関西国際学園評価方針 KIA教育理念 関西国際学園(以後KIA)の教育理念は、日英バイリンガル教育を通して国際 社会で貢献できるリーダーを育成することです。 評価体制の概要 KIAのプラグラムにおいて、評価は中心的な役割を果たします。評価を通して 情報を収集、分析し、それを基に授業の計画、指導、学習の成果を上げるため に役立てます。授業の計画、指導、学習の中でも評価は重要なものであり、 KIA関係者(児童、教師、保護者、運営組織)全員が責任を持って関わるもの です。よってKIAでの評価の在り方をここで明示しておくことが重要と考えま す。 評価における理念と目的 KIAでは次のような評価方策を取り入れています。 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 多様性、信憑性があり、全ての関係者にとって建設的で有効な評価 計画の段階から、達成目標と望まれる児童の学習成果を明確に設定した評 価 学級担任、専科担当教師、学校組織、そして児童自身が協同で作成する評 価 指導の中で随時行われ、ユニットの学習の質を上げ、方向性を定めるため に活用できる評価 児童個々の必要に応えるために分けて作成された評価 明確で有効なフィードバックを適切な時期に与えることで児童の成長を助 けることのできる評価 学校の方針である国際的な学び、日英バイリンガルの学びを通して両言語 で複数の文化環境を考察できる評価 教師が自身の指導を高めるための自己分析ができる評価 児童が自身の学習と成長を振り返ることを促すための評価 児童それぞれの長所と短所を建設的に把握できる評価 児童の自己評価とメタ認知を推奨し、自身の学習のプロセスを理解するた めの評価 保護者や他の関係者が児童の学習の成果を見、明確なフィードバックと指 導を得て児童の成長をサポートできるような評価 運営組織が、KIAの理念と照らし合わせて、学校プログラムの成否と効果 を分析できるための評価 評価の要素 KIAの評価は、評価、記録、報告の3つの大きな要素に分かれています。 評価 「評価」とは、児童が学習したことを多面的に把握することを言いま す。教師はクラス担任、専科担当教師(音楽、体操、ESLなど)、運営 組織などと協力して評価に当たります。幾度の協同計画ミーティングを 通して、KIA の学習指導範囲と順序、また国際バカロレア初等プロ グラムの基本要素によって定められたカリキュラム目標の到達度をどの ように評価するのが最善かを話し合い、決定していきます。これらのミ ーティングによって、測ろうとする学習成果に最も合った適切な評価ツ ールと評価方法を選択できます。そして指導を始める前に、個々の児童 のそれぞれ異なるレベルの学習成果をどのような証拠を用いて示すのか を決定します(以下「評価ツールと方策をご参照下さい」。 学習を通して、評価は主に次の3つの形で行われます。 評価 報告 記録 形成的評価:形成的評価は、学習の為の評価です。この評価は学習のプ ロセスの初めから終わりまで継続的に教師と児童の為に役立つフィード バックを与えます。まずは事前評価から始まり、教師と児童の今までの 知識を探ります。学習単元が進むに中で、継続的に形成的評価を行って いくことで、クラスの必要に合わせて指導を変えることができます。フ ィードバックを適時に与えることで、児童も自身の学習の進 を把握 し、目標を達成するために必要な調整を行うことができます。形成的評 価は幅広く、継続的で、活動的で、児童が学習目標に向かって進んでい ることを把握するのに不可欠です。 (事前評価):事前評価は形成的評価の中でも非常に重要な一部です。 事前評価で学習単元に係る児童の既有の知識、理解、スキルを探りま す。児童が既に知っていること、既にできることを知ることで、教師は 単元の進度や進路を調整できます。また事前評価を通して児童がまだ知 らない事、まだできない事も把握できます。児童が抱いている間違った 理解、間違った情報、誤解、疑問なども知ることができます。事前評価 を効果的に行うことで、児童の必要に合った適切なクラスアクティビテ ィ、校外学習、学習資料、そしてさらなる評価方法を準備することがで きます。 総括的評価:総括的評価は、学習の成果の評価です。一定期間の学習プ ロセスの全体像を把握する為に用います。