1 地域における健全な大気、水循環の確保及び土壌・地質環境の保全 (1) 微小有機成分粒子の一次排出および二次生成の寄与割合推定に関する基礎的研究(大気環境担当: 長谷川、米持、梅沢、松本、佐坂/H23~26) 平成 21 年 9 月に、微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準が告示されたが、それに伴う課題として、 PM2.5 やその原因物質の排出状況の把握、大気中の挙動や二次生成機構の解明が挙げられている。特に有機 成分の起源は多種多様で、化石燃料やバイオマスの燃焼による一次排出、及び大気中での反応による二 次生成がある。本研究では、バイオマス燃焼起源の指標であるレボグルコサンや二次生成の指標である水 溶性有機炭素(WSOC)を測定し、微小有機成分粒子の一次排出及び二次生成の寄与割合を適切に推定 するための手法検討や寄与割合推定の試行などの基礎的な研究を行う。 (2) 微小エアロゾルの通年観測試料を活用した各種大気イベントの解析(大気環境担当:米持、梅沢、長谷 川、松本、佐坂/H24~H26) 大気中微小粒子状物質(PM2.5)については 2009 年度より標準測定法に準じた測定を開始し、3年間継 続してきた。また、2005 年からサブミクロン粒子(PM1)の通年観測も実施しており、PM1 と PM2.5 の並行測定 を行う中で PM1 に関する基本的な特徴が明らかとなり、環境基準の設定された PM2.5 の低減のために活用 できることも分かってきた。これを踏まえ、本研究では PM2.5 の日単位の測定および PM1 の通年測定を継続 的に行うとともに、それらで得られたデータや試料を活用して、PM の高濃度事例、越境汚染、光化学大気 汚染等の各種イベントを解析し、行政支援を行う。 (3) 光化学反応による BVOC 由来生成物の測定手法の構築と埼玉県における現況把握(大気環境担当: 佐坂、梅沢、松本、米持、長谷川;化学物質担当:野尻/H25~H27) 微小粒子状物質(PM2.5)に係る大気汚染の状況は依然深刻であり、その改善は喫緊の課題となってい る。これらの原因物質の一つである揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制について、国や県では種々の施 策を講じている。一方で、国内の陸生植物から放出されるイソプレン等、生物由来の VOC(BVOC)につい ては、発生量の把握が十分でなく、その動態や PM2.5 生成への寄与についてもまだ十分に把握されていな い。そこで本研究では、今後の PM2.5 対策に活用するため、BVOC の光化学反応により生成する PM2.5 中 の指標化合物について測定・分析手法を構築し、本県における現況を把握する。 (4) 県内河川における内部生産現象の実態解明と水質汚濁影響評価(水環境担当:池田、柿本、見島;研 究推進室:高橋/H24~H26) 県内河川の BOD 環境基準達成率は、発生源対策の進捗により、全国レベルに達している。一方、河川 の富栄養化が懸念されており、内部生産の活発化による有機性の汚濁、pH 上昇、水域生態系の変化、自 浄作用の劣化など、人為的発生源が原因の水質汚濁と異なる環境影響が予想される。県内河川において も、発泡や、高気温の夏期に淡水赤潮が観測されるなど、内部生産が原因と考えられる汚濁現象が顕在化 してきている。そこで本研究では、県内河川を対象に、内部生産の実態と要因を水質調査等から解明し、 内部生産により生じる諸現象について水質汚濁の観点から評価する。 (5) 浮遊細菌の構成種から見た埼玉県内河川の水質特性評価(水環境担当:渡邊、池田、柿本、見島; 研究推進室:高橋/H26~28) 富栄養化した河川の生態系では、利水障害の原因となる有機物の起源や分解過程などの循環を明らか にすることが、河川水質の管理上必須である。近年、浮遊細菌が溶存有機物分解に関連して、水圏生態系 で重要な役割を担っていると考えられている。湖沼における浮遊細菌ついては、湖沼生態系が陸域もしく は内部生産のどちらかを起源とする有機物の影響を受けているのかといった湖沼の水質特性と浮遊細菌 の構成種が密接に関連し、構成種は物理化学的パラメーター(水温など)の変動に敏感に反応することなど が知られている。しかし、河川については同様の知見が全くなく、浮遊細菌の構成種についても基礎的な 知見が乏しい。そこで本研究では、湖沼で得られた知見が、様々な水質特性を持つ県内河川でも適用可 能であるか検討し、河川の浮遊細菌構成種と水質特性に関する基礎データを集積し、河川における有機 物循環を解き明かす切り口を創出する。 (6) 埼玉県における地下水質特性の総合評価とその応用に関する研究 (土壌・地下水・地盤担当:八戸、 石山、濱元;研究推進室:白石/H23~26) 県内各地域における地下水質調査により多くの井戸から環境基準を超える規制物質が検出されている が実際にどの深さの地下水が汚染されているのか不明な場合が多い。本研究ではまず奥秩父山地を除く 県内全域を対象として主要溶存イオンに代表される様々な地下水情報を網羅的に分析し、地理情報シス テム上でデータベース化する。そして、収集・整理した情報に基づいて地下水質の総合評価を実施し、汚 染帯水層評価など現在環境行政が抱える地下水課題の解決を試みる。 (7) 海成堆積物の風化メカニズムと土壌汚染リスク管理に向けた検討(土壌・地下水・地盤担当:石山、八戸、 濱元;研究推進室:細野、白石/H24~H26) 海成堆積物は、掘削後、一定期間大気中で放置されると、含有される硫化鉱物が風化して酸性土壌へ と変化し、鉛やカドミウムなど様々な有害重金属類が溶出することが知られている。この対処方法としては、 有害重金属類の不溶化処理のほかに、風化の進行を抑制した上で敷地内に埋め戻すリスク管理手法の適 用が有用である。本研究では、海成堆積物に含まれる硫化鉱物の風化メカニズムを解析し、土壌汚染リス ク管理手法を開発することを目的とする。 (8) 土壌中における有害重金属の存在形態と植物への移行状況の解析(土壌・地下水・地盤担当:石山、 八戸、濱元;研究推進室:細野、白石/H24~H26) 土壌汚染の顕在化とともに、土壌汚染対策技術に関する様々な研究が進められている。中でも、植物を 用いて土壌中の有害重金属類を除去するファイトレメディエーションは、環境負荷の少ない原位置浄化技 術として、早期の実用化が望まれている。有害重金属類の植物への移行は、土壌中の存在形態と密接に 関係するため、ファイトレメディエーションを検討するための基礎的知見としては土壌中の存在形態の把握 が不可欠である。本研究では、農用地土壌を対象に様々な化学抽出試験を行い、土壌中の有害重金属類 の存在形態を調査して、土壌から植物への移行に影響する化学的因子を明らかにする。 - 1 -
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