平成 22 年度水産庁委託事業(22 水推第 86 号) 内水面漁業振興対策事業 渓流資源増大技術開発事業 平成 22 年度 渓流資源増大技術開発事業 研究報告書 平成 23 年 3 月 独立行政法人 水産総合研究センター 事業の概要 独立行政法人水産総合研究センター 中央水産研究所 1 目的 最近のイワナ、ヤマメ・アマゴ等の渓流魚の漁業生産量は年間約 1,690 トン、養殖生産量は 11,676 トンである(平成 17 年度) 。また、資源の維持増大のために河川湖沼で放流が実施され、 その数量は 4,683 万尾であり、遊漁者数はのべ約 179 万人である(これらは平成 15 年度) 。この ように、渓流魚は我が国の内水面における重要な水産資源である。 渓流魚については、平成 10~14 年度の水産庁増殖推進部栽培養殖課所管「有用資源生態系管 理手法開発事業」において基礎生態が整理され、漁場管理手法のひとつとしてゾーニング管理と いう概念が提示された。そして、平成 15~19 年度の同課所管「渓流域管理体制構築事業」におい て、遺伝的多様性を保全しつつ漁場の有効利用と漁協の経営安定を図るための渓流魚資源の管理 手法が開発され、その具体的方法がゾーニング管理マニュアル、放流マニュアルおよび両マニュ アルの資料編として 19 年 3 月に都道府県の水産主務課・内水面関係試験研究機関、都道府県内水 面漁連、漁協等に配布された。 これらのマニュアルと資料編により、重要な水産資源であり、国民の大切な遺伝資源である渓 流魚の原種(在来個体群)の残存を都道府県や漁協は図ることができる。しかし、原種は残存さ せるだけでは、遺伝的多様性の低下や生息環境の悪化、漁獲圧の増大等により絶滅するおそれが ある。 そこで本事業では、天然水域における渓流魚の遺伝的多様性の増大・維持技術および在来個体 群の活用技術を開発する。 2 事業の所管、形態等 所管: 水産庁増殖推進部栽培養殖課 形態: 内水面漁業振興対策事業のひとつ 推進リーダー: 独立行政法人水産総合研究センター 中央水産研究所 内水面研究部 生態系保全 研究室 中村智幸主任研究員 3 体制 水産総合研究センターと全国内水面漁業協同組合連合会が共同提案により受託した。そして、 水産総合研究センターが中核を担いながら、都道府県公立内水面水産関係試験研究機関(水産試 験場等) 、大学等に調査の一部を再委託した。全国内水面漁業協同組合連合会は、有識者で構成さ れる委員会を設置し、研究の計画および成果の評価・検討を行った。 4 研究内容 (1)遺伝子データベースの構築によるイワナ、ヤマメ・アマゴ個体群の在来・非在来判別技術 の開発 遺伝子解析によるイワナ、ヤマメ、アマゴ個体群の在来・非在来判別技術を開発する。 中央水産研究所 内水面研究部 資源生態研究室 (2)渓流魚における遺伝的多様性低下の影響の把握 渓流魚(イワナ、ヤマメ・アマゴ)における遺伝的多様性の低下が資源に及ぼす影響を 把握する。 中央水産研究所 内水面研究部 生態系保全研究室及び資源生態研究室 再委託先:栃木県水産試験場、三重大学 (3)イワナの遺伝的多様性復元・増大技術の開発調査 イワナ在来個体群の遺伝的多様性を回復・向上させ、個体群の絶滅回避を図るため、遺 伝的多様性のデータに基づいた人為的な個体の移植等の効果を検証する。 再委託先:栃木県水産試験場 (4)アマゴの遺伝的多様性復元・増大技術の開発調査 アマゴ在来個体群の遺伝的多様性を回復・向上させ、個体群の絶滅回避を図るため、遺 伝的多様性のデータに基づいた人為的な個体の移植等の効果を検証する。 再委託先:三重大学 (5)イワナにおける禁漁による遺伝的多様性の維持の検証調査 禁漁区設定がイワナ在来個体群の遺伝的多様性維持と増殖に及ぼす効果を検証する。 再委託先:長野県水産試験場 (6)アマゴにおける禁漁による遺伝的多様性の増大・維持の検証調査 禁漁区設定がアマゴ在来個体群の遺伝的多様性維持と増殖に及ぼす効果を検証する。 