ニッセイ基礎研究所 2015 年 2 月 12 日 東京都心部 A クラスビルの オフィス市況見通し(2015 年) 2015 年~2021 年のオフィス賃料・空室率 金融研究部 不動産市場調査室長 竹内 一雅 e-mail : [email protected] 1. はじめに 東京都心部 A クラスビル 1市況は改善が進んでいる。空室率は大幅に改善し、成約賃料も需要の 増加と新規供給の少なさから上昇傾向が続いている。しかし賃料の上昇は緩やかで過去の賃料上昇 局面と比べると需給の逼迫感は乏しい。本稿では東京都心部の A クラスオフィス市況を概観した上 で、2021 年までの賃料と空室率の予測を行う 2。 2. 東京都心部 A クラスビルの空室率・賃料の推移 東京都心部 A クラスビル市況は着実に改善している。三幸エステートによると、空室率は 2012 年第 4 四半期(以下 2012 年 Q4 期とする)の 9.1%から、2013 年 Q4 期は 6.8%、2014 年 Q4 期は 4.0%へと大きく低下してきた(図表-1)。成約賃料(オフィスレント・インデックス)は 2012 年 Q3 期から 2014 年 Q1 期までの半年間に 30%の急上昇をしたが、その後は穏やかな上昇傾向が続い ている。2014 年 Q4 期の賃料は 30,573 円/坪で、前期比+0.8%、前年同期比+10.1%であった。 図表-1 都心部 A クラスビルの空室率と オフィスレント・インデックス 50,000 14.0% リーマン ショック 2012年 大量供給 45,000 12.0% 東日本 大震災 アベノミクス 始動 40,000 10.0% 35,000 8.0% 30,000 6.0% 25,000 4.0% 20,000 2.0% 15,000 0.0% 2014Q3 2014Q1 2013Q3 2013Q1 2012Q3 2012Q1 2011Q3 2011Q1 2010Q3 2010Q1 2009Q3 2009Q1 2008Q3 2008Q1 2007Q3 2007Q1 2006Q3 2006Q1 2005Q3 2005Q1 2004Q3 2004Q1 2003Q3 2003Q1 2002Q3 2002Q1 2001Q3 2001Q1 2000Q3 2000Q1 Aクラス賃料 Aクラス空室率 (注)A クラスビルは三幸エステートの選定に基づく。脚注 1 を参考のこと。 (出所)空室率:三幸エステート、賃料:三幸エステート・ニッセイ基礎研究所、 1 2 本稿では A クラスビルとして三幸エステートの定義を用いる。三幸エステートでは、エリア(都心 5 区業務地区とその他オフィス 集積地域)や延床面積(1 万坪以上)、基準階床面積(300 坪以上)、築年数(15 年以内)および設備などのガイドラインを満た すビルから A クラスビルを選定しており、現時点で約 150 棟が対象となっている。なお、基準階床面積が 200 坪以上で A クラ スビル以外のビルを B クラスビルとしている。詳細は三幸エステート「オフィスレントデータ 2015」を参照のこと。 昨年の見通し結果については、竹内一雅『東京都心部 A クラスビルのオフィス市況見通し(2014 年)-2014 年~2020 年のオフィ ス賃料・空室率』(2014.2.5)を参照のこと。最近の東京におけるオフィス市況全般に関しては竹内一雅『需要増加が続く東京の オフィス市場-今後のオフィス面積拡張意欲の低下が懸念材料』(2014.12.22)などを参照のこと。 1| |不動産投資レポート 2015 年 2 月 12 日|Copyright ©2015NLI Research Institute All rights reserved 東京の賃貸オフィス空室率は全体としても改善が進んでいる(図表-2) 。2012 年までは主要都市 の空室率が低下するのに対して横ばいで推移していたが、2013 年からは改善が進み東京都心 3 区の 空室率は 2015 年 1 月に 4.88%と前年比で 1.56 ポイントの低下となっている。 