当日配布資料(1.57MB)

高効率・波長制御性最適化が可能な
量子ドット光半導体
独立行政法人
情報通信研究機構(NICT)
光ネットワーク研究所
研究マネージャ
光通信基盤研究室
山本直克
1
量子ドット光半導体研究の背景
1982年
東京大学
実用化までの道のりは
非常に長かった
2009年
荒川・榊両教授らによって
半導体量子ドットレーザ提案
・
・
・
・
国内企業が10Gbps量子ドットレーザを実用量産化
(世界初)
何が課題だったのか?
どうやって量子ドットを量産ベースで作製?
(製造プロセスの課題)
NICT光ネットワーク研究所
光通信基盤研究室
2002年より研究開始
高品位量子ドット作製技術を研究、確立
社会展開へ
2
半導体量子ドットとは
数nmの半導体結晶の極微小粒
量子ドット
~数nm
+
束縛された電子
基板
Cross-section of TEM image
InAs/GaAs Quantum dot
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従来型レーザとの比較
従来型レーザー
量子ドットレーザー
(待合せ場所が無いとすれ違い)
(電子とホールはドットで待合せ)
+
-
光
-+
+
-+
+
-
光
+
+-
-
+
+
-
++
-
正孔
光
光
-
+
-
+-
光
+
光
-
+-
光
+
-
束縛電子
量子ドット
-
1つの量子ドットから1つの光子が放出
量子ドット数を多く(高密度化)すれば高発光効率化
従来型レーザーより高効率
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従来型レーザとの比較
比較項目
コスト
 材料選択自由度
従来型量子井戸レーザー
量子ドットレーザー
×
◎
材料に波長特性が依存。1.3μm帯に
は高価なInGaAsP/InPが必要。
温度特性
 閾値電流温度依存性
 発光効率温度依存性
安価なGaAs基板の利用が可能。
×
×
◎
◎
閾値電流、発光効率共に大きく温度依
存。高温動作は+85℃程度が限界。
各量子ドットに電子が閉じ込められ熱雑
音の影響を受けにくく、閾値・発光効率
共に安定。+180℃以上でも動作可能。
◎
高発光効率
×
量子ドットの数(密度)に応じて発光効
率が向上。従来に無い高出力半導体
レーザも実現可能
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従来の量子ドット作製技術とその問題点
1. 結晶組成比最適化が困難
狙い通りの発振波長を得にくい
2. 各量子ドット同士の干渉・合体
発光効率の低下
発光しない
歩留まりが課題
広く普及するに至っていない。
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新技術の特徴・従来技術との比較
従来技術の問題点であった、
1. 結晶組成比最適化
超格子構造によって組成比最適化を容易に実現
発振波長を超格子膜厚で制御調整可能
2. 量子ドット同士の干渉・合体
層間分離構造(SNSS)によって回避
発光効率を2倍以上を実現
発光歩留りの大幅向上が期待される
いずれの技術もシンプルで容易に導入可能
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新技術の特徴・従来技術との比較(1)
超格子による結晶組成比最適化
従来構造
 Ga,Al組成比は発光波長に影響
格子定数制御で組成比最適化は達成できない
(波長制御不能)
従来構造
新技術構造
発振波長狙い値:
1600nm
Sample 1
Sample 2
Sample 3
Sample 4
従来構造
InGaAs/InAlAs
2ML/2ML
4ML/4ML
8ML/8ML
16ML/16ML
In0.52Ga0.24Al0.24As
ピーク波長
1630nm
1617nm
1600nm
1599nm
1687nm
 第一結晶層、第二結晶層を配置し、基板と格子整合がとられた超格子を構成
第一結晶層、第二結晶層の結晶周期或いは膜厚調整で発振波長制御可能に
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新技術の特徴・従来技術との比較(2)
層間分離構造による量子ドットの干渉・合体回避
新技術構造
SSNS
(GaAs 3ML=8.5Å)
GaAs
InGaAs QW1
(In0.15Ga0.85As 3nm)
2.76 ML InAs/InGaAs QD structure
on GaAs (001)