再委託先:和歌山県農林水産総合技術センター水産試験場 (7)イワナにおける輪番禁漁の有効禁漁期間・解禁期間の検証調査 イワナ在来個体群の維持・増殖及び利用に有効な禁漁と解禁期間を検証する。 再委託先:栃木県水産試験場 (8)イワナ、アマゴの生息場所の造成・復元技術の開発調査 堰堤・ダムが多数設置された河川におけるイワナ、アマゴの生息場所の造成・復元技 術を開発する。 再委託先:山梨県水産技術センター (9)渓流魚の生息のための渓畔林保全技術の開発 渓畔林の水温上昇抑制能を明らかにし、渓畔林の保全技術を開発する。 中央水産研究所 内水面研究部 生態系保全研究室 (10)イワナにおける在来個体群を活用した養殖種苗の特性向上技術の開発調査 イワナ養殖種苗への在来個体群の精子導入、自発摂餌、低密度飼育等により、生残が 良く、釣れにくく(長い漁期をもたらす) 、容姿のきれいな種苗の生産技術を開発する。 再委託先:群馬県水産試験場 (11)アマゴにおける在来個体群を活用した養殖種苗の特性向上技術の開発調査 アマゴ養殖種苗への在来個体群の精子導入、自発摂餌、低密度飼育等により、生残が 良く、釣れにくく(長い漁期をもたらす) 、容姿のきれいな種苗の生産技術を開発する。 再委託先:岐阜県河川環境研究所 (12)漁協が実施可能な資源評価技術の開発 漁協が実施可能なモニタリンング調査手法を開発し、そのマニュアルを編纂する さけますセンターさけます研究部 環境・生態研究室 (13)渓流魚の遺伝的多様性の増大・維持による経済効果の検証 渓流魚の遺伝的多様性の増大・維持が漁協に与える経済効果を明らかにする。 中央水産研究所 水産経済部 動向分析研究室 渓流魚、渓流遊漁、渓流域漁協の現状 独立行政法人水産総合研究センター 中央水産研究所 1 渓流魚の漁獲量、放流数、遊漁者数の推移 最近(平成 17 年度)のイワナ、ヤマメ・アマゴ等の渓流魚の漁獲量は約 1,690 トン、養殖量は 11,676 トンである。また、資源の維持増大のために河川湖沼で種苗放流が実施され、その数量は 4,683 万尾・粒(稚魚や成魚の尾数と発眼卵の粒数を足したもの)であり、遊漁者数はのべ約 179 万人である(これらは平成 15 年度) 。このように、渓流魚は我が国の内水面における重要な水産 資源である。 漁獲量の内訳は、イワナが約 369 トン、ヤマメ・アマゴが約 597 トンである。渓流魚を獲って 売ることを生業にしている漁業者は日本にはほとんどいないので、この漁獲量は遊漁、すなわち レジャー(レクレーション)としての釣りによるものといえる。 放流量の内訳は、イワナが約 951 万尾・粒、ヤマメ・アマゴが約 2,978 万尾・粒である。ヤマ メやアマゴの養殖ができるようになるまでは、放流される渓流魚のほとんどがニジマスやカワマ ス(ブルックトラウト)であった。昭和 40 年代にようやくヤマメとアマゴの養殖技術が確立され、 50 年代になるとイワナも養殖できるようになった。イワナ、ヤマメ・アマゴの放流が行われるよ うになり、渓流魚の放流量は昭和期の後半に大きく増加した。全国の主要河川についてみると、 渓流魚は遊漁者 1 人当たり平均 22.4 尾放流され、平均 1.35kg 釣られていることになる(平成 15 年度) 。 昭和 48 年度からの推移をみると、マス類の遊漁者数は徐々に増加し、平成 5 年度に約 250 万人 とピークを迎えた。その要因として、週休二日制の普及や自然へのふれあい指向の高まり等が考 えられる。しかし、遊漁者数はその後減少傾向にある。減少の原因として、経済状況の悪化によ る労働時間の増大や所得の低下による遊漁の停止、遊漁者の高齢化、若年遊漁者の新規加入の減 少等が考えられる。 しかし、かつてにくらべて少なくなったとはいえ、現在でも数多くの遊漁者が渓流を訪れてお り、渓流釣りは国民の大切なレジャーであるといえる。 