東京都心部の A クラスビルと B クラスビル 3の空室率の推移をみると、A クラスビルでは 2012 年の都心部における大量供給のため空室率が大きく上昇したが、その後の急速な改善により 2014 年 Q4 期には 4.0%まで低下し、3 四半期連続で空室率が横ばいの B クラスビルの空室率(4.5%) を下回った(図表-3) 。 三幸エステートと共同で開発したオフィスレント・インデックスによると、リーマンショック後 の賃料の底値は A クラスビルで 2011 年 Q3 期の 19,706 円、 B クラスビルで 2012 年 Q3 期の 12,595 円であった(図表-4 左図) 。底値から現在までの上昇率は A クラスビルで+55%、B クラスビルで +36%と A クラスビルの上昇率が大きく上回っている。2014 年 Q4 期の A クラスビルと B クラス ビルの賃料変化率はそれぞれ、前期比+0.8%、▲1.9%、前年同期比+10.1%、+3.3%であった。 オフィスレント・インデックスの前年同期比変化率をみると(図表-4 右図) 、サイクルのピーク は 2013 年 Q1 期~Q3 期で、すでにサイクルは下落傾向にあるように見える。特に B クラスビルで は 2014 年 Q2 期にいったん変化率はマイナスとなった。その後 A クラスビル、B クラスビルとも に需要の拡大に応じて前年同期比変化率は回復し穏やかな上昇が続いている。 図表-2 全国主要都市の空室率 図表-3 東京都心部 A クラスビル・B クラスビル空室率 空室率 22% 12% Aクラスビル 20% Bクラスビル 10% 18% 16% 8% 14% 12% 10% 8% 仙台市, 10.46% 大阪市, 9.30% 札幌市, 8.55% 6% 名古屋市, 8.42% 福岡市, 7.74% 4% 6% 東京都心3区, 4.88% 4% 東京都区部, 5.31% 2% 14Q3 14Q1 13Q3 11Q3 11Q1 10Q3 10Q1 09Q3 09Q1 08Q3 08Q1 07Q3 07Q1 06Q3 06Q1 05Q3 05Q1 04Q3 04Q1 03Q3 03Q1 02Q3 02Q1 01Q3 01Q1 00Q3 13Q1 名古屋市 12Q3 仙台市 大阪市 12Q1 札幌市 福岡市 13Q1 東京都区部 東京都心3区 12Q3 00/01 01/01 02/01 03/01 04/01 05/01 06/01 07/01 08/01 09/01 10/01 11/01 12/01 13/01 14/01 15/01 12Q1 0% 0% 00Q1 2% (注)Aクラスビル、Bクラスビルの定義は脚注1を参照のこと (出所)三幸エステート・ニッセイ基礎研究所 (出所)三幸エステート 図表-4 東京都心部 A クラスビル・B クラスビルオフィスレント・インデックス <オフィスレント・インデックス(成約賃料)> <対前年同期比変動率> 40% (円/月坪) 50,000 Aクラス 30% Bクラス 45,000 20% 40,000 10% 35,000 0% 30,000 -10% 25,000 -20% 20,000 -30% 15,000 -40% 10,000 Aクラスビル Bクラスビル -50% 14Q3 14Q1 All rights reserved 13Q3 |不動産投資レポート 2015 年 2 月 12 日|Copyright ©2015 NLI Research Institute 11Q3 2| 11Q1 A クラスビル、B クラスビルの定義は脚注 1 を参照のこと。 10Q3 10Q1 09Q3 09Q1 08Q3 08Q1 07Q3 07Q1 06Q3 06Q1 05Q3 05Q1 04Q3 04Q1 03Q3 03Q1 02Q3 02Q1 01Q3 14Q3 14Q1 13Q3 13Q1 12Q3 12Q1 11Q3 11Q1 10Q3 10Q1 09Q3 09Q1 08Q3 08Q1 07Q3 07Q1 06Q3 06Q1 05Q3 05Q1 04Q3 04Q1 03Q3 03Q1 02Q3 02Q1 01Q3 01Q1 00Q3 00Q1 (出所)三幸エステート (注)Aクラスビル、Bクラスビルの定義は脚注1を参照のこと (出所)三幸エステート・ニッセイ基礎研究所 3 01Q1 5,000 3. 