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ニッセイ基礎研究所
No.14-197
12 Feb. 2015
企業物価指数(2015 年 1 月)
~消費増税の影響を除くと、原油安で 3 ヵ月連続
のマイナス
研究員 岡 圭佑
TEL:03-3512-1835 E-mail: [email protected]
経済研究部
1. 消費増税の影響を除くと、原油安で 3 ヵ月連続のマイナス
2 月 12 日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、2015 年 1 月の国内企業物価指数は前年
比 0.3%(12 月:同 1.8%)と事前の市場予想(QUICK 集計:前年比 1.1%)を大きく下回る結果とな
った。前年比の上昇幅は 7 ヵ月連続で縮小し、前月比では▲1.3%となった。消費税分を除いた企業物
価は、前年比▲2.4%と 11 月(同▲0.2%)
、12 月(同▲1.0%)に続き 3 ヵ月連続のマイナスとなった。
消費税分を除いた企業物価を寄与度別に
国内企業物価変化率の寄与度分解
みると、機械類が前年比▲0.1%(12 月:同
5.0%
▲0.1%)
、鉄鋼・建材関連が前年比▲0.2%
4.0%
(12 月:同▲0.1%)
、素材(その他)が前
3.0%
年比▲0.6%(12 月:同▲0.2%)
、為替・海
(前年比)
2.0%
1.0%
外市況連動型が前年比▲1.8%(12 月:同▲
0.0%
0.7%)
、電力・都市ガス・水道が前年比 0.3%
-1.0%
(12 月:同 0.3%)
、その他が前年比 0.0%
-2.0%
(12 月:同▲0.1%)となっている。
1 月の企業物価(消費税分を除く)が下落
消費増税分
電力・都市ガス・水道
素材(その他)
機械類
-3.0%
その他
為替・海外市況連動型
鉄鋼・建材関連
総平均
-4.0%
1201
1205
1209
1301
(資料)日本銀行「企業物価指数」
(注)企業物価は、消費税除く
1305
1309
1401
1405
1409
1501
(月次)
したのは、鋼材・建材関連、素材(その他)
、
為替・海外市況連動型の寄与度が大きく低下したためである。国際商品市況が下落基調にあること、中
国などアジアを中心に需給が悪化していることなどを背景に、鉄鋼(前年比▲0.9%)
、スクラップ(同
▲21.1%)の伸び率(前年比)がマイナスとなったことが、鋼材・建材関連の押し下げ要因となった。
原油安や円安の一巡を主因として、素材(その他)が前年比▲3.8%(12 月:同▲1.3%)と低下幅が拡
大したほか、為替・海外市況連動型は 2014 年 7 月をピーク(同 7.1%)に同▲17.3%まで急拡大してい
る。為替・海外市況連動型の内訳をみると、非鉄金属(12 月:前年比 6.5%→1 月:同 3.4%)と上昇
幅が縮小する一方、石油・石炭製品(12 月:前年比▲12.4%→1 月:同▲25.1%)は大幅なマイナスを
続けている。
円安が一巡するなか、原油安による物価押し下げ効果が後ズレするため、消費税分を除いた企業物価
(前年比)はマイナス圏での推移が続くだろう。
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2. 輸入物価はマイナス圏へ
1 月の輸入物価(円ベース)は前年比▲6.6%(12 月:同 0.3%)
、前月比▲6.0%(12 月:同▲1.7%)
ともに大幅なマイナスとなった。
1 月の輸入物価を寄与度別にみると、食料品・飼料が前年比 0.7%(12 月:同 0.9%)
、金属・同製品
が前年比▲0.4%(12 月:同 0.5%)
、石油・石炭・天然ガスが前年比▲9.5%(12 月:同▲4.1%)
、化
学製品が前年比 0.1%
(12 月:同 0.1%)
、
機械器具が前年比 1.3%(12 月:同
1.6%)
、その他が前年比 1.1%(12 月:
同 1.4%)となっている。
輸入物価指数変化率の寄与度分解
20%
(前年比)
15%