2 天然魚の減少と遊漁者の価値観の変化 放流がさかんに行われた結果、現在の日本の渓流には次の 3 タイプの魚、すなわち①天然魚、 ②野生魚、③放流魚が生息しているといえる。 天然魚は学術的には「在来個体群」 、 「在来集団」と呼ばれる。漁協組合員や遊漁者の間で「原 種」や「地付きの魚」と呼ばれる魚のことである。昔から継代しながら生息し、放流された養殖 魚と一度も交配せず、それぞれの川固有の遺伝子を持った魚のことである。 それに対して野生魚とは、天然魚と放流された養殖魚が交配して生まれた魚のことを指す。遺 伝的には天然魚のように純粋ではないが、自然繁殖している魚のことである。放流後、時間が経 って、川になじんだ魚も野生魚という場合がある。 放流魚とは、放流された養殖魚のことである。 このうち天然魚は、堰堤やダムの建設・林道の建設・森林の伐採等による生息環境の悪化や、 遊漁による乱獲、放流された養殖魚との交配等のために著しく減少しつつある。これまで漁協組 合員や遊漁者の間では、 「魚だったら、天然魚でも、野生魚でも、放流魚でもいい」という雰囲気 が強かった。しかし、最近では生物多様性保全や遺伝的多様性保全の観点から、希少になった天 然魚を守ろうという気運が高まっている。 いっぽう、渓流釣りといえば、かつては餌釣り師が多かった。しかし、最近ではルアーやフラ イ釣り師が増加し、和風の毛ばり釣りであるテンカラ釣りもひとつのジャンルとして人気が高い。 また、渓流釣り師のニーズの主流は、以前は「たくさん釣りたい」や「釣った魚を食べる」で あった。しかし、最近はこのような考え方だけでなく、 「自然の豊かな川で釣りたい」 、 「数は少な くてもいいから、きれいな魚を釣りたい」 、 「その川にもともといる天然魚を釣りたい」 、 「キャッ チ・アンド・リリースで釣りたい」 、 「他の釣り人に邪魔されずに、のんびり釣りたい」というよ うに多様化してきた。 さらに、釣れた魚を全部持って帰って食べる人もいれば、釣れたもののうちから数尾だけ持ち 帰って食べる人もいる。釣れた魚を生きたまま全部川に戻すキャッチ・アンド・リリースの人も いる。 このように、釣り方だけでなく、魚に対するニーズや、魚への接し方も多様化が進んでいる。 3 漁協の経営と社会的機能 近年、渓流域の漁協の経営状況は芳しくない。その原因のひとつとして、資源量の減少が考え られる。魚の少ない釣り場に遊漁者は来ない。魚が減った原因として、前述のような開発行為(堰 堤やダムの建設、林道建設、森林伐採等)に伴う生息環境の悪化や遊漁による乱獲がある。地域 によってはカワウによる食害もある。 また、前述のような遊漁者の高齢化や若年遊漁者の新規加入の少なさがある。遊漁者のニーズ に対応できていないことによる遊漁料収入の減少もある。前述のような多様な価値観を持った遊 漁者たちが同じ場所で一緒に釣りをすると、どうしても不満が出て来る。不満を持った遊漁者は その川から離れてしまうのである。 この他にアユの冷水病の影響もある。アユの漁業権を有している渓流域の漁協は少なくない。 しかし、冷水病の伝播以降、アユの放流にかかった費用を漁業権行使料や遊漁料として回収でき ていない漁協が非常に多い。 漁協は経営体としての側面を持っている。経営が悪化した漁協の中には今後解散せざるを得な いものが出て来るであろう。そのような漁協については早急に経営を立て直さなくてはならない。 そのいっぽうで、遊漁を通して地域に貢献している漁協も少なくない。漁協は川と魚と釣りと いう多くの国民が欲している資源とレジャーを提供する能力を持っている。今後の漁協の役目の ひとつとして、社会貢献がある。釣りは数多くの国民が楽しむレクレーションである。遊漁者に 喜ばれる釣り場作りもこれから大切である。