PL intensity (arb. units)
従来構造
InAs
QD
InGaAs QW2
(In0.15Ga0.85As 6nm)
With sandwiching
sub-nanostructure (SSNS)
W/O SSNS
GaAs
1000
1100
1200
1300
1400
Wavelength (nm)
層間分離構造により
 量子ドット結晶欠陥低減
 量子ドット高密度化
Giant dot
5.8 x 1010 /cm2
8.2 x 1010 /cm2
2倍の発光効率
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新技術の応用による特徴的新機能
個々のドットが電気的に独立(離散的光ゲイン)
1つの量子ドットデバイスから
二波長・多波長の光を同時に発生
Optical frequency (THz)
234.89 234.82 234.74 234.67 234.59
-10
Igain=50.0mA
Emission intensity (dBm)
離散的な光ゲイン分布
量子ドット構造
-20
-30
-40
-50
1277.2 1277.6 1278.0 1278.4 1278.8
Wavelength(nm)
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想定される用途
 温度特性安定性
– 光インターコネクト、光アクセス系等
(帰還回路不要でシステムコスト、省電力に寄与)
 高温動作
– 車載機器等
 高出力
– 加工用レーザ等
 多波長光同時発生
– DWDM、光コム、測定器、バイオイメージング等
 広帯域波長特性
– Tバンド光通信、医療、バイオイメージング等
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生体透過観察への応用例
指内部で散乱・透過した近
赤外光が明るく写る
血管
指
量子ドット光源
PC
*NIR transparent image of Forefinger
Wavelength tunable Quantum dot light source
Optical power: 540-μW
Wavelength: 1320-nm
Diameter of input light: 1.0-mm
NIR camera
 波長1.3μm帯量子ドット光源を用い、指を透過する光透過イメージングに成功。
 生体の窓の波長領域を用いることにより、低出力(500μW)での光透過像取得が実現。
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植物透過観察への応用例
葉の断面構造
近赤外透過光による葉の葉脈観測例
緑葉領域
枯葉領域
木部
師部
http://micro.magnet.fsu.edu/cells/leaftissue/leaftissue.html
Optical power: 54~60-μW (-12dBm)
Diameter of input light: 1.0-mm
Wavelength: 1320-nm
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実用化に向けた課題
 NICTでは基礎技術を中心に研究しているた
め、
• 各応用分野の要件に応じた最適化
• 長期信頼性、耐環境性等の把握等
最終確認を得ることが出来ません。
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企業への期待
 技術移転を通して、各応用分野に応じた製品として
の最適化を、企業関係者に期待します。
(閾値電流、順方向電圧、周波数特性等の最適化)
(長期信頼性、耐環境性等の確認)
 結晶成長技術、モジュール化技術、装置化技術等を
持つ企業とは、適切なテーマを設定した共同研究を
希望します。
 NICTでは研究試作された量子ドット光半導体の有
償提供を開始しました。その特性・信頼性評価、組
込試作等にご活用ください。
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研究成果物有償提供についてのお知らせ
機能・性能・特性等をご確認頂き、企業の製品開発等の一
助なることを目指すとともに、技術移転を推進してまいり
ます。
詳細はこちらをご覧ください。
http://www.nict.go.jp/out-promotion/data-provided/mta.html
お申込み・お問い合わせ先