東京都心部 A クラスビルの賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積 東京都心 A クラスビルの市況改善はオフィス需要の拡大に支えられている。A クラスビルの賃貸 可能面積は 2012 年末頃から 180 万坪程度で推移しているが、その間に賃貸面積は拡大を続け、空 室面積は 16 万坪程度から半分以下へと減少している(図表-5) 。 2013~2014 年は二年続けて大幅に空室面積が減少したが、これは 2004~2005 年以来のことであ る。特に 2014 年は新規供給(賃貸可能面積の増加)が少なかったにも関わらず大幅な需要増加が みられた。これほどの空室面積の減少にも関わらず、A クラスビルの賃料上昇スピードがなかなか 上がらないのは、空室面積がいまだ 7 万坪程度あり、需給逼迫により賃料が大きく上昇する水準に は到達していないためと思われる 4。 図表-5 東京都心部 A クラスビルの賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積 <四半期末面積> 200万坪 180万坪 25万坪 25万坪 賃貸可能面積 賃貸可能面積 賃貸面積 160万坪 <前年比増分> 20万坪 20万坪 賃貸面積 空室面積 空室面積(右目盛り) 15万坪 140万坪 15万坪 10万坪 120万坪 10万坪 100万坪 80万坪 5万坪 60万坪 5万坪 0万坪 -5万坪 40万坪 0万坪 2014Q2 2013Q3 2012Q4 2012Q1 2011Q2 2010Q3 2009Q4 2009Q1 2008Q2 2007Q3 2006Q4 2006Q1 2005Q2 2004Q3 2003Q4 2003Q1 2002Q2 2001Q3 2000Q4 2000Q1 1999Q2 1998Q3 1997Q4 1997Q1 1996Q2 1995Q3 1994Q4 1994Q1 -10万坪 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 (注)空室面積として現空面積を利用。現空面積とは調査時点で公開募集されている空室面積のうち即入居可能な面積のこと (出所)三幸エステート 4. 今後の A クラスビル新規供給、都区部オフィスワーカー数の見通しと経済見通し 三幸エステートの調査によると、2014 年の A クラスビルの新規供給量は、2013 年に引き続き 10 万坪を下回る低い水準にとどまった(図表-6) 。今後、新規供給量は増加し、2016 年から 2018 年 までの 3 年間には、大量供給といわれた 2012 年に匹敵する高水準の供給が続くと考えられる。 また、東京都区部および都心 5 区のオフィスワーカー数は、東京都の見通しによると、2015 年を ピークにしだいに減少していくと予測されている(図表-7) 。東京は他の道府県からの転入超過が 続いているため、都心 5 区では 2015 年以降もオフィスワーカー数の大幅な減少はなく、毎年の減 少は深刻なものにはならないと考えられる 5。 ニッセイ基礎研究所経済研究部によると、2014 年度の実質 GDP 成長率は▲0.7%の減少になるが (2013 年度は 2.1%成長) 、2015 年度は 1.6%、2016 年度は 1.8%へと経済は成長が続くと予測さ れている(図表-8) 。 4 5 東京都心部 A クラスビルの空室面積改善は急速に進展しており、もし、2015 年も過去 2 年間と同等のスピードで空室面積が減少 すれば、需給の逼迫感から賃料は急速に上昇すると考えられる。ただし、現在の空室面積の減少は新規供給の少なさにも支え られており、以下で見るように今後の供給量の多さから現在のペースでの空室面積改善は望めないと思われる。 東京都の予測は 2005 年の国勢調査を基準としたものである。現時点では 2010 年の国勢調査を基準とした新たな予測は公表さ れていない。 