また、遺伝的多様性の保全の観点から、天然魚、す なわち在来個体群の保全も今後の漁協の社会的機能のひとつとして期待されている。 在来個体群の増殖と保全の意義 独立行政法人水産総合研究センター 中央水産研究所 1 在来保体群 遺伝的多様性の保全の観点から、在来個体群の保全は世界的な共通認識である。しかし、この 価値観が内水面の漁協といった現場レベルまで浸透しているとは言い難い。実際に、漁協に対し て都道府県の水産試験場等が在来個体群保全の重要性を説明しても理解を得られないことが多く、 水試等の職員が窮する場面が多々ある。 2 McNeely ほかによる「生物の価値」 McNeely et al(1990)は生物の価値、すなわち人類にとっての植物や動物の存在意義を整理した。 また、この考えを、鷲谷・矢原(1996)は日本語でわかりやすく説明している。この McNeely et al (1990)の考え方に従って、渓流魚の保全と増殖の意義を整理する。 McNeely et al(1990)は、生物の価値をまず大きく 2 つに分けた(図 1) 。すなわち、 「直接的価 値」と「間接的価値」である。また、 「直接的価値」をさらに 2 つに分けた。ひとつは「消費的使 用価値」であり、もうひとつは「生産的使用価値」である。いっぽう、 「間接的価値」を「非消費 的使用価値」 、 「予備的使用価値」 、 消費的使用価値 「存在価値」の 3 つに分けた。そ 直接的価値 れぞれの「価値」の意味や意義は 「市場を通ることなく,直接消費される生物の価値」 (例:食料,燃料,薬) 渓流魚の場合・・・遊漁による自家消費 次のとおりである。 生産的使用価値 「市場を通って,お金に置き換えられる生物の価値」 (例:市場を通った食料,燃料,薬) 1.直接的価値 (1)消費的使用価値 渓流魚の場合・・・職漁師等による漁業 生物の価値 「消費的使用価値」とは、 「市場 非消費的使用価値 を通ることなく、直接消費される 「消費はされないが,人間による利用という点で尊重 される生物の価値」(例:バードウオッチング) 生物の価値」を指す。具体的には、 自家用の食料や燃料、医薬品等と しての価値である。山や川でとっ 渓流魚の場合・・・キャッチアンドリリース, 産卵観察 間接的価値 予備的使用価値 「将来の潜在的利用のために残しておく生物の価値」 (例:遺伝子) た植物や動物を、自分たちで食べ たり、燃料にしたり、薬として使 う場合に、それらの生物が持つ価 値である。渓流魚を例にとると、 釣った魚を自分や家族で食べる 存在価値 「倫理的立場から支持される生物の非使用的価値」 (益-不益の論理を越えた価値) 図 1 生物(渓流魚)の価値 ことがあるが、この場合渓流魚に「消費的使用価値」があるということになる。 (2)生産的使用価値 「生産的使用価値」とは、 「市場を通って、お金に置き換えられる生物の価値」である。とった 植物や動物を売ってお金にする場合の価値である。かつて日本には、川や湖で獲った渓流魚を売 って、現金収入を得る漁業者(職漁師)がいた。彼らにとって、渓流魚には「生産的使用価値」 があるということになる。渓流魚を漁獲対象とした漁業者は日本にはもうほとんどいないだろう から、日本の川や湖に生息する渓流魚には、今では「生産的使用価値」はないということになる。 ただし、渓流魚の養殖業者はたくさんおり、このような業者にとって、養殖された渓流魚には「生 産的使用価値」があるといえる。 2.間接的価値 (1)非消費的使用価値 「非消費的使用価値」とは、 「消費はされないが、人による利用という点で尊重される生物の価 値」である。食べたり、燃やしたり、薬にしたりして使うのではなく、見たり、触ったりして使 う場合の価値である。釣った魚を食べずに放流するキャッチ・アンド・リリースの遊漁者にとっ て、渓流魚には「非消費的使用価値」があるということになる。また,魚の泳ぐ姿や産卵の様子 を見て楽しむというのも、この価値の利用方法のひとつである。 (2)予備的使用価値 「予備的使用価値」とは、 「将来の潜在的利用のために残しておく生物の価値」である。遺伝子 はこの価値を代表するものである。渓流魚は地域や水系、川、支流ごとに固有の遺伝子を持って いる可能性があり、そのような遺伝子を残すことは生物多様性のひとつである遺伝的多様性の保 全という観点から重要である。遺伝子をそれだけ抽出して保存したり、冷凍やアルコール固定し た標本の状態で残すのではなく、生きた魚の状態で後生に残していくことが遺伝子保全の本来の 姿であることはいうまでもない。 (3)存在価値 「存在価値」とは、 「倫理的立場から支持される生物の非使用的価値」である。その生物を特に 利用するわけではないが、これからも人類を含む「生態系の構成要素のひとつ」として生息し続 けて欲しいという価値である。漁協組合員や遊漁者の多くは、渓流魚を増やす理由を「たくさん 釣るため」と言うであろう。また、組合員や遊漁者の一部は「たくさん釣れるに越したことはな いけれど,それよりも数は少なくて良いから、きれいな魚を釣りたい」と言うかもしない。この ように、数量や質については様々な価値観があるが、組合員や遊漁者にとって魚は漁獲の対象で ある。しかし、魚を獲らない一般の人の中には、 「たまに行った山奥の川で、渓流魚が泳いでいる 光景を見ると気持ちいい」という人もいる。あるいは、 「滅多に川には行かないけれど、渓流にイ ワナやヤマメ・アマゴという魚がいると聞いただけで、なんとなく安心する」といった人もいる。 このような人たちにとって、渓流魚には「存在価値」があるということになる。 以上のように、川や湖に生息する渓流魚には、食料資源としての「消費的使用価値」 、キャッチ・ アンド・リリースの釣り資源や産卵観察の観光資源としての「非消費的使用価値」 、遺伝子資源と しての「予備的使用価値」 、生態系の構成要素としての「存在価値」があると言える。このような 価値を失わないようにするために、渓流魚を保全したり、増殖する必要があるということになる。 特に、在来個体群には、 「非消費的使用価値」 、 「予備的使用価値」 、 「存在価値」があると考えられ る。 なお、このような多様な価値はそれぞれ尊重されるべきであるが、地域によって優先される価 値が異なってもしかるべきであろう。 以上が理論的な側面であるが、簡便には次のように言うこともできる。 在来個体群には次のような価値があると考えられる。 ①それぞれの川に昔からいた天然魚は、それぞれの川の環境に適応しており、他の川の魚よりも それぞれの川で生き残る能力が高く、資源として永続的に利用できる。 ②天然魚を釣りたいという釣り人のニーズが高まっている。 ③私たちのまわりの川に昔から生息していた天然魚に、 「ふるさと」の一員として、これからもず っといて欲しい。 ④養殖用の新しい品種を作る時に、いろいろな遺伝子や性質が必要である。 ⑤天然魚は、その地域や日本列島、地球の成り立ちを教えてくれる「生き証人」であり、学術的 に貴重である。 いずれの理由もとても大切である。特に③の「ふるさとの一員」という価値については、誰も 異論はないであろう。 引用文献 McNeeley, J. A., Miller, K. R., Reid, W. V., Mittermeier, R. A. and Werner, T. B. 1990. Conserving the world’s biological diversity. IUCN, Gland, Switzerland; WRI, CI, SSF-US and the World Bank. 鷲谷いづみ・矢原徹一.1996.保全生態学入門—遺伝子から景観まで.文一総合出版,東京,270pp.
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