独立行政法人 情報通信研究機構
社会還元促進部門 知的財産推進室
TEL.042-327-6950
FAX.042-327-6659
E-mail: [email protected]
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本技術に関する知的財産権
•発明の名称
•出願番号
•出願人
•発明者
:半導体量子ドット及びその製造方法
:特願2014-096322
:情報通信研究機構(NICT)
:赤羽 浩一、山本 直克、川西 哲也
•発明の名称
•出願番号
•出願人
•発明者
:ナノ構造体及びその製造方法
:特願2008-278279
:情報通信研究機構(NICT)
:山本 直克、赤羽 浩一
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量子ドット半導体の構造・製法に係る特許
特許
特許3903182
特許4041887
参考:関連特許群
発明の名称
発明の概要
権利範囲
●低格子不整合率の格子定数であるⅢ-Ⅴ族化合物半導体上に、Ⅲ-
低格子不整合系における量子ドットの形成方法 山本 直克、赤羽 浩一、 Ⅴ族量子ドットを形成する方法を提供
●量子ドット形成方法
および量子ドット半導体素子
牛頭 信一郎、大谷 直毅
●量子ドット半導体素子
光通信用として有効な波長の発光
アンチモン系量子ドットの形成方法
発明者
●化合物半導体上に、アンチモン系量子ドットを高面密度に形成可能
山本 直克、赤羽 浩一、
●従来技術で形成されるアンチモン系量子ドットの大きさに比して十 ●量子ドット形成方法
大谷 直毅
分に小さく形成可能
高密度化による高発光効率化
特許5397929
半導体光デバイス及び光通信用半導体デバイ
ス、並びにその製造方法
●InAsの量子ドット構造を有する半導体微細構造の周囲がアンチモン
●製造方法
原子・分子によってコーティング
山本 直克、赤羽 浩一、
●半導体光デバイス
●量子ドット構造を量子井戸構造で挟む構造
外林 秀之、土屋 昌弘
●構造
結晶欠陥抑制による高発光効率化
●機能
特願2008-278279
ナノ構造体及びその製造方法
山本 直克、赤羽 浩一
特許5504468
半導体量子ドット及び同形成方法
赤羽 浩一、山本 直克
●SSNS
●構造
・原子間干渉抑制
簡便な手段による高発光効率化
●製造方法
・表面改質
●結晶品質を低下させることなく、短時間プロセスでナノ構造体形状
を高品質に保つ形成方法
●量子ドット形成方法
プロセス短時間化による製造コスト削減
特願2014-096322
(未公開)
半導体量子ドット及びその製造方法
●量子ドットを生成する結晶と基板を格子整合させた超格子とする構
赤羽 浩一、山本 直克、
●構成・構造
造、組成、製造方法
川西 哲也
●製造方法
組成比による発光波長の制御
量子ドット半導体の利用性向上の特許
特許
特許5505827
発明の名称
発明者
発明の概要
権利範囲
●量子井戸または量子ドットを用いた光導波路型半導体光源の構造を
山本 直克、赤羽 浩一、
●構造
簡単化し、デバイス表面の微細構造による光波制御を可能とする。
藤岡 裕己
●レーザ生成方法
光導波路型半導体
波長制御性、多種波長等の提供
量子ドット半導体を利用した応用特許
特許
発明の名称
発明者
発明の概要
権利範囲
光制御遅延器及び分光装置
関根 徳彦、山本 直克、 ●外乱の影響を受けにくい、小型・高精度・簡便に遅延量制御可能な ●光制御遅延器の構成と仕組み
寳迫 巌
光制御遅延器と分光装置
●光遅延器を含む分光装置
特開2012-191075
多光周波数発生光源
山本
赤羽
浜崎
寳迫
特開2013-205113
多波長測定装置
山本 直克、赤羽 浩一、
●多波長での効率的な光学測定を可能とする多波長光学測定装置
川西 哲也、寳迫 巌
特許5550040
直克、諸橋 功、
浩一、関根 徳彦、
●構造の簡素化が図られた多光周波数発生光源。
淳一、川西 哲也、
巌
多光周波数光源の
●構成
●要件となる量子ドット組成・
構造
多波長測定装置の
●装置構成
●要件となる量子ドット構造
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お問い合わせ先
独立行政法人 情報通信研究機構
社会還元促進部門 知的財産推進室
TEL.042-327-6950
FAX.042-327-6659
E-mail: [email protected]
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