複雑系化学物理VI ポリN-イソプロピルアクリルアミドゲルの 現象論的な収縮ダイナミックスモデルについて 関学大理工 ○ HASHIMOTO Chihiro・OZAKI Yukihiro、 農工大院農 USHIKI Hideharu 高分子ゲルのダイナミックス • 高分子ゲルの体積相転移温度近傍において、臨界緩和( 密 度ゆらぎの発散)が観測される。 • 臨界点近傍において、ゆらぎの空間相関距離(相関長)ξは 次式に従う。 ξ∼∆T −ν ν : 相関長の臨海指数 0.63 3D Isingモデル 0.50 平均場理論 0.564-0.609 実験 ゲルの体積相転移現象は、 3D Ising(気液転移・二液相分 離)に相当する。 高分子ゲルの膨潤/収縮過程 共同拡散過程 d ∂u = D∇ 2 u ∂t u : 高分子鎖の変位ベクトル D : 共同拡散係数 ∞ u = A∑ n − 2 exp( − n 2t/τ ) n =1 ディスクゲルの場合、厚みに沿った拡散過程が支配的になる。 τ∼d 2 / D サイズの大きなゲルは、二段階収縮を示す 目的:PNIPAゲルの二段階収縮過程の機構を明らかにする。 実験 ディスク状 PNIPAゲルを合成 架橋密度: 8.8×10−3 転移温度(Tc) : 34.1℃ ゲルの厚さ: 0.1∼0.4mm ゲルの直径: 23mm 温度ジャンプ 25℃→ Tc +ΔT (ΔT=0.0∼5.0℃) 収縮過程に対するゲルの厚さ依存性 ⎛ ⎛ t ⎞β⎞ ⎛ t ⎞ S( t ) = A1 exp⎜⎜ − ⎟⎟ + A 2 exp⎜ − ⎜⎜ ⎟⎟ ⎟ + (1 − A1 − A 2 ) ⎟ ⎜ τ ⎝ τ1 ⎠ ⎝ ⎝ 2⎠ ⎠ τ1, , τ2 ∼ d-2 1段階目、2段階目収縮とも共同拡 散過程に従うことが示唆される。 収縮過程に対する ΔT依存性 τ1 ∼ ΔT-0.5 (d=0.1mm) τ1 ∼ ΔT-1.0 (d>0.2mm) τ2 , τ3 ∼ ΔT-1.0 1段階目の収縮過程 共同拡散過程τ1∼d2/D が、密度ゆらぎによる拡散過程と同値 であると考えると、 Einstein-Stokes の式 D∼k B T / 6πηa a: ブラウン粒子の半径 ← 相関長 ξ を代入すると ∴ τ1 ∼ 1/ ξ 相分離系における臨界ゆらぎの相関長ξは τ1∼ΔT-0.5 (d=0.1mm) ξ∼∆T − ν ν : 相関長の臨海指数 0.63 3Dイジングモデル 0.50 平均場理論 0.564-0.609 実験 2段階目の収縮過程 ①1段階目の収縮過程の終わりで、ゲルは密度ゆらぎ のPinningにより分割する。分割した部位の特徴的な長 l さを とすると、その長さはゆらぎの大きさξに比例する。 l ∼ξ ②2段階目の収縮も、1段階目の収縮過程と同様に共 同拡散過程で進むとすると、 が成り立つ。 τ 2 ∼ l2 臨界ゆらぎの空間相関長ξは −ν ξ∼∆T ν : 相関長の臨海指数 0.63 3Dイジングモデル 0.50 平均場理論 0.564-0.609 実験 τ 2 ∼ l 2∼ ∆T −2ν 2ν= 1.0-1.2. The thickness of gels is 0.1(●), 0.15(▽), 0.2(○), 0.3(▲) and 0.4(□)mm. A1∼τ 1 τ 1∼( A1 d ) 0. 5 2 τ 1∼d 2 •τ1 ∼ ΔT-0.5 (d=0.1mm) •τ1 ∼ ΔT-1.0 (d>0.2mm) A1∼∆T −0.25 −0.5 A1∼∆T 1段階目の収縮分率A1は、1段階目の収縮速度により決まる。 結論 1.1段階目の収縮分率A1は、1段階目の収縮速度により決まる。 2.ゲルは厚く、ΔTが大きいと、三段階収縮を示す。 3.ゲルの厚さ、およびΔT依存性から、PNIPAゲルの二段階収縮の 機構は以下のように説明できる。 ①1段階目の収縮は、共同拡散過程で進む。 ②1段階目の収縮過程の終わりで、ゲルは密度ゆらぎのPinningに l ∼ ∆T − 0 . 6 l より分割する。分割した部位の特徴的な長さを とすると、 が成り立ち、その部位が共同拡散過程に従い収縮する。
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