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道民カレッジ「ほっかいどう学」大学インターネット講座
「コミュニティ・カフェが北海道を変える?-地域が元気になるために-」
講師:北海学園大学 経営学部
菅原浩信 教授
◇ 講座の内容 ◇
・地域コミュニティを活性化、再生させる存在の1つとして、全国的に注目されている「コミュニ
ティ・カフェ」の実例を見ながら、北海道における「地域コミュニティの活性化」の可能性を考
えていく。
◆「コミュニティ・カフェ」とは
・一言で言えば、地域コミュニティの中で、人が集まり、ふれあえる「居場所」や「たまり場」に
なっているカフェということ。
・地域コミュニティを活性化あるいは、再生させる存在の1つとして、この「コミュニティ・カフ
ェ」が今、全国的に注目されている。
近年、地域コミュニティが疲弊、縮小している、衰退、崩壊しているということを聞いたことはあ
りませんか?
◆地域コミュニティの縮小~北海道の現状は・・・~
・北海道でも少なからず、地域コミュニティの縮小は見られている。
・
「限界集落」は、過疎化や高齢化が進む中で、経済的・社会的な共同生活の維持が難しくなり、危
ぶまれる集落のこと。
◆北海道の集落数の推移
・昨年の8月末現在で、北海道内には 3,747 の集落
があり、そのうち 603 の集落では、65 歳以上の方
の割合が 50%を超えている。
・こうした集落の多くは、将来、日常生活の助け合い
などが難しくなり、その存続が危ぶまれる「限界集
落」とされている。
・この調査では、9 年後には、65 歳以上の方の割合が
50%以上となる集落は、2,465 になるものと想定さ
れている。
・全体の集落の数が 3,747 のままだとすると、65%を超える集落が「限界集落」になってしまうこ
とになる。
高齢者の孤独死という言葉を聞いたことはありませんか?
◆買い物弱者
・近所にスーパーマーケットがなくなって、自家用車で移動できない高齢者など。
・高齢者の孤独死や買い物弱者などの問題は、地域コミュニティが疲弊していたり、縮小していた
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りするサインである。
・この状況が進むと、
「顔の見える関係」や「地域での見守りの機能」がなくなり、犯罪や事件、事
故が増加し、様々な心配事につながる。
◆地域コミュニティの縮小
・私たちの安全・安心な暮らしが脅かされることにもつ
ながるのである。
◆顔の見える関係とは
・ご近所付き合いや、町内会や子供会など。
・近くの商店街で買物をするのも、それにあたるかもしれない。
・北海道は、面積が広く、都市部以外では、集落が分散して、人口密度が低くなり、人と人とのつ
ながりが希薄になる傾向がある。
・北海道では、他の地域に比べて、地域コミュニティの疲弊・縮小が進みやすいと考えられる。
・地域コミュニティの活性化は、北海道にとって、早急に取り組むべき問題だと思う。
「コミュニティ・カフェ」の実例を見ながら、北海道における「地域コミュニティの活性化」の可
能性を考えていきます。
【事例1】 cafe 自休自足(取材 VTR)
・cafe 自休自足は、提供しているメニューのほとんどに石焼なべが使われており、他のお店と差
別化できるポイントであり、大きな魅力である。
・cafe 自休自足は、お店の雰囲気と多彩なメニューで、ひとつのカフェとしても多くのファンを獲
得している。
cafe 自休自足がもつ「コミュニティ・カフェ」としての機能をご紹介します。
【事例1】cafe 自休自足(札幌市北区)(取材 VTR)
・この日開かれたイベントは、
「カフェ開業塾」という勉強会で、参加者の中には、カフェの開業と
は直接関係のなさそうな人も参加しており、異業種で交流する様子が見られた。
・イベントに参加したことでつながりができ、その人が作っているという理由で、店で販売するク
ッキーを仕入れたこともあるとのこと。
・コミュニティ・カフェでの交流を通して、新しいつながりが生まれたという事例である。
・この他にも、カラーセラピー、音楽ライブ、フラワーアレンジメント、小中学生に速読などを教
える寺子屋など、ジャンルを問わない様々なイベントが開催されている。
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◆コミュニティ・カフェの定義
※コミュニティ・カフェの研究自体がまだ進んでおら
ず、定義も固まっていないが、この講座では、コミュ
ニティ・カフェの定義をこのようにする。
◆コミュニティ・カフェの機能