3| |不動産投資レポート 2015 年 2 月 12 日|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved 図表-7 東京都区部・都心5区の オフィスワーカー数見通し(東京都) 図表-6 東京都心部 A クラスビル新規供給見通し 25万坪 450万人 予測 予測 400万人 352 351 20万坪 337 350万人 354 352 348 343 331 300万人 15万坪 250万人 196 200万人 186 188 188 178 176 186 183 10万坪 150万人 100万人 5万坪 50万人 0万人 0万坪 1990 1995 2000 2005 2020 2019 2018 2017 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 (出所)三幸エステート 2010 都区部 2020 2015 2025 都心5区 (注)2010 年の実績値は不詳値が多く問題があると思われるため 2005 年基準の 予測値をそのまま掲載する。なお 2010 年都区部実績値は 321 万人であった。 (注)オフィスワーカーは、従業地による職業別就業者のうち、専門的・技術的職 業従事者、管理的職業従事者、事務従事者の合計値。 (出所)東京都「東京都就業者数の予測」(2010.12) 図表-8 実質 GDP 成長率見通し <四半期見通し> (2014.12.8 公表) 1.4% 1.7% 1.9% 0.5% 0.6% 0.3% 0.6% 1.1% 1.3% 0.4% 1.0% 1.5% 2.1% 2.1% 1.0% 0.0% 予測 1.8% 1.1% 1.5% 1.8% 1.9% 2.3% 2.0% 1.1% 3.0% 2.0% 0.5% 0.5% 0.4% 0.3% 0.3% 0.4% 0.3% 0.6% 0.8% 0.5% 予測 0.4% 0.7% 1.0% 3.4% 4.0% 1.1% 1.5% 1.5% 2.0% <参考:年度見通し(2015 年消費増税設定)> (2014.10.16 公表) 0.0% -0.4% -1.0% -2.0% -0.5% -0.4% -0.2% -1.0% -0.5% -0.4% -0.5% -2.0% 2014Q3 -4.0% 2017Q1 2016Q4 2016Q3 2016Q2 2016Q1 2015Q4 2015Q3 2015Q2 2015Q1 2014Q4 2014Q2 2014Q1 2013Q4 2013Q3 2013Q2 2013Q1 2012Q4 2012Q3 2012Q2 2012Q1 (注)消費税率は 2017 年 4 月に 10%に引き上げられると想定。2014 年度は▲ 0.7%、2015 年度 1.6%、2016 年度 1.8%と予測。 (出所)内閣府、四半期見通しは斎藤太郎「2014~2016 年度経済見通し-14 年 7-9 月期 GDP2 次速報後改定」(2014.12.8)Weekly エコノミストレター、ニッセイ基 礎研究所 -3.7% -3.0% -2.0% 2023 2022 2021 2020 2019 2018 2017 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 -1.7% -1.5% (注)消費税率は 2015 年度に 10%、2019 年度に 12%、2023 年度に 14%に 引き上げられると想定 (出所)内閣府、年度見通しはニッセイ基礎研究所経済研究部「中期経済見通し (2014~2024 年度)~需要不足と供給力低下に直面する世界経済」(2014.10.16) Weekly エコノミストレター、ニッセイ基礎研究所 5. 東京都心部 A クラスビル市況見通し 2015 年から 2021 年までの東京都心部 A クラスビルの空室率と賃料を、今後の経済見通し、新規 供給計画、オフィスワーカー数の見通しなどから予測を行った 6。 推計の結果、東京都心部 A クラスビルの賃料は、2015 年 Q2 期までに 5%程度上昇(2014 年 Q4 期基準)した後は 2017 年 Q1 期まで横ばいが続き、2017 年 Q2 期(消費税率の 10%引き上げ期) から下落がはじまると予測された(図表-9) 。