これらの評価は通常学習単元 の最後に行われ、関係者全員が児童のカリキュラム目標に対する達成度 と成長を把握できます。形成的評価とは別に、児童一人一人の成否を到 達目標と照らし合わせて重点的に評価できます。 自己評価・児童間評価:自己評価や児童間評価は学習の中での評価で す。これらは児童中心に行われ、児童のメタ認知を向上させ、自分や他 の児童の学習に対する認識を養います。これらの評価によって、学習の 過程において児童自身が積極的、意欲的、そして批判的に評価をする機 会を与えます。自己評価では、児童が自身の学習を到達目標に照らし合 わせて確認し、分析します。児童間評価では、他の児童の学習を確認 し、分析します。これらのメタ認知的な評価の実践によって、目標の設 定、学習内容の調整を自身で行えるようになり、「評価」というものを 振り返りと成長のための大切な機会だと認識できるようになります。 KIAで実践している評価で、児童の年齢に適したものであると同時に、 個々の必要にも対応できるよう設定しています。到達基準は各学年で統 一されていますが、幅広い評価ツールを活用し、児童が様々な形で自身 の学習の成果を表現できる機会を提供しています。 記録 児童の学習の証拠を記録することはKIAの評価体制の重要な一部です。 「記録」においては、協同計画の過程で選択したさまざまな評価ツール と方法を活用し、児童の成長の証拠となる効果的に収集し、記録し、到 達目標に照らし合わせてそれらを分析していきます。教師が収集する 「証拠」はさまざまな形で行われます:児童の会話の記録、ルーブリッ ク※、チェックリスト、模範解答との比較、連続線※、そして場合によっ てはテストの点数も活用します。教師は責任をもって評価してものを適 時に、そして継続的に記録していきます。 評価記録を協同で管理、確認することによって、各評価課題の達成基準 を決定し、課題から得たデータを分析し各児童の達成度を測ります。児 童の課題からデータを取って記録、分析することはKIAの評価体制の重 要な一部であり、全関係者が児童の学習の成果と成長を把握できるため の「報告」の過程に大きく影響します。 報告 3つ目の部分である「報告」では、児童の学習の成果を報告します。 「報告」は共同的な過程で、児童の成長や成果がKIAの全関係者に伝え られます。報告の中ではKIAの学習範囲と順序に定められた学習目標に 対する児童の成果の他、達成できたこと、成長度合い、そして KIAや PYPのカリキュラムの基本要素に対するチャレンジなどが取り上げられ ます。報告の一つとして点数化した評価も行いますが、KIAの評価は点 数や順序をつけることが目的ではなく、児童の成果やチャレンジに対す るフィードバックを適切な時期に総括的かつ建設的に行うこと、そして 更なら学習を成長に向けた道筋を立てていくことです。報告は公式、ま たは非公式にいろいろな形で行われます。公式な報告は年2回の保護者 懇談で成績表を用いて行います。またLAS Linksのテスト結果も年1回 (一年生は2回)レポートにして報告しています。非公式な報告は、児 童の課題に対しての口頭や書面でのフィードバック、児童主体の発表、 連絡帳を用いて、又は直接のやり取りなどがあります。KIAの評価方針 の他の部分と同様、効果的な報告を通して全関係者がKIAの教育に対し て正しい情報を得ることを目的としています。 評価方策とツール KIAの学習コミュニティはではさまざまな方法とアポローチを用いて児童の学 習に関する情報を集めます。その情報を様々なツールで記録することで、児 童、親、教師、本部など全関係者に有用なフィードバックを伝えることができ ます。評価方策とは、児童一人一人の情報を集めるために使う方法やアプロー チのことを言います。これらを通して教師はプロジェクトや課題の構成や求め られていることを明確に伝えることができます(KIAで活用している評価方策 に関しては表2をご参照ください)。 教師はこれらの情報を、さまざまなツールや表などを用いて記録し、その情報 を分析してこれからの学習目標の計画に活かします。評価ツールを通して児童 も自分たちの学習が時間を経てどう進んできたかを確認でき、教師や学校から も児童たちの成長を報告できます(KIAで活用している評価ツールに関しては 表3をご参照ください)。 