当日配布資料(1.75MB)

近畿大学 新技術説明会 アグリ・バイオ
(2015年1月13日)
科学的根拠に基づく畜産農家経営に資する
肉用牛の枝肉形質早期診断マーカー
近畿大学生物理工学部
松本和也
産学連携の経歴
(1)(独)科学技術振興機構・和歌山県地域結集型共同研究事
業「アグリバイオインフォマティクスの高度活用技術の開発」(平成
15-20年度)
(2)(独)農業・食品産業技術総合研究機構・生物系特定産業技
術研究支援センター・イノベーション創出基礎的研究推進事業(発
展型)「黒毛和種の優良経済形質バイオマーカータンパク質の機
能解明とモニタリング評価システムの開発」(平成21-23年度)
(3)JRA日本中央競馬会・畜産振興事業 遺伝子解析等を活用
した生産性向上・育種改良推進事業(黒毛和種肥育牛の生産性
向上とその安定化を実現する新たな肥育診断技術の開発事業)
(平成25-27年度)
新技術の開発の背景と目的
【背景】 日本の肉用牛生産を取巻く環境は厳しく、外部要因として世界的な穀物需要の上昇や、内
部要因として畜産農家の高齢化や担い手不足、牛肉価格の低迷や生産コストの増加による収益性の
低下が、農家経営や畜産産業の大きな課題となっている。この課題を解決し持続的な農業経営を行う
ためには、各農家は高品質の肉用牛を安定的生産する適切な肥育管理の実施が必要である。しかし
ながら、安定的な肉用牛生産を行うために必要な明確な肥育管理の指標が確立されていないため、
実際には肉用牛生産農家は各個人の経験・勘を頼りに農業経営を行っている。
新技術: 科学的根拠に基づく畜産農家経営に資する
肉用牛の枝肉形質早期診断マーカー
(1)肥育期間中に枝肉形質を予測する指標(バイオマーカー)の開発
(2)測定データの数値化による予測診断のマニュアルの開発
経験に基づく“肉用牛生産の技”の数値化と診断マニュアルの作成
生産現場へ
科学的根拠に基づく肉用牛生産への転換
肉用牛生産性の向上、畜産農家経営の安定化、計画的に生産された牛肉の輸出---TPP対応
近畿大学の研究開発の戦略
環境要因
形質の二次元スペクトル
環境要因の影響の変化が遺伝的決定のスペクトルに影
響を及ぼす。ある特定の形質の決定要因の集合は、
この三角形の中に位置付けされる。
(Human Molecular Genetics 4th editionより改変)
和牛の枝肉形質
環境要因+遺伝的要因は、
第一義的にはタンパク質で把握できる
メンデル遺伝
(単一遺伝子)
ゲノム(genome)
遺伝的要因
ポリジーン
(影響力が小さい
遺伝子が多数関与)
エピゲノム(epigenome)
トランスクリプトーム(transcriptome)
プロテオーム(proteome)
和牛の枝肉形質
検出条件の確立した診断用バイオマーカータンパク質の開発
Transferrin測定値
肥育期間におけるBMSナンバーを予測診断するバイオマーカーの経時的動態の理想値
BMS(Beef Marbling
Standard):
脂肪交雑の基準
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
肥育導入後月数
0.35
Gelsolin測定値
0.30
0.25
0.20
0.15
BMSナンバー5-7:青色(N=5)
BMSナンバー8-9:緑色(N=11)
BMSナンバー10-12:赤色(N=6)
全体平均:黄色(N=22)
0.10
0.05
0.00
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
肥育導入後月数
検出条件の確立した診断用バイオマーカータンパク質の開発
肥育期間におけるBMSナンバーを予測診断するバイオマーカーの経時的動態の理想値
0.35
微減
0.30
Gelsolin測定値
Transferrin測定値
微増
0.25
0.20
0.15
0.10
0.05
0.00
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
肥育導入後月数
肥育導入後月数
「理想値と測定値の距離」とBMSナンバーの相関
Transferrin(導入0~10ヶ月)の変化量・Gelsolin(導入14~16ヶ月)の変化量
相関係数:-0.87074
個体数:22
BMSナンバー
12
BMSナンバー5-7:青色(N=5)
BMSナンバー8-9:緑色(N=11)
BMSナンバー10-12:赤色(N=6)
全体平均:黄色(N=22)
10
8
6
4
2
0
0
1
2
3
理想値に対する実測値の距離
4
バイオマーカーによる肥育牛早期診断マニュアル(一次)の開発:
去勢肥育牛を対象として予想精度59%及び29%の例
10/17
(59%)
カットオフ値
-0.137以下
カットオフ値
0.124以上
標
準
多
か
な
い
り
BMS BMS 多
3~4 5~7 い
(n = 4) BMS
(n = 0)
8~12
(n = 17)
脂肪交雑
5/17
(29%)
標
準
多
か
な
い
り
BMS BMS 多
3~4 5~7 い
(n = 5) BMS
(n = 0)
8~12
(n = 17)
脂肪交雑
バイオマーカーによる肥育牛早期診断マニュアル(一次)の開発:
去勢肥育牛を対象として予想精度59%及び29%の例
10/17
(59%)
カットオフ値
-0.137以下
カットオフ値
0.124以上
5/17
(29%)
標
準
多
か
標
多
か
な
い
な
準
い
り
BMS
BMS
BMS り
多
BMS
多
3~4 5~7 い
5~7
い
3~4
(n = 4) BMS
(n = 5) BMS
(n = 0)
←バイオマーカー2項目で予測できなかった個体数
(n = 0)
8~12
8~12
(n = 17)
(n = 17)
脂肪交雑
脂肪交雑
実用化に向けた課題
現在、バイオマーカータンパク質として、肥育過程でウシ個体に
負担無く採取した血清を対象として、検出可能なタンパク質をリス
トアップするところまで開発済みである。しかし、まだ候補タンパク
質に対する抗ウシタンパク質抗体が少なく、全ての候補タンパク質
を検出するシステム構築の点が未解決である。
今後、複数の県で肥育された黒毛和種肥育牛について実験デー
タを取得し、全国レベルの黒毛和種肥育牛に対して適用可能な予
測診断していく場合のバイオマーカーの組み合わせ条件設定を
行っていく。
実用化に向けて、測定データの数値化による予測診断のマニュ
アルの開発では、予測精度を90%近くまで向上できるような複数
のバイオマーカーを使ったマニュアルを確立する必要がある。
企業への期待
肉用牛の枝肉形質早期診断マーカーとして特許出願したタンパ
ク質102種類を基盤にした本技術では、協力企業と「肥育牛早期
診断用バイオマーカー検出キット」の試作品を開発していくことを希
望する。
もし、このキットが実用化し市販された場合、日本の和牛
517,642頭(平成23年度格付け和牛頭数、(社)日本食肉格付
協会ホームページ(http://www.jmga.or.jp/))の30%が、肥育過
程で2回使用した場合で、「肥育牛早期診断用バイオマーカー検出
キット」の販売価格3,000円として、年間約9.3億円の売り上げが
見込まれる。なお、このキットの実用化では、動物生産関連企業と
連携して将来製品化に着手することを期待している。
お問い合わせ先
近畿大学
生物理工学部
研究支援・推進センター
科学技術コーディネーター
鈴木義彦
TEL
e-mail
0736-77-0345 ext 2217
[email protected]