第百八十九回国会における麻生財務大臣の財政演説 平成二十七年二月十二日 平 成 二 十 七 年 度 予 算 の 御 審 議 に 当 た り 、財 政 政 策 等 の 基 本 的 な 考 え 方 に つ い て 所 信 を 申 し 述 べ ま す と と も に、予算の大要を御説明申し上げます。 (日本経済の現状と財政政策等の基本的な考え方) 安 倍 内 閣 で は 、 日 本 経 済 の 再 生 に 向 け て 、「 三 本 の 矢 」 か ら な る 経 済 運 営 を 一 体 的 に 推 進 し て ま い り ま し た。こうした政策 の下、有効求人倍 率は二十 二年ぶり の高水準となり、企業の経常利益は 過去最高 水準とな る な ど 、「 経 済 の 好 循 環 」 が 確 実 に 生 ま れ つ つ あ り ま す 。 そ し て 「 地 方 へ の 好 循 環 拡 大 に 向 け た 緊 急 経 済 対 策」を実施し、足元の景気状況に対応しつつ、地方に経済成長の成果を広く早く行き渡らせてまいります。 こ れ に 加 え 、三 年 目 に 入 っ た 安 倍 内 閣 の 重 要 課 題 と し て 、人 口 減 少 の 克 服 と 地 方 の 創 生 に 本 格 的 に 取 り 組 み、各地域がそれぞれの特徴を生かして、自律的で持続的な社会を形成することを促してまいります。 また、経済の好循環を確立するためには、昨年末の政労使会議における三者の共通認識を 踏まえ、賃上げ の流れを 継続するとともに 、生産性 の向上や 賃金体系 の見直しを進めて いくこと が重要で す。 あわ せて 、コー ポレート ガ バナ ンス の強化や 法人税改革 、岩盤規制の撤 廃など 、攻めの姿 勢で 成 長戦 略を 果断に実行していくことで、日本経済を確実な成長軌道に乗せてまいります。 一 民 需 主 導 の 持 続 的 な 経 済 成 長 を 実 現 す る た め に も 、ま た 、日 本 銀 行 が 現 在 取 り 組 んで い る 金 融 緩 和 を 円 滑 に進める上でも、財政の持続可能性を維持することは 必要不可欠です。 安倍内閣におきましては、経済成長に加え、歳出・歳入両面からの取組により、着実に財 政健全化を進め て ま い り ま し た 。こ のた め 、歳 入面で は 、強 い経済 の 実 現を 目 指 し た 取 組を進 め ること に よ り 、税 収を増加 さ せ ると と も に 、社 会 保 障 の 充 実 ・ 安 定 化 の た め 昨 年 四 月 に 消 費 税 率を 八 % に 引 き 上 げ ま し た 。ま た 、歳出 面では、社会保障の「自然増」を含め、歳出全般にわたり聖域なく徹底的な見直しを行ってまいりました。 こ う し た 取 組 に よ り 、平 成 二十 七 年 度 予 算 は 、国 債 発 行 額が 平 成 二十 一 年度 当 初 予 算 以 来 の三 十 兆 円 台と な り 、公 債 依 存 度 は 約 三 十 八 % に 下 が る と と も に 、二 ○ 一 五 年 度 の 財 政 健 全 化 目 標 を 達 成 す る 予 算と なって お ります。 一方で 、公的債務残高がGDPの二倍程度までに累積するなど 、日 本の財政は、極めて厳 しい状況にあり ます。引き続き 、歳出・歳 入両面における最 大限の努力を行わ なければ なりませ ん。 消 費 税 率 の 一 〇 % へ の 引 上 げ は 、経 済 状 況 等 を 総 合 的 に 勘 案 し 一 年 半 延 期 す る こ と と い た し ま し た が 、社 会 保 障 を 次 世 代 に 引 き 渡 し て い く 責 任 を 果 た す と と も に 、市 場 及 び 国 際 社 会 に お け る 国 の 信 認 を 確 保 す る た め 、景 気 判 断 条 項 を 付 す こ と な く 、平 成 二 十 九 年 四 月 に 消 費 税 率 の 一 〇 % へ の 引 上 げ を 確 実 に 実 施 いたし ま す。そうした状況をつくり出すという決意の下、経済運営に万全を期してまいります。 二 そ し て 、国 と 地 方 を 合 わ せ た 基 礎 的 財 政 収 支 を 二 〇 二 〇 年 度 ま で に 黒 字 化 す る と い う 目 標 を し っ か り と 堅 持 し 、そ の 達 成 に 向 け た 具 体 的 な 計 画 を 本 年 夏 ま で に 策 定 す る こ と と し て お り ま す 。