評価方策とツール ルーブリッ 児童ワーク チェックリ 文章での記 ク の標本 スト 録 観察 ✓ 自己評価・児 童間評価 ✓ パフォーマン ス評価 ✓ 設問と解答 オープン課題 ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ 連続帯 ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ ✓ 表2. 評価方策 評価方策 観察 説明 教師は全児童を常に観察していて、クラス全体像を 把握したり、一人の児童の一つのアクティビティに 焦点を当てて観察したりします。また児童のアクティ ビティに参加しながら評価したり、参加せずに見守 って評価することもあります。 自己評価・児童間評価 自身や他の児童の形成的評価、総括的評価に参加し ます。 パフォーマンス評価 あらかじめ定められた項目に沿って児童の成果を評 価します。実践的で意義とやりがいのあるチャレン ジや問題が課されます。これらの課題にはたくさん の取り組み方があり、答えが限定されないものがほ とんどです。また多様な形で行われ、いろいろなス キルが求められます。この形の評価を行うために、 映像や録音、発言の記録などが非常に効果的です。 設問と解答 この評価方策は一時的に一つのスキルを問うための 課題として与えられます。テストやクイズがこれに当 てはまります。 オープン課題 児童にはオープンな課題が提示され、それに対する 独自の応答が求められます。短文を書いて答えた り、絵を描いたり、図表を書いたり、解決策を提示 したりします。この課題は、評価項目と共にポート フォリオに保管されることがあります。 学習課程の評価 定期的かつ頻繁な観察によって、児童の典型的な行 動やそうでない行動を記録します。また標本を多く すること、様々な状況での行動と照らし合わせるこ とでより正確で信憑性のある記録を作成します。記 録の方法としては、チェックリスト、表、文章(学 習日記など)を活用します。 Table 3 Assessment Tools 評価ツール 説明 ルーブリック ルーブリックとは、あらかじめ定められた項目によって 児童の学習成果のあらゆる側面を評価するための表で す。各項目は連続的に並んでおり、学習における成長過 程を示しています。またその項目によって、評価する側 (教師)とされる側(児童)双方が何に着目して評価を するのか、何を評価されるのかを明確に理解することが できます。ルーブリックは教師が作成することもありま すが、児童と教師が共に作成することもあります。 児童ワークの標本 児童が取り組んだ課題から選定したものを基準とし、そ れに照らし合わせて他の児童の作品を評価します。通常 はルーブリック表の各レベルごとに一つの作品が選ばれ ます。 チェックリスト 課題を評価するための情報、データ、要素を羅列したも のです。課題に見られたものをチェックします。 文章での記録 児童を観察することで得た情報を文章で書き残します。 “Learning Story” では長期的に集中して観察し、後の分 析をします。これらの記録は丁寧に収集し、整理する必 要があります。 連続帯 学習における成長段階を視覚的に表したものです。児童 の成果が成長段階どのレベルにあるのか、どのような進 をたどってきたかを表します。 縦割りや配置のための評価ツール 評価ツー ル 頻度 レベル分け LAS Linksをと 1年生は年2回 読み、書き、会 おして教師は児 (5月と2 話、リスニン 評価内容 LAS Links LAS Linksは 英語力評 児童の読 価テスト み、書き、 目的 童の学習や生活 月)、2∼6年 会話、リス に必要な英語力 生は年1回(2 ニング、理解 を把握できま 月)行われま 力を総合的 す。それによっ す。 に測るテスト て指導方法を調 です。 グ、理解力がそ れぞれ5段階評 価で分けられま す。 整することもで き、また数年間 の間の成長も確 認できます。 朗読記録 朗読記録と 朗読記録によっ 最低月2回行 個人の読みのレ は、児童個 て、間違いを分 われますが、 ベルは、読んだ 人の、レベ 析したり、読み 教師が必要と のレベルを測っ 判断した場合 部分で正しく読 で判断し決定し 読を詳細に たり、読みのプ は回数を増や ログラムにおけ す場合があり 記録したも る進 を把握す ます。 