10%
円安は物価押し上げ要因、
原油安は物
価押し下げ要因となるが、
原油安の影響
は円安に比べて後ズレする。円安が一巡
するなか、昨年夏場以降の急激な原油安
が顕在化しているため、
円安による物価
5%
0%
-5%
-10%
その他
機械器具
化学製品
石油・石炭・天然ガス
金属・同製品
食料品・飼料
総平均
押し上げ効果を上回り、輸入物価(前年
比)は大幅な下落となった。
-15%
1201
1205
1209
1301
1305
1309
1401
1405
1409
15/1
(月次)
(資料)日本銀行「輸入物価指数」
石油・石炭・天然ガスの伸び率は前年
比▲23.9%(12 月:同▲10.4%)と、原油安を主因として大幅なマイナスを続けている。そのほか、金
属・同製品が前年比▲3.7%と 2014 年 5 月以来 8 ヵ月ぶりのマイナスとなったこと、食料品・飼料が前
年比▲6.9%(12 月:同▲1.0%)と低下幅が拡大したことも、輸入物価の下落に寄与している。
足元では原油安基調が続いていることに加え、日銀による追加緩和や米景気への回復期待をきっかけ
に進展した円安に一服感もあることから、輸入物価(前年比)はマイナス圏での推移が続くだろう。
3. 交易条件は緩やかに改善
1 月の輸出物価は、前年比 2.7%(前月
比▲2.5%)
、輸入物価は前年比▲6.6%(前
月比▲6.0%)となった。一方、契約通貨
ベースでは、輸出物価が前年比▲4.2%(前
交易条件と為替レート
150
(2010=100)
(2010=100)
輸出物価
輸入物価
交易条件_右目盛り
ドル円_右目盛り
140
140
130
130
120
120
110
110
100
100)は 93.5(12 月:90.1)となり、2011
100
90
年 3 月以来の水準まで改善している。交易
90
月比▲1.1%)
、輸入物価が前年比▲14.0%
(前月比▲4.7%)となった。
1 月の交易条件(輸出物価/輸入物価×
条件は、原油安を背景に緩やかな改善が見
80
1201
1205
1209
1301
1305
1309
1401
(資料)日本銀行「企業物価指数」、FinancialQUEST
(注)ドル円レートは、2010=100で指数化したもの
込まれる。
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1409
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(月次)
4. 最終財価格はマイナス圏へ
1 月の需要段階別指数(消費税除く、国内品+輸入品)をみると、国内需要財価格は前年比▲3.5%(12
月:同▲0.6%)と 2 ヵ月連続のマイ
ナスとなった。需要段階別指数を項目
需要段階別指数の推移
別にみると、素原材料が前年比▲
30%
17.8%(12 月:同▲7.4%)、中間材
25%
素原材料
15%
最終財が前年比▲0.4%(12 月:同
10%
0.4%)となっている。最終財がマイ
5%
26 ヶ月ぶりとなる。
国内需要財(国内品、輸入品)
20%
が前年比▲1.9%(12 月:同 0.6%)
、
ナスとなるのは、2012 年 11 月以来
(前年比)
中間財
最終財
0%
-5%
-10%
海外市況を反映しやすい素原材料
は、原油、非鉄金属など資源価格の下
-15%
-20%
1201
1205
1209
1301
1305
1309
1401
1405
(資料)日本銀行「企業物価指数」
1409
15/1
(月次)
落が続いていることもあり低下幅が
一段と拡大した。夏場以降の素原材料の下落が中間財、最終財の伸び率縮小に寄与していたが、素原材
料が大幅に下落したことが、中間材、最終財の伸び率をマイナスにする要因となった。
今後、足元の原油安を主因とした素原材料価格の下落が後ズレして中間財、最終財価格に波及するた
め、最終財価格(前年比)はマイナス圏での推移が続くだろう。
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