その後、2019 年 Q4 期(2014 年 Q4 期比▲12.0%) を底に賃料は上昇し、2021 年 Q4 期には 2014 年 Q4 期とほぼ同水準(2014 年 Q4 期比▲0.4%)ま で回復するという結果となった。 A クラスビルの空室率は、2015 年中は下落が続くが新規供給量の多さから 2015 年 Q4 期を底に 6 推計では図表-6 に掲載した経済見通しを元に設定した。ニッセイ基礎研究所経済研究部「中期経済見通し(2014~2024 年度) ~需要不足と供給力低下に直面する世界経済」(2014.10.16)Weekly エコノミストレター、ニッセイ基礎研究所、斎藤太郎「2014 ~2016 年度経済見通し-14 年 7-9 月期 GDP2 次速報後改定」(2014.12.8)Weekly エコノミストレター、ニッセイ基礎研究所。 4| |不動産投資レポート 2015 年 2 月 12 日|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved 上昇し、2018 年 Q1 期をピークとして再度、空室率の改善が始まると予測された。 当面の賃料のピークは 2014 年 Q4 期を基準として、標準シナリオでは 2016 年 Q3 期で+6.1%、 楽観シナリオでは 2016 年 Q3 期で+17.7%、 悲観シナリオでは 2015 年 Q1 期+0.2%であった。 また、 次の賃料の底は 2014 年 Q4 期を基準として、標準シナリオでは 2019 年 Q4 期▲12.0%、楽観シナ リオでは 2018 年 Q4 期+2.5%、悲観シナリオでは 2019 年 Q4 期▲28.7%であった。また、2021 年 の賃料水準は 2014 年 Q4 期を基準として、標準シナリオで▲0.4%、楽観シナリオで+13.5%、悲観 シナリオで▲15.6%だった。 標準シナリオにおける 2014 年 Q4 期以降の一年ごとの変化率は、 2015 年+6.0%、2016 年▲2.3%、 2017 年▲7.5%、2018 年▲7.1%、2019 年▲1.2%、2020 年+9.4%、2021 年+3.4%となった 7。 図表-9 東京都心部 A クラスビルオフィス賃料(オフィスレント・インデックス)見通し 賃料見通し(四半期推計) 空室率見通し(四半期推計) 14% 50,000円 標準シナリオ 予測 45,000円 楽観シナリオ 悲観シナリオ 予測 12% 40,000円 10% 35,000円 8% 30,000円 6% 25,000円 4% 20,000円 2% 標準シナリオ 楽観シナリオ 悲観シナリオ 15,000円 0% 2018Q3 2018Q1 2017Q3 2017Q1 2016Q3 2016Q1 2015Q3 2015Q1 2014Q3 2014Q1 2013Q3 2013Q1 2012Q3 2012Q1 2011Q3 2011Q1 2010Q3 2010Q1 2009Q3 2009Q1 2008Q3 2008Q1 2007Q3 2007Q1 2006Q3 2006Q1 2005Q3 2005Q1 2004Q3 2004Q1 2003Q3 2003Q1 2002Q3 2002Q1 2001Q3 2001Q1 2000Q3 2000Q1 2018Q3 2018Q1 2017Q3 2017Q1 2016Q3 2016Q1 2015Q3 2015Q1 2014Q3 2014Q1 2013Q3 2013Q1 2012Q3 2012Q1 2011Q3 2011Q1 2010Q3 2010Q1 2009Q3 2009Q1 2008Q3 2008Q1 2007Q3 2007Q1 2006Q3 2006Q1 2005Q3 2005Q1 2004Q3 2004Q1 2003Q3 2003Q1 2002Q3 2002Q1 2001Q3 2001Q1 2000Q3 2000Q1 賃料見通し(年推計) 空室率見通し(年推計) 45,000円 10% 予測 標準シナリオ 楽観シナリオ 悲観シナリオ 40,000円 9% 標準シナリオ 予測 楽観シナリオ 8% 悲観シナリオ 7% 35,000円 6% 30,000円 5% 4% 25,000円 3% 2% 20,000円 1% 0% 2021 