資料6 ひとり親家庭支援施設・団体ヒアリング ≪意見聴取先≫ ・母子生活支援施設 むつみ荘(社会福祉法人仙台市社会事業協会) ・母子生活支援施設 仙台つばさ荘(社会福祉法人仙台市社会事業協会) ・母子生活支援施設 宮城県さくらハイツ(社会福祉法人宮城県福祉事業協会) ・シングルマザーの Windys Club[ウィンディズクラブ](ウィメンズカウンセリングいずみ) ・仙台レインボーハウス(あしなが育英会) ・NPO法人ふうどばんく東北AGAIN[あがいん] ・社会福祉法人わたげ福祉会 ≪意見概要≫ (1)「相談と情報提供・支援の仕組みづくり」関連 <ひとり親家庭の実態について> ●ひとり親家庭には、一家庭においても、多岐にわたる課題が混在している。例えば、DV、虐 待、親子それぞれの病気・障害、外国籍、生活困窮、借金、異性関係、子どもの不登校・引き こもりなど。 <父子家庭について> ●父親は、ひとり親の集まりに参加してくる人であっても、基本的にあまり話をしない人が多い。 ●父子家庭の方は、支援を求めずにいて、突然ポキッと折れてしまう危険がある。 ●傷つき体験から年月を経ると、母は、忙しい生活に取り紛れて生きていくうちに立ち直る人が 多いが、父の場合、何年たっても傷を傷のまま抱えていく傾向がある。そういう人の場合、子 どもなど周りはどんどん変化していくなかで、取り残されてしまいがち。 <行政の支援について> ●窓口で上手に手続きするということが難しい人は多い。被災地で行われている伴走型の支援で あっても、救えるのは、支援窓口に電話が出来る人であり、相談に自ら向かえない人は支援に つながらない。 ●悩みを相談したくてもできないでいる家庭、困っていても自発的に援助を求めようとしない家 庭、周囲から不安視されていても自覚のない家庭など様々あり、援助が必要な家庭を発見し、 支援につないでいくシステムづくりが課題である。 ●場所・時間・人材などの確保、規模等で、やはり行政の力は大きい。既にできている制度の有 効活用ができればよい。 1 ●行政の窓口では、対象が多すぎて、なかなか動けない。地域支援員の活用が必要。 ●施設や支援につながっていない支援対象者が多い。地域にそのような対象者がどのような状況 で暮らしているのか、できるだけ把握することが必要。 <支援団体のネットワークについて> ●行政が持っている情報をもっと関係機関や支援団体に提供してほしい。 ●ひとり親支援に関わる様々な団体の職員レベルで、具体的、実質的な情報交換をする場が欲し い。 (2)「経済的自立支援」関連 <生活困窮について> ●就労収入が生活保護費よりも低い世帯が多く、生活保護から抜けられない。 ●生活に行き詰まり、食費から削る家庭が多い。 <子どもの貧困の実態> ●生活困窮や虐待、親の精神疾患などのある家庭の子どもは、例えば、風呂の入り方、着替えの 仕方など基本的な生活習慣がついていないので、施設に入所している子どもについては、職員 が関わって、生きる力をつけてあげる必要がある。 ●将来、子どもの生活が成り立つのか、一般的な生活の基礎、基盤から作らなければならない。 ●お金も時間もなく、季節の行事ができない。子どもの誕生日でもケーキが買えない。おなか一 杯に食べられない中学生。高校生でも友達と買い食いができない。中身を見せたくないために、 お弁当を皆で囲めない。見えない壁ができ、友達と距離を置いてしまう。 ●周囲との小さな差が積み重なって広がっていき、家庭に対し、子どもに諦め的感覚が生まれる ことが、貧困の連鎖の要因になっていく。 ●小さな支援でもあれば、生活に少しの余裕を生み、後ろ向きの気持ちがわずかでも前向きにな って、新たなモチベーションが生まれることもある。 (3)「子育て支援・生活支援」関連 <子どもへの支援> ●子どもを支援するプログラムや場が欲しい。研修を受けた支援員のいるフリースペースや無料 の学習支援、体験支援などがあるとよい。傷つき体験のある子の居場所がない。 ●学校についていけなくなった子ども、例えば虐待を受けた子どもなど、重いケースへの対応で は、深く付き合うほど心の中のものが出てくる。噴出してくるまで付き合って、そこが第一歩 になる。 2 ●他都市の学習支援の事例だが、そこに行くということは、ひとり親家庭の子だと認めることに なってしまうことが敬遠され、活動が尻すぼみになってしまった。ひとり親家庭であることを 隠したがる人はいる。 ●子ども同士は、 “違う”ことで外されるのを非常に恐れるので、境遇で線を引かれるのを嫌がる。 ●学校では個別対応はできないので、案内チラシなどは全員に配ってもらわなければならない。 ひとり親家庭の状況は、個人情報保護のため、学校や周囲の家庭で情報を把握できなくなって おり、学校行事などで配慮が必要なときに本人から言わなければならないが、それを何度も自 分で言うのもつらいという状況。 ●ひとり親家庭への支援で大切なのは、子どもへの教育支援だと思う。 <子育てについて> ●ひとり親家庭では、家庭のバランスが崩れ、子どもが家庭内で支配的になり、母親が苦しむと いうことがある。 ●子どもが小さいほど、親の混乱した状況の影響を直接に受けることになる。 ●思春期は往々にして難しいが、親には自信がなく、 「ひとり親だからこうなってしまったのでは ないか」と悩んでしまう。 <子どもの預かり事業について> ●働くひとり親への支援策として、夜間の病児保育が必要。スタッフ派遣型であればなお良い。 看護休暇が取れない非正規雇用の人や夜勤のある人などは、子どものことで休むことで簡単に クビにされてしまうが、泣き寝入りするしかない。