そ の 策 定 に 当 た っ て は 、 安倍内閣のこれまでの取組をさらに強化し、デフレ脱 却・経済再生、歳 出改革、歳入改革 の三 つの柱を軸に 検討を進 めてまいります。 これらの取組を通じて、経済再生と両立する財政健全化を実現してまいります。 (平成二十七年度予算及び 税制改正の大要) 続いて、平成二十七年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。 平成 二十 七年度予 算は 、経済対策・平成 二十 六年度補 正予算や 平成 二十 七年度税制改正と あわせ、経済再 生と財政健全化の両立を実現する予算です。地方創生、子育て支援など 、日本の諸課題への対応を強力に推 進するとともに、社会保障 の「自然増」を含 め聖域なく見直しを行い、歳出の徹 底的な重点化・効率化を図 っております。 基 礎 的 財 政 収 支 対 象 経 費 は 、約 七 十 二 兆 九 千 億 円 で あ り 、こ れ に 国 債 費 約 二 十 三 兆 五 千 億 円 を 加 え た 一 般 三 会計総額は、約九十六兆三 千億円となっております。 一方、歳 入につき ましては 、租税等 の収入は 、約五十 四兆五千億円、その他収入は、約五兆円を見 込んで おります。また、公債金は 、約三十六兆九千億円となっており、前年度当初予算に対し、約四兆四千億円の 減額を行っております。 次に、主要な経費について申し述べます。 社会保障 関係費につきましては、消費税増収分等を活用し、平成二十七年四月から子ども・子育て 支援新 制度をス タート させます。また、医 療・介護 サービス の提供体 制改革を 推進いた します。介護サー ビス料金 改 定 に 際 し て は 、介 護 職 員 の 処 遇 改 善 や 良 好 な サ ー ビ ス に 対 す る 加 算 を 行 い つ つ 、全 体 と し て は 引 き 下 げ る ことで、介護保険料の上昇を抑制し、利用者の負担を軽減いたします。 文 教 及 び 科 学 振 興 費 に つ き ま して は 、グ ロ ー バ ル 人 材 育 成 や 国 立 大学 改 革 等 を 推 進 す る と と も に 、無 利子 奨 学 金や 幼 稚 園 就 園 奨 励 費 補 助 等 の 施 策 を 充 実 さ せ る こ と と し て お り ま す 。ま た 、国 際的 な産学 官 共同 研究 四 拠点の形成等のイノベーションシステム改革を推進してまいります。 地 方 財 政 に つ き ま し て は 、地 方 の 税 収 増 を 反 映 し て 地方 交 付 税 交 付 金 等 を 縮 減 し つ つ 、地 方 の 一 般 財 源 の 総額について、社会保障の充実分等を増額し、地方に最大限配慮しております。 防 衛 関 係 費 に つ き ま し て は 、日 本 を 取 り 巻 く 安 全 保 障 環 境 が 一 層厳 し さ を 増 し て い る 状 況 を 踏 ま え 、中期 防 衛 力 整 備 計 画 に 基 づ き 必 要 な 手 当 を 行 い 、警 戒 監 視 能 力 の 強 化 及 び 島 嶼 部 攻 撃 へ の 対 応 の 強 化 等 を 図 る こ ととして おります。また、沖縄 の基地負担軽減等のた めの在日 米軍 再編 事業につきまして も、着実に推進す ることとしております。 公 共 事 業 関 係 費 に つき ま し て は 、国民 の 命 と 暮 ら し を 守 る 防 災 ・減 災 対 策や イ ン フ ラ の 老 朽 化 等 の 課 題に 対応するため、引き 続き 投資の重点 化・効率化を図りつつ、真に必要な社会資本整備等に 取り組む こととし ております。 経 済 協 力 費 に つ き ま し て は 、法 の 支 配 や 民 主 化 等 の 普 遍 的 価 値 の 共 有 に 向 け た 協 力 や 途 上 国 と 日 本 の 経 済 五 成長のための協力などを進めつつ、ODA全体の事業量の確保を図っております。 中 小 企 業 対 策 費 に つき ま し て は 、革 新 的 な も の づ く り に 向 け た 研 究 開 発 等 の 支 援 を 充 実 さ せ る ほ か 、中小 企業・小 規模事業者の資金繰り対策等にも万全を期することとしております。 