・1 つ目が狭い意味でのコミュニティ・カフェ
・2 つ目がコミュニティ・スペースとしてのコミュニ
ティ・カフェ
・3 つ目が、地域の茶の間としてのコミュニティ・カフ
ェ
◆狭義のコミュニティ・カフェ
・一般のカフェと同じように、店の雰囲気や提供するメニューなどの飲食の提供に力を入れている
カフェで、いわゆる「営利性」を重視しているカフェである。
・今、VTRで紹介した「自休自足」が該当する。
コミュニティ・スペースの機能を持つ cafe を紹介します。
【事例 2】ちいさなおうち なの花館(取材 VTR)
◆コミュニティ・スペース
・なの花館はこれに当たる。
・「イベントの提供」を重視していて、
「営利性」と「公益性」を両方確保しようとする。
・なの花館は、子育て支援というテーマに合わせた、お母さんたちにとって魅力的なイベントを実
施し、多くの親子連れが集まり、共通の話題を通してつながりを深めていて、
「公益性」が確保さ
れている。
・飲み物やスイーツの提供、イベントへの参加費などで収入を得ているので「営利性」も確保して
いる。
・コミュニティ・カフェの目的は、特定の活動に、限っている訳ではなく、様々な形態がある。
・複数の目的や活動内容をもっているものも多い。
・当初は、1つの目的や活動内容であっても、その後、目的や活動内容が拡大していくというケー
スもみられる。
・これからも、時代の背景や地域のニーズに応じて、新しいジャンルのコミュニティ・カフェが開
設されていくと思う。
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居場所・たまり場といった「公益性」を重視する「地域の茶の間」としての機能を持つ cafe を紹
介します。
【事例 3】 みんなのお茶の間 くるくる(取材 VTR)
◆地域の茶の間
・自由に過ごせて、やることを強制されないというのが「くるくる」の最大の特徴。
・コミュニティ・カフェをやってみたいという人が見学に訪れるケースも多い。
・その結果、何ヶ所ものコミュニティ・カフェができ、高齢者の中には、日替わりでコミュニティ・
カフェをめぐっている人もいる少なからずいるそうである。
・自由な場所を提供することで、それまでは近くに住んでいても知らなかったけれど、
「くるくる」
で出会ったことで知り合いになり、
「くるくる」以外でも交流するようになった人たちもいるそう
である。
・その結果、「くるくる」はいわゆる「見守り」
、
「安否確認」の役割も担うようになる。
◆コミュニティ・カフェの共通点
・メニューやイベント、居心地のよい場所など、何らかの“魅力”を提供することで、人が出会う
場や集う場を作り出しているということである。
◆地域コミュニティ活性化のプロセス
・コミュニティ・カフェがメニューやイベントなど、
地域住民に様々な魅力を提供する。
・その魅力を好ましいと思う人たちが来るようにな
ると、コミュニティ・カフェは「出会い」や「集い」
の場としての機能を持つようになる。
・同じ魅力を共有する地域住民が、カフェを継続的に
利用することで、コミュニティ・カフェの顧客とな
る。
・コミュニティ・カフェの利用が増えるにつれて、そ
こでの知り合いが増える。顧客同士の「交流・ふれ
あい」の場としての機能を持つようになる。
・イベントなどの共有された魅力を通じ、交流することで、より深く結びつくことができる。
・結びつきがさらに進むと、コミュニティ・カフェに地域コミュニティの情報が集まる。
・共通の目的を持って集まる顧客が結びつくなど、コミュニティ・カフェが「ネットワーク」形成
の場へと発展していく。
・このネットワークが、コミュニティ・カフェをベースとして活動を実施すると、その活動に共感
したり、関心を持った人たちがさらに集まってくる。
・コミュニティ・カフェは「にぎわい」の創出の場としての機能を持つことになる。
・ここで生まれた活動は、コミュニティ・カフェはもちろん、それ以外の場所でも行われるように
なり、それに伴って地域コミュニティの外からもどんどん人がやってくる。
・結果として、
「地域コミュニティの活性化」がもたらされるのではないかと考えられる。
◆地域コミュニティ活性化の事例
・新潟県では、2001 年に策定された県の総合計画の中に「地域の茶の間」が位置づけられ、全県的
に普及が進んだ。
・今ではこの「地域の茶の間」だけでも、県内に 1,000 か所以上あると言われている。
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・例えば 2013 年3月で活動が終わってしまったが、