支援制度の形と現実の事態にギャップを感 じる。 ●ファミリーサポート事業で助けられている人は多い。しかし料金の問題がある。ひとり親に減 免をしてほしい。 ●施設で病児保育や休日リフレッシュ保育を行っている。親子で過ごす時間を増やすべきという 考えもあるが、一方で、ひとり親を解放してあげられる時間をつくることも、結果的には子ど ものために大切だ。生活に追われながら、狭い家庭内で親子だけで向き合い続けていると、ス トレスから虐待につながりやすい。 <傷つき体験からの心の回復について> ●離婚し誰にも相談できなかった人、DVを受け心の傷を負っている人等が集まり、傷ついた体 験や「生き難さ」について語り合う会がある。人生を再構築してきた自分への肯定感と支えあ う仲間を得る。 「肉親にも理解されない、頼るところがない、話を聞いてほしい、ここが実家の ようだ」と言う方もいる。市内にはこのような場が他にほとんどない。心の中を吐き出す機会 があるといい。 ●親自身が離婚による疎外感や孤立感を持っている。特にDV被害後の心のケアが必要。また、 虐待を受けた子供を育てる困難さもある。これらの心の問題が解けていかないと次への一歩が 踏み出せない。 3 ●本当は、同じ境遇の人同士のサークルなどに出て来られない人にこそ癒しの場、情報交換の場 が必要なのだが、会に参加できる人は限られている。 ●少し子どもと離れて、同じ立場の人たちと、ホッとできる時間を持つことが大切だが、そうい う場に来るエネルギーのない人こそ大変。何年も「通信」のみを送り続け、7 年目にやっと訪 れてくれた人もある。 ●就職のためのヘルパー講習は、人をケアする訓練だが、人とふれあうこと、スキンシップ、感 謝されることで自分自身もケアすることができる。 ●あまり繋がりを重視しすぎると、依存してしまい、自分の問題を見失ってしまう場合もある。 集団内に負の気持ちが蔓延してしまうことも。 ●離婚の人と死別の人は、境遇がまるで違うので、 「ひとり親」で括っても共感を得られない。 <面会交流支援について> ●子どもの面会交流に対する不安や負担感でストレスが生じている。DVによる離婚の調定で行 き詰まり、相手方が面会交流を使ってコントロールしてくる場合がある。子どものためと言わ れ、その点は理解しつつも、その連絡が来たという話を聞いただけでガクガクと震えてしまう 人もいる。安全な面会交流のための付き添い支援が必要ではないか。 ●専門家の中にも養育費を取るなら面会交流させた方がいいと言う方がいる。養育費と面会交流 は全く別の話。協議の中でも雰囲気に流され、押されて決めてしまい、あとで苦しむことにな る。 ●離婚調停の条件に面会交流を出される。弁護士を通じてやり取りし、施設入所者については、 職員が付き添い、公的な場所で面会を行うようにしている。 (4)「特別な支援を必要とする家庭への支援の強化」関連 <メンタルケアについて> ●精神の病気を積極的に直さない(そのこと自体が病気によるもの)人について、回復への道筋をつ くるのは、大変難しい。 ●福祉施策への精神科医の協力が必要。メンタルケアが必要なひとり親への支援に精神科医が関 われる仕組みがほしい。 ●親が精神面の疾病を抱えている場合、子どもを学校に行かせないようにする、日々目の前で不 安定な様子を見せる、世話をしてあげられないなど、子どもはその影響を直接強く受ける。親 子で家庭内に閉じこもり、身動きが取れなくなってしまう。 ●精神の病気を抱えたひとり親は、自立しようとしても受け皿になる場所がない。 <DV被害者について> ●DVから避難してきてひとり親になった人は、精神的ダメージから回復するまで時間を要し、 すぐに自立することは難しい。精神的エネルギーを奪われているので、不安が大きく、何かを 決めたり処理したりすることが大きな負担になる。支援策を利用、活用する力がない。 4 ●親族、友人、仕事、人間関係を切られてしまっているので、孤立してしまう。DV被害者の人 は、暴力による支配を受けた質や期間によって回復が違ってくる。親族との関係が良好な方は 回復が早い。 ●就職活動は、心身が回復してからはじめる。上司が男性だとフラッシュバックを起こしてしま う人もいる。 <虐待について> ●虐待、ネグレクトが多い。虐待をする親自身も同じような環境で育っていると、自分がされた ように子どもにもするので、その子どもも大きくなってくると手がでる。手を出されたら出し 返す。相手を従わせるのは暴力と思って、連鎖していく。 ●虐待を受けた子どもは、虐待通報後、すぐには症状がなくても、施設に入所し、1~2ヶ月し て少し落ち着いてきた頃に様々な症状が噴出してくる。長い目での見守りが必要。 ●虐待をする親は、少し子どもと離し、自分の時間を持ってもらうことも大切。 <障害について> ●親のいわゆる「大人の発達障害」は、専門的な関わりが必要だが、一般に理解されておらず、 全く理解のない所で働かなければならない場合、トラブルになる。 ●グレーゾーンを含む発達障害児を育てるひとり親家庭では、特に養育に困難が伴い、虐待につ ながるケースもあるので、児童相談所との連携が重要。 <外国籍のひとり親について> ●来日し、日本人と結婚するも、DVや経済的問題、文化の違いなど様々な理由で離婚し、ひと り親となる人がある。 ●外国人世帯への支援は、言葉の壁があり、コミュニケーションが取りづらい。通訳の利用、本 人の日本語学校への通学で対応する。支援者による職場への付き添い、説明なども必要。 5
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