2020 2019 2018 2017 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2021 2020 2018 2019 2017 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2003 2004 2002 2001 2000 2000 15,000円 (注)年推計は各年第 4 四半期の推計値を掲載 (出所)賃料の実績値は三幸エステート・ニッセイ基礎研究所「オフィスレント・インデックス」 (出所)賃料および空室率の将来見通しは「オフィスレント・インデックス」などを基にニッセイ基礎研究所が推計 7 今後の賃料の見通しは、①2015 年 Q1 期から 2017 年 Q1 期まで高原状態が続く、②過去と比べて振幅が小さいという特徴があ る。これは、今後、オフィス市況にいくつかの外的要因が加わるためである。第一に当面需要は旺盛ながら 2015 年 Q1 期以降の 大量供給の継続が需給を緩和させ賃料上昇を抑えると考えられること、第二に 2017 年 Q2 期に予定されている消費税率の引き 上げにより 2017 年 Q1 期まで経済成長率が上昇を続けるため市況の悪化開始が通常より遅くなると予測されること、第三に 2020 年の東京オリンピック開催により経済および不動産需要の高まりが期待できること、最後にこれら市況を左右する外的要因が短 い間に立て続けに生じるためと考えられる。なお、通常はオフィス市況が良いと開発が進み市況が悪化し始めてから新規供給が なされるため市況の谷は深くなり、市況の本格回復時には新規供給がないため市況の山は高くなる。このように不動産市況は通 常の経済活動と比べると変動が大きくなる傾向がある。このように、今回の見通しは過去の市況サイクルや振幅の大きさとは多少 異なる予測となっている。 5| |不動産投資レポート 2015 年 2 月 12 日|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved 6. おわりに 東京都心部 A クラスビルの賃料は、2011 年 Q3 期を底にすでに 3 年を越えて上昇を続けており、 過去の推移から考えるとオフィス市況は悪化する時期に入っておかしくない。しかし、2011 年の東 日本大震災とその後の電力不足、2012 年の都心部における大量供給、2014 年の消費税率の引き上 げとその後の駆け込み需要の反動などから、市況の過熱感がなくまだら模様の中で市況の改善がゆ っくり進んできたために、市況の改善期間をおだやかながら長期化させていると思われる。 テナント需要については、ここ数年、IT 系やゲーム、通販などの企業を中心に拡張移転が続いて いる。また、大震災の後に多くの企業で策定された BCP(業務継続計画)に基づく旧耐震ビルなど 築年の古いビルからの移転が、賃貸ビル・自社ビルに関わらず進んでいる。分散したビルやグルー プ企業との統合集約、フロア集約も進められている。築年の浅い A クラスビルは、こうした BCP 重視や集約移転に加え、省エネ、立地改善、企業のイメージアップなどさまざまな理由からテナン トに選好されており、今後新たに供給される A クラスビルにおいても高い稼働率を確保することが 予想される 8。 当面、東京では人口の大幅な減少はないと考えられており、2020 年の東京オリンピックまで一定 程度のオフィス需要が継続すると考えられる。しかし、その後のさらなる成長のためには、オフィ スワーカー数減少への対策としての高齢者・女性の活用、出生率の上昇などによる人口対策、経済 成長のためのベンチャー育成などがより需要になってくると考えられる。 8 本稿で示した A クラスビルの見通しは、このようにテナントからの選好が高まる A クラスビルの需給見通しを元に予測したもので あり、必ずしも東京のオフィス市況全体の見通しを示すものではない。 6| |不動産投資レポート 2015 年 2 月 12 日|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved
© Copyright 2024 ExpyDoc