先駆的な「地域の茶の間」として知られている、
新潟市の「うちの実家」では、小学生が授業の一
環でここを訪問したことがきっかけで、小学校の
先生から相談を受け、放課後、高齢者がボランテ
ィアで子供の面倒をみるという「子供の茶の間」
という試みがスタートした。
・この「子供の茶の間」で、小学生とボランティア
の高齢者が知り合いになったことで、地域で会う
と挨拶をかわすようになった。
・小学生が授業の一環で訪問したことにより「交流・ふれあい」の場になり、それをきっかけに小
学校の先生と知り合いになったことが「ネットワークの形成」であり、相談を受けて「子供の茶
の間」をスタートさせ、小学生や高齢者が常時出入りするようになったことが「にぎわいの創出」
であった。
・小学生と高齢者が、会うと挨拶をかわすようになったことが、
「地域コミュニティの活性化」につ
ながったと考えられる。
・紹介した3つのコミュニティ・カフェは、いずれも「飲食やイベント等が提供される、主として
地域住民の居場所・たまり場」となっている。
・ここで「開業希望者同士のつながり」
、
「近くに住んでいる母親同士のつながり」、
「地域の高齢者
同士のつながり」などが生まれてきている。
・いずれも「出会い・集いの場」
、
「交流・ふれあいの場」、
「ネットワーク形成の場」としての機能
を果たしている。
・しかしながら、いずれも「にぎわい創出の場」としての機能を持つには至っておらず、地域コミ
ュニティの活性化をもたらしているとは言えない。
・残念ながら、
「現段階では」
、コミュニティ・カフェが地域を元気にしているとまでは言うことが
できない。
◆地域コミュニティ活性化の条件
・あくまで現段階での話で、将来的には、北海道のコミュニティ・カフェが地域コミュニティを活
性化する存在になると思う。
・ただし、全部のコミュニティ・カフェが必ず地域コミュニティの活性化をもたらさなければなら
ないというわけではない。
・コミュニティ・カフェが地域コミュニティの活性化をもたらしていくためには、コミュニティ・
カフェの中で立ち上がったグループやネットワークを支援していくことが必要になる。
・そうした支援によって、グループのメンバーだけでなく、その関係者が来店するようになり、新
たな交流やネットワークが形成され、にぎわいがもたらされていく。
・次に、コミュニティ・カフェの中に自由な雰囲気を作り出し、
「来る者拒まず」というスタンスを
明確にしていくことが必要。
・
「いつも同じような人が仲良さそうにしているな」と外からみられると、かえって敷居が高く感じ
られるかもしれない。
・誰でも気軽に来店できる雰囲気を作り出すことで、来店回数が増え、これまで来店したことのな
い人々が来店すると期待できる。
・地域コミュニティを構成する様々な組織、団体(町内会や学校など)との連携を図っていくこと
が必要になる。
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・これまで交流・ふれあいのなかった人たち同士をつなぐ機会をつくり出す。
・地域コミュニティの人たちが、顧客・支援者として、様々な形でコミュニティ・カフェに関わる
ことで、コミュニティ・カフェから生まれたにぎわいが、地域コミュニティ全体に波及していく
と考えられる。
・見方を変えれば、コミュニティ・カフェは地域コミュニティにとって必要な場であると認識し、
地域コミュニティ全体で支えていくということが求められる。
・補助金や助成金で支えることも必要かもしれないが、例えば、町内会や商店街など様々な団体が、
会合の場としてコミュニティ・カフェを利用することによって、コミュニティ・カフェを支えて
いくというようなことが、何より重要だと思う。
◆まとめ
・狭義のコミュニティ・カフェやコミュニティ・スペースについては、それなりの準備が必要とな
るが、地域の茶の間は、わりと簡単にはじめられるものである。
・例えば、月1回、町内会館などを借り、知り合いに声をかけ、何人かでお茶を飲み、お菓子をつ
まみながら、世間話をする・・・それだけで立派なコミュニティ・カフェになる。
・そんなに話すことがない場合は、将棋、囲碁、麻雀、オセロゲームをやるだけでもそのうち、い
ろいろ話が出てくるものである。場合によっては、費用の一部をどこからか助成してもらえるか
もしれない。
・いろいろな人が、そのような場を開いてみる、あるいは、そうした場に参加してみる。実は、そ
れが、地域コミュニティの活性化、地域を元気にする、そして北海道を変える第一歩である。
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