エ ネ ル ギ ー 対 策 費 に つ き ま し て は 、再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の 導 入 拡 大 及 び 省 エ ネ ル ギ ー の 推 進 に 向 け た 支 援 に重点を 置くほか 、国内資源の開発や海外資 源の権益 確保、原子力規制・防災対 策を推進 すること としてお ります。 農 林 水 産 関 係 予 算 に つき ま し て は 、農 地 中 間 管 理 機 構 を 通 じ た 担 い 手へ の 農 地 集 積・集 約 化 など の 構 造改 革を進めるととも に、輸出促進、六 次産業化 の推進等 、農 林水産業の競争力強化策への重点化を図ることと しております。 治 安 関 係 予 算 に つ き ま して は 、安 全 で 安 心 し て 暮ら せ る 社 会 の 実 現 に 向 け て 、警 察 活 動 基 盤 の 充 実 や 再犯 防止対策の充実等を図ることとしております。 六 国 家 公 務 員 の 人 件 費 に つき ま し て は 、給 与 改 定 や 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 し 、定 員 純 減 等 を 的 確 に 予 算 に反 映しております。 東 日 本 大 震 災 か ら の 復 興 に つき ま し て は 、被 災 地 の 復 旧 ・ 復 興 の 加 速 に 全 力 で 取 り 組 ん で い く こ と と して おります。こ のため、平成二十七年度東日本大震災復興特別会 計において 、歳出歳入いずれも約三 兆九千億 円を見込んでおります。 平成 二十 七年度財 政投融資 計画につき まして は 、中小 企 業 ・小 規 模事 業 者や 地 方 公 共 団 体 など に 必 要 な資 金を適切に供給するため、総額約十 四兆六千億円としております。 借換債等を含む国債発行総 額につき ましては 、約百七十兆円と 、依然として極めて高い水 準にあり 、財政 規律を維持しつつ、国債管理政策を適切に運営してまいります。 平成二十 七年度税制改正におきましては、デフレ不況からの脱却・経済再生に向けた税制上の対応、地方 七 創 生 に 係 る 税 制 上 の 対 応 、消 費 税 率 一 〇 % へ の 引 上 げ 時 期 の 変 更 、B E P S プロ ジ ェ ク ト 等 の 国 際 的 取組を 踏まえた税制上の対応、震災からの復興支援のための税制上の対応等を行うこととしております。 具 体 的 に は 、成 長 志 向 に 重 点 を 置 い た 法 人 税 改 革 と し て 、課 税 ベ ー ス を 拡 大 し て 税 率 を 引 き 下 げ る こ と で 、 企 業 が 収 益 力 を 高 め 、賃 上 げ に 積 極 的 に 取 り 組 む よ う 促 し て ま い り ま す 。消 費 税 に つ き ま し て は 、税 率 一 〇 % へ の引上げ時期を 平成 二十 九年四月とするこ と等として おりま す。さら に、住宅 取得等資 金に係る 贈与税の 非課税制度の延長・拡充や地方拠点強化税制 の創設等を行うこととしております。 (む すび ) 以 上 、財 政 政 策 等 の 基 本 的 な 考 え 方 と 、平 成 二 十 七 年 度 予 算 及 び 税 制 改 正 の 大 要 に つ いて 御 説 明 申 し 上げ ました。 経済再生と財政健全化の両立を実現するためには、本予算の一刻も早い成立が必要であります。 何とぞ御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。 安 倍 内 閣 に お け る こ れ ま で の 取 組 が 実 を 結 び 、日 本 経 済 及 び 日 本 国 民 は 希 望 と 自 信 を 取 り 戻 し つ つ あ り ま す。しかし、経済 再生も財 政健全化もこれからが正念 場で す。それらを 実現するためには 、日本の潜在的な 八 力を開花させ、グローバル化や人口減少の下で日本や 地域が直面する課題に、国民一人一人が知恵を絞り、 一致協力して乗り越えて いくことが 鍵となります。私も全精力を注ぎ、不退転の決意で 挑戦を続けてまいり ます。 国民各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。 九
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