現在“テスト”さ
れているというのは、状況を的確にとらえた表現と言えるだろう。
(了)
- 12 Global Disclaimer(免責事項)
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