第42回 GREENオープンセミナーアブストラクト

希少資源・毒性元素に頼らない新型蓄電池: ナトリウムイオン電池
東京理科大学理 1,京都大学 ESICB2 駒場 慎一 1,2
金属リチウムを負極に用いたリチウムイオン電池の安全性を改善するため,金属リチウムを用いずに同等の電
圧を実現した“リチウムイオン電池”は 1991 年に日本で初めて市販された.現在では,携帯電子機器の電源として
だけではなく電気自動車等のエコカー電源や家庭用据置型蓄電池,さらに風力発電や大規模太陽光発電と組み合
わせた電力貯蔵用途で,大型リチウムイオン電池に期待が寄せられている.しかし,電力貯蔵のような非常に大
型の用途で用いる場合,材料コストが大きなウエイトを占めるため,資源の豊富な元素へのシフトが課題である.
今後,大型蓄電池の高い性能を維持しつつ価格を下げることが強く求められているが,このような背景のもと,
究極の元素戦略電池として“ナトリウムイオン電池”に注目が集まっている.
リチウムイオン電池の充放電は,正極と負極でリチウムイオン(Li+)の挿入,脱離を伴う酸化還元反応によっ
ている.Fig. 1 に示したように,リチウムをナトリウムで置き換えたのが“ナトリウムイオン電池”である.充電で
は,Na+イオンと電子が正極から負極へ移動する.放電では,その向きが逆となる.Fig. 1 に示すような主要構成
要素は,負極,電解液,正極材料についてこれまで多くの材料が見いだされ,Fig. 2 から明らかなように,2010
年以降,その論文発表数が顕著に伸びている[1].
リチウムイオン電池の負極では,黒鉛へのリチウムインターカレーションが利用され,その容量は 1 g あたり
370 mAh を示す.しかし,同様の条件ではナトリウムを黒鉛層間に取り込む反応は進行しない.一方で,黒鉛の
層状構造が未発達でナノ細孔を持つハードカーボン(難黒鉛化性炭素)を用いた場合,300 mAh g-1 の可逆容量が
得られるという報告がされていたが,充放電時の容量低下が激しいことが課題であった.我々はこのハードカー
ボンと電解液,バインダーに焦点をあて,電解液の系統的な調査をおこない 100 サイクル以上の長期充放電が可
能であることを実証,さらに Na 合金負極の大容量作動にも成功した[1].
ナトリウムイオン電池用正極材料は負極材料と比較してこれまでも多くの報告がされていたが,2004 年には層
状岩塩型鉄酸化物(α 型 NaFeO2)で,3.3 V vs. Na で可逆的なナトリウムの脱挿入が行えるという報告がされた.
我々のグループでもこれまでにNa[Ni1/2Mn1/2]O2 やNa2/3[Fe1/2Mn1/2]O2 といった層状酸化物が可逆的にナトリウムの脱
挿入が可能であることを報告している.
ハードカーボンを負極,Na[Ni1/2Mn1/2]O2 を正極として作製した全電池構成のナトリウムイオン電池の充放電では,
室温にて 3 V 級二次電池として安定に充放電を実証している.エネルギー密度を見積もると,一般的な黒鉛と
LiCoO2 からなるリチウムイオン電池に比べ約60-80 %を達成している.
さらに,
急速充放電時の容量低下は小さく,
リチウムイオン電池に比べてレート特性が優れている.Li+イオンに比べて Na+イオンはルイス酸性が小さく,負電
荷との静電的相互作用が弱く,結果として電極内,電解液中,さらには電極と電解液界面でのナトリウムイオン
の輸送が速いためと考えられる.周期表でリチウムのすぐ下にあるナトリウムで非水二次電池の動作が可能とな
り,リチウムから予期できない結果が次々と見出されている.大型用の高性能蓄電池の候補として,究極の元素
戦略電池“ナトリウムイオン蓄電池”の実用化を目指し,公的研究費や産学連携を生かして研究を推進している.
[1]
Our group, Adv. Funct. Mater., 21, 3859 (2011), Nature Mater., 11, 512 (2012), and Chem. Rev., 114, 11636 (2014), etc.
250
Our group:
>100 cycles of Na/HC
Whitacre
Komaba
Okada
Delmas
Delmas
Saadoune Valence
NaCrO2
NaTi2(PO4)3
Tech.
Abraham Tarascon Shacklette
Tirado
NaxMo2O4
Exxon
Doeff
Dahn
Na/TiS2
Whittingham
left: Figure 1. Charge-discharge scheme and materials library for sodium-ion batteries.
right: Figure 2. Yearly number of published papers of Na-ion battery study up to Jan-2015.
0
5
0
5
200
201
201
0
200
50
5
LixTiS2
199
NaPF6, NaN(SO2CF3)2
Carbonate esters, glymes
Fluoro-EC additive
FSI-based molten salt
Na3PS4 glass
(aqueous solution)
100
0
Electrolyte and Additive
Sn, Pb, Sb
Na2Ti3O7, TiO2
Li4Ti5O12
Terephthalate
NaTi2(PO4)3
Na2V2(PO4)3
Na [Li Ti [O
Binder Na0.672/3[Mg2/91/3Ti7/92/3]O2 2
PVdF
Phosphorus, NiP
Polyacrylate
graphite, etc.
CMC, etc.
Johnson
Palacín
Tarascon
Ceder
Cao/Liu
Positive E.
Negative E.
Electrolyte
Review articles
Others (solid-state, Na-S …)
199
hard-carbon
150
5
Negative
200
198
Al is lighter and
inexpensive.
0
Positive
NaFeO2, NaCrO2
NaMnO2, NaNiO2
Na[Ni1/2Mn1/2]O2
Na2/3[Ni1/3(Mn,Ti)2/3]O2
Na[Fe0.4Ni0.3Mn0.3)O2
Na2/3[Fe1/2Mn1/2]O2
Nax[Li0.17Ni0.21Mn0.64]O2
Na[Fe1/3Ni1/3Mn1/3]O2
Na2(Fe,Mn,Co)PO4F
Na[Co1/2Fe1/2]O2
Na[Ni0.7Fe0.3]O2
Na2/3MnO2
Na2/3[Mn,Li,Mg]O2
Na4[Fe(CN)6], KFe2(CN)6
Na1.6Co[Fe(CN)6]0.90
(Pyro)phosphates
Na-Fe-SO4
Na1.5VO4.8F0.7, etc.
Goodenough
Balaya
Amine
Moritomo
Hu, Kang
Yamada
Obrovac
198
Al, Cu
5
Al
197
Current Collector
Number of scientific papers
Current Collector
Year