るのに有効で (100%~95%: す。 る、94%~90%: ル分けされ た文章の朗 のです。 めた単語の割合 ます。 自立して読め 指導があれば読 める、90%未 満: 読むのに困 難) 全体配点と分析配点 全体配点では、一つの作品やパフォーマンスを、全体を総合的に判断して点数 をつけます。作品やパフォーマンスで求められる全ての要素を加味し、全体的 な質を評価した点数となります。分析配点は、最終作品やパフォーマンスの各 部分を評価します。最も明確な違いは、全体配点は最終的なできを評価し、分 析評価はそれぞれの部分を別々に評価しつつ全体の点数を決めます。 どちらが 優れているということではなく、児童の年齢、レベル、評価に関わり教師の数 などによって適切な方法が選択されます。例えば、低学年の児童にとっては、 最終の形に集中するほうが、複数の部分を気にするよりも取り掛かりやすいた め、分析配点よりも全体配点のほうが適しているかもしれません。もし評価に 複数の教師が関わっている場合、分析配点を行う方が、同じ基準で複数の学年 の児童を評価するのに適しています。 報告 ポートフォリオ ポートフォリオはKIAの評価の中でも非常に重要な部分であり、児童の学習し たしたことから本物の作品を豊富に記録できるものです。これによって児童の 成長や進 を一年ごとに意味のある形で把握していきます。 ポートフォリオの目的 KIAでポートフォリオを記録する目的は、全関係者(児童、教師、保護 者など)に対して、児童がどこまでカリキュラムの要項を各科目におい て達成できたかを伝えます。児童の成長を正確に記録することが目的で あり、最も優れた作品のみを集めたものではありません。 児童主体 児童自身がポートフォリオの目的を理解し、その準備に携わります。取 り組んだ数多くの学習の中からポートフォリオに掲載するものを児童が 選択します。何を選択するかは、明確な基準を設け、その基準を児童と 共に作成することもあります。その基準が何を意味するのかを理解し、 その基準に沿ってポートフォリオに載せるものを考え、選びます。自身 の学びや、ポートフォリオに載せた作品などを振り返る貴重な機会とな ります。 懇談 KIAでは、懇談を通して児童一人一人の学習面、生活面について報告します。 また教師、保護者、児童が共に期待、目標、不安などを率直に話し合う貴重な 機会でもあります。 教師・保護者懇談 教師・保護者間の懇談は年に2回行われます。教師と保護者がお互いに 対する信頼を高め合い、児童の成果や成長、または不安などについて率 直に情報を伝え、話し合うことが目的です。ポートフォリオに載せてい る児童の学習の記録を見せ、成績表に記していることよりもさらに詳し く児童の学校生活について話します。児童が学習目標に到達している か、テストなどの結果はどうだったかなどを報告します。またクラスで 求められていることを明確にし、必要であれば個人に特化したアクショ ン・プランを用意することもできます。 児童主導の懇談会 児童主導の懇談会を来年から年に一度行なうことを検討しています児童 が自分たちの学んだことを自由な形で保護者に披露します。一年を通し て習得したスキルを活かした「ステーション」を複数設け、保護者も一 緒に参加できるようサポートしていきます。教師もその場にいるため、 保護者と会話ができますが、このイベントの主要な目的は、児童がプレ ゼンテーションを通して自信を付けることと、保護者が楽しみながら児 童の成長を確認することです。 成績表 KIAでは、成績表は学期ごとに年に2度配布されます。英語、日本語(共に国 語、算数、UOI)、ESL、PE、音楽に1−5の5段階で成績が付けられ、教師 からのコメントが添えられます。成績は、それぞれの形成的評価、総括的評価 の成果を基に算出されます。教師のコメントはその成績に至った理由、学校で の態度に関する情報、これからのユニットの課題などが記されます。 KIAでは、今の成績表を改変しており、数字で成績を付けることを廃止しま す。児童が学習面、生活面において到達目標に達したかどうかをより正確に伝 え、児童の評価の基準と方法を全関係者により分かりやすい形で伝えていくこ とを目指しています。
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